レセプトによる診療報酬の請求とは?請求の流れや請求先などについて解説
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2021/12/16
レセプト請求は、医療事務が担当する重要な仕事です。未経験・無資格からでもなれる医療事務ですが、レセプト業務は専門的な分野です。未経験から医療事務になる場合、そもそもレセプトとは何か、何を誰に請求するものなのかわからない方も多いでしょう。ここではレセプト請求に関して押さえておくべき内容を詳しく解説します。
目次
レセプトによる診療報酬の請求とは
レセプトは、「診療報酬明細書」と言われる保険者への請求書です。
保険者に負担してもらう費用を算出し、請求する一連の業務をレセプト業務と言います。レセプト業務は医療事務が担当する重要な業務であり、医療機関の収入を支えるために必要不可欠です。ここではレセプトへの理解を深めるため、診療報酬の請求から支払いまでの仕組み、そして診療報酬の支払い元である各種機関について解説します。
診療報酬の請求から支払われるまで
Step.1 | 医療機関が診療報酬明細書(レセプト)を支払基金へ送付 |
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Step.2 | 診療報酬明細書(レセプト)の内容を支払基金が審査 |
Step.3 | 支払基金から保険組合へ診療報酬(セレプト)を送付 |
Step.4 | 診療報酬は支払基金を通し医療機関へ |
医療機関の収入は診療報酬で成り立っており、診療報酬は患者さまと保険機関の2つから支払われます。受診時に窓口で支払われるのは、患者さま負担分の3割です。患者さまは、加入している保険機関に毎月保険料を支払っているため、全額は負担しません。残りの7割は保険機関から支払われますが、いくら支払う必要があるのかを算出するために医療機関はレセプトを作成します。作成したレセプトは直接保険機関へ提出するのではなく、審査支払機関を中継します。審査支払機関がレセプトを精査し、保険機関が受領することで診療報酬が審査支払機関へと支払われます。そして最終的に審査支払機関より、医療機関に診療報酬が支払われるのが一連の流れです。
審査支払機関の種類
審査支払機関は、レセプトの内容を精査し、保険機関から医療機関への支払いを代行する役割を持ちます。つまりレセプト内容が正しいか公正かつ適正に審査した上で支払いを実行する、第3者機関です。審査支払機関には、以下2種類があります。
社会保険診療報酬支払基金(社保)
通称「社保」と呼ばれる社会保険診療報酬支払基金は、特別民間法人の機関です。東京に本部を置き、各都道府県に支部が設置されています。法人で働く方は、職域保険である社会保険に属しています。社保は診療報酬関連の業務の他に、高齢者医療制度や介護保険関連の業務も担当しています。
国民健康保険団体連合会(国保)
通称「国保」と呼ばれる国民健康保険団体連合会は、47都道府県ごとに設置されている公法人の機関です。保険者は市町村や国保組合であり、各都道府県にそれぞれの団体があります。法人に属さず個人事業を営んでいる、または退職している高齢者などは、国民健康保険に属しています。
レセプト請求の流れ
審査支払機関へレセプトを提出し、内容に不備がなければ診療報酬が支払われます。以下は、レセプト請求までの一連の流れです。
Step.1 | レセコンに診療情報を入力 |
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Step.2 | レセプトの作成 |
Step.3 | レセプトの点検 |
Step.4 | レセプトを審査支払機関に提出・診療報酬の請求 |
レセプトは、患者ごとに毎月作成します。医療現場でのIT化に伴い、レセプト請求も基本的にはオンラインでの対応となります。以下では、オンラインと紙媒体でのレセプト請求についてお伝えします。
オンラインでのレセプト請求
オンラインでのレセプト請求では、日々の業務でレセコン(レセプトコンピューター)に必要な診療情報を入力し、提出期限までにデータを送信します。レセコンとは、診療内容に応じてコードや品番を入力することで、自動的に診療報酬点数が計算してくれるコンピューターのことです。
請求にあたり、日々入力された1ヶ月分の内容を点検・確認して、審査支払機関へ提出するレセプトを作成します。内容に不備があると「査定」や「返戻」を受けてしまい、診療報酬点の減点や再提出の手間などが発生してしまいます。レセプト請求はレセコンによる自動化があるとしても、正確性が求められる業務なのです。
紙媒体でのレセプト請求
紙媒体によるレセプト請求は、提出期限までにレセプトを郵送します。紙媒体の場合は、社保と国保でそれぞれフォーマットがあるため、それに則ってレセプトを作成します。
近年は紙媒体によるレセプト請求は減少しており、2021年3月処理分では、紙媒体による請求は全体の6%です。紙媒体は業務効率化の面で劣っているだけでなく、郵送の手間やコストがかかり、かつ紛失のリスクもあります。そのため多くの医療機関では、それらのデメリットが解消でき、業務効率化にもなるオンライン請求が一般的です。
