公務員保育士とは|私立保育士との違いや給料、試験について
著者: めんたいパスタ
更新日:2024/01/30
公開日:2022/04/22
保育士には、公務員として地方自治体が運営する保育園で働く保育士もいます。一般的にイメージされる保育士は私立保育士であるため、公務員保育士はどの点で違いがあるのか、公務員保育士になるメリットがあるかなど気になる点も多いでしょう。そこで今回は、公務員保育士についてさまざまな観点から詳しくご紹介します。
目次
公務員保育士とは
公務員保育士とは、地方自治体に採用されて働く保育士のことです。別名「公立保育士」とも呼ばれ、市区町村が運営する公立保育園や保育施設に勤務します。保育士資格をもって働く点では一般的な私立保育士と同じですが、公務員保育士は地方自治体に採用された公務員です。そのため、一般的な公務員と同等の待遇で働く点が特徴です。また公務員保育士は、以下のように雇用形態もさまざまです。
正規職員 | ・常勤、フルタイム勤務の職員 ・担任になるポジション ・勤続年数に応じて主任や園長になる |
---|---|
臨時職員 | ・非常勤職員 ・3ヶ月〜1年程度で更新 ・人手が足りない、正規社員の育休産休時に募集がかかる |
嘱託職員 | ・非常勤職員 ・定年退職した職員が1〜3年ほどの契約で再雇用される |
派遣 | ・派遣会社から公立保育園や保育施設に派遣される ・主な業務は保育補助 |
公務員保育士と私立保育士の違い
ここではさまざまな観点から、公務員保育士と私立保育士の違いを詳しくご紹介します。
職場
公務員保育士の職場は、自治体が運営する保育園や児童福祉施設などの保育施設です。自治体が運営する公立保育園の多くは、児童福祉法に基づいた認可保育園となります。一方、私立保育園は、株式会社や社会福祉法人、NPO法人などが運営します。私立保育園の中にも認可保育園はありますが、運営元が自治体でない点で公立保育士の職場には該当しません。
勤務時間
公立の保育施設は保育標準時間のもと稼働するため、基本的に延長保育や休日保育は行っていません。そのため一般的な公務員同様に、勤務時間が一定になる点が特徴です。一方で、私立保育園は独自の運営基準を設けられるため、延長保育や休日保育、夜間保育なども実施されます。柔軟な保育サービスが提供できる点は、私立保育園の強みです。
保育方針
公立保育園の保育方針は自治体によって定められており、同一自治体であれば同じ保育方針のもと運営されます。そのため公務員保育士は職場が変わっても、同じ自治体内の保育園に勤務すれば保育方針は変わりません。一方、私立保育園は経営母体や園長が独自に保育方針を定めるため、保育園によって保育方針も様々です。安定した保育方針のもとで働きたい場合には公務員保育士が、多様な取り組みや柔軟な保育をしたい場合には私立保育士が向いています。
就職までのプロセス
公務員保育士も私立保育士も、国家資格である保育士資格を取得するまでの流れは同じです。私立保育士は資格を取得すればすぐに就職できる一方、公務員保育士はさらに地方自治体主催の保育士採用試験に合格する必要があります。しかし公務員試験に合格してすぐに働けるとは限らず、配属先が決まるまで待機期間が発生するケースもあるのです。
異動の有無
私立保育士は運営元内で異動が発生するケースがありますが、基本的に異動はないため、転職しない限り同じ保育園で働けます。しかし公務員保育士は2〜4年に一度のペースで転勤または異動が発生。基本的には採用元の自治体内での異動となり、異動先は保育園に限らず、児童福祉施設などの保育施設になるケースもあります。なお、異動先を自分で選ぶことはできません。
公務員保育士の給料や待遇について
公務員保育士と私立保育士の違いは、給料や待遇にもあります。ここでは私立保育士との違いもあわせて、公務員保育士の給料や待遇についてみていきます。
公務員保育士の給料
下記は内閣府「令和元年度幼稚園・保育所・認定子ども園等の0経営実態調査集計結果〈速報値〉【修正版】」による、公務員保育士の給料です。
公務員保育士 | |||
---|---|---|---|
平均勤続年数 | 常勤 | 非常勤 | |
園長 | 31.8年 | 63万2,982円 | – |
主任 | 25.1年 | 56万1,725円 | 25万7,531円 |
一般保育士 | 11.0年 | 30万3,113円 | 16万2,859円 |
なお、私立保育士の給料は以下の通りです。
私立保育士 | |||
---|---|---|---|
平均勤続年数 | 常勤 | 非常勤 | |
園長 | 25.8年 | 56万5,895円 | 53万6,146円 |
主任 | 21.7年 | 42万2,966円 | 34万4,103円 |
一般保育士 | 11.2年 | 30万1,823円 | 18万7,816円 |
