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かかりつけ医制度とは?診療報酬への影響や現況について解説

著者: そだねー

更新日:2023/12/22

公開日:2022/05/19

聴診器と家の模型

2018年4月の診療報酬改定に盛り込まれたかかりつけ医制度。高齢社会に突入している日本では、今後さらなる医療需要の増加が見込まれます。そこで強化すべきとされているのがかかりつけ医制度であり、2021年12月の財政制度等審議会ではかかりつけ医の制度化について引き続き推進を求める意見が出されました。今回はかかりつけ医とは何かを踏まえて、かかりつけ医制度について詳しく解説します。

かかりつけ医とは

医療従事者と医療器具のイラスト

近年よく耳にするようになった「かかりつけ医」。日本医師会では、かかりつけ医を以下のように定義しています。

健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療上を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。

「風邪を引いた」「体調が悪い」など健康に異常があった場合、1番に相談する自宅近くの診療所やクリニック、病院の医師のことをかかりつけ医と定義します。症状に応じてかかる病院や診療科、医師は異なりますが、最初に出向く医療機関の医師であればかかりつけ医に相当します。日本では「かかりつけ医=現在、または以前に診察してもらった医師」と認識されることが多いですが、本来は最も身近でいつでも相談に行ける医師のことです。かかりつけ医がいることでちょっとしたことでも早くに相談でき、治療だけでなくその後の生活指導を含めて総合的かつ継続的に頼ることができます。

かかりつけ医制度とは

かかりつけ医制度とは、第一に診療を受ける身近な医師を持ってもらう制度です。まずはかかりつけ医を受診し、必要に応じてかかりつけ医が専門医や専門機関を紹介します。かかりつけ医制度が定着することで、地域の医療機関との連携が強化された地域完結型医療が目指せます。高齢社会に突入した日本は今後さらなる医療需要が見込まれることからも、厚生労働省はかかりつけ医制度を推進しています。なお、救急時はかかりつけ医でない医療機関に行っても全く問題ありません。

世界のかかりつけ医制度

日本ではまだ馴染みがなく、定着を強化することが求められるかかりつけ医制度ですが、世界ではかかりつけ医が具体的に制度化されています。下記は、世界のかかりつけ医制度の概要です。

イギリス ・全ての住民に対して原則無料で包括的なサービスを提供
・あらかじめ登録した診療所を受診し、必要に応じて紹介により専門医を受診
・診療所の登録は自由に変更できる
フランス ・2005年7月にかかりつけ医制度を導入
・かかりつけ医を受診しない場合、負担額が増加
・かかりつけ医の選択は自由(98%は一般医から選ばれている)
・かかりつけ医はいつでも変更可能
・小児科、精神科、産婦人科、眼科、歯科はかかりつけ医を通さずに受診しても負担額は増加しない
ドイツ ・保険診療は家庭診療と専門医診療に区分される
・最初に家庭医を受診することは義務ではない
・紹介状を持たずに受診した場合は10ユーロ(約1,400円)負担
・国民の約9割がかかりつけの家庭医を持っている

日本ではかかりつけ医制度が推奨されているものの、上記のようにかかりつけ医に関するルールは明確化されていません。そのためかかりつけ医を持つことは任意であり、かつ金銭面の制約もありません。制度として利用が推奨されているものの、具体的に制度化されていない点は今後の課題であり、これからの動向に注目すべきといえます。

かかりつけ医制度と診療報酬

2018年4月の診療報酬改定では、かかりつけ医制度に関する診療報酬が新設されています。その内容は、かかりつけ医に認定された医療機関では、初診時に患者に対して「機能強化加算」として80点分請求できるというもの。そのため、かかりつけ医を受診した患者は機能強化加算が加わることで初診負担が3割増加しています。80点分を患者が負担する点でかかりつけ医制度を利用するのは損なのでは、と思う方もいるでしょう。しかし、万が一かかりつけ医以外を受診した時に異常があると、病院側は患者情報が0であるため、さまざまな検査を1から行います。そうなると結果的に機能強化加算以上の負担額が発生する恐れがあるため、かかりつけ医で受診した方の負担が減ることを見越しての加算と考えられます。
なお、機能強化加算を届け出ている医療機関数は2020年で計14,653施設、うち診療所が13,413件、病院が1,240件です。機能強化加算を届出できる要件は、下記いずれかを届け出ている場合です。

・地域包括診療加算
・地域包括診療料
・小児かかりつけ診療料
・在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所に限る)
・施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所に限る)

なお、2022年2月9日の中央社会保障医療協議会・総会で行われた2022年度次期診療報酬改定に関する答申では、機能強化加算や施設基準・要件の厳格化によるかかりつけ医機能の明確化を目指す内容が示されています。

かかりつけ医制度の現状

かかりつけ医が使用するカルテとPC

令和2年3月に公表された厚生労働省資料「かかりつけ医機能の強化について/外来医療における他職種の役割ついて」では、かかりつけ医の現況がまとめられています。

外来診療に関する国民の意識

A) 病気の程度にかかわらず自分の判断で医療機関を受診
B) 最初にかかりつけ医など決まった医師を受診し、その医師の判断で必要に応じて専門医療機関を紹介してもらい受診

AとBどちらに賛成するかの調査では、かかりつけ医を活用するBへの賛成が70%近くを占めました。つまり、かかりつけ医制度については多くの人が前向きに捉えていることがわかります。

かかりつけ医を決めている患者の割合

回答患者のうち、全体の約83%はかかりつけ医を決めています。下記は、年齢別に見たかかりつけ医を決めている患者の割合です。

決めている(%) 決めていない(%)
全年齢層 83.3 16.6
75歳以上 96.7 3.3
65〜74歳 93.0 6.6
40〜64歳 80.0 19.8
15〜39歳 56.4 43.6
0〜14歳 84.9 15.1

どの年齢層でもかかりつけ医を決めている割合が決めていない割合を上回りますが、15〜39歳の若年層は他年齢層と比べてかかりつけ医を決めている割合が低い点が特徴です。
なお、かかりつけ医を持たない理由には以下ポイントが挙げられています。

・あまり病気をしないから
・その都度、適当な医療機関を選ぶ方が良いと思うから
・適当な医療機関をどう探して良いのかわからないから
・適当な医療機関を選ぶための情報が不足しているから
・その他、特に理由はない

※回答割合の多い順

適当な医療機関をどう探せば良いかわからない、選ぶための情報が不足している点については今後の課題となります。

かかりつけ医制度は今後も動向をチェック!

かかりつけ医制度は高齢社会に突入した日本では、地域医療の円滑化や地域包括ケアシステム構築のためにも欠かせないものです。かかりつけ医を決めている人の割合は多いものの、制度として定着しているわけではないのが現状です。またかかりつけ医制度を定着させるには、医師・患者の双方理解と制度の明確化が求められます。

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そだねー

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北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。

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