調剤事務の主な仕事内容は?魅力や向いている人・年収や1日の流れを解説
著者: そだねー
更新日:2024/10/04
公開日:2024/10/04
調剤事務は、主に調剤薬局で薬剤師のサポートを行う仕事です。なんとなくイメージはわくものの、具体的な仕事内容がいまいちわからない、という方もいるはず。今回は、調剤事務の具体的な仕事内容や1日の流れ、仕事の魅力や向いている人について解説します。気になる年収やあると役立つ資格も紹介しますので、調剤事務の仕事が気になる方は必見です。
目次
そもそも調剤事務とは?
調剤事務とは、調剤薬局において受付や会計、調剤報酬請求など幅広い業務を行う職種です。
調剤薬局事務は、調剤薬局内で多くの業務を担う重要な職種です。来局された患者さんの受付や精算を始め、処方箋の取り扱いやレセプト作成などを行い、薬剤師をサポートします。
医療や調剤報酬の基本知識や高い事務処理能力、さらにはコミュニケーションスキルが必要とされる職種です。
調剤事務の仕事内容
調剤事務の仕事内容は上記のように多岐に渡ります。それぞれの業務について解説します。
電話や受付の対応
調剤事務は、薬局を訪れる患者さんの応対を行います。薬局の顔とも言える受付業務は、調剤事務の重要な仕事のひとつです。患者さんから処方箋を受け取り、お薬手帳や保険証の確認も行います。
また、患者さんから症状や薬の服用方法などについて質問された際は、薬剤師と連携して説明を仰ぐなど、適切に対処する必要があります。電話での問い合わせ対応も調剤事務の業務です。
データ入力などの事務作業
レセプトコンピュータへの入力も、調剤薬局事務の基本業務です。同じ薬の場合でも規格が異なるものがあるため、誤りがないよう正確に処方箋の情報を入力する必要があります。
また、患者さんのデータや処方薬の情報管理なども対応します。最近では処方箋のバーコードを読み取って処理が行えることもありますが、最終確認と注意は欠かせません。
医療保険の請求手続きをスムーズに進めるためのこのようなデータ処理は、調剤事務の重要な業務です。
患者さんへの会計
処方箋に基づいて調剤された薬の費用を正確に計算します。会計時には、患者さんの保険適用範囲を確認し、適切な自己負担額を算出する必要があります。レジ操作や釣銭の受け渡しを丁寧かつ迅速に行い、実際にお金を扱う大切な業務です。領収書の発行も調剤事務が行います。
最近では、さまざまな支払い方法に対応している薬局も多いです。現金だけでなくクレジットカードや電子マネーなど、患者さんの希望に合わせた対応が求められます。
調剤報酬の請求
処方箋に基づき、調剤された薬の費用の患者さん負担分を除いた分を、「保険者」に請求する業務です。患者さんが保険証を提示することで、患者さん自身の費用負担は抑えられます。しかし、軽減された残りの費用は健康保険組合や市区町村が負担仕組みです。
この残りの費用を請求するためには、保険適用の範囲や報酬計算のルールを正確に把握する必要があります。調剤事務には、請求書の作成や関連文書の管理も迅速かつ正確に行うことが求められます。
調剤補助などの薬剤師のサポート
調剤事務は、薬剤師を補佐する重要な役割も担っています。薬剤師の調剤作業の補助や、薬袋の用意なども調剤事務の業務のひとつ。薬剤師が患者さんに薬の説明や服用指導を行う際のサポートも行うことがあるでしょう。
医薬品を扱う薬局は清潔に保つことも求められるため、倉庫内の片付けや清掃を任されるケースもあります。
医薬品の在庫管理・発注・点検
調剤事務には、調剤薬局で必要な医薬品や消耗品を、適切なタイミングで注文する発注業務を任される場合もあります。必要な医薬品が在庫切れとならないよう、在庫管理が必要です。
また、納品された医薬品の数量や品質に問題がないかチェックも行います。効率的な在庫管理は薬局の運営コスト削減と経営安定化のために欠かせません。
ただし、受付対応やレセプト請求などと比べると、頻度は少ない傾向にあります。
一般事務
