院内保育って何?保育所勤務の保育士との違いや働くメリット・デメリット
著者: めんたいパスタ
更新日:2023/12/22
公開日:2019/09/13
院内保育とは、もともとは病院で24時間・365日交替で働く看護師などの医療従事者の子どもを預かるため、病院内や隣接した区域に設置されるようになった保育所のことです。小さい子どもを持つ夜勤スタッフが安心して働くための福利厚生面だけでなく、看護師をはじめとする医療従事者の人材不足問題を解消するための手段として重要な役割を持っています。この記事では、病院内保育所で働く保育士さんのメリット・デメリットを保育園勤務と比較しながら紹介します。
目次
医療従事者を支える、院内保育所とは
以前は「看護師のため」という意味合いが強かった院内保育ですが、現在は医師やコメディカルを含め、すべての医療従事者の出産や育児からの職場復帰に貢献し、幅広く医療業界の人材確保に貢献しています。一般企業で働く保護者の子どもを預かる場合と比較して以下の特徴があります。
・長時間保育
・少人数保育
・保護者が同じ職場で働いている
・すぐそばに医療従事者がいる
一般的な保育園との違い
長時間保育
医療従事者の子を預かるという院内保育の特徴は、まず長時間保育であることが挙げられます。入院病棟がある病院は、24時間保育、あるいはそれに準じて6時~22時などの長時間保育を行う施設が殆どです。院内保育の利用者のうち多数を占めるのが看護師。看護師の主なシフトは日勤/夜勤の二交代制、または日勤/夜勤/準夜勤の三交代制です。そのため、保護者が看護師の場合、日中は保育園に通い、保育園終了後に院内保育に通う…という生活をする子どももいます。
少人数保育
医療施設内で働く保護者の子どもが対象となるので、定員もそれほど多くなく、少ないところでは10人未満、平均40人程度という比較的こじんまりとした保育所が多いでしょう。少人数制のところが多いので、クラス分けなどはなく、様々な年齢の子どもたちを一緒に預かる「異年齢保育」を毎日行う必要があることがほとんどです。
保護者が同じ職場で働いている
院内保育が一般の保育園・保育所と違う一番の特徴は「保護者が同じ職場(=病院)で働いている」ということです。この点では企業内保育所と似ています。本来、子どもたちの間に上下関係はありません。しかし子どもを預ける保護者の間には、職場の上司・部下関係、医者と看護師の関係、場合によっては仲が悪い部署同士…など複雑な人間関係が絡み合っています。保護者同士の人間関係に一定の配慮は必要ですが、子どもへの接し方は公平であるべきもの。保育士は職場の人間関係に巻き込まれず、中立な立場を心掛けなくてはいけません。
すぐそばに医療従事者がいる
保育士として一番注意を払わなければいけないのが、子どもの健康状態。院内保育は、その名の通り病院の敷地内にあることがほとんどですので、なにかあれば、すぐに看護師・医師に連携して確認することができるのが心強いですね。一方、病院は風邪やインフルエンザの患者さんが通うことが想定されるため、ウイルス感染の危険性には常に注意を払う必要があります。
保育士として働く場合の違い
待遇の違い
院内保育は多くの場合、病院の勤務体系に合わせて長時間保育を行います。看護師が二交代・三交代で働く場合、保育士もそれに合わせて二交代・三交代などの勤務体系で24時間保育を行うことが多いでしょう。病院は、入院患者がいれば365日体制ですから、保育所も365日開園しているということも珍しくありません。シフトに合わせて休日が組まれますので「毎週日曜日は休みたい」などの希望は通らないのが一般的です。
待遇は、病院の経営方針や勤務体系に大きく左右されます。しかし一般的には普通の保育園で働くより高給で、首都圏の大病院の院内保育所ならば月収20万円を超える場合が多く、プラス賞与を年2回もらえるところが少なくありません。病院の一職員として雇用されれば、福利厚生面も病院のスタッフに準じて適用されます。運営主体が大病院の場合、保育園での保育士よりも手厚い福利厚生制度が制定されている可能性があります。
役割期待の違い
院内保育の場合、保護者の勤務体系によっては「日中は保育園に預け、その前後に院内保育所を利用する」というケースも多くあります。自宅で過ごす時間が少ない子どもにとって、院内保育は単なる保育所というだけでなく、「第二の家庭」であり、生活習慣を身に着けさせる重要性が高いと言えます。たとえば、子どもたちは保護者の夜勤シフトとは関係なく、朝起きて、夜眠るという規則正しい生活を心掛ける必要があります。
少人数なこともあり、普通の保育園と比べると、行事やイベントが少なくい場合が多いです。子どもたちの生活に刺激を与えるというよりも、保護者がいなくても落ち着いて、日々の生活習慣を守って過ごすことが重要なのかもしれません。また、保護者の勤務シフトによって子どもが預けられることになるので、クラス制の保育園と違って子どもたちの顔触れは日々違います。普通の保育園以上に子どもたちが慣れてくれるのに時間がかかることもあります。
