医療×ITの現状と今後について解説!転職にはどう影響する?
著者: そだねー
更新日:2023/04/28
公開日:2023/04/28
全産業でIT化が加速する中、医療のIT化はどのような状況なのでしょうか。この記事では、医療ITの現状や基本情報、導入が進まない理由などについて解説します。医療ITを導入するメリットや今後の展望ついてもご紹介するので、ぜひ転職の参考にしてください。
目次
医療ITとは?
医療業界におけるIT化とは、IT機器を使用して医療の業務を行えるようにすることを指します。近年、あらゆる業界でITが使用され技術も飛躍的に上がっていますが、それは医療の世界でも同様です。コンピューターを使い遠隔医療を行うことや、タブレット端末を用いて電子カルテを作成することも、医療ITの導入例の一部です。
他にも、データの管理、診療予約、会計、精算をオンライン上で作成、保管できるシステムなどがあります。今後も、医療業界にITの導入が進んでいくことが予想されます。
ITとICTの違い
・IT:情報技術そのもの
・ICT:情報通信技術の活用方法
ITは、「Information Technology」の略で、情報技術そのものを指します。一方、ICTは「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指します。
つまり、ITは通信技術そのものであるのに対し、ICTはその通信技術を使って情報を伝達、受信することを指しているのです。
コンピューターやソフトウェア、アプリケーションなどはITの代表例であり、ICTの代表例として、メールやチャットなどの通信手段が挙げられます。ネットでの検索やインターネットでの買い物、SNSもICTの分野といえるでしょう。
医療業界のIT化の現状
IT機器が多く導入されているイメージの強い医療業界ですが、実際は他業界に比べIT化が遅れているのが現状です。
医療業界におけるIT化のバロメータとして、電子カルテとオーダリングシステムの普及率が挙げられます。
電子カルテの普及率 | |||||
---|---|---|---|---|---|
一般病院 | 病床400床以上 | 病床200~399床 | 病床200床未満 | 一般診療所 | |
平成20年 | 14.2% | 38.8% | 22.7% | 8.9% | 14.7% |
平成23年 | 21.9% | 57.3% | 33.4% | 14.4% | 21.2% |
平成26年 | 34.2% | 77.5% | 50.9% | 24.2% | 35.0% |
平成29年 | 46.7% | 85.4% | 64.9% | 37.0% | 41.6% |
令和2年度 | 57.2% | 91.2% | 74.8% | 48.8% | 49.9% |
オーダリングシステムの普及率 | ||||
---|---|---|---|---|
一般病院 | 病床400床以上 | 病床200~399床 | 病床200床未満 | |
平成20年 | 31.7% | 82.4% | 54.0% | 19.8% |
平成23年 | 39.3% | 86.8% | 62.8% | 27.4% |
平成26年 | 47.7% | 89.7% | 70.6% | 36.4% |
平成29年 | 55.6% | 91.4% | 76.7% | 45.6% |
令和2年度 | 62.0% | 93.1% | 82.0% | 53.3% |
電子カルテとは、患者の診療内容や治療経過などを記録するカルテを電子化したものです。オーダリングシステムとは、検査の実施や薬の処方、投薬などの指示を詳細とともに一括して伝達し、管理するシステムを指します。
どちらも、病床400床以上となると普及率は上がっていますが、一般病院では令和2年度でようやく半数以上になった状況です。この結果からも、医療業界のIT化があまり進んでいない状況がわかります。
医療業界でIT化が進まない理由
便利に思える医療のIT化ですが、日本の医療業界ではなかなか進んでいないのが現状です。ここでは、IT化が進まない主な4つの理由をご紹介します。
院内の各部署の賛同を得るのが難しい
