診療情報管理士の仕事内容とは? 1日の流れや給料・認定試験を解説
著者: そだねー
更新日:2025/09/22
公開日:2021/08/26
診療情報管理士の仕事内容は、医療機関の中で患者情報を正確に扱い、診療や経営の基盤を支える重要な業務です。具体的な仕事内容から、スケジュールのイメージ、給料相場、資格試験のポイントまで幅広く紹介しています。職種としての特徴を知ることで、自分に適しているかを見極める手助けになるでしょう。
診療情報管理士の仕事内容とは?
診療情報管理士は、カルテの運用や管理をする専門職です。主に以下のような仕事を担当します。
カルテや検査記録の点検・保管・管理を行う
診療情報管理士は診療録や検査データに不備がないかを確認し、記録の正確性を維持します。また、法律に基づいた保管期間を守り、適切な方法で文書や電子カルテを保存します。さらに、医療スタッフが迅速に情報を参照できるよう整理・分類を徹底し、業務の円滑化に貢献します。
カルテ情報のデータベース化や分析を担当する
紙カルテや電子カルテを統一フォーマットでデータ化し、正確な記録管理を行います。診療記録や統計データを分析し、医療の質向上や経営支援に役立てるのも重要な役割です。加えて、DPC(診断群分類)やレジストリ登録など、公的機関へのデータ提出業務も担い、医療機関の信頼性向上にも貢献します。
個人情報を含む診療情報を正確かつ安全に管理する
診療情報には個人情報が含まれるため、個人情報保護法などの法令を遵守し、漏洩防止のための管理体制を整えます。さらに、IDやパスワード管理、閲覧制限などITシステム上のセキュリティ対策を徹底します。外部へ情報を提供する際も必要最小限にとどめ、適切な手続きを踏むことで安全性を確保しています。
診療情報管理士の1日のスケジュールイメージ
診療情報管理士の仕事内容はさまざまであるため、1日をどのようにして過ごすのかは気になるポイントではないでしょうか。以下はある診療情報管理士の1日のスケジュールイメージです。職場によってスケジュールはさまざまですが、一般的なスケジュールとして参考にしてください。
一日のスケジュール | ||
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8:30 | 出勤 | メールチェックや、1日の業務スケジュールの確認 |
9:00 | 打ち合わせ | 部の診療情報管理士と、担当業務に関する情報共有 |
9:15 | コーディング | 新規患者のカルテ登録、既存患者のカルテ更新など |
11:00 | DPC | 診療報酬計算が必要な患者さまのデータを経理に送信 |
12:00 | 昼休み | 昼食や、午前に対応できなかった業務の対応 |
13:00 | レジストリ | 診療中のがんを分類し、登録を進めていく |
15:00 | 点検 | 医療訴訟などで開示が必要なカルテを点検する |
15:30 | データ精査 | 経理から依頼がきた患者さまのデータを精査 |
16:00 | カルテ評価 | 医師が記載したカルテや、処方薬の正当性を確認し、カルテ記載を評価する |
17:00 | 終業 | 残業や緊急対応がない場合は、定時で終了 |
診療情報管理士は直接患者さまと接することがなく、1日を通してデータと向き合うことが多い職種です。しかし診療情報管理士がいるからこそ、医師や看護師は患者さまに質の高い医療をスムーズに提供できています。
診療情報管理士の役割
診療情報管理士は、診療録や検査記録の管理をはじめ、医療の質を支える専門職です。医療事務との違いや主な勤務先を理解することで、その専門性や重要性がより明確になります。
診療情報管理士の役割
診療情報管理士は診療録や検査結果を正確に記録・整理し、医療現場での情報共有を円滑にします。また、医療内容の妥当性を検証する際の根拠として診療情報を活用し、医療の質を裏付けます。さらに、情報の管理体制を整えることで、医療事故の防止やトラブルの回避にも大きく貢献しています。
診療情報管理士と医療事務の違い
医療事務は窓口対応やレセプト作成といった患者対応が主な業務です。一方で、診療情報管理士はカルテ精査やデータ分析を通じて医療の質を支援する専門職です。両者は役割が明確に分かれており、業務内容だけでなく専門性や責任の範囲も大きく異なる点が特徴といえます。
診療情報管理士の主な勤務先
診療情報管理士は一般病院や大学病院といった中~大規模医療機関で特に需要が高い職種です。さらに一部の診療所や専門クリニックでも、診療情報の精度向上を目的として配置されることがあります。今後は在宅医療や地域医療連携の現場でも、その役割が広がっていくことが期待されています。
診療情報管理士の給料相場
診療情報管理士の平均年収 |
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481.4万円 |
診療情報管理士の平均年収は約481.4万円であり、月収の目安は安定した水準にあります。ただし、給与水準は経験年数や勤続期間の長さ、さらに勤務する医療機関の規模によって変化します。
また、都市部と地方では地域差が見られ、資格手当の有無も収入に影響を与える要素です。こうした条件を理解したうえで、職場選びやキャリア設計を考えることが望ましいといえます。
診療情報管理士認定試験の概要
項目 | 第 19 回『診療情報管理士』認定試験実施要項 |
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試験日時 | 2026年2月8日(日) 13時00分~16時10分 |
会場 | 15 地区 16 会場 北海道、宮城、栃木、東京(2 会場)、神奈川、新潟、長野、愛知、大阪、岡山、広島、高知、福岡、 鹿児島、沖縄 |
試験時間 | 専門分野、基礎分野ともに各 60 分 |
試験内容 | (1)基礎分野 診療情報管理士テキスト『診療情報管理I』基礎・医学編と『診療情報管理II』基礎・医学・医療用語編、診療情報管理士教育練習問題(基礎・医学編)を中心に出題する。 (2)専門分野 診療情報管理士テキスト『診療情報管理III』専門課程編と診療情報管理士教育練習問題(専 門課程編)を中心に出題する。 |
