【診療報酬改定2022】診療報酬改定はいつ?ポイントを解説
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/12/30
診療報酬は2年に1度見直しが行われ、2022年は前回の診療報酬改定から2年後の年にあたります。医療事務をはじめ、医療機関にお勤めの方は診療報酬改定について随時最新情報を押さえておくことが必要です。今回は2022年の報酬改定について、スケジュールや改定のポイントなどをお伝えします。
目次
①新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築
②安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進
2022年の診療報酬改定!改定率やスケジュールとは
診療報酬は2年に1度改定され、2022年は改定の年にあたります。まずは、2022年の診療報酬の改定率やスケジュールについてみていきます。
2022年診療報酬の改定率
診療報酬の改定において、年末に行われる予算編成で政府が診療報酬全体の改定率を決定します。2022年2月9日に厚生労働省の中央社会保険医療協議会にて、2022年度の改定率は全体でマイナス0.94%、本体改定率はプラス0.43% であることが答申されました。薬価のマイナス1.35%、材料価格のマイナス0.02%となり、全体ではマイナス改定ですが、薬価を大幅に下げることで本体改定率のプラスを維持できています。なお、2014年度の改定以降、全体の改定率がマイナスである傾向に変わりはありません。そして2022年度は診療報酬本体でプラス改定であるものの、前回の2020年改定率よりはマイナスである点で、コロナ禍が続く中では厳しい改定といえます。
2022年の診療報酬改定はいつ?スケジュールをチェック
2022年の診療報酬改定が施行するのは、2022年度に変わる4月1日です。そもそも診療報酬は年末に政府によって行われる予算編成から改定率を決定し、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(通称:中医協)が議論を重ねた結果、見直し内容が決まります。現時点では一連の流れを経て2022年2月9日に中医協からの答申があり、前述した改定率や見直し内容が公表されています。その後3月上旬に厚生労働大臣から2022年度診療改定の告知・通知が出され、4月1日から正式に施行するスケジュールです。
2022年診療報酬改定の方針
2021年12月10日には、「令和4年度(2022年度)診療報酬改定の基本方針」が厚生労働省により策定されています。2022年の診療報酬改定の基本方針は、2020年度から大きな変わりなく以下4項目を柱としています。
① 新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築
② 安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進
③ 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
④ 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
上記の基本方針のうち、重点課題とされているのは①と②の項目です。②の働き方改革については2020年度の診療報酬改定から引き続き重点課題となっており、2022年度は新型コロナウイルスへの対応がプラスされた形となります。
2022年診療報酬改定の具体的方向性と実際の改定内容
ここでは、2022年の診療報酬改定の4つの方針における具体的な方向性と各方向性における実際の改定内容をみていきます。
①新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築
基本方針①については、以下のような具体的方向性の例が示されています。
● 当面、継続的な対応が見込まれる新型コロナウイルス感染症への対応
● 医療計画の見直しも念頭に新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築に向けた取組
● 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
● 外来医療の機能分化等
● かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
● 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
● 地域包括ケアシステムの推進のための取組
感染拡大が広まる中、局所的に病床や人員の不足も発生しており、地域医療のさまざまな課題が浮き彫りになっています。その中でも新型コロナウイルス感染症患者以外にも適切な医療が提供されるよう、各々の医療機関が適切な役割分担のもと必要な医療を提供することの重要性も再認識されました。当面は新型コロナウイルスの感染症対応に注力しつつ、その中でも着実に進む高齢化に対応できるよう在宅医療や訪問看護の医療機能、そして地域包括ケアシステムの体制を構築していくことが求められます。
2022年診療報酬改定内容(一部抜粋)
外来診療時の感染防止対策の評価の新設及び感染防止対策加算の見直し | ・外来感染対策向上加算:6点 ・連携強化加算:3点 ・サーベイランス強化加算:1点 |
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高度かつ専門的な急性期医療の提供体制に係る評価の新設 | ・急性期充実体制加算(1日につき) ①7日以内の期間:460点 ②8日以上11日以内の期間:250点 ③12日以上14日以内の期間:180点 ・精神科充実体制加算:30点 |
地域包括診療等における対象疾患等の見直し | ・地域包括診療等の対象疾患に、慢性心不全及び慢性腎臓病を追加 ・患者に対する生活面の指導については必要に応じ、医師の指示を受けた看護師や管理栄養士、薬剤師が行っても差し支えないこととする ・患者からの予防接種に係る相談に対応することを要件に追加するとともに、院内掲示により、当該対応が可能なことを周知することとする |
②安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進
基本方針②については、以下のような具体的方向性の例が示されています。
● 医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取組の推進
● 各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・ シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進
