妊婦さんの仕事の注意点は?法律から産休制度・働きやすい職種まで紹介
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2021/09/16
妊娠した場合、いつまで働くことができるかは気になるポイントでしょう。妊娠中はストレスを感じやすい状態にあるため、無理をしないことが大前提ですが、仕事に意欲のある方もいるかもしれません。今回は妊婦の働き方や、復帰しやすい仕事を紹介します。
目次
妊婦さんが仕事を続けるときの注意点
妊娠中は、仕事だけでなく体調のことも考慮しながら働く必要があります。妊婦さんが働く上での注意点について詳しくみていきましょう。
母子の健康を第一に考える
妊娠中は、つわりなど身体的な変化のほか、ホルモンバランスの乱れによる気分の変化など、心身ともに不調が起きやすい時期です。ママと赤ちゃんの健康を最優先にして、仕事によるストレスや疲労にも注意が必要です。
妊娠週数 | 心や体にあらわれる主な変化 |
---|---|
妊娠初期(0〜15週) | ・つわりが始まる ・便秘がちになる ・疲れやだるさを感じやすくなる |
妊娠中期(16〜27週) | ・つわりが終わるので、食欲が増す ・足が浮腫みやすくなる ・貧血になりやすい |
妊娠後期(28〜36週) | ・胃が圧迫されて食べ物がつかえた感じがする ・膀胱が圧迫されてトイレが近くなる ・腹部の張りや痛みを感じやすくなる |
上記の表のように、妊娠中は週数に応じてさまざまな心身の変化が起こりやすくなるため、今までと同じペースで仕事をするのは難しい傾向にあります。そのため、仕事を続ける場合にも、無理をし過ぎず自分の体調に合わせて働くよう意識してください。
負担が少ない働き方に変える
できる限り体や心への負担が少ない働き方へ移行する必要があります。以下のような業務は、可能な限り避けてください。
【避けた方がよい業務の例】
・長時間立ちっぱなし、または座りっぱなしの作業
・重い荷物を扱う作業
・出張や時間外・休日の労働
・危険を伴う作業 など
妊婦さんの働き方については、法律で定められています。そのため、日常的に上記のような作業が多い場合には、職場に相談することが大切です。
知っておきたい!妊婦さんを守る法制度
ここでは、妊婦さんについて定められている法律についてみていきましょう。妊娠中の働き方に関しては「男女雇用機会均等法」「労働基準法」などの法律で定められています。もし、妊娠や出産などを理由に解雇などの不利益を被った場合には、事業主が防止対策をとることが義務づけられています。法律で定められた具体例は下記の通りです。
柔軟な休憩の取り方の選択(男女雇用機会均等法13条関係)
医師などから指導を受けた場合、妊婦さんは仕事の休憩時間を延長したり、回数を増やしたりできると定められています。医師からの指導内容を職場に伝えたい場合、母健連絡カードの活用がおすすめです。主治医に記載してもらった母健連絡カードを職場へ提出すれば、休憩時間の延長や調整などの必要な措置を講じてもらえます。体調に合わせた休憩を確保したい方は、母健連絡カードを利用してみましょう。
妊娠中の通勤時間の変更 (男女雇用機会均等法第23条)
通勤ラッシュの満員電車では押される、突き飛ばされる、転倒するなどのリスクが伴うため、母体にとって危険な環境といえます。また人混みによる負担から、体調悪化につながる可能性もあります。会社は妊婦から通勤時間の変更を申請された場合、勤務時間を変更すると法律で定められています。
不安のある方は時差出勤を申請するなどして、通勤ラッシュ時間を避けてみましょう。
危険・有害業務の制限(労働基準法第64条)
危険・有害業務の制限とは、妊娠や出産に有害とされる業務を制限する法制度を指します。たとえば重いものを扱う仕事や、有毒ガスが発生する場所での業務などが該当します。もしも該当する業務に携わっている場合には、速やかに配置転換を申し出ましょう。
業務内容の変更 (労働基準法第65条)
担当している業務で負担を感じる場合は、仕事内容の変更も申請できます。
外回りの営業や立ち仕事といった、負担のかかる業務の場合は避けるようにしましょう。また労働基準法第64条の3では、妊娠中の女性に重たいものを扱う業務をさせてはいけないと定められています。
このように妊婦は法律により守られているため、引け目を感じることなく体を最優先に考えて働くことが大切です。
妊娠中はいつまで働ける?産休制度について
妊娠に伴い、今後の仕事をどうするかは大きな問題です。妊娠した場合、今の職場でいつまで働けるかは気になる方も多いでしょう。なかには退職する方もいるかもしれませんが、多くの場合は産休制度を利用しています。
産休には「産前休業」「産後休業」の2種類があります。
産前休業 | 産後休業 |
---|---|
出産予定日の42日前から (双子の場合は98日前から) |
産後8週間は就業不可(例外あり) |
産前休業は出産予定日の42日前、そして双子の場合は98日前から取得が可能です。一方、産後休業は出産翌日から56日間取得できます。
