退職時に有給を消化できないと言われたら?スムーズに消化する方法や注意点を解説
著者: そだねー
更新日:2025/04/30
公開日:2023/05/19
退職前に有給休暇が残っている場合は、できる限り消化したいものです。しかし、会社によっては拒否されるケースもあります。この記事では、退職前に有給消化するために踏むべきステップや、有給消化を拒否された場合の対処法をご紹介しますので、退職時の参考にしてください。
目次
Q.上司に「有給消化はできない」と言われた。これは違法ではない?
Q.退職日まで日がなく有給を完全に消化できない。余った有給は買い取ってもらえる?
【結論】退職時は基本的にすべての有給を消化できる
有給休暇の取得は、法律で認められた労働者の権利です。たとえ急な退職が決まった場合でも、退職日までの期間を有効に活用すれば、有給休暇をすべて消化することは十分に可能です。
急な退職でも有給休暇の消化はできる
有給休暇の取得は労働基準法により保障されています。労働者が有給休暇の取得を申請すれば、基本的に会社はこれを認めなければなりません。退職日までの期間内であれば、有給を使い切ることが可能であり、未消化のまま退職する必要はないのです。
会社が有給消化を拒否することは基本的に違法である
会社側が退職前の有給消化を拒否することは、原則として認められていません。企業には、業務に支障が出る場合に有給取得時期を変更できる権利である「時季変更権」があります。合理的な理由が認められる場合以外で、時季変更権を行使して有給を使わせない対応は違法と見なされる可能性があります。もし、正当な理由なく拒否された場合は、労働基準監督署への相談が有効です。
有給消化中の給与は通常通り支払われる
有給休暇中であっても、労働者には通常通りの給与が支払われます。そのため、有給を取得しても収入に影響が出ることはありません。なお、退職後に未消化の有給があっても、金銭での補償が行われるケースは極めて稀です。もし会社が給与の支払いを怠った場合には、労働基準監督署に相談することで対応が可能です。
【退職前に要確認!】有給休暇の基本
退職前に有給休暇を適切に消化するためには、有給の基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。有給取得の条件や使用時期、時効の有無など、事前に確認すべき点を整理して解説します。
有給を消化できる従業員の条件とは
下記の2点を満たすすべての従業員が有給を取得できます。
(1)企業が雇い入れの日から6カ月経過している
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤している
有給取得の条件に雇用形態は問われません。上記の条件を満たせば、パートやアルバイトなども有給を取得できます。また、2019年の労働基準法改正により、会社は年に5日の有給を時季指定で従業員に取得させる義務が発生しました。
継続勤務年数により有給の日数が決まる
有給の発生日数は継続勤務年数により変わる仕組みです。まず、入社した日から6カ月経過した日に10日の有給が発生します。その後は、以下の表の通り、1年経過ごとに有給が増えていくのが特徴です。
【労働基準法で定められた最低限の有給日数】
継続勤務年数 | 発生する有給の日数 |
---|---|
6カ月 | 10日 |
1年6カ月 | 11日 |
2年6カ月 | 12日 |
3年6カ月 | 14日 |
4年6カ月 | 16日 |
5年6カ月 | 18日 |
6年6カ月以上 | 20日 |
ただし、就業規則などにより、上記よりも多くの有給を定められている場合もあります。退職前に有給消化したいならば、事前に就業規則を必ず確認し、発生する有給の正確な日数を把握しましょう。
有給は基本的にいつでも消化できる
有給の消化は在籍するすべての従業員に与えられた権利です。有給は退職日まで自由に消化できます。退職日とは、退職届に記入された日付のことです。
退職日は退職者の都合に合わせて決定できます。ただし、会社の規定で退職届の提出期限が定められているケースが多くあります。民法第627条では、最低でも退職したい日の2週間前までに退職届を出さなければいけないとされています。
有給の消化には時効がある
有給を消化せずに残した場合は、有給が発生した日から2年間で消滅します。有給発生の基準日は入社6カ月後のため、最初に発生した有給を消化できる期限は、2年後の同じ日です。退職前に有給消化できる日数をカウントする際には、上記の点に注意しましょう。
有給を消化しないで退職すると消滅する
有給休暇は法律で定められた労働者の権利ですが、使用しなければそのまま消滅してしまいます。とくに退職時には注意が必要で、退職後に有給を持ち越すことはできません。
また、会社には未消化の有給を買い取る義務も原則としてありません。したがって、退職前に自ら有給消化を申し出なければ、その権利は自動的に失われます。後悔しないためにも、計画的に有給を申請しておくことが重要です。
退職時によくある有給消化のパターン
退職前に有給休暇をどのように消化するかは、働く人にとって重要な検討事項です。ここでは、実際によく見られる有給消化のパターンを2つ紹介します。