労災のレセプト請求の流れ
仕事中に発生した怪我で医療機関にかかった際には、労災扱いとなります。労災の場合は別途、電子レセプトの作成が必要です。診療費の内訳である「労災レセプト」、そして完治や再発防止のためのアフターケアに伴って発生したアフターケア委託費の内訳である「アフターケアレセプト」があります。
オンラインでの労災レセプト請求
オンライン請求を行うには、都道府県労働局に「(労災)電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出」の提出が必要です。提出後、労働局よりIDとパスワードが記載された「労災レセプト電子処理システムユーザー設定情報」が送付されるため、コンピューター上で必要情報を入力します。労災は社保と国保のネットワークを共用しているため、同じシステムで都道府県労働局へとレセプト請求できます。
紙媒体での労災レセプト請求
紙媒体で労災レセプトを請求する場合は、各県の労働局からフォーマットをダウンロードしてレセプトを作成する方法が一般的です。たとえば東京都であれば、東京労働保険医療協会のホームページから用紙がダウンロードできます。必要な情報が記入できれば、提出締切日に合わせて送付することでレセプト請求が完了し、郵送以外ではFAXでの請求も可能です。
生活保護受給者のレセプト請求の流れ
生活保護受給者の場合、レセプト請求の流れは社保や国保の被保険者とは異なります。生活保護受給者は保険証がないため、福祉事務所から発送された医療券を提出して受診します。そして医療機関は、医療券に基づいてレセプトを作成。生活保護受給者は国民健康保険の被保険者から除外されているため、請求先は社保です。そしてレセプトは福祉事務所ごとにまとめられ、社保へ請求されます。社保はレセプトを審査して各都道府県へと請求し、受理されることで診療報酬が支払われます。
レセプト請求に提出期限はある?いつまで?
レセプト業務にあたり、忘れてはならないのは提出期限です。ここでは、レセプト請求の提出期限について解説します。
通常のレセプト請求期限に
その月のレセプトは、翌月10日までに審査支払機関へ提出しなければなりません。そのため医療機関では、月末から10日の間にレセプト業務が集中します。一方、何らかの事情で翌月10日までにレセプト請求ができなかった場合は、「月遅れ分」として翌月に請求する必要があります。レセプトが期限内に請求できなければ、診療報酬の支払いも後回しになってしまい、医療機関の利益回収も遅れをとってしまいます。
レセプト返戻後の再請求期限
医療機関が提出したレセプト内容が、審査支払機関に適当でないと審判断されると、「レセプト返戻」としてレセプトが差し戻されます。差し戻されてしまっても、内容の不備や間違いを確認し、修正することでレセプトの再請求が可能です。
再請求の最終時効は診療月の翌月1日を起算日とし、令和2年3月分診療分までは3年間、令和2年4月診療分以降は原則5年間とされています。なお、この期限はレセプト返戻の有無に関わらず適用されます。
レセプト請求における保険証枝番について
被保険者の所有する保険証には、枝番が記載されています。ここではレセプト請求における、保険証枝番についてお伝えします。
保険証(被保険者証)の枝番とは
枝番とは、被保険者証などに記載されている個人を識別するための2桁の番号です。2021年よりオンライン資格確認が開始されることに伴い、保険証の記号・番号を個人単位化するために付与されます。
退職や転職などの理由から資格喪失しているにも関わらず、保険証を返還せずにそのまま使用する不適切なケースが生じる可能性があり、このような事例の防止、かつ事務業務の効率化を図ることを背景に、2021年よりオンライン資格確認が順次開始が決定されました。
レセプト請求における枝番の扱い
枝番は、2020年10月1日以降、各保険者の状況を踏まえて順次記載されています。そのためレセプト請求では、記録条件仕様で定められた資格確認レコード内に、枝番を記録する必要があります。しかし2021年8月診療以前分は、枝番記録の省略が必要であり、枝番がなくともレセプト請求が可能です。一方2021年9月診療分、つまり2021年10月請求分からは、枝番の記録が必要になります。
一方枝番に対応するためのレセコン改修などが間に合わないケースも考えられ、かつ発行済みの被保険者証には枝番が付与されていないものもあります。そのため経過措置として、当分の間は枝番を付記しないレセプト請求も認めるとの考えも示しています。
レセプトは翌月10日までに審査支払機関に提出し、診療報酬を請求する!
レセプト請求は、医療機関の収入に関わる重要なものです。レセプトを提出することで、患者さまの負担分以外の医療費を保険機関へ請求することができます。レセプト業務を理解するため、今記事を参考にレセプト請求に関する流れや各種機関などを押さえましょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。