診療情報管理士の仕事内容とは?業務の具体例や役割をご紹介
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2021/08/26
医師や看護師をはじめ、医療機関には多くの従事者がいます。なかには一般的にあまり知られていない職種もあり、その1つに診療情報管理士が挙げられます。今回は仕事内容や役割の観点から、診療情報管理士についてご紹介します。医療従事者の中でも、診療情報管理士に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
診療情報管理士の仕事内容
診療情報管理士は、カルテの運用や管理をする専門職です。主に以下のような仕事を担当します。
仕事内容一覧
1)診療情報を体系的・一元的に管理する業務
2)診療情報を安全に保存・管理する業務
3)診療情報を点検・管理する業務
4)個人情報としての診療情報を保護する業務
5)病院の管理・運営のための業務
6)診療情報の活用に向けたデータ処理・提供業務
カルテは医師や看護師が質の高い安全な医療を提供するために欠かせないものです。また医療施設は法律上一定期間カルテや検査記録などを一定期間保管する義務があります。このようにさまざまな役割を持つカルテを、点検・保管・管理するだけでなく、データベース化や分析などを行うのが診療情報管理士です。
さらに個人情報までも含まれるカルテは、正確かつ安全に管理しなければなりません。IT化が進んでいる中でも、人の手による適切な管理は極めて重要とされています。そのため診療情報管理士は、医療機関において欠かせない存在です。
診療情報管理士の業務の具体例
診療情報管理士の仕事は、大きく分類するとカルテの管理・運用です。さらに詳しく見ていくと、以下6つの業務に分類されます。
①診療情報を体系的・一元的に管理する業務
②診療情報を安全に保存・管理する業務
③診療情報を点検・管理する業務
④個人情報としての診療情報を保護する業務
⑤病院の管理・運営のための業務
⑥診療情報の活用に向けたデータ処理・提供業務
では具体的にどのようにして、上記の業務を遂行していくのでしょうか。ここでは代表的な3つの業務具体例をご紹介します。
コーディング
診療情報管理士が行うコーディングは「ICDコーディング」といわれます。「ICD」とは国際疾病分類のことで、カルテに記載されている病名を世界共通のルールに沿ってコード化する業務です。これは上記6つの業務の中で「①診療情報を体系的・一元的に管理する業務」「⑤病院の管理・運営のための業務」に分類されます。
世界に12万以上もあるといわれている病名をコード化してまとめることで、データの収集や分析、加工がしやすくなります。これにより大規模なカルテをデータベース化でき、医療の発展や質の向上に役立っています。
DPC
DPCとは「包括医療費支払い制度方式」のことで、一般病棟に入院する患者さまの医療費の支払い制度に適用される評価方法のことです。DPCは患者さまの傷病名や意識状態レベル、手術や一連の治療行為などから、1,572種類に分類されます。そしてその分類ごとに、患者さまの1日の入院費用が定められます。DPCは診療報酬に関わる重要なものであるため、診療情報管理士に欠かせない業務の1つとなります。
がん登録などのレジストリ業務
がん登録をはじめとした、レジストリ業務も診療情報管理士の仕事の1つです。特にがん登録は、国や地域のがん対策の立案や評価のために重要な業務です。日本では「全国がん登録(地域がん登録)」「院内がん登録」「臓器がん登録」の3つが行われており、がんの診断や治療、経過などの情報を収集し、解析・保管します。
診療情報管理士はがん登録のみならず、多くのレジストリ業務を担当するため、正確かつ迅速に実行できるスキルが必要となります。
診療情報管理士の1日のスケジュールイメージ
診療情報管理士の仕事内容はさまざまであるため、1日をどのようにして過ごすのかは気になるポイントではないでしょうか。以下はある診療情報管理士の1日のスケジュールイメージです。職場によってスケジュールはさまざまですが、一般的なスケジュールとして参考にしてください。
一日のスケジュール | ||
---|---|---|
8:30 | 出勤 | メールチェックや、1日の業務スケジュールの確認 |
9:00 | 打ち合わせ | 部の診療情報管理士と、担当業務に関する情報共有 |
9:15 | コーディング | 新規患者のカルテ登録、既存患者のカルテ更新など |
11:00 | DPC | 診療報酬計算が必要な患者さまのデータを経理に送信 |
12:00 | 昼休み | 昼食や、午前に対応できなかった業務の対応 |
13:00 | レジストリ | 診療中のがんを分類し、登録を進めていく |
15:00 | 点検 | 医療訴訟などで開示が必要なカルテを点検する |
15:30 | データ精査 | 経理から依頼がきた患者さまのデータを精査 |
16:00 | カルテ評価 | 医師が記載したカルテや、処方薬の正当性を確認し、カルテ記載を評価する |
17:00 | 終業 | 残業や緊急対応がない場合は、定時で終了 |
診療情報管理士は直接患者さまと接することがなく、1日を通してデータと向き合うことが多い職種です。しかし診療情報管理士がいるからこそ、医師や看護師は患者さまに質の高い医療をスムーズに提供できています。
診療情報管理士の役割
診療情報管理士は診療情報管理を通して、質の高い安全・安心の医療提供に貢献する役割を果たします。診療情報を正確かつ論理的に記録することで、提供された医療が妥当で適切なものであったかを検証・評価できます。この役割を診療情報管理士が果たしているからこそ、医療の質と安全性が守られているのです。
つまり診療情報管理士は診療情報管理・運用のエキスパートとして、大規模なスケールで医療に貢献する重要な役割を担っています。
今後期待される役割
近年IT化も進んでいることで、カルテも電子システムへと移行しつつあります。そのため診療記録の分析やシステム化が必要となり、さらに診療記録の監査やデータ抽出などにおいても診療情報管理士の力が求められます。
また医療全体がデータを元に運用する必要が出てくるにあたり、データ運用の現場を熟知している診療情報管理士は重要な存在です。
より大きなスケールでいえば、保健医療分野における電子カルテシステムの整備を促進する役割、さらには診療情報管理の発展と普及を推進する役割も期待されています。
診療情報管理士はカルテを通して医療に大きく貢献している
今回は診療情報管理士の仕事内容や役割についてご紹介しました。
診療情報管理士は患者さまと直接関わることはないものの、カルテを通して医師や患者さま、質の高い医療の提供に大きく貢献しています。医療現場の情報管理のエキスパートである診療情報管理士は、これからも必要とされる重要な存在です。ぜひ仕事内容や役割を押さえて、診療情報管理士への理解を深めましょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。