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薬局のヒヤリ・ハットとは|報告事例や対策もご紹介

著者: そだねー

更新日:2023/12/22

公開日:2022/02/03

薬や聴診器が描かれた積木

医療事務や調剤薬局事務として働いていると入力ミスや記載ミスが原因で、重大な医療事故や健康被害の一歩手前になることも。これをヒヤリ・ハットといい、重大な事故・被害を防ぐために実際のヒヤリ・ハット事例も公開されています。今回は薬局のヒヤリ・ハットとは何かを踏まえて、報告事例や対策をご紹介します。

薬局のヒヤリ・ハットとは

薬を差し出している薬局の薬剤師

公益社団法人 日本薬剤師会のホームページによると、ヒヤリ・ハットは以下のように定義されています。

患者に健康被害が発生することはなかったが、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした出来事。患者への薬剤交付前か交付後か、患者が服用に至る前か後かは問わない。

まずは薬局におけるヒヤリ・ハットについて、実態を踏まえて解説します。

ヒヤリ・ハットの報告に参加している薬局数と報告件数

公益社団法人 日本医療機能評価機構では、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業として2009年より報告書をまとめています。以下は2020年第24回報告書による、2020年までのヒヤリ・ハット報告に参加している薬局数と報告件数の推移です。

参加薬局数 報告件数
2020 40,957 129,163
2019 38,677 144,848
2018 33,083 79,973
2017 11,400 6,084
2016 8,700 4,939
2015 8,577 4,779
2014 8,244 5,399
2013 7,747 5,820
2012 7,225 7,166
2011 6,037 8,082
2010 3,449 12,904
2009 1,774 1,460

参加薬局の増加に合わせて報告件数も増加しており、報告書内では今後報告の質のさらなる向上が期待されると述べられています。このように報告を設けている理由は、薬物両方の有効性・安全性の向上のためには、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導の取り組みに関連した事例を報告し、情報を共有することが重要であるからです。

報告件数の内訳

公益社団法人 日本医療機能評価機構が公表している2019年年報では、報告件数の内訳も公表されています。

調剤 疑義照会 特定保険医療材料 一般用医薬品等 合計
2019 31,487 113,144 80 137 144,848
2018 28,715 51,030 101 127 79,973
2017 3,823 2,234 25 2 6,084
2016 3,561 1,359 13 6 4,939
2015 3,727 1,040 9 3 4,779
2014 4,592 789 16 0 5,397
2013 5,017 782 15 6 5,820
2012 6,424 730 9 3 7,166
2011 7,471 601 5 5 8,082
2010 12,222 656 23 3 12,904
2009 1,343 107 10 0 1,460

10年間で平均的に多い報告は調剤に関する内容ですが、2018年より疑義照会の件数が圧倒的に増加しています。疑義照会とは、薬剤師が処方箋の内容を医師に問い合わせることです。薬剤師法第24条では、「処方せん中に疑わしい点(疑義)がある場合は、発行した医師等に問い合わせて確かめること(照会)ができるまで調剤してはならない。」と定められています。疑義照会では、具体的に以下のような内容を医師に確認します。

・薬剤名が正しいか
・処方箋に不備がないか
・副作用や薬物アレルギーの疑いはないか
・用量、用法は適正か
・同一、類似成分を含む薬の重複はないか
・飲み合わせは問題ないか など

疑義照会の件数が多いことは悪いことではなく、むしろ医師と薬剤師がお互い対等な立場でヒヤリ・ハット以上のミスを防ぐ対応ができていることの表れといえます。

薬局におけるヒヤリ・ハット発生の特長

公益社団法人 日本医療機能評価機構による2019年年報では、ヒヤリ・ハットの発生時間帯や発生月、発生曜日などの具体的な情報も公表されています。下記は2019年年報からみた、薬局におけるヒヤリ・ハット発生の特長です。

発生時期の特長
◼︎10月〜12月に発生件数が多い
10月:14,045件/11月:15,713件/12月:14,257件
◼︎発生曜日は火曜・金曜に多い
火曜:27,489件/金曜:28,213件
◼︎発生時間帯は10:00~11:59が圧倒的に多い

