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【認知症の方への対応マニュアル】基本の心得やケース別の方法を解説

著者: ゲートウェイ

更新日:2023/12/22

公開日:2022/08/26

高齢者に多く発症する病気の1つに、認知症があります。認知症になると過去の記憶が抜けてしまうため、以前と同じ生活を送ることが難しくなります。認知症の方が生活していくためには、ご家族や周囲の人が認知症について正しく理解し、対応していくことが必要です。今回は認知症の方への対応について、基本の心得や、してはいけない対応、ケース別にみた対応方法を詳しくお伝えします。

認知症とは

認知症の方に対し適切に対応するためには、まず認知症について正しく理解することが必要です。厚生労働省ホームページでは、認知症について下記のように定義しています。

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。

 

認知症には「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」の主に3種類があります。下記で、各認知症の原因や症状について詳しくみていきます。

【種類別】認知症の原因・症状・特徴

アルツハイマー型 脳血管性型 レビー小体型
原因 脳の神経細胞の破壊 脳梗塞、脳出血などによる脳の一部壊死 レビー小体の蓄積による神経細胞の破壊
症状 ・認知機能障害
・見当識障害
・徘徊
・妄想 など
・認知機能障害
・記憶障害
・手足のしびれ、麻痺
・急激な感情の起伏
・歩行障害
・排尿障害 など
・認知機能障害
・記憶障害
・パーキンソン症状
・幻視、妄想
・睡眠時の異常言動
・手足の震え
・抑うつ など
比率 約68% 約20% 約4%
発症年齢 70歳以上 50歳以降、加齢とともに 65歳以上
性別 女性に多い 男性に多い 男性に多い

 

認知症の中でも最も多く発症するのは、脳の一部が萎縮していく過程で起こるアルツハイマー型認知症。症状は物忘れから始まることが多く、ゆっくりと進行していくため、老化による物忘れと判別しにくい難点が。二つの違いは様々ありますが、大きな違いでいえば、老化による物忘れでは認知症のように物事や体験の全てを忘れることはないということ。認知症はすべてを忘れてしまうため、自覚しにくく、気づいたときには症状が進行してしまっていたというケースも少なくありません。

認知症の方に対応する際の4つの心得

認知症にかかると日常生活を送ることが困難になっていくため、周囲の方の理解やサポートが欠かせません。しかし、症状が様々であったり、対応が難しかったりして、周囲の方が介護疲れを引き起こしてしまうケースも。認知症の方にうまく対応するには、下記4つの心得を押さえることが大切です。

① 信頼関係を築く

認知症の方と接する上では、自分の弱い部分を認知症の方が伝えやすくなるよう、信頼関係を築いておくことが重要です。認知症の初期段階では、本人も「何かがおかしい」と自覚しています。心の奥では、誰かに助けてほしいと感じていたとしても、恥ずかしさや迷惑をかけたくないという気持ちから、起こした失敗やできなくなってしまったことを言い出しにくくなってしまうのです。言いたいのに言えないジレンマは、さらなる精神的なストレスを与え、認知症症状や問題行動を悪化させます。そのため、本人が失敗やできないこと、不安などを伝えやすくなるよう、家族や周囲の人が日頃から信頼関係を築いておくことが重要です。

② 自尊心を傷つけない

そのような悪循環を引き起こさないために必要なことは、相手がわからない(できない)ことに対してむやみに訂正したり、叱ったりしないこと。相手の人間的な感情を無視せず、尊重する態度や言葉遣いを意識して対応することが大切です。

認知症になると認知機能が低下し、以前わかって(できて)いたことが突如としてわからなく(できなく)なります。自覚があったとしても自分では解決できないため、本人のプライドは、そのような経験を重ねるごとに段々と傷ついていきます。特に、周囲から強く叱られると、大きく傷ついて心を閉ざしてしまうことも。そうなると、さらなる症状の悪化に繋がってしまいます。

③ 相手のペースに合わせる

認知症になると考える力が衰え、動作が遅くなったり、できないことが増えたりと徐々に普通の日常生活を送ることが難しくなります。しかし、認知症の方は時間がかかってしまうだけで、全てのことがすぐ完全にできなくなってしまうわけではありません。そのため、周囲の人は認知症の方に対して急かすことなく、本人が自分のペースで物事を進められるよう、まずは気長に見守ることが大切です。

④ 良い感情を残す

認知症では、物事や体験の事実関係は忘れてしまいますが、その時抱いた感情は残ります。例えば、あることに「失敗した」事実は忘れたとしても、その時に「怒られた」感情は残ってしまうのです。そのため、相手との信頼関係を築くためにも、「あの人はすぐ怒る人・怖い人」といった感情を残さないように気をつけましょう。なるべく笑顔かつ優しい口調で接し、相手にとって良い感情を残してあげることが大切です。