大きな病院では、各部門に分かれて運営されており、別々のシステムを使っていることもあります。すべての部門で同じシステムを導入するのが理想ですが、これまでのやり方に慣れている場合は、変えることに反発が生まれやすくなり、IT化が進めづらい状況になることがあります。
ITシステム同士が連携できない場合がある
新たなシステムが、現在使用しているシステムと連携できず導入が難しいケースがあります。たとえば、院内で新しい業務システムを入れたくても電子カルテと連携できない、といった状況です。
システムを慎重に選ばなければならない手間や設定変更の大変さにより、新しいシステムの導入を躊躇してしまう医療機関もあります。
使いこなすまでに時間がかかる
IT機器に慣れていない人は新しいシステムを使いこなすまでに時間がかかり、億劫に感じやすいでしょう。ただでさえ忙しい医療現場で、さらに労力を伴う作業は敬遠されてしまいやすいです。慣れている従来の方法を選び続けることで、一層新しいシステムに慣れるのにも時間がかかってしまいます。
ITリテラシーに個人差がある
医療関係の職種は仕事上、必ずしもITに多く触れるわけではありません。そのため、当然人によってITリテラシーに差があります。同じシステムや機器を導入しても、順応できる人とそうでない人が出てきて、業務のスピードに差が出てしまうことも。差を埋めるためのITリテラシー教育も時間を多く要するため、導入のハードルとなりやすいでしょう。
医療業界のIT化による利点
医療のIT化にはいくつものメリットがあります。ここでは、導入することで得られる主な4つのメリットについて解説するので、今後のご参考にしてください。
業務効率が高まる
IT機器を導入することで、作業効率が高まります。たとえば、電子カルテでは欲しいデータをすぐに取り出すことができ、時間短縮になります。書き損じなどの人的ミスを防げることも大きな利点です。業務効率が高まることで診察に使う時間も増えるので、より多くの患者さんを診察することや1人の患者さんに向き合うことに時間を割けるでしょう。
人件費が削減できる
IT機器の導入によって事務作業が効率化できれば、短時間で多くの仕事ができ、人員を削減できる可能性があります。ITを管理する人材が別で必要になることもありますが、外注依頼できるシステムを選ぶことも可能です。人件費の削減により、さらなるITの導入に向けて予算を割り当てやすくなるでしょう。
部署間での連携がとりやすくなる
院内で同じシステムを導入することで、運営方法が統一化され連携も容易になります。
大きい病院では、各部署で運営方法が異なる場合もあるため、部署間での連携がスムーズにいかないこともあります。しかし、情報の伝達ミスといったヒューマンエラーも回避できる利点もあります。
感染症の院内感染リスクを下げられる
紙媒体は消毒液による消毒ができないため、感染のリスクが高くなります。IT機器は、基本的にアルコールで消毒ができます。院内感染を防ぐことで、安定した病院運営が可能となるでしょう。ただし、消毒の際に水気による故障には気をつける必要があります。
医療業界のIT化による懸念点
メリットの多い医療のIT化ですが、懸念されることもあります。大きくは下記の2点です。それぞれについて知っておきましょう。
費用がかかる
ITのシステム導入には費用がかかります。システム自体の購入費や運用費ももちろんかかりますが、システムを管理する人材の確保にも費用が必要です。電子カルテの場合には、クラウド型にすることで費用を抑えることもできます。導入時には、IT化による人員削減とシステム管理の人件費をそれぞれ考慮して、最適化を図ることが求められるでしょう。
セキュリティの強化が必要になる
IT化により情報へのアクセスが簡単になる半面、情報漏洩のリスクが発生します。導入に際しては強固なセキュリティ対策が必要となるでしょう。令和4年に厚生労働省が発表した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に則したマニュアルを事前に作成し、安全管理の徹底が必要です。同時に、スタッフのセキュリティ意識を育成する研修を行うことも大切です。
医療×ITの具体的な実践例
ここでは、実際に医療業界でITを導入する際の具体的な実践例についてご紹介します。
電子カルテを導入する
