【見本付き】レセプトの書き方やコツについて徹底解説!よくある疑問もここで解消しましょう
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/03/03
医療事務が担当する仕事の1つに、レセプト業務があります。レセプトとは、医療機関の収入に関わる重要な請求書です。レセプト業務に携わる医療事務は、重要な役割を担っているため、正しいレセプトの書き方を身につけておくことが重要です。
今回は見本と合わせて、レセプトの書き方やコツを解説します。医療事務初心者や初めてレセプト業務に携わる方は、必見です。
レセプトの書き方
医療事務の業務の中でも、レセプトは専門性の高い業務です。レセプトは正確でないと診療報酬が支払われず、医療機関に損失を与えてしまいます。そのため専門知識を持って、正確に作成するスキルが求められます。
手書きによるレセプトの書き方と見本
レセプトは、厚生労働大臣が定める様式に則って作成します。そのため、医療機関が異なってもレセプトの書き方は統一されています。記載する際は黒か青のインクを使用し、修正は二重線での訂正のみ可能です。また外来と入院では保険者の取扱いが異なるため、同月に外来と入院が発生した際にはそれぞれのレセプト作成が必要です。
以下で手書きによるレセプトの書き方を、項目別に解説します。
①診療年月日の記入
いつ行われた診療であるかを、正確に記入しましょう。レセプトを提出する年月日ではないため、初めてレセプトを書く際には要注意です。
②都道府県番号・医療機関コードの記入
2桁の都道府県番号、そして7桁の医療機関コードを記載します。医療機関番号は7桁とやや長いため、間違えないように気をつけましょう。
③公費負担情報の記入
公費負担に該当する保険種別のレセプトは、公費負担情報を記載します。公費負担者番号は、「法別番号2桁」「都道府県番号2桁」「実施機関番号3桁」「検証番号1桁」の計8桁です。法別番号は、公費負担医療制度の種類ごとに定められています。そして受給者番号は、「受給者区分6桁」「検証番号1桁」の計7桁です。受給者区分は、各公費負担医療の受給者ごとに、公費負担医療主管行政庁または公費負担医療実施機関が定めています。
④保険証情報の記入
保険証の情報は、「保険者番号」「保険の種類」「本人か家族か」「被保険車掌の記号・番号を記載します。記載と合わせて、カルテと一致しているかの確認も必要です。下記で番号に○をつける必要のある、「保険の種類」「本人か家族か」について一覧で解説します。
保険の種類
6桁の保険者番号 | 国保:「1社・国」に◯ | ||
8桁の保険者番号 | 頭2桁が「39」 | 後期高齢者医療:「3後期」に◯ | |
頭2桁が「67」 | 退職者医療:「4退職」に◯ | ||
それ以外 | 社保:「1社・国」に◯ |
本人か家族か
診療を受けた患者さまが、保険に加入している本人かそのご家族であるか、そして高齢受給者か後期高齢者であるかを下記項目でチェックします。
2本外 | 保険証が「被保険者(本人)」 |
4六外 | 未就学者の患者さま |
6家外 | 保険証が「被扶養者(ご家族)」 |
8高外一 | 高齢受給者と後期高齢者で、負担割合が1割または2割 |
0高外一 | 高齢受給者と後期高齢者で、負担割合が3割 |
⑤患者さまの氏名・生年月日等の記入
患者さまの名前や生年月日などを、カルテと情報が一致しているかを確認しながら記載します。2018年からは、名前の読み方がわかるようカタカナの記録も推奨されるようになりました。
⑥特記事項の記入
該当する場合のみ、特記事項に決められた略号を記載します。平成31年3月請求分より、70歳以上の外来患者さまのレセプトには、特記事項の記入が必須となりました。この場合、「26区ア」「27区イ」「28区ウ」「29区エ」「30区オ」のいずれかが該当します。
それ以外では、患者さまに応じて以下の略号があります。
01公/02長/04後保/08老健/09施/10第三/11薬治/12器治/16長2/20二割/21高半/31多ア/32多イ/33多ウ/34多エ/35多オ/36加治/37申出
⑦医療機関の名称と所在地を記入
医療機関の名称と所在地を記載します。この項目は手書きでなく、ゴム印や印刷でも問題ありません。
⑧傷病名の記入
患者さまの患う傷病名を記入します。傷病が複数ある場合は、主傷病を先頭に持ってきます。傷病名は症状ではなく、病気や怪我の名称です。各傷病にはコードが割り振られているため、該当のコードを記入しましょう。
⑨診察開始日・転帰・診療実日数の記入
診療開始日は、傷病ごとに記入します。診療実日数には、医療保険と公費で行われた診療日数を記載。そして転帰には、傷病に対して診療がどのような結果で終わったかを以下3つの項目から該当するものに◯をします。
・治ゆ:傷病が治った
・中止:診療などの中止、または転医
・死亡:死亡した
⑩診療回数・診療点数・公費分点数の記入
1人の患者さまに対して、その月に行った診療回数と診療や処方に基づく点数を記入します。公費分は、別途点数の集計が必要です。電子カルテやレセコンでは点数が自動集計されますが、それらを利用していない場合は手動で計算します。
⑪摘要欄の記入
集計した点数に、内訳が必要な場合は指摘欄に記入します。コードが設定されている診療行為は、コード入力が義務化されているため漏れがないようにしましょう。
レセコン(レセプトコンピュータ)によるレセプトの書き方
レセコンは、レセプト作成のためのコンピュータです。医療機関によって使用されるレセコンは異なり、医療機関でも「医科」「歯科」「調剤」「DPC」でレセコンが分かれています。日々の業務でレセコンに診療内容や傷病に応じたコードを入力することで、必要な点数が自動集計されます。電子カルテと一体化しているレセコンであれば、カルテ内容の反映が可能です。またレセコンはデータを入力するだけで必要な項目が埋められるため、手書きのように順を追って記入していく必要がありません。そのため手書きよりもミスが減り、かつ業務効率化にも貢献します。