薬局の繁忙期は病院と同様に、およそ10月頃から始まります。気温が低くなる秋にかけて風邪やインフルエンザが流行り始め、年末のある12月は駆け込みの診療も増加。人手不足の医療機関も多い中、繁忙期になるとどうしてもヒヤリ・ハットも増えてしまうと考えられます。
そしてヒヤリ・ハットの発生時間帯として圧倒的に多いのが、10:00〜11:59です。10:00〜11:59の発生件数は52,447件、2番目に多い12:00〜13:59と比べて2倍もの発生件数となります。

薬局のヒヤリハットの発生要因・内容

ここでは公益社団法人 日本医療機能評価機構による2019年年報をもとに、薬局におけるヒヤリ・ハットの発生要因・内容をみていきます。

薬局のヒヤリ・ハットの発生要因

薬局におけるヒヤリ・ハットの発生要因は以下の通りです。

発生要因 件数
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った 44,669
報告が遅れた(怠った) 934
記録などに不備があった 4,314
連携ができていなかった 12,641
患者への説明が不十分であった(怠った) 3,111
判断を誤った 5,789
背景・システム・環境要因
ヒューマンファクター
知識が不足していた 15,623
技術・手技が未熟だった 4,494
勤務状況が繁忙だった 16,609
通常とは異なる身体的条件下にあった 1,038
通常とは異なる心理的条件下にあった 5,190
その他(ヒューマンファクター) 40,056
環境・設備機器
コンピューターシステム 8,806
医薬品 13,120
施設・設備 2,037
諸物品 292
患者側 7,525
その他(環境・設備機器) 9,152
その他
教育・訓練 8,544
仕組み 4,822
ルールの不備 3,233
その他 24,418
合計 236,417

※「発生要因」は複数回答可能
※各項目でその他を除き回答数の最も多い要因を赤文字記載

全体でみると、最も多い発生要因は「確認の怠り」にあります。繁忙期・繁忙時間帯は特に医師や看護師も多忙になるため、確認不足や不注意も多くなり、ヒヤリ・ハットが増加していると考えられます。

薬局のヒヤリ・ハットの発生内容

ここでは、ヒヤリ・ハットの発生内容でも多い「調剤」「疑義照会」における発生内容を詳しくみていきます。

調剤に関するヒヤリ・ハットの発生内容

事例の内容 件数
調剤忘れ 975
処方せん監査間違い 1,897
秤量間違い 316
数量間違い 5,931
分包間違い 1,246
規格・剤形間違い 6,066
薬剤取違え 5,944
説明文書の取違え 128
分包紙の情報間違い 284
薬袋の記載間違い 1,286
その他(調剤) 4,458

調剤におけるヒヤリ・ハットの発生件数が多い上位3つは、「規格・剤形間違い」「薬剤取違え」「数量間違い」です。なかでも薬剤取違えは名称類似が原因であり、薬剤の頭文字2文字以上が一致している組み合わせ、頭文字と末尾が一致している組み合わせは取違えの危険性が高いとして注意喚起されています。

疑義照会に関するヒヤリ・ハットの発生内容

疑義照会発生の約7割は、患者に健康被害があったと推測された場合です。疑義があると判断した理由は、当該処方箋と薬局で管理している情報からの判断が約5割、当該処方箋のみで判断した割合が約3割です。つまり、疑義照会は処方箋を後から再チェックした際に、その内容では患者に健康被害があると推測された場合に発生しています。

薬局のヒヤリハット報告事例

薬局で薬を確認する薬剤師

公益社団法人 日本医療機能評価機構のホームページでは、2009年からのヒヤリ・ハットの報告事例が確認できます。ここでは、実際に報告されたヒヤリ・ハット事例をご紹介します。