調剤薬局内の文書や帳簿の管理、各種書類の作成といった一般事務の仕事もあります。調剤薬局内の備品や事務用品、消耗品の在庫管理・発注業務をすることもあるでしょう。
また、スタッフの勤怠管理や給与計算といった人事関連の事務作業を補助するなど、通常の会社で行うような事務に対応する場合もあります。
調剤事務の1日の仕事の流れ
時間 | 業務内容 |
---|---|
8:30 | 出勤、薬局内の清掃やパソコン等の準備 |
9:00〜12:00頃 | 開局、午前の業務開始 患者さんの受付、データ入力、会計業務など |
12:30 | 昼休み(スタッフと交代で) |
13:00〜17:30頃 | 午後の業務開始 患者さんの受付、データ入力、会計業務など 納品された医薬品や備品の検品、在庫チェックなど |
18:00 | 閉局 レジ点検、書類整理、清掃など |
18:30 | 退勤 |
調剤事務の仕事は、薬局の開店準備から始まります。出勤したら店内の清掃やパソコンの立ち上げなどを行い、患者さんを迎える準備を行います。
午前中は患者さんの窓口対応や電話対応が忙しい時間帯です。受付やデータ入力、会計業務が中心となることが多いでしょう。午前中の受付が終了したタイミングなどで、スタッフと交代でお昼休憩を取ります。
午後も、午前中と同様に受付対応をしながら、データ入力や調剤報酬の請求書作成などを行うことが多いです。患者さんが落ち着いたタイミングで、備品の在庫チェックや発注なども実施。閉局したら、レジ点検や書類整理をして、次の日の準備を行い退勤します。
調剤事務の主な勤務先
調剤薬局だけでなく、病院やドラッグストアなど、働き先がたくさんあります。
調剤事務のもっとも一般的な職場は「調剤薬局」です。他にも、総合病院の薬剤部門や大型ドラッグストアの調剤コーナー、企業の健康管理部門などでも需要があります。勤務時間や働き方などライフスタイルに合わせて、さまざまな勤務先から選べるでしょう。
さらに、調剤薬局は全国に多数存在します。引っ越しや家族の転勤などがある際でも不安に感じにくく、全国の豊富な勤務地を選択肢に入れられます。
調剤事務の仕事の魅力
調剤事務の仕事は働き方が選びやすく、将来性があるなど魅力がたくさん。主に4つの魅力について紹介します。
柔軟に働き方を選べる
調剤事務の仕事は、正社員やパート、アルバイトなど多様な雇用形態があります。シフト制を導入している職場も多くあるため、個人の生活スタイルに合わせた勤務時間を選択できる点が魅力です。
長い人生の中には、子育てや介護に時間を割く必要があるケースも多いでしょう。時間に制約があるタイミングでも、柔軟に働き方が選べます。また、最近では在宅勤務やテレワークが可能な場合もあるでしょう。
薬について自然と詳しくなる
調剤事務として働くことで、自然と医薬品に関する知識が蓄積されます。常日頃から薬の名前に触れているため、難解なカタカナが羅列されている薬品名でもいつの間にか覚えていた、ということも。
薬の名称や期待できる効果、副作用について学ぶ機会が豊富にあるため、自分や家族が体調を崩し、服薬しなければならなくなった際に役立つこともあるでしょう。薬の価格についても詳しくなれます。
全国各地で働ける
調剤事務の求人が日本全国に存在している点も見逃せない魅力です。地域を問わず就職が可能でしょう。都会はもちろん、郊外や地方にも数多くの調剤薬局が存在するため、引っ越しの必要があっても就職先が探しやすく、居住地を制限されません。
調剤薬局は多くの地域で必要な仕事であるため、地域に根ざした働き方が叶います。
将来性がある
今後も高齢化が進み、調剤事務の需要はさらに増加すると予測されます。地域密着型の薬局や、訪問医療分野での役割もこれまで以上に重要性が増していくでしょう。
また、今後は電子カルテやAI技術を活用した業務の効率化が、より一層進んでいくことが期待されます。これらの技術に対応できる調剤事務は、ますます重宝されるでしょう。医療制度の変革や政策の転換の影響を受ける仕事なので、最新情報の収集が欠かせないとも言えます。
