派遣と出向の違いとは?自分に合った働き方を選ぶポイントを解説
著者: そだねー
更新日:2025/01/24
公開日:2025/01/24
一見違いがわかりづらい派遣と出向ですが、契約内容や給与形態などそれぞれに明確な特徴があります。本記事では、厚生労働省が定める労働形態の違いをはじめ、派遣と出向のメリット・デメリットや、自分に合った働き方を選ぶためのポイントを詳しく解説します。派遣と出向のどちらの働き方にするか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
派遣と出向の違いは何?
派遣と出向は異なる雇用形態として、それぞれ特有の契約内容や就業形態を持っています。これらの違いの概要について解説します。
派遣とは
派遣とは、派遣会社が労働者の雇用主となり、他社(派遣先)に労働者を派遣する形態です。この場合、労働契約は派遣会社と労働者の間で結ばれ、派遣先企業とは契約がありません。働く場所や期間などの条件は、派遣先との契約内容に基づきます。派遣は、即戦力としての人材を迅速に確保したい企業に活用されています。
出向とは
出向とは、労働者が元の会社との雇用契約を維持しながら、別の会社や組織で働く制度を指します。出向には、所属元に籍を残したまま働く「在籍出向」と、籍を移して働く「転籍出向」の2種類があります。また、出向期間中の給与や福利厚生については、元の会社の基準が適用される場合が多いです。組織間の連携や長期的な人材育成が可能になります。
「在籍出向」と「転籍出向」の違い
在籍出向 | 転籍出向 |
---|---|
元の会社に在籍しながら別の会社で働く出向形態 | 元の会社を退職し、新たに別の会社で雇用契約を結ぶ出向形態 |
在籍出向は、元の会社に在籍したまま別の会社で働く形態で、労働契約や給与は所属元が管理します。企業間の連携や人材育成の目的で利用され、双方の指揮を受ける場合があります。転籍出向は元の会社との契約を終了し、新たな会社と雇用契約を結ぶ形態です。給与や福利厚生は新しい会社の制度に準じ、長期的な人材配置や協力関係構築のために用いられます。
派遣と出向の契約や給与形態の違いを徹底比較
派遣 | 出向 | |
---|---|---|
目的 | 短期的な課題解決や即戦力を提供する | 長期的な人材育成や企業間の協力関係構築を行う |
契約形態 | 労働者は派遣会社と契約し派遣先で働く | 労働者は所属元との雇用契約を維持しつつ出向先で働く |
労働時間 | 派遣先のルールに従い短期間の労働が中心である | 所属元と出向先の取り決めに基づき柔軟に調整される |
給与形態 | 派遣会社が給与を支払う | 所属元の給与体系に基づいて支払われる |
指揮命令権 | 派遣先企業が業務上の指揮命令を行う | 出向先企業の指示に従うが元の会社の規定も影響する |
雇用期間 | 短期的な雇用が基本で契約終了後に期間が終了する | 中長期的な雇用が多く期間が柔軟に設定される |
労働条件 | 派遣先のルールや条件に準じる | 所属元の条件をベースに出向先で調整される |
派遣と出向は働き方の選択肢として注目されていますが、その仕組みや目的には明確な違いがあります。それぞれの特徴を7つの観点から詳しく見ていきましょう。
目的の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
短期的な課題解決や即戦力を提供する | 長期的な人材育成や企業間の協力関係構築を行う |
派遣と出向の目的には、大きな違いがあります。派遣は、企業が短期的な人手不足や特定の課題を迅速に解決するために利用されることが一般的です。一方、出向は計画的な人材育成や企業間の長期的な協力関係を築くために用いられます。派遣は即時性、出向は戦略的な人材管理という特徴の違いがあります。
契約形態の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
労働者は派遣会社と契約し派遣先で働く | 労働者は所属元との雇用契約を維持しつつ出向先で働く |
契約形態も、派遣と出向で異なります。派遣では労働者は派遣会社と直接契約を結び、派遣先で働く形です。一方、出向では労働者は所属元との雇用関係を維持しながら、出向先企業で業務を行います。このため、出向契約は所属元と出向先企業間の取り決めが重要な役割を果たします。
労働時間の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
派遣先のルールに従い短期間の労働が中心である | 所属元と出向先の取り決めに基づき柔軟に調整される |
派遣は派遣先企業のルールに則り、短期的な労働が主となります。出向の場合、所属元と出向先企業の合意に基づき、柔軟な労働時間が調整されることが多いです。これにより、出向の労働時間はより幅広い対応ができます。
給与形態の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
派遣会社が給与を支払う | 所属元の給与体系に基づいて支払われる |
派遣と出向では、給与の支払い元が異なります。派遣では派遣会社から給与が支払われるのが基本です。一方、出向では所属元の給与体系に基づき、給与が支払われるため、従業員の福利厚生や待遇が変わらないケースが多いです。
