地域医療構想とは?目的や目指す医療体制・実現方法などを詳しく解説
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/10/13
超高齢化社会で新しい医療のあり方を考えなくてはならない中で、2014年に「地域医療構想」が制度化されました。しかし「地域医療構想」という言葉自体、あまり浸透していないのが現実です。この記事では地域医療構想の概要と、4つの病床機能区分について、分かりやすく解説します。
目次
地域医療構想とは
地域医療構想とは、将来訪れる超高齢化社会に向け、地域の実情に合わせた効率的な医療体制を整えるための取り組みです。
75歳以上の高齢者の割合は、2000年から増え続けています。特に、団塊世代が75歳以上となる2025年までの10年間は急速に増加すると推測されています。また同時に、64歳以下の現役世代の人口が急激な減少に転じるともいわれています。
このような背景から、将来訪れる超高齢化社会を見据え、質の高い医療体制を整備するために「地域医療構想」が策定されました。
高齢者に必要な医療は、高齢者数や介護度別の人数など地域により違いがあります。そこで、まず地域の実情をもとに課題を抽出し、特性に応じた施策を検討するところから始まりました。
転換期となる2025年に向け、地域の病床数の確認・検討をし、関係者の合意を得ていくことが地域医療構想の目的です。
地域医療構想における4つの病床機能区分
【4つの病床機能】 |
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・高度急性期 ・急性期 ・回復期 ・慢性期 |
地域医療構想では、病床機能を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの区分に分けています。さらなる少子高齢化に向けて医療資源を効率的に活用するため、一般病床の機能を分ける必要があるからです。
全国の病床数や医師の数は、都道府県の人口割合で見るとばらつきがあります。大学医学部の所在地に医師が多く、西側は医師数が充実しているのに東側が少ないという「西高東低」の傾向も。医師不足の地域は医師の確保計画を立てるなど、実態調査と検討を繰り返し、段階的に見直す計画が立てられています。
「医療需要」は、独自の計算式に当てはめて推計されます。推定方法は以下のとおりです。
<構想区域の2025年の医療需要の計算法>
当該構想区域の2025年度の性・年齢階級別の入院受症率×当該構想区域の2025年の性・年齢階級別推計人口を総和したもの。
地域医療構想における病床機能報告とは
病床機能 | 内容 |
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高度急性期機能 | ・急性期の患者に対し、当該患者の状態の早期安定化に向けて、診療密度の特に高い医療を提携するもの |
急性期機能 | ・急性期の患者に対し、当該患者の状態の早期安定化に向けて、医療を提供するもの |
回復期機能 | ・急性期を経過した患者に対し、在宅復帰に向けた医療またはリハビリテーションの提供を行うもの |
慢性期機能 | ・長期にわたり療養が必要な患者を入院させるもの |
病床機能報告とは、医療機関の持つ病床がどんな医療機能を担っているか現状報告し、今後の方向性を選んで報告する制度です。病棟ごとに「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」の区分から1つ選び、都道府県に報告することとなっています。
実際には1つの病棟に急性期や回復期などの入院患者が混じっている場合もあります。4区分のうち、多くを占める病気の患者に提供する機能を報告するのが基本です。
高度急性期機能の病棟の例として、救急救命病棟や集中治療室、新生児集中治療室などが挙げられます。回復期機能は、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを行う病棟です。慢性期機能は、難病患者など長期にわたり治療が必要な患者を受け入れる病棟が当てはまります。
地域医療構想調整会議とは
地域医療構想調整会議とは、地域医療構想を実現するための関係者協議の場です。地域医療構想の策定に基づき、実現に向けた具体的な取り組みを推進していく目的があります。
【4つの病床機能】 |
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・地域の病院・有床診療所が担うべき病床機能に関する協議 ・病床機能報告制度による情報等の共有 ・都道府県計画に盛り込む事業に関する協議 ・その他の地域医療構想の達成の推進に関する協議 |
会議では、高齢者などの状況に応じた病床の機能分化を進めるため、地域の医療関係者と話し合い協力します。地域の医療課題を解決するためには、現状把握と進捗状況を関係者で確認し、地区単位で必要な調整を繰り返し行わなければなりません。
地域医療構想の実現について、厚生労働省では都道府県に、計画・実行・評価・改善を行うPDCAサイクルの実施を求めています。地域医療構想調整会議でも年4回は開催することが求められており、PDCAサイクルを繰り返しながら目標達成を目指す流れとなっています。
地域医療構想の実現に向けた取り組みの進め方
地域医療構想の実現に向け、具体的な取り組みの進め方が決められています。厚生労働省では「地域医療構想の進め方に関する議論の整理」を策定し、進め方について方向性を示しました。
まず、地域医療構想調整会議において、個別の病院名や転換する病床数などの具体的な対応方針を毎年度取りまとめることとなりました。また、公立病院や公的病院、その他の医療機関ごとに、個別の医療機関の具体的な対応方針を話し合う計画も盛り込まれました。年4回の地域医療調整会議については、議論内容の具体例も提示されています。
これらの取り組みで、地域医療構想の達成を目指す流れとなっています。
地域医療構想の実現に向けた課題
地域医療構想では、今より病床数が減少してしまうのが課題です。実際に、令和2年度には病床削減や統廃合に対し財政支援が行われており、国が主導して病床削減に取り組んでいる面もあります。
病床の削減は、現在の病床数では将来余るという予測がもとになっています。日本の病床数は世界比較で突出しており、現状のままでは過剰です。このままでは医療費が増加し、税金や社会負担の増大につながる恐れもあります。
現役世代が減少していく未来、現状の医療体制を維持するのは難しいといえます。
しかし、病床数の減少により急性期医療が受けられる病院が遠くなるなどの影響が考えられます。
地域住民の医療需要に合うような病床数や医師の確保が課題といえるでしょう。
2040年の医療体制に向けた3つの改革
2040年の医療体制に向け、地域医療構想も含めた3つの改革が進められています。
・地域医療構想の実現(2025年まで)
・医師の時間外労働に対する上限規制(2024年から)
・医師の偏りの是正(2036年まで)
地域医療構想では、病床数の把握と適切な病床数の確保を2025年までに行います。医師の働き方改革として、労働時間短縮に向け実態調査や見直しを実施します。
地域による医師の偏りに対しては、医師確保計画を立て増員や育成を行い、2036年までに需要均衡を達成するのが目標です。
地域医療構想では将来を見据えた病床数・医師の確保が行われる
地域医療構想は、超高齢化社会に向け、病期ごとの適切な病床数や医師の確保を目的に策定されました。医療体制の地域による偏りが減る反面、病床数の減少により病院が遠くなるなどの課題もあります。高齢者の通院に影響が出る可能性もあるため、今後の動きを注視しましょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。