調剤事務の仕事の大変なところ
調剤薬局の重要な業務を担う調剤事務の仕事が大変、と感じることもあるでしょう。具体的に大変と感じやすい部分について紹介します。
仕事内容の種類が多い
調剤事務の仕事は、受付からデータ入力作業、調剤報酬請求まで非常に広範囲におよびます。各業務に対する十分な理解だけでなく、患者さんをお待たせしないよう、素早く正確な対応が欠かせません。業務の同時進行が苦手であったり、正確であるけれども時間がかかってしまったりすると、大変と感じやすいでしょう。
仕事内容の種類が多いからこそ、優れた並行処理能力とスケジュール管理能力が必要とされます。経験を積み、各業務のペースをつかめてくることで、大変さがやりがいに変わる場合も多いでしょう。
多様な業務をこなすのは大変に感じることもあるが、それだけやりがいも大きい
患者さんに対して慎重な対応が必要
調剤事務の仕事では、患者さんや医療関係者とのコミュニケーションが不可欠です。とくに患者さんは、病気やけがで不安を抱えていることが多く、思いやりのある丁寧な対応が求められます。
忙しく、多種多様な業務を抱えながらでも、笑顔で患者さんに寄り添う丁寧な対応をすることに、難しさや大変さを感じる可能性もあるでしょう。繊細な対応が必要な場面も多く、精神的に負荷がかかる場合もありますが、患者さんに対して直接声かけや関わりを持てる点は魅力です。
顔の見える関係性にやりがいを感じられることもある
医療事務より求人が少ない
調剤事務の求人数は、医療事務と比較すると限定されていて、少ないと感じることもあるかもしれません。これは、診療所などに比べて調剤薬局の数自体が少ないことが一因です。
全国各地に需要があるものの、調剤薬局の求人が少ないため、応募時には競争が激化する可能性もあります。実務経験を積んだり自身で知識を深めたりすることで、強みとしてアピールできるでしょう。
資格の取得や実務経験を積むことで、他の応募者と差別化を図れる
調剤事務に向いている人の特徴4選
どんな仕事にも向き不向きがあるものです。では、どのような人が調剤事務に向いているのか紹介します。
人と関わるのが好きである
調剤事務は、患者さんや医療スタッフとたくさん関わりながら仕事をします。相手との会話が頻繁に発生するため、人と話すのが好き、コミュニケーションを取ることに負担を感じない、という人は向いているでしょう。
親切で丁寧な応対ができ、人との交流を楽しめる人が能力を発揮できる仕事です。
チームで働くことを大切にできる
調剤事務は、薬剤師や他のスタッフと協力して仕事を進めていく必要があります。チームワークを重視できる人は、職場の雰囲気を良好に保ちながら効率的に業務をこなしていけるでしょう。職種の違いを理解しながら互いの役割を認識し、助け合う姿勢が大切です。
細かな業務まで丁寧に取り組める
調剤事務の仕事内容には、データ入力や調剤報酬の請求など、細部に気を配り正確さが求められる業務が多くあります。個人情報など重要なデータもたくさん扱うため、細かな点まで丁寧かつ慎重に仕事ができる人に向いているでしょう。
PCスキルや事務能力がある
調剤事務の仕事には、レセコンへのデータ入力や薬品の発注などPC作業が多くあります。基本的なPC操作スキルや事務処理能力が求められるため、コミュニケーション能力を持ちながらも、こういった事務作業が苦にならない人に適している仕事です。
調剤事務の平均年収
調剤事務の現在の平均年収は、約478万円です。地域別で見ると、東京都では約585万円と平均よりも大幅に高いですが、一方で青森県では約341万円、鹿児島県では約373万円で平均よりも低い傾向にあります。
調剤事務の収入は、地域や働く職場による違いが大きいため、居住地や勤務したいと考えている地域の平均年収を確認してみましょう。
調剤事務の仕事は資格や経験が必須ではない
