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病院経営にも重要なスマートホスピタルとは|目的や事例を解説

著者: そだねー

更新日:2023/12/22

公開日:2021/08/02

電子カルテの導入や院内のシステム構築など、医療現場ではこれまでもIT化が進んでいました。今後IT化は単なる業務効率化だけでなく、医療の質向上や患者の満足度向上までを目的として推進されていくものへと変わりつつあります。今回は今後医療機関の経営において重要な戦略となる「スマートホスピタル」について詳しく解説します。

スマートホスピタルとは

スマートホスピタルとは医療機関存続のための経営戦略の1つとして、もしくは高まる医療需要に応えるために必要とされている戦略のことです。さらに詳しく説明すると「IT技術を活かすことで、医療機関全体の質を向上させるための戦略」です。まずはスマートホスピタルとは何かを踏まえて、注目される背景や実際のスマートホスピタル構想についてご紹介します。

スマートホスピタル≒医療機関のDX化

「DX(Digital Transformation):デジタルトランスフォーメーション」という言葉をご存知でしょうか。経済産業省による「DX推進ガイドライン」では、DXを以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

つまり変化の激しい現代において、ITを用いてあらゆるニーズに対応し、新しい価値を生み出すことで競合の中でも上位のシェアを築くことを指します。これまでもあらゆる分野でIT化は推進されており、医療機関もその例外ではありません。電子カルテの導入や院内のシステム構築などは、IT化の一環です。しかしこれは単に院内の業務効率化を目的としており、医療の質向上や患者の満足度向上を目的として実施されているものではありませんでした。ITが徐々に浸透してきた段階で医療機関でも注目され始めているのがDX化、つまりスマートホスピタルなのです。

スマートホスピタルの目的

スマートホスピタルは「医療サービスの質向上」「医療従事者の業務効率化」「患者の利便性向上」を目的としたDX化です。医療サービスや医療従事者、患者の観点からみたあらゆる課題を解決することを目的に、IT技術を浸透させることが求められています。

スマートホスピタルの目的 解決できる課題
医療サービスの質向上 ・適切な医療の提供
・適正な情報管理
・院内感染の防止
・医療事故やミスの低減
医療従事者の業務効率化 ・業務処理の効率化
・人員移動や配置の効率化
・院内物流の効率化
患者の利便性向上 ・待ち時間の短縮
・接遇の質向上

 

IT技術により上記のような課題を解決することで、医療サービスの高度化や業務環境の改善、患者の満足度向上に期待でき、結果的に医療機関の経営の良化に期待できるといえます。またこれらの課題が解決できている、あるいは解決へ進んでいることで、優秀な人材から選ばれる医療機関へと成長できます。これは医療の質向上にも直結し、医療機関改革のための良いサイクルができあがるのです。

スマートホスピタルが注目される背景

医療機関は人々の生活に欠かせない存在であるが故に、時代とともに医療のあり方や患者の求めるニーズも変わりつつあります。それらに対応すべく、病院機能の整理や患者の満足度に目を向けている医療機関も多くなっていることから、必然的に医療従事者・患者からの満足度が低い医療機関は淘汰される時代へとなっているのです。そのためそうならないようにも、医療の質を落とさずに就業者と患者の満足度を向上し、数ある医療機関の中から選ばれる存在になることが求められつつあります。

医療従事者が本来の業務に専念でき、質の高い医療を提供できる環境であり、患者からの満足度が高く信頼される医療機関になるには、今後スマートホスピタルを病院経営の戦略の1つとして実行していくことが必要です。それだけでなく、今後きたる超高齢化社会に対応できる医療を人手不足の中でも維持していくためには、スマートホスピタルが不可欠になるといえます。

スマートホスピタル構想例

名古屋大学医学部附属病院ではメディカルITセンターを中心に、先進技術やICT(情報通信技術)を活用し、院内の効率化や安心安全な医療提供のためのスマートホスピタル構想を確立し始めています。この一環として、夜間はロボットによる薬品や血液製剤、検体の搬送システムが稼働。さらに今後は外部企業との協力のもと、医療デバイスの遠隔監視システムやバイタルのリアルタイム測位が可能なIoTシステムなどの検証・構築・運用を目指しています。

医療機関が抱える課題はさまざまであるため、医療機関ごとに実現すべきスマートホスピタル構想は異なるでしょう。まずはスマートホスピタル構想を実現するためのファーストステップとして、名古屋大学医学部附属病院のようにIT部門を強化し、かつITに強い外部企業を有効活用することもポイントとなります。

スマートホスピタルの事例

ここからはスマートホスピタルの目的別に、具体的な事例をみていきます。参考にできる事例があるかを確認してみてください。

医療サービスの質向上におけるスマートホスピタル

領域 事例
診療補助 ・AIの高いデータ処理能力による、膨大な医療情報データベースとの紐付け、分析
・画像データにおける診断の正確性向上
・内視鏡画像のAI解析、診断サポート
予兆管理 ・患者の病変を予測するシステムの構築
・患者の病状をリアルタイムでモニタリング
・患者の不穏行動の検知
感染防止 ・感染者のGPSデータのトラッキング
・人が行う業務のロボット代替
・医薬品倉庫の自動化による、自動ピッキングと搬送
オンライン診療 ・再診や処方箋受理のための診療の効率化
・COVID-19において浸透したオンライン診療の継続
情報連携・分析 ・医療データの解析の容易化による、より良い医療プロセスの強化
・患者の疾病に関する医療機関横断データの医療機器メーカーや製薬企業での二次利用による、研究開発の活発化

