医師の働き方改革とは?2024年から施行!改革のポイントをわかりやすく解説
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/11/10
厚生労働省では、一般企業の働き方改革を進めてきました。そして、2024年からは、医師の働き方についても措置を講じる法律を制定。今、医師の働き方改革が注目されています。今回は、働き方の見直しにおいて重要となっている「水準」についても触れつつ、この働き方改革を分かりやすく解説します。医療事務職も必見です。
目次
「医師の働き方改革」とは
医師の働き方改革とは、医師の労働環境改善と健康確保を目的として、長時間労働の制限を行う取り組みです。2024年4月1日から施行される改正医療法により、医師に対する時間外労働の上限規制が適用されることになりました。
医師の長時間労働は当たり前のように行われ、休日の取りにくさも常態化しています。医療ニーズが増加する一方で、医師不足が加速しているのが現状です。人材確保のためにも、医師の働きにくさの解消が求められています。
医師の働き方改革における「ABC水準」とは
ABC水準とは、医師の時間外労働の上限をA・B・Cの3つのパターンで設定したものです。それぞれ対象となる病院や時間外労働の制限は、次のように定められています。
【A水準】
対象医療機関:下記例外(B水準、C水準対象医療機関)以外の病院
時間外労働制限:年960時間以下/月100時間未満
【B水準】
対象医療機関:救急病院や救急車の受け入れが年間1000台以上の病院など
時間外労働制限:年1,860時間以下/月100時間未満
【C水準】
対象医療機関:研修などを行う医療機関
時間外労働制限:年1,860時間以下/月100時間未満
時間外労働規制の水準がA・B・Cある背景
労働基準法にて、原則時間外労働は月45時間/年360時間まで(特別条項付きの36協定を締結している場合月100時間/年960時間まで)と定まっていますが、医師はこの規制の対象外でした。
高齢化などの影響を受け医療のニーズは増加していく中、過酷な労働環境により医師不足が顕著になっています。そのため、医師が働きやすい環境を整備しようと、医師にもこの時間外労働の規制が適用されることとなりました。
しかし、大学病院や救命救急機能を有する病院では、今まで年間1860時間を超えると推定される病院の割合が全体の50%に迫るほどあるとの調査結果もあります(参考:厚生労働省「医師の働き方改革について」)。そのため、規制を一律に設定すると医療サービスの維持が出来なくなる可能性があり、例外を設定することとなりました。
B・C水準に当てはまる場合の対応
第12回 医師の働き方改革の推進に関する検討会(令和3年7月1日), 資料1
B・C水準に当てはまる医師が勤務する医療機関は、都道府県から特例水準の指定を受ける必要があります。医師労働時間短縮計画を作成のうえ、第三者機関である医療機関勤務環境評価センターから評価をもらわなければなりません。
厚生労働省では2024年の医療法改正に向け、行うべき作業を上記のようにスケジュール化しています。
医師の働き方改革のポイント
労働時間の把握・管理
医師の働き方改革を実現するには、労働時間の把握や管理を適切に行う必要があります。一般的な職場では出退勤の記録は当たり前ですが、医師は行っていない場合が多い傾向です。
在院時間や休憩時間など出退勤の適切な記録は、時間外労働をどの程度行っているか把握する意味でも役立ちます。さらに、数値化することで、医師自身に労働時間管理の重要性を認識してもらう狙いもあります。
36(サブロク)協定の自己点検
36協定の自己点検も、医師の働き方改革における重要なポイント。36協定とは、労働基準法第36条に定められている、「時間外労働・休日労働に関する協定」です。
時間外労働や休日労働をさせる場合、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。医師やほかの医療従事者とともに、時間外労働の実態を把握し、36協定の届け出が必要であるか確認しなければなりません。
タスク・シフティング
タスク・シフティングとは、ほかの職種へ業務の一部をシフトさせることを指し、医師の業務負担を軽くする狙いがあります。医師の業務は看護師や薬剤師、診療放射線技師などで分担できると想定。診療放射線技師や救命救急士などの職種で、業務範囲が拡大しています。
また、医療事務作業を補助する医療クラークの配置もタスクシフトの連携先として考えられています。
女性医師の働き方支援
女性医師への働き方支援は、ライフイベントに合わせて時間短縮勤務などの新たな働き方を積極的に取り入れる動きです。女性医師のキャリアアップを阻害することのないよう、職場に働きかける意味もあります。
女性医師は、出産や育児などで職場を離れることもあるため、キャリア形成に影響を及ぼす可能性がありました。女性医師でも仕事をしながら安心して出産育児を行えるような働き方を支援する流れに変化しています。
勤怠管理システム導入のポイント
・適切な打刻システムが入っているか
・特殊な勤務形態や時間を管理できるか
・システムが使いやすいか
医師にも勤怠管理システムが導入されますが、変則的な勤務形態に対応した取り組みが重要です。ここでは、勤務管理システム導入のポイントを3つ解説します。
適切な打刻システムが入っているか
勤怠管理システム導入の際には、適切な打刻システムが選べるかどうかを確認しましょう。医師は勤務時間が変則的なため、正確な勤怠管理のできるシステムを導入しなければなりません。
打刻システムの例として、タイムカードやICカード、スマホ、ビーコンなどがあります。それぞれの医療機関に合った方法の選択が大事です。
特殊な勤務形態や時間を管理できるか
医師は、出退勤時刻の変化が少ない一般的な職場と違い、宿日直など特殊な勤務形態もあります。そのため、変則的な勤務を正確に管理できる勤怠管理システムの導入が必要です。
実働時間のほかに、研鑽時間や宿日直時間、待機時間などの「非実働時間」を区別して管理できるシステムがよいでしょう。
システムが使いやすいか
医師の勤務状況を正確に把握するには、勤怠管理システムの使いやすさも重要です。勤怠管理システムを導入しても、打刻に手間がかかったり記録を忘れたりしては意味がありません。
今まで出退勤の記録をしてこなかった病院も多いため、まずは記録のルーティンを定着させることが重要です。確実に記録するため、より使いやすく浸透しやすいシステムを導入する必要があります。
医療事務職が医師の働き方改革で気を付けるべきこと
医師の働き方改革により、医療事務職の仕事内容も変化すると心得ましょう。今後推進されるチーム医療では、医師や看護師、専門職のほか医療事務作業補助者も含めた役割分担が行われます。医師の仕事が看護師や専門職に移管するため、その分その移管された人たちの一部の業務が、医療事務職にもシフトされる見込みです。
たとえば、看護師に代わって入院時の説明や書類の受け渡し、検査の説明などを医療事務職が行うことが想定されます。変化に対応できるよう、心構えをしておきましょう。
医師の働き方改革で時間外労働の短縮やタスクシフトが行われる
医師の働き方改革では、医師の健康維持と人材確保のため、時間外労働の基準が設けられます。負担軽減のため、業務の一部を看護師やそのほかの専門職に移管するタスクシフトも推進。2024年4月からの改正に向け、勤怠管理システムの導入やチーム医療の役割分担などの準備が必要です。
医師の働き方改革ではタスクシフティングが行われるため、医療事務職の仕事内容も変化する見込みです。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。