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病院が赤字になるのはなぜ?原因・理由と経営に活かせる対策を解説

著者: そだねー

更新日:2023/12/22

公開日:2021/07/01

グラフの画像

病院が良い経営状態にあることは、患者に安心の医療を提供するためにも重要です。しかし現在日本では、赤字病院の割合が大きい点が課題となっています。需要の絶えることのない医療ですが、なぜ病院経営は赤字に陥るのでしょうか。

今回は病院が赤字になる原因、そしてその対策を徹底解説します。

日本の病院経営の現状|赤字病院の割合

聴診器と積み木

平成26年、診療報酬改定や消費税増税の影響に伴い、全国で77.8%の病院が赤字となりました。その後に公開された「平成30年度 病院経営管理指標」によると、赤字病院は減少傾向にあり、医療法人・自治体の病院ともに黒字病院数が赤字病院数の2倍に改善しました。しかし2020年、新型コロナウイルスの蔓延によりその状況も徐々に悪化。「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」では、2020年11月時点の赤字病院割合は全体で46.2%と、黒字病院数に近づいてきてしまったのです。さらに内訳を詳しく見ると、新型コロナウイルス患者の受け入れがない病院では、赤字の割合が大きくなっています。なかには一時的に外来病棟を封鎖している病院もあり、全体の赤字に大きく影響しています。

設立主体別・病院の損益状況

2019年11月に公表された厚生労働省による「医療経済実態調査」で設立主体別に損益状況をみると、民間病院は黒字、国公立病院は赤字傾向にあることがわかりました。民間に含まれるのは、医療法人や社会保険関係法人、個人が設立した病院です。へき地医療や救命救急医療などを担う国公立病院は、民間が対応できない収益性の低い医療を担っていることが赤字の要因となっています。

病院の赤字|着目すべき3つのポイント

・人件費のアンバランス化
・病床稼働率の減少
・コロナ禍の影響

医療はあくまで事業の1つであり、病院を存続させるには利益が重要となります。経費等の支出や病床利用率など損益にはさまざまなポイントが影響しますが、なかでも赤字の主な原因には上記3点が挙げられます。以下で、それぞれのポイントを詳しくみていきます。

人件費のアンバランス化

収益に対して人件費の割合が高いほど、赤字になりやすいものです。平成20年度の人件費比率は赤字病院が54.7%、黒字病院が51.8%と、赤字病院が2.9%高い数値となっています。下記表は、平成22・23年度、平成24・25年度における2年間ごとでの比較です。

22・23年度 24・25年度
黒字 赤字 黒字 赤字
48.3% 53.6% 50.2% 54.7%

同一賃金体系にもかかわらず、黒字病院と赤字病院とで差が出ています。給与は年齢構成や給与制度、職種構成の影響を受けるものです。さらに年功序列の傾向が強く、給与制度に大きく影響している場合は、給与比率も高くなる傾向にあります。

病床稼働率の減少

黒字病院と赤字病院に見られる大きな違いの1つに、病床稼働率が挙げられます。平成22・23年度、平成24・25年度の比較では、以下のように病床稼働率に違いがあります。

22・23年度 24・25年度
黒字 赤字 黒字 赤字
97.8% 88.9% 98.7% 91.7%

黒字病院は、100%に近い病床稼働率である点が特徴です。前述したように、病院は入院診療が収益構造の中心となっています。そのため病床稼働率は利益に大きく影響するものであり、稼働率が高いほど黒字になりやすいのです。

しかし2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大により、入院診療にも影響が見られています。「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」では、2019年と2020年の入院診療収入は以下のように前年比マイナスとなっています。

11月分 12月分
2019年と2020年の前年比 -2.9% -2.5%

コロナ禍の影響

コロナ禍において、全国の3分の2の病院が赤字に転落。特に感染者数の著しい東京都の病院では、新型コロナウイルス感染患者を受け入れた病院の9割が赤字に陥っています。「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」をみると、コロナ禍の影響がない2019年12月と2020年12月とでは黒字と赤字の割合が以下のように変化しています。

2019年12月 2020年12月
赤字(%) 黒字(%) 赤字(%) 黒字(%)
全体 63.7 36.3 65.8 34.2
コロナ患者受入なし 59.1 40.9 60.2 39.8
コロナ患者受入あり 70.3 29.7 73.8 26.2
一時的・外来病棟封鎖 72.5 27.5 82.0 18.0

赤字の要因には、感染拡大防止に伴う受診控えや予定入院の延期、予定手術の延期などが挙げられます。さらにこのような医療収入の減少だけでなく、感染防止策による施設整備や備品購入などのコストが生じているのも要因の1つです。特にコロナ患者を受け入れる病院ほど一般患者の減少が目立ち、病院全体の収益減少が大きな問題となっています。

