名称独占・業務独占をわかりやすく解説!違いや職業一覧など
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/04/07
医療業界や介護業界をはじめ、各業界には国家資格を持つ人が多くいます。日本には200以上もの国家資格がありますが、国家資格は名称独占と業務独占で区別されているのです。今回は国家資格における名称独占と業務独占について特徴や違い、職業一覧などを詳しく解説します。
目次
業務独占資格と名称独占資格の違い
業務独占資格と名称独占資格の違いは、「無資格でその業務を行なって罰せられるか」「無資格でその資格名称を名乗って罰せられるか」です。また業務独占資格は名称独占資格も兼ねているため、無資格で業務を行うだけでなく、その資格を名乗って業務を行うと罰則も重くなります。一方、名称独占資格は無資格者がその資格に関する業務を行うこと自体は問題ありませんが、その資格名称を名乗ると罰則にあたります。 業務独占資格の多くは、一歩間違えると健康や命をも脅かす恐れがある仕事です。それだけ責任が大きく、安全に業務を遂行するには相当の専門知識・技術が必要ということ。一方名称独占資格は業務独占資格ほどではありませんが、同じ業務を有資格者と無資格者が行うのであれば、相手から信用を置かれるのは有資格者です。
そもそも国家資格の分類は?
そもそも国家資格とは「国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格」と定義されています。法律によって社会地位が保証されているため、社会的信頼性の高い資格です。実は、国家資格は法律で設けられている規則の種類により、下記4つに分類されます。
A)業務独占資格 | 有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格 |
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B)名称独占資格 | 有資格者以外はその名称を名乗ることが認められていない資格 |
C)設置義務資格 | 特定の事業を行う際に法律で設置が義務付けられている資格 |
D)技能検定 | 業務知識や技能などを評価するもの |
各分類の特徴をみるとわかるように、ひとくちに国家資格といってもその資格の役割はさまざまです。
業務独占資格とは
まずは、業務独占資格について詳しく解説します。
業務独占資格の特徴
業務独占資格とは、その資格を持つ人だけが独占的にその業務に携われる資格であり、名称独占資格も兼ねている点が特徴です。言い換えると、資格がない限りその業務に従事することはできません。しかし看護業務や調剤業務、放射線照射業務のように、医師であればその資格者でなくとも行うことが認められているものもあります。また業務独占にあたる資格は基本的に国が行う試験、通称「国家試験」で取得します。そして業務内容は法律で定められているため、無資格者がその業務を行うと法律違反となり罰則があります。
業務独占資格の一覧
業務独占資格にあたる国家資格は100種類近くあり、代表的な資格には以下が挙げられます。
・医師
・歯科医師
・看護師
・薬剤師
・弁護士
・行政書士
・一級建築士
・美容師
医師や看護師をはじめとした医療系の資格をはじめ、士業にあたる弁護士や行政書士など専門性の高い資格が多い点が特徴です。資格取得の難易度は資格によってさまざまですが、難易度の高い資格が多いといえます。
業務独占資格に対する罰則
法律で定められた資格の業務を無資格者が行った場合、法律違反として懲役もしくは罰金刑が科されます。たとえば医師法第17条では「医師でなければ、医業をなしてはならない」、同法第18条では「医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない」と定められています。第17条に違反した者は、同法第31条にて「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」としています。さらに無資格で業務を遂行しただけでなく、医師または類似した名称を用いた場合は3年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処されます。業務独占資格については、このように法的に厳しい罰則が科されているのです。
名称独占資格とは
次に、名称独占資格について詳しく解説します。
名称独占資格の特徴
名称独占にあたる資格は国家試験のほか、都道府県が行う試験や法律で指定された団体が行う試験で取得します。名称独占資格は、その資格を持っている人以外はその名称を名乗ることが認められていない点が特徴です。ただし、業務独占は兼ねていないため、無資格者がその業務を行なったとしても罰せられることはありません。たとえば理学療法士の業務の1つであるリハビリを無資格者または理学療法士以外が行なっても問題ありませんが、理学療法士と名乗ってリハビリを行うことは法律違反になります。
名称独占資格の一覧
・保健師
・栄養士、管理栄養士
・公認心理師
・理学療法士
・作業療法士
・介護福祉士
・社会福祉士
・技術士 など
厚生労働省の「看護師、助産師及び准看護師の名称独占について」によると、名称独占の意義は「一般的に専門的な資格、業務を識別させ、それに対する社会的な信用力を確保し、相手方との信頼関係の確立や被害の未然防止を狙いとしていると考えられる。行政的に一定の水準を確保する手段として活用する狙いを持つものもあると考えられる。」と記述があります。名称独占資格にあたる業務を無資格者が行っても問題はありませんが、無資格であるにもかかわらずその資格を名乗って業務にあたることは社会的信用力に欠けるということです。
名称独占資格に対する罰則
たとえば、理学療法士及び作業療法士法第17条では「理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない」「作業療法士でない者は、作業療法士という名称又は機能療法士その他作業療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない」との規定があります。第17条を違反した場合の罰則は、30万円以下の罰金刑です。懲役刑はなく、業務独占資格よりも軽い処罰となります。
業務独占資格と名称独占資格の違いは罰則の対象にあり!
業務独占資格と名称独占資格はどちらも意味はそのままで、資格があることで「業務を独占できる」「名称を独占できる」ということです。業務独占資格は名称独占も兼ねているため、無資格で業務を行うだけでなく、その名称を名乗ることで処罰が重くなります。国家資格を取得する際は、業務独占資格か名称独占資格かまで押さえてみてください。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。