指揮命令権の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
派遣先企業が業務上の指揮命令を行う | 出向先企業の指示に従うが元の会社の規定も影響する |
派遣では、派遣先の企業が業務上の指揮命令を行います。一方で、出向は出向先企業での指示に従うものの、元の会社の規定や方針も一定の影響を与えます。このため、出向は派遣に比べて所属元との関係がより強調されるのが特徴です。
雇用期間の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
短期的な雇用が基本で契約終了後に期間が終了する | 中長期的な雇用が多く期間が柔軟に設定される |
派遣と出向は雇用期間にも違いがあります。派遣は短期間の契約が主流で、一定の期間が経過すると終了する場合が多いです。一方、出向は中長期的なスパンで実施されることが多く、期間も柔軟に設定されることが一般的です。
労働条件の違い
派遣 | 出向 |
---|---|
派遣先のルールや条件に準じる | 中長期的な雇用が多く期間が柔軟に設定される |
労働条件にも派遣と出向で差があります。派遣では派遣先のルールや条件に準じた労働環境が提供されます。一方、出向では所属元の基準をベースにしつつ、出向先の状況に適応する形で条件が調整されることが多いです。
派遣として働くメリット・デメリット
派遣として働くメリット | 派遣として働くデメリット |
---|---|
・自由な働き方が可能である ・多様な職場や業務経験を積める ・手厚いサポートが受けられる場合がある |
・雇用の安定性が低い ・収入が不安定になりやすい ・キャリアアップが制限される可能性がある |
派遣社員として働くことには自由さや柔軟性がある一方で、特有のデメリットも存在します。事前に派遣社員として働くことのメリットとデメリットを知っておきましょう。
派遣として働くメリット
自由な働き方が可能である
派遣として働く最大の魅力は、働き方の自由度が高い点です。勤務地や勤務時間を自分の希望に合わせて選択できるため、ライフスタイルやプライベートの予定に合わせやすい特徴があります。また、契約期間が比較的短いため、特定のタイミングでの転職や新たな挑戦もしやすく、柔軟な働き方を実現しやすいです。
多様な職場や業務経験を積める
派遣はさまざまな企業や業種で働く機会を得られるため、幅広い業務経験を積むことが可能です。短期間で異なる職場環境に身を置くことで、適応力や問題解決能力が養われるだけでなく、自身のスキルや強みを見極める機会にもなります。こうした経験は、長期的なキャリア形成にも大いに役立つでしょう。
手厚いサポートが受けられる場合がある
派遣社員には、派遣会社からの充実したサポートが提供されることがあります。例えば、就業前の研修やキャリア相談、職場でのトラブル対応などが挙げられます。安心して業務に取り組むことができる環境が整備されているのも派遣のメリットのひとつです。
派遣として働くデメリット
雇用の安定性が低い
派遣社員は、雇用契約が一定期間で終了することが一般的です。そのため、契約更新がされない場合には職を失うリスクがあります。正社員に比べると雇用の継続性が保障されにくく、将来への不安を感じることが多いです。また、会社の経済状況や市場の変動によって契約終了の可能性がある点もデメリットといえるでしょう。
収入が不安定になりやすい
派遣として働く場合、就業日数や時間に応じて収入が変動します。たとえば、業務量の減少や契約期間の終了により収入が途切れるリスクがあります。また、正社員と比較するとボーナスや昇給の機会が少なく、安定的な収入を得るのが難しい場合があるため、生活設計がしにくい状況が生じる可能性もあるでしょう。
キャリアアップが制限される可能性がある
派遣社員は、業務内容が事前に決められているため、自主的に新たなスキルや経験を得る機会が制限されることがあります。加えて、派遣という雇用形態自体がキャリア形成において不利に働く場合もあります。企業側から正社員への登用が期待されにくい状況もあるため、長期的なキャリアアップを目指す際に大きな障害となることがあります。
出向がある職場で働くメリット・デメリット
出向がある職場で働くメリット | 出向がある職場で働くデメリット |
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・キャリアの幅が広がる ・異なる環境での成長機会が得られる ・親会社との雇用関係が維持される |
・環境の変化に適応する負担が大きい ・会社間の調整に伴う業務負担がある ・出向先での待遇に不満が生じる可能性がある |
出向制度のある職場では、成長機会や安定性といった利点がある一方で、課題も存在します。出向の働き方に興味がある方はぜひ参考にしてください。
出向がある職場で働くメリット
キャリアの幅が広がる
出向は、異なる業種や部門での業務経験を通じて、キャリアの幅を広げる絶好の機会です。新たなスキルや知識を習得することで、将来的なキャリアの選択肢が増え、自身の市場価値を高めることができます。また、通常の勤務では得られない視点やネットワークを構築することも可能です。
異なる環境での成長機会が得られる
出向は、これまでの職場とは異なる環境で新たなチャレンジに取り組む機会を提供します。異なる文化や業務フローに触れることで適応力が養われ、多角的な視点で物事を考える力が身につきます。環境の変化に対応する経験は、個人としての成長にもつながるでしょう。
