オンライン資格確認とは?メリット・デメリット、補助金などについて解説
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/08/04
2021年10月20日より、医療機関・薬局ではオンライン資格確認の本格運用が開始。資格確認のオンライン化で医療機関・薬局ではさまざまなメリットがあると期待される一方、実際に運用している施設は約1割にとどまっている状況です。
今回はオンライン資格確認について、メリットやデメリット、導入に必要なものや補助金についてご紹介します。
目次
オンライン資格確認とは
オンライン資格確認とは、患者の保険資格の確認作業をオンラインで行うことです。医療機関や薬局の窓口で、患者が加入している医療保険などを確認する作業を資格確認といいます。これまで資格確認は、医療事務などの窓口担当者が資格情報をシステムに入力する方法で行われていました。しかし、今後はマイナンバーカードのICチップや健康保険証の記号番号により、オンラインで確認する方法へとシフトする予定です。
オンライン資格確認で変わること
オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等の情報のみですぐに保険資格の有効性や患者情報を取得できます。また、薬剤情報や特定健診等情報の閲覧も可能で、より多くの情報を元に診療・服薬指導ができる点が大きく変わる部分です。オンライン資格確認を導入すると、医療事務の業務負担軽減や患者の効率的な受診が期待できます。さらに、データに基づいたより精度の高い診療が可能となるでしょう。
オンライン資格確認導入の背景
これまで資格確認は、医療機関のシステムに担当者が患者の情報を手入力して行なっていました。この方法は入力の手間がかかったり、患者を待たせてしまったりするデメリットがありました。さらに、人手不足の医療機関では、医療事務の業務負担が大きいことも課題の一つです。このような背景から、医療事務の業務負担を軽減し、さらなる医療の充実を図るためにオンライン資格確認の仕組みが確立しました。当初は2021年3月から運用開始の予定でしたが、本格的に開始したのは2021年10月20日です。政府は2023年3月末までの完全導入を目標に掲げ、導入・運用が進められています。
オンライン資格確認の仕組み
オンライン資格確認は、マイナンバーカードと健康保険証の2つの確認方法があります。マイナンバーカードの場合はカードリーダーに置き、ICチップ内の電子証明書を読み取ります。加えて、顔認証や目視または4桁の暗証番号入力による本人確認を行い、患者の資格情報を取得します。
健康保険証の場合はこれまで通り窓口で提示し、記号番号等の情報の入力で、情報を取得します。患者の保険情報は支払基金・国保中央会が管理するオンライン資格確認等システムと接続し、その場ですぐに資格情報が取得できる仕組みです。
オンライン資格確認の4つのメリット
・入力・確認の手間削減
・レセプト返戻作業の削減
・薬剤情報・特定健診等情報が閲覧可能
・災害時でもより良い医療提供が実現
オンライン資格確認は2023年3月末までの完全導入が目標とされていますが、導入は義務ではありません。しかし、今後マイナンバーカードのさらなる普及により、マイナンバーカードが医療機関で使用されるケースは増加していくと予想されています。ここでは、オンライン資格確認による4つのメリットを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
入力・確認の手間削減
医療事務にとって大きなメリットとなるのが、患者の保険情報の入力・確認の手間の削減です。従来の資格確認では医療事務が健康保険証を受け取り、保険証記号番号や氏名、生年月日などの情報を医療機関システムに入力していました。オンライン資格確認であればマイナンバーカードのスキャン、または健康保険証の最低限の情報を入力するだけで資格情報の取り込みが可能です。最新の情報が取得できるかつ入力の手間が省けるため、受付業務の大幅な効率化が期待できます。
さらに、一括照会により予約がある患者の保険資格の有効性や資格情報の変更等が、事前に確認できる点も大きなメリットです。
レセプト返戻作業の削減
レセプト返戻とは、保険医療機関に提出したレセプト内容に不備や誤りがあった場合に差し戻されることです。オンライン資格確認を導入していれば、支払基金・国保中央会が管理するオンライン資格確認等システムから患者の保険資格が確認できます。そのため、不備や誤りによる返戻が発生しても、すぐに情報が確認できるので返戻作業の手間が削減できます。加えて、必要な情報が取得できない場合に再申請できないといった事態に発展することもなくなり、診療報酬の未収金の削減につながる点もメリットの一つです。
薬剤情報・特定健診等情報の閲覧可能
オンライン資格確認の導入により、3年間分の薬剤情報と5年間分の特定健診等情報の閲覧が可能です。なお、薬剤情報は2021年9月診療分から、特定健診等情報は2020年度分から順次登録された情報が閲覧できます。
薬剤情報や特定健診等情報が閲覧できることで、かかりつけ以外の医療機関でも患者の最新情報が確認でき、いつでもどこでも適切かつ迅速な診療・治療が実現します。また、医師から患者への問診・確認の手間も省け、医療従事者の負担軽減や効率的な対面診療にもつながるでしょう。
災害時でもより良い医療提供が実現
地震や豪雨など自然災害に見舞われやすい日本では、災害時の医療提供にもさまざまな課題があります。オンライン資格確認が導入されていれば、災害時は特別措置としてマイナンバーカードによる本人確認がなくても、薬剤情報や特定健診等情報の閲覧が可能です。どんな場所でもデータに基づき迅速な医療の提供が可能になる点は、大きなメリットといえます。