最終出勤日より前に有給を消化するパターン
この方法は、退職日までにすべての有給休暇を使い切るもっとも一般的なパターンです。円満退職を目指す場合に適しており、事前に業務の引き継ぎを済ませておくことが求められます。会社とのスケジュール調整が必要ですが、スムーズな退職につながりやすいため、多くの人に選ばれています。計画的な準備が不可欠です。
最終出勤日の後に有給を消化するパターン
この方法では、最終出勤日を終えた後に有給休暇を消化し、形式上はその期間中も在籍していることになります。実質的には「有給を使いながら退職を待つ」形です。
ただし、会社によってはこの取り扱いを認めていない場合もあります。また、退職日が後ろ倒しになることで、次の職場とのスケジュール調整が必要になることもあります。
退職時に有給をすべてスムーズに消化する3つのSTEP
退職日までにできるだけ多くの有給消化をしたい場合、どのようなステップで準備を進めればよいのでしょうか。ここでは、退職までにできるだけ有給消化するための3つのステップについて紹介します。
1.引き継ぎにかかる日数を計算する
まず、退職前に業務の引き継ぎにかかる日数を計算します。その際には、業務を引き継いでくれる社員や部署のスケジュールも考慮しましょう。
繁忙期に重なっていたり他の社員が業務に追われていたりする場合、業務の引き継ぎに手間取ることも考えられます。マニュアルの作成や業務整理など業務の引き継ぎのために必要な作業は多いです。引き継ぎ日数は余裕を持たせて見積もりましょう。
2.スケジュールを逆算して退職日を決める
退職日以降に有給休暇を消化することは不可能です。残された有給をできるだけ多く消化したいならば、余裕を持って退職日を決めましょう。
あらかじめ業務の引き継ぎのスケジュールを組んでおき、そこから逆算して退職日を決めると安心です。ただし、引き継ぎのスケジュールは職場に迷惑がかからないように考慮しましょう。
3.退職と有給消化の意向を早めに会社に伝える
退職の意向はできるだけ早く伝えることが大切です。後任者の決定や業務の引き継ぎをスムーズに進められます。自身がいなくても、業務が回る体制を会社側が早めに整えられるようにスケジュールを組むことが重要です。
上司が多い職場の場合は、退職の意向をより早く伝えましょう。なぜなら、すべての上司に退職の意向が伝わるまでに時間がかかるためです。
また、退職の意向を伝えると同時に、残っている有給を消化したいことも伝えましょう。どのように有給を消化するのか、退職日や業務の引き継ぎとの兼ね合いを踏まえて、会社と相談して決めます。
退職時に有給消化を拒否されたときの対処法
退職前の有給消化を会社から拒否された場合はどうすればいいのでしょうか。ここでは、退職前の有給消化を拒否されたときの対処法にご紹介します。
有給取得の権利と時季変更権
従業員は自分の好きなときに有給休暇を請求できる権利があると、労働基準法第39条労働基準法第39条に規定されています。会社(使用者)は法律により従業員の請求に応じて有給を与えなければならず、有給を断ることはできません。
ただし、会社には「時季変更権」が与えられていて、有給を消化したい時季が業務に影響を及ぼす場合は、会社が他の時季に変更できます。業務への支障を理由に、特定の期間の有給取得を会社が断るのは、違法行為ではありません。
「時季変更権」を理由に有給消化を拒否されたときの対処法
「業務に支障をきたす」との理由で、今のタイミングでは有給をとれないと断られた場合には、下記の方法で「業務に支障をきたさない」有給消化を提案しましょう。
退職日を変更する
退職日の変更は職場への影響をもっとも抑えられる方法です。退職日を先に延ばすことで、余裕を持って業務の引き継ぎを行い、残った期間で有給を消化できます。すべての業務の引き継ぎが完了した最終出社日の後で有給をまとめて消化する方法です。
ただし、有給消化の期間と転職先の試用期間が重なる可能性に注意しましょう。また、転職先の入社日が決まっている場合は、退職日の変更で有給を消化しきれない可能性があります。
連休でなく飛び石での使用を提案する
サービス業やシフト制の仕事をしている場合、有給消化で連休を作ると職場に大きな負担をかけます。業務への影響から、連休の取得を断られる可能性が高いです。この場合は、有給を飛び石で取得していく方法をおすすめします。これは、最終出社日までに少しずつ有給を消化していく方法です。
職場の繁忙日などを避けて、比較的余裕のある日に有給を消化すると、職場に迷惑をかけません。また、有給消化を認めてもらいやすくなるでしょう。
半日や時間単位の使用を提案する
有給休暇は1日単位での消化が基本ですが、使用者が認めれば半日単位の取得も可能です。また、年に5日を限度として有給を時間単位で取得することも認められています。
たとえば、業務の引き継ぎや会議の時間だけ出社して、残りの時間で有給を消化することができ、職場の負担の軽減が可能です。
半日単位や時間単位で有給を消化したいならば、退職日のかなり前から計画的に有給を消化し、なおかつ早めに退職の意向を報告する必要があります。
退職時の有給消化に関するよくある質問と回答
Q.上司に「有給消化はできない」と言われた。これは違法ではない?