薬や調剤報酬請求の知識などが必要とされる調剤事務ですが、働くために特別な資格や経験は絶対条件ではありません。多くの薬局では、未経験者でも採用されるケースが少なくないのが実情。入社後の教育やOJTで、必要な知識やスキルを習得できる環境を整えている職場もあるためです。
仕事をしながら学び続けたい、知識を常に増やしていきたいと考える人にぴったりの職種といえます。しかし、資格は絶対条件ではないものの、資格を保有していると採用時に有利になることも多いでしょう。
持っておくと有利な資格
・調剤事務管理士®️
・調剤薬局事務検定試験
・調剤事務実務士®️
・調剤報酬請求事務専門士
調剤事務に役立つ資格として、調剤事務管理士®️や調剤薬局事務検定試験などがあります。これらの資格は、薬局での業務に必要な知識やスキルを体系的に学習できるため、実務に大きく役立つでしょう。
また、医療事務系の資格や医療秘書技能検定試験といった関連資格も有用です。調剤事務を目指したい人は、これらの資格取得を目指してみましょう。
調剤事務の仕事や関連資格に関するQ&A
調剤事務の仕事や、関連資格についてよくある質問について、分かりやすくお答えします。
Q.調剤事務と医療事務の違いは?
A.代表的な勤務先や仕事内容が異なります。
調剤事務 | 医療事務 |
---|---|
・調剤薬局で勤務 ・受付対応や会計業務、データ入力、調剤報酬の請求などを主に行う |
・病院やクリニックで勤務 ・窓口業務や受付・会計、診療報酬の請求などを行う |
調剤事務と医療事務は、名前も似ていることから混同されがちです。調剤事務は主に調剤薬局で勤務し、医療事務は病院やクリニックが代表的な職場です。
また、業務内容も異なります。調剤事務は、患者さんの受付や会計に加え、処方箋の内容に基づく調剤報酬の請求やデータ入力を行います。対して医療事務は、同じく受付や会計業務も行いますが、患者さんの診察や治療にかかった診療報酬の請求を行います。
Q.調剤事務と介護事務の違いは?
A.勤務先と業務内容が異なります。
調剤事務 | 介護事務 |
---|---|
・調剤薬局で勤務 ・受付対応や会計業務、データ入力、調剤報酬の請求などを主に行う |
・主に介護施設で勤務 ・介護保険請求や窓口・問い合わせへの対応、関係機関との連携などを行う |
介護事務も、調剤事務と似ている思われがちな仕事です。介護事務は介護施設で勤務する職種であり、主に介護保険請求行います。他にも、問い合わせへの対応や書類作成といった事務業務も大切な仕事です。
調剤事務は薬剤師とのやりとりが多くありますが、介護事務は介護職員との連携が欠かせません。
Q.調剤事務の仕事に向き・不向きはある?
A.調剤事務は、丁寧で細やかな対応ができる人やコミュニケーションスキルに自信がある人に向いている仕事です。
調剤事務は調剤報酬請求など細かで、かつ正確性が必要とされる業務があるため、合わない人には不向きと感じる傾向があります。細かな事務作業が苦にならず丁寧に取り組める人や、コミュニケーションスキルが高い人に向いているでしょう。
Q.調剤事務の仕事は未経験だと難しい?
A.未経験からでも目指せますが、専門性を高めるなら資格取得がおすすめです。
調剤事務の就職において、経験は必須ではないため、未経験の人も就業を目指せます。
ただし、調剤報酬請求など仕事内容が専門的であるので、よりスキルアップを目指すなら資格取得がおすすめ。事前に知識を身につけておくと業務を進めやすくなるでしょう。
調剤事務の仕事内容を知り、チャレンジしてみましょう!
調剤事務の仕事は、高齢化社会が進んでいく中で、さらに需要があると考えられており、将来性が期待できます。雇用形態もさまざまで、子育てや介護など時間が制限される中でも就職しやすい仕事です。調剤薬局は全国各地にあるため、勤務地を選ばない点も魅力。仕事内容を知って向いていると感じたら、チャレンジしてみるのもよいでしょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。