赤字経営から抜け出す!病院の経費削減のポイント3点

医師や看護師が使う注射器と聴診器

・適正な人件費の算出
・業務効率化によるコストの抑制
・患者数の確保

慢性的な人手不足を解消するための人員増加や、医療の質を維持するために医療提供体制を変えにくいなど、さまざまな点が赤字経営に起因しています。しかし、病院は地域医療の提供者として公的な性格を持つことからも、経営効率だけを考えて経営改善を図ることが難しいのです。そんな中でも赤字経営を抜け出し、少しでも黒字にするためには上記3つのポイントが現実的な対策といえます。以下で、それぞれの対策を詳しく解説します。

適正な人件費の算出

人手が足りないことで人員増加を図り、結果的に人件費が適正でなくなってしまい赤字に発展するケースは少なくありません。以下は黒字病院と赤字病院における人件費比率と、1人あたりの詳細です。

黒字病院 赤字病院
人件費比率(%) 51.8 54.8
職員1人あたり人件費(千円) 6,202 6,468
職員1人あたり医業収益(千円) 12,188 12,033

黒字病院は赤字病院よりも1人あたりの人件費が低いにもかかわらず、1人あたりの医業収益は赤字病院よりも高い数値です。つまり赤字病院は、人件費の配分において改善の余地があることがわかります。繁閑に合わせて雇用調整するなどして、人件費を適正に調整することがこうした問題に対しては有効です。

業務効率化によるコストの抑制

病院におけるコストはさまざまですが、医療の質に直結する薬品類や医療機器などはコストが抑制しにくい領域です。それ以外でコスト抑制を図るのであれば、コストの大きな割合を占めている人件費が挙げられます。しかしリストラやボーナスカット、基本給の減額は、医療の質低下を招く恐れがあり、コスト抑制の手段としては慎重になる必要があります。そんな中でコスト抑制を図るには、業務効率化が有効的です。ITシステムの導入などで診療の効率化を図り、一人ひとりの生産性を高めます。結果として、一人あたりの収益性が上がり、黒字経営に近づけることが期待できるでしょう。

患者数の確保

人件費を適正にし、コストを抑制したとしても、そもそもの患者数が少なければ収益が少ない状態のままのため、効果があまり期待できません。そのため、根本的な解決策として、収益を増やすために患者数を確保することも必要です。具体的な方策としては、地域や患者の医療ニーズに応えるための病院機能の変革や、必要なシステム・医療体制の確立が挙げられます。病院がもつ特性や患者層から見た医療ニーズに基づき、必要に応じて機能転換や体制構築を図ることで、患者数の確保にも直結し、赤字経営脱却に繋げられるでしょう。

赤字経営を救う!|病院の統合・業態の変更

赤字経営から脱却するには、病院の再編も1つの手段です。厚生労働省では2019年に、診療実績が少なく、非効率な医療を招いているとして全国424の病院に再編検討を提示。病床数の削減や診療機能の縮小、他病院との統合により赤字経営脱却を要請しています。

また、統合せず赤字経営を脱却する方法として、病院の一部を介護事業などに転換する方法が挙げられます。将来的に高齢化が進み、地域医療のニーズが増加する地域もあるでしょう。そのような地域にある病院は、病棟の一部を地域包括ケア病床へ機能転換する、閉鎖病棟を療養病床として再稼働させるなどの対策を講じることができます。

病院統合・業態変更の実例

東京都足立区にある「医療法人社団三奉会 井上病院・井上クリニック」は、地域ニーズに合わせたケアミックス型への変革を行いました。具体的には、病院の隣接地にクリニックを併設し、外来を病院から分離。クリニックの1、2階は外来部門とし、さらに3階には介護療養型病床群設け、4階は在宅医療部門の新設を行いました。結果として、外来患者の確保につながり、入院収入の減少を補うまで外来収入が増加しました。

病院の赤字には理由がある!改善にあたり、まずは業務効率化や人件費の削減がおすすめです

病院が赤字になる原因はさまざまですが、現在はコロナ禍も大きく影響しています。まずは病院が赤字になっている原因を洗い出し、どんな対策を講じるかを明確にすることが必要です。

病院経営においては、業務効率化や人件費の削減は病院経営には大切な要素です。アウトソーシングなどをご検討の方はぜひ一度ソラストへご相談ください。ソラストでは病院経営の業務効率化をサポートする「スマートホスピタル事業」を展開しております。貴院にふさわしい「ヒト」+「サービス」+「ICT」を組み合わせたソリューションをご提案させていただきます。

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著者プロフィール

そだねー

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北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。

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