一般保育士の給料は公務員保育士と私立保育士とでほとんど差はありませんが、主任以上の役職になると公務員保育士の給料の方が高くなります。勤続年数が長くなるほど給料が上がりやすく、かつ役職が上がることで大幅に給料がアップする点は公務員の魅力です。一方、非常勤の給料は私立保育士の方が高くなっています。
公務員保育士の待遇
公務員保育士の福利厚生は、地方公務員の基準が適用されます。有給や産休・育休も取得しやすく、福利厚生が充実している点は公務員保育士の強みです。一方、私立保育士の福利厚生は園によってさまざまです。有給が取りにくい、残業が多いなど待遇面の問題も聞かれますが、近年は保育士の処遇改善に伴い待遇や福利厚生も改善されつつあります。
公務員保育士のメリット・デメリット
就職・転職に伴い、公務員保育士になるか私立保育士になるかを迷う方もいるでしょう。公務員保育士になるにあたり、メリットだけでなくデメリットも押さえておくことが重要です。
公務員保育士のメリット
・給料が安定している、昇給しやすい
・勤務時間が定められているため働きやすい
・福利厚生が充実している
最大のメリットは、公務員特有の安定と待遇の良さです。長く勤めることで昇給・昇格しやすく、主任以上になると高い給料に期待できます。また勤務時間が決まっている、有給や産休・育休も取得しやすい点でワークライフバランスを大切にでき、長期的なキャリアが築きやすいといえます。
公務員保育士のデメリット
・競争率が高い
・民営化による求人数減少のリスク
・異動がある
安定した給料や充実した福利厚生が魅力の公務員保育士は競争率が高く、そもそも離職率も低いため狭き門です。地域によっては、採用試験の倍率が高くなることも。加えて今後は民営化していく可能性があるため、公務員保育士の求人数はさらに減少するリスクもあります。また2〜4年ごとに異動もあるため、タイミングによっては担当児童の卒園が見届けられないこともあります。
公務員保育士になるには?採用試験について
公務員保育士になるには、保育士国家資格を取得後に公務員採用試験に合格しなければなりません。ここでは、公務員保育士の採用試験についてご紹介します。
公務員保育士の採用試験の概要
採用試験は自治体ごとに実施されますが、大まかな流れや概要はほぼ同じです。受験資格は保育士資格を取得または受験年度中に取得見込みであること、自治体によって定められた年齢制限をクリアしていることです。そのほか、自治体によっては受験時点で自治体に在住しているかといった「住所要件」を課す場合もあります。
そして試験日程は7〜8月に第一試験を実施する「夏試験型」と、9月に第一試験を実施する「秋試験型」の主に2パターンです。近年は秋試験型を採用する自治体が多くみられますが、具体的な試験日程は自治体によって異なるため確認が必要です。
公務員保育士採用試験の内容
試験では、筆記・実技・面接の3つが実施されます。筆記試験はほとんどの自治体で筆記試験が実施され、一般教養と保育士国家試験に準ずる専門知識が問われます。最近ではSPIを採用する自治体もあるため、試験内容を確認してしっかりと対策しましょう。
また実技は国家試験と同じように、ピアノや絵画、読み聞かせなどを実施します。そして面接は自治体によって実施回数が異なり、志望動機や自己PRなど一般的な就職・転職活動と同じような内容です。そのほか、自治体によっては体力試験として一般的な体力測定が行われるケースもあります。
公務員保育士採用試験の難易度
平成30年度「公務員試験結果一覧(保育)」によると、試験倍率は1.0〜15.2倍と自治体によって大きく差があります。倍率に差はあるものの、そもそもの枠が少ない点で公務員保育士採用試験は難易度が高いといえます。また公務員保育士が足りている自治体の場合、試験自体を実施しないケースもあるのです。
公務員保育士採用試験の注意点
「採用試験に合格する=自治体の採用候補者名簿に登録される」ということです。名簿に登録され、かつ保育園から採用希望の申し出があれば、晴れて公務員保育士として働き始めることができます。つまり、採用試験に合格してすぐに働けるわけではなく、保育園からの申し出がないと働けないのです。さらにいつ申し出があるかもわからないため人によっては待機期間が発生し、1年経過すると採用候補者名簿への登録期限が切れてしまいます。採用候補者名簿に登録してから1年経過すると、再度試験を受けなければならない点は注意が必要です。
公務員保育士とは地方自治体に採用されて働く地方公務員と同じ!
公務員保育士として働くには保育士資格を取得し、自治体の公務員試験に合格する必要があります。安定性があり、給料や福利厚生も充実している公務員保育士は、人気が高く競争率も高いポジションです。今記事を参考に、公務員保育士への理解を深めてみてください。
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著者プロフィール
めんたいパスタ
人材紹介業、サービス業、障がい者雇用の分野で採用業務に従事した経験がある女性スタッフ。現在は保育分野の採用担当として、業務を通じて保育園で働くスタッフの負荷軽減になることを目標として活動している。