オンライン資格確認の3つのデメリット
・導入・運用の費用
・サポート負担の増加
・セキュリティ面のリスク
オンライン資格確認は大きなメリットがある一方、デメリットもあります。ここでは、オンライン資格確認のデメリットについて解説していきます。
導入・運用の費用
オンライン資格確認の導入時には電子カルテやレセプトコンピューターの改修、顔認証付きカードリーダーやパソコンの購入、回線整備などさまざまな費用がかかります。加えて、運用にあたり発生する端末故障の修理費や、回線の月額料金などの費用も発生します。導入から運用維持にさまざまな費用が発生するほか、導入の申請やシステムのセットアップ、スタッフへの操作指導、マニュアル作成などの手間がかかる点はデメリットです。
サポート負担の増加
新しいもの・ことを導入したときに、必ず発生するのが問い合わせです。特に医療機関は高齢者も多く、慣れない電子機器の操作やマイナンバーカードの仕組みに疑問や不安を抱える方も多いでしょう。規模の小さい医療機関は、問い合わせのサポート対応に追われて結果的に業務負担が増加する事態になる恐れもあります。
セキュリティ面のリスク
オンライン化に伴い、デメリットとなるのがセキュリティ面のリスクです。オンラインで個人情報が取得できることは、何かしらの理由で流出するリスクも持ち合わせています。そのため、ウイルス対策を徹底するなど徹底したセキュリティ管理が必要です。
また、患者が院内でマイナンバーカードを紛失したり、盗難に遭ったりするリスクも少なくありません。そのようなトラブルにも対応できるよう、院内で体制を整えておくことが必要です。
オンライン資格確認の導入手順・必要なもの
ここでは、オンライン資格確認の導入手順や必要なものをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
オンライン資格確認の導入手順
下記は、オンライン資格確認の導入手順です。
STEP1. | 顔認証付きカードリーダー申し込み | 1. 医療機関等ポータルサイトでアカウント登録 2. カードリーダーの申し込み |
---|---|---|
STEP2. | システムベンダに発注 | ▼見積依頼項目 1. 各種機器の導入・設定 2. システム改修・動作確認 3. ネットワーク設定・疎通確認 |
STEP3. | 導入準備 | 1. オンライン資格確認利用の申請 2. 機器設定 3. 運用テスト 4. 患者向け周知物等の掲示 |
STEP4. | 運用準備・開始 | 1. 運用開始日の入力 2. 窓口でオンライン資格確認を開始 |
STEP5. | 補助金申請 | 1. システムベンダから必要書類を受領 2. ポータルサイトにて申請 |
発注を依頼するシステムベンダは、現在利用しているレセプトコンピューター等の担当事業者です。レセプトコンピューターを導入しておらず依頼先がわからない場合は、「オンライン資格確認に係る導入支援サービス提供業者お問い合わせ先」に確認しましょう。
なお、導入まで作業期間を要するため、早めにポータルサイトへの申請・システムベンダへ発注が必要です。
オンライン資格確認に必要なもの
オンライン資格確認を運用するにあたり、以下が必要です。
・顔認証付きカードリーダー
・マイナンバーカード読み取り・資格確認等のソフトウェア
・オンライン請求の回線環境
・既存の電子カルテシステム など
機器や環境を準備し、医療機関等向けポータルサイトで運用開始日を登録すればオンライン資格確認の運用が開始できます。なお、顔認証付きカードリーダーは医療機関と薬局に無償で提供されます。
オンライン資格確認の導入に活用できる補助金
オンライン資格確認の導入にあたり、補助金の対象となるのは下記事業です。
・オンライン資格確認の導入に必要となる資格確認端末の購入・導入
・レセプトコンピューター、電子カルテシステム等のアプリケーションに組み込むパッケージソフトの購入・導入
・オンライン資格確認に必要となるオンライン請求回線の導入、既存のオンライン請求回線の増強
・オンライン資格確認の導入に必要となるレセプトコンピューター、電子カルテシステム等の既存システムの改修 など
また、補助金は規定の上限額と割合で支給されます。
病院 | ||
---|---|---|
導入数:1台 | 導入数:2台 | 導入数:3台 |
上限105万円 ※事業額の210.1万円を上限にその1/2補助 |
上限100.1万円 ※事業額の200.2万円を上限にその1/2補助 |
上限95.1万円 ※事業額の190.3万円を上限にその1/2補助 |
大型チェーン薬局 (処方箋の受付がグループで月4万回以上) |
診療所薬局 (大型チェーン薬局以外) |
---|---|
導入数:1台 | 導入数:2台 |
上限21.4万円 ※事業額の42.9万円を上限にその1/2補助 |
上限32.1万円 ※事業額の42.9万円を上限にその3/4補助 |
補助金が支給される期間は、2023年3月末までに対象事業を完了させた後、2023年6月末までに補助金交付申請をした場合に限ります。
オンライン資格確認で医療現場の業務効率化が実現!2023年3月末までに導入を進めよう
2021年10月20日に本格運用を開始したオンライン資格確認ですが、まだその導入数は目標値に達していません。国は2023年3月末までの完全導入を目指し、導入に係る補助金交付期間も2023年3月末までに導入・申請した場合を対象としています。医療現場の業務効率化、そしてより良い医療提供のためにも早めにオンライン資格確認を検討してみてはいかがでしょうか。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。