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病院に求められるBCPとは|BCPの内容やクラウド型電子カルテについて

著者: そだねー

更新日:2023/12/22

公開日:2021/07/26

病院をはじめ、各企業に求められているBCPをご存知でしょうか。地震や台風などの災害時に、病院や企業が機能を維持するための事業継続計画のことを指します。今回は病院におけるBCPにフォーカスを当て、その必要性や策定の内容、BCPに関連するクラウド型電子カルテについてお伝えします。

病院に求められるBCPとは

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語に訳すと「事業継続計画」と言います。厚生労働省では、BCPについて以下のように定義しています。

震災などの緊急時に低下する業務遂行能力を補う非常時優先業務を開始するための計画で、遂行のための指揮命令系統を確立し、業務遂行に必要な人材・資源、その配分を準備・計画し、タイムラインに乗せて確実に遂行するためのもの

 

つまり不測の事態においても業務を遂行できるよう、あらかじめ状況を想定して用意した対策・計画のことです。BCP策定は利用者や顧客の他社・他団体への流出、社会的信頼の低下を防ぐことにつながり、病院に限らずあらゆる企業に求められています。

病院におけるBCP策定の必要性

病院は、人々の暮らしと地域に密着した役割を担います。地震をはじめとした災害が発生した際に、一般患者だけでなく被災者へも医療提供が求められるため、決してその機能が中断してはいけません。とはいえ災害時は必要な人員が出勤できない、ライフラインが途絶えてしまうなど、不足の事態が発生する可能性も考えられます。

そのため可能な限り通常時の機能が果たせるよう、あらかじめ「優先すべき業務」と「最低限業務を行うために必要なもの」を整理してBCP策定しておくことが必要です。これにより病院の防災対策が向上し、緊急時でも戸惑うことなく効率的かつ機能的に医療が提供できるようになります。

従来の災害マニュアルとBCPの違い

自然災害の多い日本では、これまでも病院における災害マニュアルは存在していました。しかし阪神・淡路大震災や東日本大震災のような大災害で、多くの病院が想定外の事態に遭遇。マニュアルの実効性に多くの問題点があることが明らかとなりました。

原因として、マニュアルに被災した際の措置は記載されているものの、具体性に欠けており、必要な備えが足りていなかったことが挙げられます。そこで不測の事態のカバー範囲を広く捉えて設定するBCPの必要性が認識されるようになりました。急性期の対応だけでなく、災害のフェーズごとに対応できるような具体的な対策を見直すことが求められています。

病院のBCP策定の実情

平成30年、台風21号や北海道胆振東部地震などにおいて長期の停電や断水などが生じ、病院が機能困難となる事態が発生しました。それを受け厚生労働省でBCP策定状況おける調査を実施したところ、圧倒的に策定なしの病院が多い結果に。災害拠点病院に指定されていても、約3割が策定していない状況でした。

※調査対象8,371病院、有効回答7,294病院

BCP策定あり(%) BCP策定なし(%) 回答率(%)
全病院 25.0% 75.0% 87.1%
災害拠点病院 71.2% 28.8% 93.8%

 

その後BCP策定が必須となる災害拠点病院のうち、未回答または未策定の245病院を対象に追加調査を実施。結果、平成31年4月1日時点では、241の災害拠点病院でBCP策定済みとの結果となりました。

BCP策定が必須である災害拠点病院ですら全ての病院が策定しているわけではなく、一般病院を含むと未策定の病院が多いのが実情です。災害はどの地域にも起こりうるもので、本来BCP策定はどの病院も必須で行うべきとされており、いつ災害に直面してもいいように対応が急がれています。

病院のBCP策定の内容

病院の立地や特性に応じて求められるBCPの細かい内容は異なりますが、ここでは代表的なBCP策定の内容をみていきます。典型として挙げられるのは、主にバックアップシステムの確保や災害に即応した要員の確保、迅速な安否確認などです。

インフラ対策

災害におけるインフラの停止は、病院に限らず一般的に対策すべき事項です。対策が必要となるのは、主に以下の通りです。

・建物の耐震化
・ライフラインの確保(電気、水道、ガスなどのバックアップ状況や備蓄状況の確認)
・通信手段の確保

病院では電子カルテや医療機器において、電力や通信を使用します。患者や被災者の安全確保のための建物や設備の耐震化はもちろんのこと、必要な電力量や通信手段を把握し、それに応じたバックアップ確保や供給先の明確化が求められます。周辺環境の具体的な被害状況や発生する傷病者数などを想定して対策することがポイントとなります。