● 業務の効率化に資するICTの利活用の推進、その他長時間労働などの厳しい勤務環境の改善に向けての取組の評価
● 地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の確保
● 令和3年11月に閣議決定された経済対策を踏まえ、看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対応について検討するとともに、負担軽減に資する取組を推進
医師の働き方改革については、2024年(令和6年)4月より、時間外労働の上限規定が適用される予定です。そのための準備期間も考慮し、実質的に最後の改定機会であることも踏まえて重点課題としています。
2022年診療報酬改定内容(一部抜粋)
夜間の看護配置に係る評価及び業務管理等の項目の見直し | 夜勤を行う看護職員及び看護補助者に係る業務の実態等を踏まえ、夜間の看護配置に係る評価等を見直す 例)夜間看護加算:50点/日 |
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看護補助者の更なる活用に係る評価の新設 | 看護補助者との業務分担・協働に関する看護職員を対象とした研修の実施等、看護補助者の活用に係る十分な体制を整備している場合の評価を新設する 例)夜間看護加算:50点 看護補助体制充実加算:55点 |
医療機関におけるICTを活用した業務の効率化・合理化 | 医療従事者等により実施されるカンファレンス等について、ビデオ通話が可能な機器を用いて、対面によらない方法で実施する場合の入退院支援加算等の要件を緩和する |
③患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
基本方針③については、以下のような具体的方向性の例が示されています。
● 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価や医薬品の安定供給 の確保等
● 医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応
● アウトカムにも着目した評価の推進
● 重点的な対応が求められる分野について、国民の安心・安全を確保する観点からの 適切な評価
● 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療 の推進
● 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病棟薬剤師業務の評価
2022年診療報酬改定の目玉ともなる不妊治療の保険適用などをはじめとした、新たなニーズに対応できる医療実現の取り組みが進められます。そのほかオンライン診療やオンライン服薬指導の普及・促進、医療情報の標準化など、ICTの活用による医療連携の取り組みや質向上も目指します。
2022年診療報酬改定内容(一部抜粋)
質の高い臨床検査の適切な評価 | 保険適用された新規対外診断用医薬品について、検査料を新設する 例)微生物核酸同定・定量検査 サイトメガロウイルス核酸定量:450点 |
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情報通信機器を用いた初診に係る評価の新設 | 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しを踏まえ、情報通信機器を用いた場合の初診について、新たな評価を行う。 例)初診料(情報通信機器を用いた場合):251点 |
一般不妊治療に係る評価の新設 | 一般不妊治療の実施に当たり必要な医学的管理及び療養上の指導等を行った場合の評価を新設する。 例)一般不妊治療管理料:250点 |
④効率化・適正化を通じた制度の安定化・持続可能性の向上
基本方針④については、以下のような具体的方向性の例が示されています。
● 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進
● 費用対効果評価制度の活用
● 市場実勢価格を踏まえた適正な評価等
● 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(再掲)
● 外来医療の機能分化等(再掲)
● 重症化予防の取組の推進
● 医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
● 効率性等に応じた薬局の評価の推進
高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発などにより、将来的に医療費が増大されることが見込まれます。そうした中でも国民皆保険を維持するには、制度の安定性や持続可能性を高める取り組みが必要不可欠です。加えて医療資源を効率的かつ重点的に配分しつつ、医療関係者が共同して医療サービスの維持・向上と効率化・適正化することが求められます。
2022年診療報酬改定内容(一部抜粋)
バイオ後続品の使用促進 | 外来化学療法を実施している患者に対して、バイオ後続品に関する情報を提供した上で、当該患者の同意を得て、バイオ後続品を導入した場合の評価を新設する。 例)初回の使用日の属する月から起算して3月を限度として、月に1回限り150点をさらに所定点数に加算する |
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人工腎臓の評価の見直し | 人工腎臓において HIF-PH 阻害剤を用いる場合について、その使用実態を踏まえ、HIF-PH 阻害剤の費用を包括して評価することとする。また、人工腎臓に係る包括薬剤の実勢価格等を踏まえ、要件及び評価を見直す。 例)慢性維持透析を行った場合 イ 4時間未満の場合:1885点 ロ 4時間以上5時間未満の場合:2045点 ハ 5時間以上の場合:2180点 |
医薬品の給付の適正化 | 医師が医学的必要性を認めた場合を除き、外来患者に対して、保険給付の範囲内で処方できる湿布薬の上限枚数を、1 処方につき 70 枚までから 63 枚までに変更する。 |
2022の診療報酬改定は4月1日施行!改定内容は多数
2022年の診療報酬改定のスケジュールは、3月上旬に厚生労働省から改定の告知・通知が出され、4月1日に施行されます。改定の方針は2020年時と大きな変わりはなく、そこに新型コロナウイルスへの対応が加わった形です。個別の改定内容の詳細は厚生労働省資料でも確認できるため、本記事とあわせて2022年診療報酬改定の方向性を押さえてみてください。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。