スマートホスピタルにより、医療の品質を改善できる領域には主に上記5つが挙げられます。特にAIによる解析能力の強化や、ロボットによる自動化などが代表的な事例です。たとえば予兆管理における日本の事例では、医療法人団体KNIと日本電気の協力により、入院患者の不穏行動の予兆検知を実施。患者が着用している時計型のセンサーからバイタルデータを取得しAIでデータ解析する実証の結果、患者の不穏予兆を平均40分前に71%の精度で検知することに成功しています。

医療従事者の業務効率化におけるスマートホスピタル

職種別 事例
医師 ・院内コミュニケーションツール「Join」による、医療従事者との連携強化
・医師の指示待ちによって発生していた時間や医療費の削減
・電子カルテへの音声認識ソフトウェア導入による、カルテの入力時間削減
看護師 ・高精度測位技術の導入により、ベッド単位での看護師の動きを把握することでの時間ケアの可視化
・必要な量の看護サービスを提供するための、ウェアラブル端末を用いた患者のバイタル情報のリアルタイム測定
薬剤師 ・紙と目視でチェックしていた医薬品払出業務のバーコードチェック化
・医薬品管理支援システムの導入による、医薬品チェック業務の削減
病院事務 ・医療機器の稼働状況にかかわるデータを可視化、分析することによる、医療機器管理の効率化
・院内の資産管理システムや院内情報システムとの連携による、データ収集の効率化

医師の事例をより詳しくみると、東京慈恵会医科大学附属病院では、2015年より院内コミュニケーションツール「Join」を導入。脳卒中治療の実績に基づきJoinの有効性を数値化したところ、診断時間の40分削減、直接的医療費の8%削減、入院日数の15%削減が実証されました。

医療従事者の業務効率面ではこれまでもIT導入が進んでいたものの、まだまだ随所で無駄が発生しており、特定の有能な個人がマンパワーで乗り越えているケースも見られています。根本的な無駄を解消し、貴重な専門職が本来の業務に専念できる環境を整えることで、院内の業務効率化や医療の質向上だけでなく、優秀な人材を獲得する競争材料としても役立ちます。

患者の利便性向上におけるスマートホスピタル

目的 事例
待ち時間の短縮 ・料金後払いシステム導入による会計待ち時間の短縮、受付の入金業務の自動化、ピーク時間内の会計業務の分散化
・待ち時間にタブレットで問診を完了させることによる、検査や診断の効率化
接遇の質向上 ・健康相談をはじめ、患者のヘルスリテラシーを高めるための、健康相談カウンター「HITO Bar」の設置
・人型ロボット「Pepper」の導入による、総合案内や入院患者のメンタルケアの対応

ここで紹介する患者の利便性向上は設備のようなハード面ではなく、ソフト面にあたるソリューションです。患者が感じる医療機関の利便性はさまざまですが、なかでも待ち時間の長さや受付・案内などのサービスの質は、患者のリピート率に大きく影響するポイントです。患者がより便利に、より快適に医療機関を利用できる状態をつくり上げる大きな要素として、診療時間や待ち時間、接遇の改善は欠かせません。

ソラストが提供するスマートホスピタル

ソラストでは、医療機関が抱える膨大な事務業務に着目したスマートホスピタルサービス「iisy(イージー)」を提供しています。医療事務は診療報酬の算定など専門的な知識・技術を求められる業務が多くある職種です。しかしながら未経験でも就業できるポジションであることから、なかには専門的かつ効率的に医療事務業務を行えていないという課題をお持ちの医療機関もあるでしょう。さらに必要な医療事務員数を満たしておらず医師や看護師も事務業務に追われているというケースも見受けられます。

そこで「iisy(イージー)」であれば、医療事務の専門スキルをもったスタッフが当社のリモートセンターにてリアルタイムで業務に対応。繁忙期の人員補填や院内の密回避、労務管理の軽減やスタッフの残業回避などが実現可能です。さらに患者さまの受付や会計、院内での待ち時間短縮の面でのメリットにも期待できます。医療事務業務は、数ある医療機関の業務の中でもスマートホスピタル化しやすいものの1つです。院内の業務効率化と患者さまの利便性向上のため、まずは医療事務業務の面からスマートホスピタルを始めてみてはいかがでしょうか。

スマートホスピタルは今後の病院経営に欠かせない戦略の1つ!

病院経営の発展のため、そして今後の医療需要に応えるには、医療従事者が働きやすい環境であり、かつ患者さまから選ばれる医療機関になることが求められます。スマートホスピタルはそれらを実現する大きな手段であり、医療機関の未来を支える大きな存在となります。今後さらに顕著になる人材不足問題や目まぐるしく変化する医療需要に備え、早い段階でスマートホスピタル化を検討してみてはいかがでしょうか?ソラストのスマートホスピタルサービスにご興味のある方はぜひお気軽にお問合せください。

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そだねー

そだねー

北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。

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