人員確保

災害時は、通常よりも医療需要が大きくなることが想定されます。そのため緊急時に確保できる人員数を把握しておくことが必要です。住所が近い人から出勤する、交通手段が災害に左右されない人が出勤するなど、緊急時の出勤条件や出勤方法を明確化することで、スムーズに必要な人員確保ができるでしょう。さらに災害発生からのタイムラインに沿って、招集可能な人員数を確認することも重要です。

指揮命令系統の明確化

緊急時は通常通りのスタッフが確保できるとは限らず、指揮命令系統が不明になる事態も予測されます。そのため院長や担当医、担当看護師が不在の場合は誰が指示を出すか、またはどの範囲まで自己判断を下して良いかを明確にする必要があります。通常の担当範囲を超える可能性も視野に入れ、災害時の診療マニュアルも用意しておくと安心です。

優先業務の設定

被災者の発生による医療需要の増加を想定し、優先すべき業務を明確にすることが重要です。優先度の高い業務を設定するにあたり、まずは通常業務を洗い出す必要があります。部門ごとに通常時に実施している業務を把握し、その際に必要となる資源も明確にしておきましょう。

災害時の応急対応業務の整理

災害時は通常実施しない応急対応業務が発生する可能性もあります。そのため部門ごとに応急対応業務を洗い出し、必要となる資源も併せて確認しましょう。東京都福祉保健局によるBCP策定ガイドラインでは、災害時の応急対応業務を以下のように示しています。(※一部抜粋)

分類 業務 具体例
体制 災害医療体制への切替 外来診療などの通常医療を縮小し、災害医療体制への切替を行う。
診療 バイタルサイン安定化のための治療 ICUなどに入院中の重症患者や中断できない診療・治療中の患者のバイタルサインの安定化を行う。
搬送 患者の搬送・誘導 対応が難しいと思われる患者については、救急車その他車両により他院へ搬送を行う。また、軽症者対応が困難な場合は、近隣の医療救護所等を案内する。

病院BCPにおすすめクラウド型電子カルテ

現在病院では、電子カルテの導入が義務付けられています。厚生労働省による「電子カルテシステム等の普及状況」を見ると、平成29年は400床以上の病院で85.4%、200〜399床で64.9%の普及率です。電子カルテには主にオンプレミス型とクラウド型があり、主流となっているのはオンプレミス型です。いずれの型にもメリット・デメリットがありますが、BCPの観点から見ると、クラウド型の電子カルテがおすすめです。

クラウド型とオンプレミス型の違い

主流であるオンプレミス型は、院内にサーバーを構築し独自のネットワークを使用して電子カルテを使用します。一方クラウド型はサーバーを院内に構築せず、インターネットを経由して電子カルテを使用する仕組みです。

BCP対策としてクラウド型電子カルテを導入するメリット

BCP対策としてのクラウド型のメリットは以下の通りで、オンプレミス型と大きく異なる点です。

・データ消失のリスクを抑えられる
・インターネット環境があれば、院外でも電子カルテが使用できる

万が一災害で病院自体が倒壊してしまっても、電子カルテのデータはインターネット上のサーバーにバックアップされています。そのためデータを消失するリスクも低く、インターネット環境があればいつでも接続可能。院内が使用できず別の場所で診療所を設置するとなった場合でも、電子カルテが使用できます。サーバーが障害を起こしてしまった場合にも、事業者によって迅速に対処してもらえます。災害状況によっては通信手段が途絶えてしまう可能性もあるため、スマートフォンによるテザリング機能やモバイルWi-Fiを準備しておくと安心です。

クラウド型電子カルテだからこそ利用できるサービス

近年医療機関の新たな戦略として、「スマートホスピタル」が注目されています。医療の質向上や医療従事者の業務効率化、患者の利便性向上のための、IT技術の活用のことです。ソラストではその一環として、医療事務のオンライン受託サービス「リモート医事」をご提供しています。当社のスタッフがリモートで、受付処理や診療報酬請求などの医療事務業務を担当。そのため現場に医療事務がいなくとも、医療事務が機能します。

医療事務業務をアウトソーシングすることで、災害時に医療事務要員が確保できなくとも受付や診療報酬の算定などが可能です。こうしたサービスは電子カルテのデータ共有が必須であるため、クラウド型電子カルテだからこそ導入しやすいサービスなのです。

病院BCPを策定し、災害時でも安定した医療を提供することが重要

いつ起こるかわからない災害に備え、すべての病院においてBCP策定は必須です。まずは厚生労働省が提示している手引きを参考にBCP策定に踏み切り、また内容を随時見直していきましょう。

その過程でクラウド型電子カルテの導入や、医療事務のアウトソーシングなど役立つサービスの導入を検討してみるのもおすすめです。現在ソラストではスマートホスピタル開発事業部を発足し「リモート医事」を提供しています。BCP対策を意識している方はぜひ一度ご相談ください。

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北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。

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