レセプトの用紙の種類
レセプト用紙には通常の「診療報酬明細書」のほか、「診療報酬総括請求書」「診療報酬請求書」があります。またレセプトの用紙は、「医科」「歯科」「調剤」「訪問看護」の分野ごとに分かれています。その中でもさらに分かれおり、「後期高齢者かそれ以外か」「外来か入院か」によって、種類が異なります。
レセプトの書き方のコツ
・上書きを完璧に書く
・必ずデータを確認して書く
・点数計算と必要事項記載を正確に行う
・被保険者証の内容が変わったときは注意
レセプトを書くには専門知識を持ち得ていることはもちろん、正確に書くことが求められます。正確にレセプトを書くためには、以下のコツを押さえて実践しましょう。
上書きを完璧に書く
上記見本の①〜⑨にあたる、点数以外の部分を上書きといいます。上書きはカルテや保険証の情報から引っ張る部分であるため、書きやすい項目です。点数以前に上書きにミスや不備があるとレセプト返戻の対象となってしまうため、完璧に書きましょう。
必ずデータを確認して書く
傷病名などは、点数に関わる重要な内容です。ここを間違ってしまうと、適正な診療報酬が得られなかったり、過剰請求と査定されて減点対象になってしまったりします。必ずデータを確認して、ミスなく書くようにしましょう。
点数計算と必要事項記載を正確に行う
点数は、医療機関の収入である診療報酬を決定する部分です。適正な診療報酬が得られるようにも、点数計算と必要事項の記載は正確に行いましょう。
被保険者証の内容が変わったときは注意
月の途中で、保険者番号が変更するケースもあります。転職先で新しい社保に加入した、法人を退職して個人事業主なり国保に変わったなど、変更ケースはさまざまです。月の途中で変わった場合は、同一患者でも保険者番号に応じてそれぞれのレセプトを作成します。変更後のレセプトは指摘欄に「保険者変更」「社保から国保に変更」など、変更理由を記載してください。
レセプトの書き方FAQ
ここでは、レセプトの書き方でよく聞かれるFAQもお伝えします。
Q.レセプトの公費を併用する場合の書き方を教えてください。
A.医療保険と公費負担医療の併用の者にかかわる明細書のうち、公費負担医療制度ごとに記載します。「件数」欄には、公費ごとに明細書の枚数を合計し、各制度の該当欄に記入することとなっています。たとえば医療保険と、2種類の公費負担医療を併用している患者さまの場合、1枚のレセプトであっても公費負担医療分が2件発生します。またレセプトの余白部分には、併用する公費の法制を記載しましょう。そして受給者証の提示があった場合には、公費負担者番号の記載が必要です。
Q.特定薬剤治療管理料を記載する場合のレセプトの書き方を教えてください。
A.下記コードが特定薬剤治療管理料となり、レセプトにはコードに応じて文言の表示が必要です。
820100046 | 心疾患患者でジギタリス製剤を投与 |
820100047 | てんかん患者で抗てんかん剤を投与 |
820100048 | 気管支喘息等の患者でデオフィリン製剤を投与 |
820100049 | 不整脈の患者に対して不整脈用剤を継続的に投与 |
820100050 | 統合失調症の患者でハロペリドール製剤等を投与 |
820100051 | 躁うつ病の患者でリチウム製剤を投与 |
820100052 | 躁うつ病又は躁病の患者でバルプロ酸ナトリウム等を投与 |
820100053 | 臓器移植術を受けた患者で免疫抑制剤を投与 |
820100054 | 留意事項通知に規定する患者でシクロスポリンを投与 |
820100055 | 若年性関節リウマチ等の患者でサリチル酸系製剤を継続投与 |
820100056 | 悪性腫瘍の患者でメトトレキサートを投与 |
820100057 | 留意事項通知に規定する患者でタクロリムス水和物を投与 |
820100058 | 留意事項通知に規定する患者でトリアゾール系抗真菌剤を投与 |
820100059 | 片頭痛の患者でバルプロ酸ナトリウムを投与 |
820100060 | イマチニブを投与 |
820100061 | 留意事項通知に規定する患者でエベロリムスを投与 |
820100062 | リンパ脈管筋腫症の患者でシロリムス製剤を投与 |
820100063 | 腎細胞癌の患者で抗悪性腫瘍剤としてスニチニブを投与 |
820100091 | 留意事項通知に規定する患者で抗生物質等を数日間以上投与 |
またこの場合、初回の算定年月を記載します。
Q.レセプトの摘要欄の書き方を教えてください。
A.指摘欄は、2018年10月診療分よりコード記録が義務化されました。そのため基本的には該当内容に応じて、コードを入力することとなります。しかし全てをコード選択するわけではなく、「コード選択が必須なもの」「条件によってコード選択するもの」「コード選択はせず、従来通りフリーテキストで入力するもの」「コードと合わせてフリーテキストを入力するもの」の4パターンに分かれています。 下記資料の別表Ⅰでは、「医科」「歯科」「調剤」における指摘欄への記載事項一覧が掲載されています。
レセプトの書き方とコツを覚えて、正確なレセプトを作成しよう
レセプト作成は、医療事務の業務の中でも専門性の高いものであり、かつミスなく正確に作成する必要があります。初めてレセプトを作成する場合は、ファーストステップとして上書きを完璧に書くことを目指してみてください。そしてそこから徐々に専門性を深め、複雑な内容のレセプトも作成できるようにしましょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。