受験料 | 10,000円(税込) |
診療情報管理士認定試験は毎年2月に実施され、次回は2026年2月8日に全国15地区16会場で行われます。試験時間は基礎分野・専門分野ともに各60分で、公式テキストや練習問題から出題されます。受験料は1万円で、受験者は会場や科目内容を事前に把握し、合格に向けて計画的な準備を整えることが大切です。
診療情報管理士に向いている人・向いていない人の特徴3つ
診療情報管理士に向いている人 | 診療情報管理士に向いていない人 |
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・細かい作業が得意である ・医療に対する学習意欲が高い ・責任感が強い |
・人と話すのが苦手である ・予定通りに作業を進めるのが苦手である ・決められたルールに従うのが嫌いである |
診療情報管理士として活躍するためには、適性の有無が大きく影響します。細かい作業を得意とする人や責任感のある人に向いていますが、反対にルール遵守が苦手な人などは不向きといえます。
診療情報管理士に向いている人
診療情報管理士は、正確さや学習意欲、倫理観が求められる職種です。特に細かい作業を丁寧にこなせる人や責任感のある人が適性を持ちやすいといえます。
細かい作業が得意である
診療記録の入力や管理には集中力が必要で、誤りなく作業を進められる力が欠かせません。ICDなどの専門コードを正確に扱える人は、この職種に向いています。また、ルーチン業務であっても丁寧さを維持し続けられる姿勢が重要であり、継続的に安定した成果を発揮できます。
医療に対する学習意欲が高い
医療制度や診療報酬は改定が多く、それに対応できる柔軟な姿勢が求められます。病名や治療内容を理解して正しく記録へ反映できる力も大切です。さらに、継続的に学び知識を更新していける人は、医療の進歩に合わせて成長できるため、長く活躍できる可能性が高いです。
責任感が強い
診療情報には個人情報が多く含まれており、その取り扱いには強い責任感が欠かせません。法令や情報保護のルールを理解して実践できる人が適しています。加えて、得た情報を私的に利用しない倫理観を持ち続けることで、組織からの信頼を高め、医療の安全性にも寄与できます。
診療情報管理士に向いていない人
診療情報管理士は正確さと協調性が不可欠なため、作業や人間関係への姿勢によっては不向きな場合があります。ここではその代表的な特徴を紹介します。
人と話すのが苦手である
診療情報管理士はデータを扱うだけでなく、医療スタッフとのやり取りも発生します。最低限の会話ができないと、報告や確認が滞り、業務に支障をきたします。協力が必要な場面で孤立してしまうと、組織の中での役割を果たしにくくなる恐れがあります。
予定通りに作業を進めるのが苦手である
診療情報の処理には締切が設けられることが多く、期日を守る力が必要です。スケジュール調整や業務の優先順位付けが苦手な人は、遅れが積み重なりやすい傾向があります。その結果、周囲に迷惑をかけてしまい、医療機関全体の運営にも影響を及ぼす可能性があります。
決められたルールに従うのが嫌いである
医療現場では厳格なルールに従って行動することが必須です。規定に反発し自己流で進める人は、基準を守れず大きな問題を引き起こす恐れがあります。その結果、記録の誤りや情報漏洩につながるリスクが高まるため、ルール遵守に抵抗を持つ人には適さない職業です。
診療情報管理士の仕事内容に関するよくある質問
<ここでは、診療情報管理士の仕事に関するよくある質問に回答します。診療情報管理士に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
診療情報管理士は残業が多い仕事ですか?
A. 勤務先の規模や体制によって残業の有無や量は大きく変わります。
<診療情報管理士は医療機関の規模や体制によって残業時間が異なります。大規模病院では診療記録の処理量が多く、繁忙期に残業が発生することがあります。一方で、組織的に業務分担が整備されている職場では残業は少なめです。全体的には安定した勤務が可能ですが、勤務先選びが労働環境を左右します。
キャリアアップするとどのようなポジションや働き方ができますか?
A. 管理職や研究職など多様なキャリアパスが用意されています。
キャリアを積むと管理職やリーダーとしてチームを統括する立場になることがあります。また、診療情報のデータ分析を専門的に行い、病院経営の意思決定に関わる働き方も可能です。さらに、大学病院や研究機関では教育や研究に携わる道も開かれています。自らの適性に応じたキャリア形成ができます。
未経験や医療業界以外からでも挑戦できる仕事ですか?
A. 未経験や異業種からでも学びながら成長できる職種です。
診療情報管理士は未経験からでも挑戦できます。医療業界以外から転職して活躍している人も少なくありません。資格取得の過程で基礎知識を習得できるため、専門的な経験がなくても学びながら成長できます。実務に入ってからはサポートを受けながら経験を積み、徐々に実力を高められる環境が整っています。
資格取得後はどのくらいで即戦力になれますか?
A. 即戦力になるには実務経験1~2年は必要です。
資格を取得しても、最初からすぐに即戦力となるわけではありません。実務経験を重ねる中で、診療記録の取り扱いや情報管理の流れを理解し、徐々に力を発揮できるようになります。おおよそ1~2年の経験を積むと、独り立ちして安定した業務が可能になるケースが多いです。焦らず学び続ける姿勢が重要です。
診療情報管理士はカルテを通して医療に大きく貢献している
診療情報管理士は、カルテや診療記録の管理を通じて医療現場を支える専門職です。仕事内容は多岐にわたり、正確性や責任感、学習意欲が求められる一方で、安定した収入や専門性の高いキャリアを築ける魅力もあります。働き方や適性を理解することで、将来のキャリア選択に役立つでしょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。