保育士試験の一つ、「造形」を突破する秘訣とは?出題形式や対策のポイントを解説!
著者: めんたいパスタ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/07/21
保育士試験には、実技試験のうちの一つに「造形表現」があります。「造形表現」とは、保育の状況をイメージし、課題や条件に従って一枚の絵画を制作するという試験です。保育に関する人や物、状況など、それぞれを条件に合わせて表現することが求められます。ここでは具体的な出題形式や、試験の対策、抑えるべきポイントや練習法まで解説していきます。
目次
【保育士試験】造形表現とは
保育士試験には、筆記試験と実技試験の2つがあります。
筆記試験は全9科目、実技試験は3科目のうちから2科目を選択する形です。
実技試験には「音楽に関する技術」「造形に関する技術」「言語に関する技術」の3種類があります。いずれも保育に関する基本的な知識や技術を基礎として、保育士として必要な実践力とその応用力などが問われる課題と言えます。
造形表現の概要
造形表現の試験とは、当日出された課題に対して絵画を制作し、その造形に関する技術を問うものです。課題は保育の一場面を絵画で表現するというもので、保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)が求められます。
課題となる「事例」を読み、さらに課されるいくつかの条件を満たして、一枚の絵画を完成させるという問題形式です。
合格基準について
6割以上の得点が、合格基準となります。
これは造形表現のみではなく、選択した2つの実技試験をそれぞれ6割以上得点する必要があります。
試験の規定(課題・試験時間・解答用紙)について
課題 | 当日に提示 |
試験時間 | 45分 |
解答用紙 | A4判(絵を描く枠の大きさは縦横19cm) 用紙の種類も当日に提示 |
持ち物・注意点について
当日の持ち物は全部で4つ、これらは全て試験中に机の上に置けるものになります。
① 鉛筆またはシャープペンシル(HB~2B)
② 色鉛筆(12~24色程度)
③ 消しゴム
④ 腕時計(アラーム等の音の鳴らないもの・計算機、電話等の機能のついていないもの・置時計不可)
特に②の色鉛筆に関してはいくつかの注意点があります。
・クレヨン・パス・マーカーペン等は使用不可
・水溶性色鉛筆の使用は可であるが、水分を塗布することは不可
・摩擦熱で消える色鉛筆は使用不可
・色鉛筆ケース(筆箱等)を机の上に置くことは可
・携帯用色鉛筆削りを会場内に持ち込むことは可であるが、試験時間中に使用する場合は試験監督員の了解を得てから使用すること
・受験者間での用具の貸し借りは認められない
また、①〜④において、「人物の形をしたイラスト入りのもの」は机の上に置けません。
【保育士試験】造形表現の採点基準
造形表現の試験において、明確な採点基準は公表されていないため、どのような理由で加点・減点されたのかを知ることはできません。
したがって過去に出された課題をもとに、傾向や対策を練る必要があります。
また、過去の合格者の作品を参考にしてみるのもいいでしょう。
出題形式
課題は【事例】と【条件】で構成されています。
以下、出題形式の例です。
【問題】
【事例】を読み、次の4つの条件をすべて満たして、解答用紙の枠内にその情景を描きなさい。
【事例】
※保育の一場面が2、3文の文章で表現される。(どこで・誰が・誰と・どんなことをしている・どのような様子であるなど)
【条件】
1、活動の様子がわかるように描くこと
2、場所の様子がわかるように描くこと
3、人物、人数指定(子ども3名以上、保育士1名以上、等)
4、枠内全体を色鉛筆で着彩すること
課題のテーマとなる活動の様子がわかりやすく描かれていること、4つの条件がしっかりと満たされていることが重要です。
また、保育士として、保育の状況をイメージし、それを豊かに表現できることが求められます。
これら3つのポイントが、大きく採点基準となるでしょう。
実技試験の合格率
筆記試験に比べ、実技試験の合格率は高い傾向にあります。
約2割前後と言われている保育士試験の合格率ですが、それはほぼ筆記試験の合格率に影響されています。
厚生労働省が発表する実技試験の合格率は、平成17年〜平成26年で73.4%〜89.3%の間を推移しているため、比較的高い割合と言えるでしょう。
令和2年の合格率はおよそ75%と、同じく高い数字を保っていることがわかります。
【保育士試験】造形表現までに準備しておきたいこと
造形表現の試験を受けるために、どのような準備が必要なのでしょうか。
練習を始める前に、これまでの出題例や傾向、対策のポイントなどを押さえておく必要があります。
出題例
以下、出題例です。
出題例1
事例「4歳児クラスの子供たちが、園庭の一角で花や野菜を育てている。夏のある日、水やりや収穫などをして楽しく世話している」
1、花や野菜の世話をしている様子
2、季節感・園庭の様子
3、子ども3名以上、保育士1名以上
4、枠内全体を色鉛筆で着彩すること
出題例2