院内保育で働くメリット
ここまでは院内保育所と、通常の保育園の違いをメインにお伝えしてきました。それでは、保育士資格を持つ方にとって院内保育所で働くメリットはなんでしょう。3つの点に分けて考えてみます。
高収入・高待遇である
院内保育で働くメリットの一つはすでにお伝えした通り、待遇です。もともとの給与も一般的な保育園と比べると高い傾向にありますが、それだけでなく、夜勤などがあると、さらに高くなることもあるでしょう。
保護者がすぐ近く
保護者が常に近くにいるということです。保護者が病院内で働いている間預かっているので、何かどうしても保護者が必要な時にはあった時、すぐに来てもらえる、顔を出してもらえるというメリットがあります。これは実際に来てもらわないとしても、子どもにとっても大きな気持ちの支えになるでしょう。また、病院内、その近隣にあるので、子どものけがや体調不良にすぐ対応できるというメリットもあります。 また、もともと24時間体制の院内保育の場合、シフトがきちんと組まれているため、残業などはほとんどありません。行事やイベントが少ないことも、通常の業務に加え余分な仕事が増えないので、残業を減らす助けになっているのでしょう。一般的にサービス残業・持ち帰り仕事が多いと言われている保育士の仕事ですから、これは非常に大きなメリットだと言えます。
行事に追われず、子どもと向き合える
少人数制であることや、夜預かったりするということもあるため、家庭的な雰囲気の保育ができるという点もあります。ゆっくり、一人ひとりの子どもと向き合うことができるでしょう。また、子どもの生活に関わることになり、保護者にとっても、心強い存在として頼りにされることも、保育士としての大きなやりがいを感じることにつながるでしょう。
院内保育で働くデメリット
逆に、院内保育ではたらく選択肢を選んだ場合に考えられるデメリットは何でしょうか。こちらも3つに分けて考えてみます。
夜勤やシフト制による変則勤務
最初に挙げられるのは、やはり、勤務体系でしょう。院内保育所は24時間・365日体制が多く、そうでなくても長時間保育の場合がほとんどです。夜勤やシフト制による変則勤務でプライベートの予定が立てにくく、友人と会う際に不便さを感じることがあります。自分が家庭を持っていれば、配偶者や子どもの理解を得るのが大変な場合もあります。最初は良くても、年齢とともに夜勤や不規則なシフトによる体力的なきつさを感じることがあるかもしれません。
やりたい保育ができない可能性がある
2点目は、通常の保育園と違い、園庭・プール・ピアノ・食育等の保育環境が十分に整っていないケースが多いことです。子どもと遊ぶこと、季節ごとのイベントを行うことを保育士のやりがいと感じる方だと、物足りなさを感じる場合もあるでしょう。預かる子どもは少人数・異年齢かつ、保護者のシフトにより顔ぶれが違います。そのため、日々子ども達全員が楽しめる遊びを構築するは大変です。変化を楽しめる保育士であれば良いのですが、毎回メンバーが変わるということは、毎回子どもたちの人間関係に注意が必要になったり、時には問題が起こる場合もあるかもしれません。
保育士として積める経験が限られる
院内保育で働くことを考える前に考えておくべきなのが、今後のキャリアです。普通の保育園と比べて、院内保育は特殊な環境下での保育になります。将来、保育園での保育士になりたいと思っていたり、保育士として園長職にキャリアアップをしたいと考えている場合、人事担当が院内保育所での経験をどの程度評価してくれるかは未知数です。デメリットとは言えないかもしれませんが、この点は心にとめておくべきでしょう。
まとめ
院内保育は、勤務体系が不規則で、患者の状況によって残業も避けられない医療従事者にとって、時間などを気にせず子どもを安心して預けられる心強い存在です。そして、院内保育で働く保育士は、子どもたちが規則正しい生活ができるよう見守り、助ける重要な役割を担っています。
保育士としては給与・待遇は恵まれる傾向にある院内保育所。人の命を救う医療従事者の助けになれる院内保育所は社会的に大きな意味を持っています。ご自身の目指す保育方針、ワークライフバランス、体力を踏まえ、事前に院内保育での仕事が向いているかを考えてみるのは良いことです。保育園での保育士と比較検討して、自分に合った働き方を見つけましょう。
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著者プロフィール
めんたいパスタ
人材紹介業、サービス業、障がい者雇用の分野で採用業務に従事した経験がある女性スタッフ。現在は保育分野の採用担当として、業務を通じて保育園で働くスタッフの負荷軽減になることを目標として活動している。