親会社との雇用関係が維持される
出向では、親会社との雇用関係が保たれるため、雇用の安定性が確保されます。給与や福利厚生が親会社から支給される場合が多く、安心して業務に専念できるでしょう。この仕組みは、転職とは異なり、安心感を得られる点で大きなメリットといえます。
出向がある職場で働くデメリット
環境の変化に適応する負担が大きい
出向先の環境はこれまでの職場と大きく異なる場合があり、その変化に適応する負担が生じます。異なる文化や業務フロー、新たな人間関係の構築に時間がかかることもあります。こうした状況に対応する中で、ストレスを感じたりパフォーマンスが一時的に低下したりするリスクがある点が課題です。
会社間の調整に伴う業務負担がある
出向では、出向元と出向先の両方に関係する業務や調整が必要になることがあります。このような二重の業務負担は、通常の職務よりも煩雑さが増し、時間的・精神的な負担が大きくなる場合も。また、両社間での意見の相違が生じると、それを解消するための労力も必要になります。
出向先での待遇に不満が生じる可能性がある
出向先での待遇が出向元と異なる場合、不公平感や不満を感じることがあります。特に、業務量や責任が増える一方で給与や福利厚生が見合わないと感じた場合、モチベーションの低下に繋がる可能性も。こうした待遇の違いが原因で、仕事への満足度が低下するリスクも考えられます。
派遣や出向に関するトラブルに巻き込まれないための注意点
派遣や出向での就業は便利な一方で、トラブルを避けるために慎重な確認と準備が必要です。事前に注意点を押さえておきましょう
労働条件を確認する
派遣や出向を始める前には、契約書の内容を十分に確認することが重要です。勤務先での責任範囲や指揮命令権の所在が明確であることを確認し、労働時間や残業代、休暇制度などの詳細について説明を受けましょう。不明点を放置せず、書面での説明を求めることが、自分の権利を守る第一歩です。
偽装出向に気をつける
偽装出向は、形式上は出向の形を取るものの、実態として派遣と同様の働き方が強いられる不正な行為です。この手法は、雇用主が責任を回避するために使われ、労働者に不利益を与える場合があります。違法性があるため、必要に応じて労働基準監督署などに相談することを検討しましょう。
派遣や出向の求人選びのポイント
派遣や出向の求人を選ぶ際には、契約内容や企業の信頼性など重要な点を慎重に確認する必要があります。
契約内容と雇用条件が明確であるかを確認する
求人情報に記載された契約内容が明確であるかを確認することは必須です。雇用形態や労働条件に矛盾がないかをチェックし、労働時間、給与、休暇、福利厚生などの詳細な情報が提供されているかも確認しましょう。不明点があれば事前に解消し、安心して働ける環境を選ぶのが大切です。
派遣元や出向元の信頼性を評価する
派遣会社や出向元企業の実績や評判を事前に調べることで、トラブルを防げます。信頼性のある企業は、相談窓口やトラブル対応のサポート体制が整っています。公式サイトや口コミを活用し、必要に応じて直接問い合わせを行い信頼できる企業かどうか判断しましょう。
勤務先の業務内容と職場環境を確認する
求人情報に記載された業務内容が具体的で、自分のスキルや希望に合致しているか確認することが重要です。また、勤務先の職場環境や指揮命令系統が明確かを確認し、不安要素を減らすことも大切です。可能であれば職場見学や担当者への質問を通じて具体的なイメージを掴みましょう。
派遣か出向のどちらの働き方が合うかを見極めるコツ
・働き方の違いを理解し自分の価値観と照らし合わせる
・ライフスタイルや将来の目標を基に判断する
・具体的な業務内容と求められるスキルを確認する
派遣や出向の求人を選ぶ際は、自分に合った働き方を見極めるための基準を明確にすることが重要です。
働き方の違いを理解し自分の価値観と照らし合わせる
正社員、派遣、出向などの雇用形態ごとに特徴やメリット・デメリットがあります。安定性や自由度、キャリアアップの機会など、自分の価値観や優先順位と照らし合わせることで、最適な働き方を見極められます。選択肢を比較し、自身の目標に合致する求人を選びましょう。
ライフスタイルや将来の目標を基に判断する
現在の生活状況や家族構成、将来のキャリアプランを踏まえて適切な働き方を考えることが重要です。フルタイム勤務やフレキシブルな勤務形態が自分の生活にどのような影響を与えるかをシミュレーションし、長期的な視点で最適な選択肢を見つけることを心がけましょう。
具体的な業務内容と求められるスキルを確認する
求人情報に記載された業務内容が、自分の経験や能力に合っているかを慎重に検討する必要があります。自分の得意分野を活かせるか、成長の機会がある職場環境であるかを確認しましょう。こうした確認が将来のキャリア構築において重要な役割を果たします。
派遣と出向の違いを理解し自分に合った働き方へ
派遣と出向の違いを理解することは、働き方を選ぶ重要な第一歩です。それぞれの特徴やメリット・デメリット、契約や給与形態の違いを正しく把握することで、自分のキャリアに適した選択が可能になります。また、トラブルを避けるための注意点や求人選びのポイントも押さえ、長期的な視野で検討することが大切です。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。