名称類似薬の処方間違い

2021年No.1 事例1
【事例詳細】
鼻水の症状で受診した花粉症患者に対し、ルセフィ錠2.5mg、1日1回1錠夕食後を処方。ルセフィ錠2.5mgは2型糖尿病の治療薬であり、患者の症状と一致しないことに気づき、疑義照会を行った結果、ルパフィン錠10mg、1日1回1錠夕食後に変更になった。
【推定される要因】
医療機関が処方箋を発行する際にルパフィン錠10mgを入力すべきところを、ルセフィ錠2.5mgを入力。

上記事例とは別で、ルパフィン錠10mgを処方するところをルセフィ錠2.5mgと取り違えたヒヤリ・ハット事例も報告されています。ルセフィ錠2.5mgはハイリスク薬であるため、誤った使用で重大な健康被害を引き起こす恐れがあります。

投与日数

2020年No.7 事例1
【事例詳細】
リウマチ科からメトトレキサート錠2mg[タナベ]3錠分2(朝食後2錠、夕食後1錠)28日分が処方。調製者は84錠を取り揃えて鑑査に回したところ、鑑査者は投与日数に疑問が生じたため患者に確認。患者は処方医から週に1日服用するよう説明を受けていたが、疑義照会の結果4日分に変更となった。
【推定される要因】
調製者は薬剤を取り揃えることだけに意識が向いてしまい、メトトレキサート錠2mgが特殊な服用方法の薬剤であることに気づかなかった。

メトトレキサート製剤は休薬期間が必要な内服薬であるため、誤って連日服用すると重篤な副作用が発現する恐れがあります。メトトレキサート製剤の他にも休薬期間が必要な薬剤があるため、周囲にわかるように薬剤を管理することが必要です。

秤量の間違い

2020年No.3 事例1
【事例詳細】
「テグレトール細粒50% 160mg分2朝夕食後」と記載された処方箋をFAXで受付。調剤士Aはテグレトール細粒50%の1日分の製剤量を換算し、FAX用紙に記載。その際に0.32gと記載すべきところを計算ミスにより、3.2gと記載した。事務員は薬剤師Aは、記載された1日量をレセプトコンピューターに入力。薬剤師BはFAX用紙に記載された1日量3.2gを見て秤量・分包を行った。鑑査を行った薬剤師Cは誤りに気づかず、処方箋を持って来局した患者の家族に交付した。交付して10分後、薬剤師Cが改めて処方箋を確認して誤りに気づき、すぐに患者家族に連絡して薬剤を交換した。
【推定される要因】
調製者及び鑑査者は、各々が秤取量を計算すべきところを行わず、記載された換算量をみて秤量・鑑査を行った。ルール通りに行われていなかった。

散剤の鑑査は、「薬剤名」「計算値」「秤取量」「外観」「分包誤差」などの確認を行うためのものです。鑑査者は秤取量を自ら計算し、調製者が記録した数値と照合する手順を遵守する必要があります。

薬局のヒヤリハット対策

薬局のヒヤリ・ハットは、事例報告で情報共有することが対策の1つとして行われています。報告事例の再発を防ぐには、まずは発生要因の件数でも多かった確認の怠りをなくすことが重要です。そして調剤に関しては、常に「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「どんな薬を」調剤するかを把握し、医療事務や調剤者、鑑査者、医師全ての人が対等な立場で患者に不利益がないよう調剤業務に取り組む必要があります。
過去の事例からあらゆるヒヤリ・ハットの発生リスクを想定し、各薬局で計画・対策を立てて業務に取り組みましょう。

薬局のヒヤリ・ハットは健康被害の一歩手前となる“ヒヤリ”“ハッ”とする出来事のこと

薬局は直接医療行為を下す場所ではありませんが、患者が服用する薬剤を用意する重要な場です。服用する薬剤をミスすることで、重大な健康被害・事故につながる恐れがあります。2021年12月31日時点で、全国43,166の薬局がヒヤリ・ハットの事例報告に参加しています。事例は我が身と意識し、常にあらゆるリスクを想定して業務に取り組むことが重要です。

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そだねー

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北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。

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