認知症の方にしてはいけない対応

認知症の方にしてはいけないのは、心得とは真逆の以下のような対応です。

・叱る、怒る
・命令する
・強制する
・急かす
・子ども扱いする
・行動を制限する
・何もさせない

前述したように、認知症の方は事実関係を忘れてしまいますが、その時の感情は覚えています。また認知機能は低下していても、感情やプライドは変わりません。そのため、上記のような対応をすると「嫌がらせされている」「意地悪されている」と受け止められ、本人の精神的ストレスを増大させてしまいます。特に、認知症の症状の中でも行動・心理症状は本人の性格や周囲の環境、心理状態の影響をうけて、二次的に発生するものです。精神的ストレスや不安、マイナスな感情が大きくなることで、行動・心理症状を悪化させてしまう恐れがあります。
そのように、認知症の症状を安定させ、進行を抑制するには、本人が落ち着いた生活を送ることが大切です。認知症は病気であることを理解し、相手の気持ちに寄り添って対応することが求められます。

【こんな時どうする?】認知症への対応方法

人によってさまざまな症状が出る点が、認知症対応の難しいところです。ここでは、症状別に認知症の対応方法をみていきます。

同じ話を繰り返すときの対応

認知症の方が何度も同じ話を繰り返すのは、前に言ったことを忘れてしまっているから。本人は毎回初めて言っていると認識しています。そのことを理解し、何度も同じ話を繰り返しされたとしても、怒らず丁寧に対応することが大切です。いい加減な対応や返答をすると、認知症の方の自尊心を傷つけてしまう恐れがあります。もし1つの話題を過剰に繰り返すのであれば、丁寧に返答した後に話題を変えたり、外出したりするなどして関心を逸らすのも1つの方法です。

お金・ものを盗られたと言われた時の対応

認知症の方は「お金や貴重品が盗まれた」と、周囲の人を泥棒扱いしてしまうこともあります。これは認知症によく見られる症状の1つであり、一種の妄想です。疑われた側は憤りを感じてしまうかもしれませんが、その際に否定したり怒ったりすると認知症の悪化につながる可能性があります。まずは「ものを無くしてしまって大変だ」という本人の気持ちに共感し、一緒に探すなど寄り添いながら本人が見つけられるよう誘導しましょう。見つかったら一緒に喜んであげたり、他のことへ関心を向けさせて落ち着かせるというのも有効です。

ご飯を食べたことを忘れている時の対応

認知症になると直前の出来事を忘れてしまうだけでなく、脳機能の低下により満腹感を感じにくくもなります。そのため、直近でご飯を食べたにもかかわらず「まだご飯を食べていない」と訴えるケースも見られます。その際に、「もう食べたでしょう」と叱られると本人にとっては「ご飯を食べた」記憶がすっぽり抜けているため、嫌がらせを受けていると認識してしまうのです。この場合は、「いま準備しているから待っていてね」と伝えたり、「先にフルーツを食べていてね」などといってフルーツを出したりするなど、食べていないという主張を否定しない対応をすることがポイント。もしも、ご飯を食べていないと訴える頻度が多い場合は、栄養状態に十分配慮したうえで、あえて1食分を減らして、訴えのあった時にその分を出すのも1つの方法です。

ずっと探し物をしている時の対応

何かをずっと探している場合、まずは「どうしたの?」と優しく声かけしてあげましょう。その時に「○○がない」と状況を話してくれれば、その返答を受け止めて一緒に手伝う姿勢を見せることが大切。「どうしたの?」の声かけに反応してくれない、理由を言いたがらない場合は無理に聞き出さず、様子を見守りましょう。

トイレに失敗してしまった時の対応

トイレの失敗は、本人の自尊心をひどく傷つけます。恥ずかしさから、失敗したことを知られたくなくて下着を隠してしまうこともあるでしょう。この場合、本人は隠したことを忘れている可能性も。余計に自尊心を傷つけてしまわないように、そっと片付けることがポイントです。またトイレに失敗してしまう原因として、トイレの場所がわからなくなっている可能性が考えられます。扉に「トイレ」と張り紙をしておく、トイレまでの道順を示してあげる、定期的に声かけをしてあげるなど工夫するのも効果的です。

妄想や作り話への対応

妄想や作り話に対しては、否定せずにまず話を聞いて受け止めてあげることが大切です。本人は妄想や作り話を真実だと思い込んでいるため、否定したり馬鹿にしたりすると孤独感を強めてしまいます。認知症の方に寄り添い、話に合わせる姿勢を見せましょう。

認知症の方の自尊心を傷つけず、寄り添った対応をしよう!

認知症の症状の多くは、本人にとっても戸惑いが大きいものです。そのため、「認知症は病気である」と理解した上で、本人の気持ちに寄り添って対応することが大切。認知症の方の自尊心を傷つけず、ペースに合わせて対応することで、認知症の悪化を抑制できます。今記事を参考に認知症の方への適切な対応方法を押さえ活かしてみてくださいね。

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著者プロフィール

ゲートウェイ

ゲートウェイ

異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。

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