産後休業は法律で定められているため、本人に働く意欲があってもその期間は就業できません。ただし経過が順調であり、医師が認めた場合は産後6週間(42日)での復帰が可能です。
産前休業は対象期間内であれば、本人の希望で好きなタイミングで休業に入ることができます。体調を最優先に無理のない範囲で仕事をして、産前休業制度を活用することが大切です。
産休に入る前に気をつけること
産休は妊婦の権利であるため、利用することに後ろめたさを感じる必要はありません。しかし、気持ちよく産休に入り、その後復帰するためには「引き継ぎ」と「挨拶」の2つをしっかりと行うことが大切です。
引き継ぎをきちんと行う
妊娠中は急な体調の変化が起こるため、いつ予定通りに業務ができなくなるかわかりません。そのためあらかじめ引継ぎの準備をしておくと安心です。
産休に入る目処が立ったら、上司と相談しながら引き継ぎ資料を作成しましょう。
引き継ぎ資料は自分が担当している業務内容について、後任が資料を見ただけで分かるようにまとめることがポイントです。しかしそれでも不明点が出てくる可能性はあるため、産休中も無理のない範囲でメールや電話対応ができるようにしておくとよいでしょう。
マナーある挨拶を心がける
最終出勤日には丁寧なあいさつをすることが大切です。その際には社内だけでなく、取引先への挨拶も忘れないようにしましょう。
きちんとした挨拶と気遣いを心がけることで、産休後復帰するまで良好な関係を保つことができます。
出産後に職場復帰しやすい職種とは
将来的に子供を持つことを検討しているが今の職場の産休制度が十分でなかったり、職場に復帰しにくかったりする場合には転職を検討するのも一つの手です。
あらかじめ職場復帰しやすい職種を選んでおくことで、妊娠しても仕事に関する悩みが少なくなるでしょう。
ここでは職場復帰しやすい職種として、多くの女性が活躍している「医療事務」「介護職」「保育士」を紹介します。
医療事務
医療事務は医療費の計算など高い専門性が求められる仕事です。未経験・無資格で挑戦しやすい職種の一つでもあります。
また、女性がメインで活躍していることもあり、妊娠や育児にも理解のある職種といえます。全国各地に求人があるため、産後育児に伴い引っ越しした場合や、専業主婦になった後でも求人を探しやすい点も魅力的です。
介護職
介護職はこれから需要が右肩上がりになると予想される職種です。こちらも医療事務と同じく、未経験・無資格からでも挑戦できます。なかには資格が必要となる職場もありますが、資格の難易度はそう高くありません。
介護職は人手が不足しているため、ブランクがあっても復帰しやすい職場です。女性が多いため産休や育児にも理解があり、働きやすい環境といえます。将来的に長く働き続けたい方にはオススメの職種です。
保育士
保育業界の慢性的な人手不足を解消すべく注目されているのが潜在保育士です。潜在保育士とは、「保育士資格を有しているが保育士として働いていない人」を指します。
潜在保育士の需要は大きく、妊娠や出産でブランクがあっても職場復帰しやすいという特徴を保育士という職業は持っています。
また実際に子育てをした経験を活かすことができるのも利点です。妊娠・出産・育児を経験したことによって仕事への理解もより深まるでしょう。
そして保育士は全国各地に求人があり、生活環境が変わっても職を探しやすい点でもオススメです。
妊婦さんの仕事に関するQ&A
妊婦さんが仕事を行う上でよくある質問やその回答についてご紹介します。
Q.会社にいつ妊娠の報告をする?
A.いつものような仕事ができないと感じた時点で会社に報告しましょう。
安定期になってから報告するという方が多くいますが、体調は人それぞれのため、報告のタイミングに決まりはありません。つわりがひどかったり、赤ちゃんの体調面が不安だったりと感じ方には個人差があります。そのため、仕事のパフォーマンスにおいて普段通りに発揮できないと思ったら、会社へ報告するのがよいでしょう。
Q.妊娠中で仕事がきついときは?
A.絶対に無理はせず会社に申し出ましょう。
お腹にいる赤ちゃんの健康のためにも、無理はせずに、仕事がきついことを会社に伝えましょう。ただし、急な業務変換を依頼する場合には、人間関係や復帰を見据え、今後も会社の戦力として貢献したいことや感謝の気持ちを忘れずに伝えてください。
Q.職場に仕事内容の変更を伝えにくいときは?
A.「母健連絡カード」を活用するのがおすすめです。
会社や上司に直接仕事内容の変更依頼を伝えることが苦手な方は、主治医に相談し「母健連絡カード」を記載してもらいましょう。母健連絡カードを提出すれば、記載された指示内容を事業主は必要措置として実行しなければなりません。厚生労働省のホームページから印刷できますので、活用してみてください。
妊婦さんの仕事は制度の活用で無理なく進められる!
妊婦さんが仕事を続けるために、労働基準法や男女雇用機会均等法など母子の健康を守るためのさまざまな制度があります。妊娠したから仕事を辞めるのではなく、さまざまな制度を活用して妊娠出産と両立してみるのもよいでしょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。