訪問介護の特定事業所加算とは?加算要件一覧や種類を徹底解説!
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2021/05/26
訪問介護員として働くにあたり、押さえておくべきものの1つに特定事業所加算があります。これは事業所の経営にもかかわるものであり、個人が加算制度を意識して働くことが重要です。そこで今回は、訪問介護の特定事業所加算について詳しく解説します。
訪問介護の特定事業所加算とは?
特定事業加算とは、介護サービスの質向上を目的として作られた、事業所の評価制度です。特定事業所加算を満たしていることで、事業所の総売り上げから区分に応じた割合がプラスで支払われます。つまり一定評価を満たしている質の高い訪問事業所は、手当がもらえるということです。
特定事業所加算では、事業所の抱える人材や体制など、あらゆる観点に評価要件が設けられており、Ⅰ〜Ⅴまでの区分の中で満たしている要件によって加算率が変動します。
この評価制度を受けるには、国の定める一定基準をクリアした上で、届け出が必要です。また特定事業所加算の要件は、訪問介護サービス用と居宅介護サービス用で分かれています。
特定事業所加算2021年度改定版の主な変更点
2021年度の介護報酬改定により、特定事業所加算に新たな評価区分が追加されました。そのため2021年4月より、改定後の加算が適用されています。
大きな変更点は、これまでⅠ〜Ⅳだった特定事業所加算に「特定事業所加算(Ⅴ)」が新設されたことです。特定事業所加算Ⅴの評価区分は「人材要件」であり、勤続7年以上の職員の割合に関する内容となっています。訪問介護員などの総数のうち、勤続7年以上の職員が30%以上を満たしていることで、所定単位数の3%が加算されるようになりました。
今後高まる介護需要に対応するため、訪問介護事業所はサービス提供体制を強化していく必要があります。そのことからも、勤続年数が一定期間以上の職員割合が評価区分に追加されたのです。
【2021年度改訂版】訪問介護の特定事業所加算における加算率
Ⅰ〜Ⅴまで設けられている評価区分に合わせて、加算される割合は以下のように異なります。
特定事業所加算Ⅰ | 20% |
---|---|
特定事業所加算Ⅱ | 10% |
特定事業所加算Ⅲ | 10% |
特定事業所加算Ⅳ | 5% |
特定事業所加算Ⅴ | 3% |
それぞれの区分によって設定されている要件は異なり、もっとも高いのは20%が加算される特定事業所加算Ⅰです。たとえば特定事業所加算Ⅰを満たしている事業所であれば、総売り上げの20%が国から支払われます。
事業所からすれば、もっとも加算率の高い特定事業所加算Ⅰを算定したいものです。しかしその要件は非常に厳しいため、より多くの事業所が算定できるように、Ⅳまで徐々に要件が緩和していく仕組みとなっています。
特定事業所加算の算定要件一覧
では、特定事業所加算の要件にはどのような内容が設定されているのでしょうか。以下の一覧表に、12の算定要件をまとめています。
体制要件 | (1)訪問介護員等ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施 |
---|---|
(2)利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催 | |
(3)利用者情報の文書等による伝達(※)、訪問介護員等からの報告 (※)直接面接しながら文書を手交する方法のほか、FAX、メール等によることも可能 |
|
(4)健康診断等の定期的な実施 | |
(5)緊急時等における対応方法の明示 | |
(6)サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施 | |
人材要件 | (7)訪問介護員等のうち介護福祉士の占める割合が30%以上、又は介護福祉士、実務者研修修了者、並びに介護職員基礎研修課程修了者、及び1級課程修了者の占める割合が50%以上 |
(8)全てのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士、又は5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者、若しくは介護職員基礎研修課程修了者若しくは1級課程修了者 | |
(9)サービス提供責任者を常勤により配置し、かつ、同項に規定する基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置していること (新)訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること |
|
重度者対応要件 | (10)利用者のうち、要介護4、5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が20%以上 |
(11)利用者のうち、要介護3~5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が100分の60%以上 |
特定事業所加算Ⅰ〜Ⅴのどの算定になるかは、満たしている要件に基づくものであり、数の多さではありません。下記でそれぞれの区分を満たすにあたり、必要となる要件を詳しくみていきます。
特定事業所加算Ⅰ
加算率20%の特定事業所加算Ⅰになるには、12の算定要件のうち8つを満たす必要があります。8つの要件は、上記一覧における以下の項目です。
体制要件 | (1)(2)(3)(4)(5) |
---|---|
人材要件 | (7)(8) |
重度者対応要件 | (10) |
特定事業所加算Ⅱ
加算率10%の特定事業所加算Ⅱになるには、12の算定要件のうち6つを満たす必要があります。6つの要件は、上記一覧における以下の項目です。
体制要件 | (1)(2)(3)(4)(5) |
---|---|
人材要件 | (7)または(8) |
重度者対応要件 | なし |
特定事業所加算Ⅲ
加算率10%の特定事業所加算Ⅲになるには、12の算定要件のうち6つを満たす必要があります。6つの要件は、上記一覧における以下の項目です。
体制要件 | (1)(2)(3)(4)(5) |
---|---|
人材要件 | なし |
重度者対応要件 | (10) |
特定事業所加算Ⅳ
加算率5%の特定事業所加算Ⅳになるには、12の算定要件のうち7つを満たす必要があります。7つの要件は、上記一覧における以下の項目です。
体制要件 | (2)(3)(4)(5)(6) |
---|---|
人材要件 | (9) |
重度者対応要件 | (11) |
特定事業所加算Ⅴ
加算率3%の特定事業所加算Ⅴになるには、12の算定要件のうち6つを満たす必要があります。6つの要件は、上記一覧における以下の項目です。
体制要件 | (1)(2)(3)(4)(5) |
---|---|
人材要件 | (新) |
重度者対応要件 | なし |
【2021年度改訂版】特定事業所加算の注意点
2021年度の改定により、以下の注意が必要です。
・加算Ⅴは、加算Ⅲとの併算定が可能
・加算Ⅴは、加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅳとの併算定は不可
新設された特定事業所加算Ⅴは人材要件を主としているため、人材要件のない加算Ⅲのみと併算定が可能であることを押さえておきましょう。加算Ⅲと加算Ⅴを併算定することで、合計13%の加算率となります。
訪問介護には評価制度として特定事業所加算がある!
今回は訪問介護の評価制度である、特定事業所加算について詳しく解説しました。
訪問介護員として働く場合、サービスの質向上を目的に設定されている加算制度を理解しておくことも重要です。今記事を参考に、特定事業所加算について押さえましょう。
またソラストでは、訪問介護の求人を豊富に掲載しています。ぜひ訪問介護員への就職・転職を検討している方は、参考にしてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。