医療事務が覚えておきたいSOAPとは|書き方や記載例を解説
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/11/03
医療事務の中でも医師のサポート役である医師事務作業補助者、通称「クラーク」は、窓口業務を担当する医療事務よりも現場で専門的な業務を担当します。電子カルテの代行入力は業務の1つであり、その際に求められる知識に「SOAP」があります。今回は電子カルテを扱うことのある医療事務に向けて、SOAPの書き方やポイント、記載例などを詳しく解説します。
目次
SOAPとは
SOAP(ソープ)とは電子カルテを記載する際の考え方であり、記入方法の1つです。SOAPでは問題志向型システム(Problem Oriented System)、通称「POS」をベースにカルテを記入します。まずはSOAPのベースとなるPOSの解説を踏まえて、SOAPの基本情報についてお伝えします。
POSとは
POSとは「Problem Oriented System」の略称で、問題志向型システムのことです。医療現場のみならず、一般企業でも取り入れられるビジネス的思考の1つ。医療現場におけるPOSは、患者さまが抱える医療上の問題に焦点をあて、患者さまにとって最高のケアを目指し努力する作業システムです。取り入れることで、患者さまの抱える問題や優先すべき問題が明確化し、解決のために必要な治療や看護の方向性が考えやすくなります。優先的に解決すべき問題と解決のための具体策が明確になっていることで、誰が担当しても一貫したケアが提供できるようになる点が特徴です。
SOAP形式とは|SOAPの4項目
SOAP形式とはPOSの考え方によって得られたデータを内容ごとに分類・整理を行い、S・O・A・Pの4項目に分けて分析を行う形式のこと。
・S(Subject)
・O(Object)
・A(Assessment)
・P(Plan)
S:Subject|主観的情報
S(Subject)には患者の訴えや感じたこと、病歴などから得られる主観的情報を記載します。「熱がある」「お腹が痛い」など診察時に患者が述べた症状に加え、病歴や既往歴なども主観的情報に含まれます。主観的情報は患者が自主的に述べたことだけでなく、何気ない会話の中から細かい部分まで拾うことがポイントです。
O:Object|客観的情報
O(Object)は、診察や検査から得られた客観的情報です。主観的情報だけでは正確な症状や病名が判断できないため、根拠となるデータなどを記載します。たとえば息苦しい症状のある患者に対して実施したバイタルチェックのデータは、客観的情報にあてはまります。
A:Assessment|評価
A(Assessment)はS(主観的情報)と0(客観的情報)を踏まえたうえで、医師が分析・解釈した総合的な評価です。たとえば「息苦しい」という主観的情報と「バイタルサインの異常、レントゲンでみられた肺の影」という客観的情報を踏まえると、肺炎の可能性が考えられます。つまり、診察や検査を通して患者の状態や症状を総合的に判断することがA(評価)に当たります。
P:Plan|計画(治療・看護)
P(Plan)は、評価に基づいて決定した治療方針やケア内容、生活指導などです。主に看護計画の立案に活用される項目であり、症状の治癒や怪我の回復のために提供すべことを記載します。計画が明確に記されていれば担当が変わっても一貫したケアが提供でき、患者の効率的な復帰に貢献します。<
SOAPを取り入れるメリット
医療現場でSOAPを取り入れることで、以下のようなメリットがあります。
・情報が整理された、誰がみてもわかりやすいカルテの作成が可能
・患者の問題が明確であり、医師の考えや指示、方向性が伝わりやすい
・具体的な解決策が共有できるため、担当が変わっても一貫したケアが提供できる
・電子カルテの運用が円滑化する
優先すべき問題や解決のための治療方針、プロセスがわかりやすく明確化しているため、誰がみても一貫したケアが提供できるカルテが作成できます。また情報が整理されたカルテであることで、円滑な電子カルテ運用に貢献する点もメリットです。SOPAのメリットを最大限生かすためにも、カルテ作成を代行することの多いクラークの力量が問われます。
SOAPの書き方
SOAP形式でのカルテ作成では、誰がみてもわかりやすいよう情報整理することが重要です。
SOAPの書き方のポイント
カルテの作成を代行するクラークは、医師の診察内容や患者との会話に集中して各内容をSOAPに振り分ける必要があります。上記で解説したように、4項目には以下内容を記載します。
S | 患者の訴え |
---|---|
O | 医師の発言・行動、検査内容 |
A | 医師が下した診断結果 |
P | 医師の指導・今後の見通し |
患者の訴えや医師の発言はそのまま口語で記載するのではなく、要約を記載します。さらに複数の情報が混在しないよう、問題点ごとに情報を整理することがポイントです。
クラークの役割は診療スピードの効率化でもあるため、診療内容を理解して正確かつ迅速に電子カルテの入力を進めることが求められます。
2パターンの書き方
SOAP形式のカルテは、以下の2パターンがあります。
・主観情報から書く方法
・評価から書く方法
主観情報から書くと問題点や患者の状態が整理しやすく、明確な計画が立てやすくなる点が特徴です。一方評価から書くとすでに問題点が明確であるため、不足情報があれば後から収集しやすい点が特徴です。必要なデータが抜粋しやすくなりますが、根拠となる情報を主観情報と客観情報に正確に振り分ける必要があります。
どちらから書く場合でも、問題点が明確になるよう必要な情報を要約して記載することが重要です。
SOAPの記載例
下記は、SOAP形式でのカルテの記載例です。
入院中の肺気腫患者のケース | |
---|---|
S:Subject | ・運動時に息苦しく、長く歩けない ・痰があるが、からまって出てこない ・早く治して家に帰りたい |
O:Object | ・バイタルサイン(血圧:126/84、脈拍:78回/分、呼吸数16回/分) ・腹式呼吸 ・呼吸補助筋の活動亢進 ・6分間歩行試験:240m ・MRC息切れスケール:Grade3 など |
A:Assessment | ・痰の貯留と呼吸筋力の低下、不効率な呼吸法により呼吸困難感あり ・それに伴い歩行距離も低下していると考えられる ・短期目標:痰量の軽減と呼吸法習得により呼吸困難感の軽減 ・長期目標:呼吸困難感のさらなる軽減、歩行距離の延長により自宅退院可能 |
P:Plan | ・排痰訓練 ・呼気介助法 ・安静時および歩行時の呼吸法指導 ・自主訓練指導 |
SOAPを書く際の注意点
問題点が混在してしまうと正確な根拠が出せず、適切な評価ができません。さらに問題点は必ずしも1つとは限らないため、各問題点の主観情報と客観情報を整理し、評価にあたり不足する情報は検査などで付け足す必要があります。
また、SOAPは患者の急変時など、急なカルテ作成の際には活用しにくいものです。情報収集による評価、その上で計画を立案するには時間がかかるため、急なカルテ作成では急ぐあまり間違った評価を下してしまうリスクがあります。
SOAPとはカルテ作成で取り入れられている考え方!
医師や患者の発言・行動に注目し、正確かつわかりやすいカルテを作成するのはクラークの重要な役割です。SOAPでカルテを作成することで誰がみてもわかりやすく、円滑に運用できるカルテが作成できます。患者に一貫的なケアを提供するため、カルテ運用を円滑にするためにも、クラークはSOAPについて理解を深めることが重要です。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。