医療のIT化と聞いて、まず思い浮かべるのは電子カルテでしょう。従来、紙で管理していたカルテを電子化し、ITシステム上で管理、使用できます。病院向けや、診療所が使いやすい電子カルテなどもあり、すでに導入している病院やクリニックも多数あり、現在開業する病院では、電子カルテを導入しているケースがほとんどです。
年々電子カルテの普及率が上昇していることもあり、今後も導入する医療機関は増えていくでしょう。
オンライン診療を開始する
スマートフォンやタブレットなどを使って、医師が遠隔で患者さんを診療するITの活用方法です。導入すると来院する患者さんが分散し、病院経営が効率的に行えます。患者さんにとっても、病院へ行く手間や時間をかけずに自宅や職場から受診できるというメリットもあるでしょう。
また、オンライン診療の予約から、薬、処方箋の受け取りまでを一括して行えるシステムもあり、導入している病院やクリニックが増えています。
AIによる診断サポートを導入する
AIによる診断サポートの導入も増えています。今まで積み重ねてきた大量のデータをもとにAIが診断サポートするシステムは、医師を始めとした医療従事者の業務量削減やヒューマンエラーの回避に有効です。使用者の経験値と合わさることで精度の高い診断が期待できるでしょう。
ロボット手術を取り入れる
AIによる、手術をロボットが行うロボット手術は開発段階の分野ですが、診療科により積極的に取り入れを検討されています。手術中の補助をロボットが行うだけでも、医師や看護師の大きな負担軽減となるでしょう。今後、一層の発展が期待されている分野です。
今後の医療業界におけるIT化の展望
医療のIT化によって、医療業界は今後どのように進んでいくのでしょうか。ここでは、その展望について解説します。
医療従事者の必要性
「IT化が進むと、医療従事者の必要性がいずれなくなるのではないか」と懸念する方もいますが、実際にそうなる可能性はほとんどないでしょう。医療従事者には患者の状態の見方など、これまでの経験値により総合的に判断する力があります。また、診療や治療の根幹は人と人とのコミュニケーションのため、医療従事者という職業がなくなる心配はないでしょう。
一方で、今後はIT機器をうまく活用し業務を円滑にまわす医療のITを管理、運用する人材の重要性が増すと考えられています。
医療データの利活用の重要性
医療のIT化が進むことで、より医療データの利活用が重要視されるでしょう。ITは問題解決に必要なデータの種類が多ければ多いほど、最適な状況を作り上げることができます。言い換えると、医療データの利活用が上手くいけばいくほど、医療のIT化に大きな価値が付加されるのです。
今後医療従事者には、医療データの重要性を理解し、活用していくことが求められるでしょう。
医療業界の転職においてITスキルは役に立つ?
医療業界におけるIT化はメリットが大きいため、いくつかのハードルはありながらも進んでいくことが予測されます。診療の予約システムや電子カルテなどはすでに導入しているところが多くあります。
それに伴い、医療業界においてITスキルをもっている人材は一層重宝されるでしょう。活躍の場を広げるためには、意欲的に病院のIT機器やシステムを活用していくことが求められます。そのため、医療業界で働く上で、ITスキルを持っていることで今後大きくプラスに働くでしょう。
医療ITについて知り、ITスキルをアップしましょう
医療のIT化の現状とこれからについて解説しました。進まないといわれている医療のIT化ですが、今後は懸念点を解決し、進んでいくと考えられています。あわせて医療ITの流れを理解し、活用できる人材が医療業界で求められる傾向も高まるでしょう。
IT化は一定の普及を越えると急激に進みます。自分の周囲ではまだ進んでいないという実感がある方も早めに準備をしておくことがおすすめです。自身の磨きたいスキルや目指す働き方が決まったら、それにふさわしい職場を探しましょう。
ソラジョブ医療事務では、医療事務の求人を職種や施設、働き方などから絞って検索することができます。活かせる経験やスキルからも検索できるので、ぜひソラジョブで求人検索をしてみてください。
この記事は役に立ちましたか?
このコラムをシェアする
著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。