介護施設事故の報告書とは|目的や内容、作成のポイントを解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2024/10/23
公開日:2022/03/29
介護施設での事故は起こらないことがベストですが、さまざまな状況から事故が発生してしまうことも。事故が起こってしまった際は利用者さんの身体状況の確認、ご家族や医療機関への連絡とやることがたくさんありますが、忘れてはならないのが報告書の作成です。今回は介護施設事故の報告書について、書く目的や内容、作成のポイントなどを詳しくお伝えします。
目次
介護施設事故の報告書とは
介護施設で事故が発生した際、職員がやるべきことの1つに介護施設事故の報告書の作成があります。まずは、介護施設事故の報告書とは何かについて詳しくお伝えします。
介護施設事故の報告は義務付けられている
介護施設に設けられている「人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」では、以下のように記載があります。
(事故発生の防止及び発生時の対応)
第36条 介護老人保健施設は、事故の発生又はその再発を防止するため、次の各号に定める措置を講じなければならない。
2. 介護老人保健施設は、入所者に対する介護保健施設サービスの提供により事故が発生した場合は、速やかに市町村、入所者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
3. 介護老人保健施設は、前項の事故の状況及び事故に際して採った措置について記録しなければならない。
4. 介護老人保健施設は、入所者に対する介護保健施設サービスの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
上記は、介護等人保健施設の基準から抜粋したものです。厚生労働省でも定められているように、介護施設で事故が発生した際は事故や措置の内容の記録、そして報告が義務付けられています。
なお、報告の対象となるのは介護サービスを提供する全ての介護施設です。報告書の様式は特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設を想定して作成されていますが、有料老人ホームやサ高住、居宅系介護サービスなどにも積極的な活用が呼びかけられています。
介護施設事故を報告する基準
令和3年3月19日に厚生労働省老健局から発信された「介護保険最新情報」では、介護施設事故の報告対象について、以下のように明記しています。
・下記の事故については、原則として全て報告すること。
①死亡に至った事故
②医師(施設の勤務医、配置医を含む)の診断を受け投薬、処置等の何らかの治療が必要となった事故
・その他の事故の報告については、各自治体の取扱いによるものとすること。
死亡事故、そして事故により利用者に治療が必要になった場合は原則全ての事故が報告対象です。そのほか、自治体によって独自に報告を定めている内容もあります。下記は、千葉県柏市における介護施設事故の報告基準です。
① 死亡に至った事故(死亡後に相当期間放置された場合を含む。)
② 医師の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故
③ 利用者に対する虐待
④ 従業者の不祥事等により、利用者の処遇に影響があるもの(個人情報漏洩、職員による窃盗等)
⑤ 火災、自然災害等により、サービスの提供に支障を生じる場合
⑥ 利用者に対するサービス提供などの業務遂行により発生若しくは請求された損害賠償事故
⑦ 市の社会福祉施設主管課及び保健所への報告が求められている食中毒及び感染症等(注釈)が発生した場合
⑧ その他必要と認められるもの(利用者家族とのトラブルになっているもの、その後の経過)
①②は原則で定められている内容であり、③以降は柏市が独自に明記している内容です。自治体によって報告基準も異なるため、介護施設がある自治体の報告基準を押さえておく必要があります。
介護施設事故報告書の提出期限
介護保険最新情報では、報告期限について以下のように発信しています。
・第一報は、少なくとも別紙様式内の1から6の項目までについて可能な限り記載し、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出すること。
・その後、状況の変化等必要に応じて、追加の報告を行い、事故の原因分析や再発防止策等については、作成次第報告すること。
原則発生から5日以内ですが、可能な範囲で迅速に報告することが求められています。
介護施設事故の報告書を提出しないとどうなる?