Q.退職日まで日がなく有給を完全に消化できない。余った有給は買い取ってもらえる?
退職前の有給消化について、よくある質問と回答をご紹介します。退職前の方はぜひチェックしてみてください。
Q.上司に「有給消化はできない」と言われた。これは違法ではない?
A. 労働基準法第39条の違反です。
使用者(会社側)はどのような理由であっても有給を断ることはできません。直属の上司に断られた場合には、さらにその上の上司か人事部に相談してみましょう。労働基準法の知識を持っている人と相談することが大切です。万が一、人事部からも拒否された場合は労働基準監督署に相談しましょう。
労働基準法改正により、年間10日以上の有給が発生した労働者について、使用者は最低でも年間5日の有給を取得させなければいけません。この場合に有給を取得するタイミングは、あくまでも労働者が希望する時期で取得するのが前提です。有給を1日も取得していない労働者が退職する場合は、会社側が最低でも5日の有給を取得させなければなりません。退職前に有給消化をするつもりがなくても、年間5日以上は有給を消化する必要があることを覚えておきましょう。
Q.退職日まで日がなく有給を完全に消化できない。余った有給は買い取ってもらえる?
A. 原則として買い取り義務はなく、会社の判断によります。
原則として、会社には未消化の有給休暇を買い取る義務はありません。ただし、実際に取得できる状況がない場合など、企業の裁量で買い取りに応じることもあります。最終出勤日までに有給をすべて使い切ることが理想ですが、現実的に難しい場合は、早めに会社と相談することが重要です。
Q.退職前の有給消化中にボーナス支給日があるが、ボーナスは受け取れる?
A. 退職日以前であれば在籍している従業員として受け取る権利があります。
ただし、支給額については、会社に裁量があるため就業規則で確認しましょう。また、退職日以降であっても、支給条件を満たせばボーナスを受け取れます。たとえば、会社規定に「◯月◯日時点で在籍している従業員をボーナス支給対象とする」といった記載がされている場合は受け取れる可能性があるでしょう。
Q.有給消化中の転職活動は可能?
A. 有給消化中の転職活動は問題ありません。
有給休暇中は就業義務が免除されているため、転職活動を行うこと自体に法的な問題はありません。面接や職場見学などを予定する場合でも、自由にスケジュールを組むことが可能です。
ただし、現職での業務が未完了のままである場合は、引き継ぎなどへの影響を考慮する必要があります。
Q.有給消化中に転職先の仕事を始めてよい?
A. 原則禁止であり、就業規則に違反する可能性があります。
有給休暇中は在職扱いであるため、本来の勤務先との雇用契約が継続している状態です。そのため、無断で他社で働くことは就業規則に抵触する可能性があります。副業を禁止している企業もあり、事前に確認を行わずに業務を始めると懲戒対象となるおそれもあるため、十分な注意が必要です。
Q.パートなど正社員以外の場合、退職時の有給消化は可能?
A. 雇用形態に関係なく有休の消化は可能です。
有給休暇の取得は雇用形態に関係なく、所定の条件を満たしていればすべての労働者に認められる権利です。パートやアルバイトなどの非正規雇用者でも、勤務日数や勤続年数に応じて有給が付与されます。退職時であっても、その有給を消化することは正当に認められます。
退職日までに計画的に有給を消化しましょう
有給消化は労働者に認められた権利のため、退職日までであれば基本的に自由に有給を消化できます。ただし、業務の引き継ぎをきちんと行うことが前提となるため注意しましょう。
早めに退職の意向を伝え、業務の引き継ぎに取り組み、余裕を持ったスケジュールで有給消化することをおすすめします。会社によっては有給の買い取り制度があるため、事前に確認しておきましょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。