事例「5歳児クラスの子供たちの給食。楽しく食事している」
1、「給食の準備」「食事中「片付け」のうちから一つ選び、わかるように描く
2、保育室内
3、子ども3名以上、保育士1名以上
4、枠内全体を色鉛筆で着彩すること
出題例3
事例「4歳児クラスの子どもたちが、地域の老人ホームのお年寄りとお手玉やあやとりを教わる。楽しく遊んでいる」
1、 お手玉やあやとりをして遊んでいる様子(お手玉かあやとりのどちらか一方でもよい)
2、 保育室内
3、 子供2名以上、保育士1名以上、お年寄り1名以上
4、 枠内全体を色鉛筆で着彩すること
出題例4
事例「4歳児クラスで近くの公園へ散歩に行く。嬉しそうにしている」
1、 公園に行く途中の歩いている様子
2、 散歩の場所
3、 子供4名以上、保育士1名以上
4、 枠内全体を色鉛筆で着彩すること
対策とポイント
出題例にもある通り、課題は共通して「保育の状況」になります。
【事例】の状況は様々で、遊びや給食、人や自然との触れ合いなど、保育に関わる活動全般が取り上げられています。
その上で、4つの条件を満たす必要があります。
1、(テーマ)活動の様子
2、(背景)場所の様子
3、(人物)人物と人数
4、(色彩)色使い等
1、(テーマ)活動の様子
【事例】に示される活動をわかりやすく表現します。
誰が何をしているのか、ひと目でわかるような絵画にすることが大切です。
また、「楽しそうに」や、「嬉しそうに」、「わくわくしている」などの表現が加えられていることが多いため、生き生きとした保育の現場を描く必要があります。
2、(背景)場所の様子
どのような場所での出来事なのかを表現します。
保育室内、園庭、園外と様々な場所が指定されるため、「どこ」であるかがわかる表現をすることがポイントです。
場所だけでなく、季節の描写が求められる場合もあります。
また、水溜りやオルガンなどといった指定もあるため、普段から身の回りのものや保育関係の道具などを観察しておきましょう。
3、(人物)人物と人数
子どもの人数は2〜4名以上、保育士は1名以上とされる場合が多いようです。
人物それぞれの表情や特徴を持たせるため、数種類の人物を描けるように練習しましょう。
また、4歳児や5歳児など、年齢別の子どもを指定される場合がほとんどです。1歳児から5歳児まで、描き分ける必要もあります。
さらに子どもと保育士だけでなく、高齢者などの人物が求められる場合もあるため、様々な年代の人物を描けるようにしておくと良いでしょう。
4、(色彩)色使い等
枠内全体を色鉛筆で着彩する必要があります。
明るく、生き生きとした保育のイメージを表現することが大切であるため、その色選びにも注意が必要です。
黒や、暗めの色はなるべく控え、全体的に明るくカラフルになるように意識しましょう。
内容が分かりやすく、かつ色彩豊かに仕上げることがポイントになります。
【保育士試験】造形表現の効果的な練習法
場所や人物、道具や活動内容について、ある程度のパターンを用意しておきましょう。
ジャンル別にベースを作っておくことで、当日の課題にも応用することができます。
登場人物を考える
まずは重要なパーツとなる、人物について考えます。
ほぼ必須となる子ども、保育士についてはいくつかのパターンを作りましょう。
髪の長さや服装、背の高さなど特徴を描き分け、個人や年齢別の子どもを数人用意しておけば、どの課題にも対応できます。
表情を書き分ける
活気ある、生き生きとした保育の状況を表現するために、なるべく全員が異なる表情を出せるようにしましょう。
怒った表情、悲しい表情は「楽しい」雰囲気とは異なるかもしれません。
しかし課題によっては必要となる可能性もあるため、喜怒哀楽全てのパターンを描けるようにしておくと良いでしょう。
構図を決める
まずは活動場所をイメージし、人物の配置を決めます。
場所については、そこがどういった場所なのかをわかりやすくするために、道具やもので情報を加えることも大切です。
保育室であればおもちゃや本棚、ロッカーなど、園庭であれば園舎や遊具、花壇など、場所に応じた背景も練習しておきましょう。
色を塗る
人物や背景、道具や小物などが描けたら、配色を決めます。
そのパーツごとに使う色を決めてしまえば、試験の際に迷うことはありません。
なるべく明るい色を使う、同じ色はいっぺんに塗るなどを意識しましょう。
よく観察し、相手に伝えることを意識する
造形表現は、保育の全体像をイメージし、表現することが求められる試験です。
絵を描く上で、細かなところまで観察するという意識や、相手に伝えるという力は、保育士としても重要な素質になります。
ポイントを抑えて練習を重ね、保育士としての力を培いながら合格を目指しましょう。
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著者プロフィール
めんたいパスタ
人材紹介業、サービス業、障がい者雇用の分野で採用業務に従事した経験がある女性スタッフ。現在は保育分野の採用担当として、業務を通じて保育園で働くスタッフの負荷軽減になることを目標として活動している。