報告書の提出は義務であり、提出しないことで行政の指導が入ります。また介護報酬の減算のほか、悪質とみなされてしまうと最悪のケースで指定取り消しや運営停止の処分を受け可能性もあります。介護施設事故の報告書はそれだけ介護施設の運営に重要なものであるため、必ず提出しなければなりません。
介護施設事故の報告書を作成する目的
介護施設での事故はどの事業所でも起こりうるものであり、心身機能の低下している高齢者に対してサービスを提供する場であるからこそ事故発生のリスクが高い状況にあります。その中で事故発生のリスクを最大限除去するために必要なのが、介護施設事故の報告書です。ここでは介護施設事故報告書を作成する目的から、その重要性についてお伝えします。
介護事故の発生・再発防止
最大の目的は、介護事故の発生・再発防止です。一度起きてしまった事故は、再発防止しなければなりません。そのためには事故内容が振り返れる報告書が重要であり、報告書を分析することで必要な改善策が考えられます。また報告は自治体ごとにされるものですが、報告内容は広く共有されます。そのため他の介護施設で起こった事故報告を踏まえ、当該施設でその事故を防ぐためにどんな策を取るべきかが検討できます。つまりどんなに小さな報告でも全ての介護施設に役立つものであり、介護施設の安全を守るためには欠かせないものなのです。
介護サービスの質向上
報告書があることで事故の詳細が職員全体に周知でき、結果的に介護サービスの品質向上に直結します。報告書にある事故内容は、介護施設で起こりうるものです。職員全体がその点を意識し、事故の発生・再発の防止に努めることで施設全体のサービスの品質向上が期待できます。単に個々が報告書に目を通すだけでなく、全体で事故発生・防止のための改善策が出せるとベストです。
情報開示
報告書は情報開示にも役立つものであり、万が一訴訟になった場合は事業所や職員の身を守る役割も果たします。事故にあった際、施設や職員の対応に問題がなかったことを証明するためにも報告書は欠かせません。事故の詳細をご家族にしっかりと伝えるため、そして適切な対応をしたことを証明するためにも報告書の作成は重要です。
介護施設事故報告書の内容
下記は、標準化された介護施設事故報告書の様式における報告書の内容です。
1. | 事故状況 | ・事故状況の程度 ・死亡に至った場合の死亡年月日 |
---|---|---|
2. | 事業所の概要 | ・法人名 ・事業所(施設)名 ・事業所番号 ・サービス種別 ・所在地 |
3. | 対象者 | ・氏名、年齢、性別 ・サービス提供開始日 ・住所 ・身体状況:要介護度、認知症高齢者日常生活自立度 |
4. | 事故の概要 | ・発生日時 ・発生場所 ・事故の種別 ・発生状況、事故内容の詳細 ・その他特記すべき事項 |
5. | 事故発生時の対応 | ・発生時の対応 ・受診方法 ・受診先:医療機関名、連絡先(電話番号) ・診断名 ・診断内容 ・検査、処置等の概要 |
6. | 事故発生後の状況 | ・利用者の状況 ・家族等への報告:報告した家族等の続柄、報告年月日 ・連絡した関係機関(連絡した場合のみ) ・本人、家族、関係先等への追加対応予定 |
※第一報では6までを可能な限り記載し、5日以内に提出※ | ||
7. | 事故の原因分析 | 本人要因、職員要因、環境要因の分析 |
8. | 再発防止策 | 手順変更、環境変更、その他の対応、再発防止策の評価時期及び結果等 |
9. | その他 | 特記すべき事項 |
報告書は上記様式に沿っていれば介護施設が独自に作成したものを使用しても問題ないとしていますが、行政への報告はできる限り標準化した様式を使用することが求められています。各自治体で報告書のテンプレートがダウンロードできるため、そのまま使用して報告書を作成しましょう。
介護施設事故報告書の作成のポイント
介護施設事故の報告書は、介護施設全体に共有される重要なものです。活用しやすい報告書を作成するには、以下ポイントを押さえて報告書を作成することが大切です。
5W1Hを意識する
報告書のメイン項目でもある事故発生状況は、5W(When:いつ/Where:どこで/Who:誰が/What:何を/Why:なぜ)1H(How:どのようにして)を意識して書くことがポイントです。どんな事故がいつどこで、誰によってなぜ起こってしまったのか、誰が見てもその時の状況が把握できるよう作成しましょう。
客観的に書く
事故原因を分析することも目的としているため、誰が見ても事故状況がイメージできるよう作成する必要があります。そのためには、事実を客観的に書くことがポイントです。たとえば転倒事故の報告書であれば、単に「転倒した」と書くだけでは、利用者さんがどのような状況で転倒していたかがわかりません。そのため、どこでどのような状態で転倒していたのか、なぜそのように転倒してしまったのかが分析できるよう書くことが求められます。文章で説明するのが難しい場合は、写真や動画などを活用して表現するのも1つの方法です。
誰でもわかるように短文かつ簡潔に書く
誰でもわかる報告書にするには、専門用語や難しい言葉、内輪での略語などは使わずに文章を作成しましょう。また要点がわかるよう、必要な情報を押さえて短文で簡潔に書くことがポイントです。行政や利用者の家族など第三者に開示される可能性もあるため、わかりやすさを重視して作成してください。
介護施設事故の報告書作成は義務!事故発生・再発防止やサービスの質向上に欠かせないもの
介護施設事故の報告書は作成が義務付けられており、介護施設全体での事故発生・再発防止に欠かせないものです。高齢者の心身の健康と安全を守るための介護施設において、事故は起こってはなりません。しかし100%防ぐことは難しいなか、最大限リスクを排除するためには施設全体で事故に対する意識を持ち、改善策を心得ておくことが必要です。今記事を参考に、介護施設事故の報告書の重要性や作成のポイントを押さえてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。