科学的介護推進体制加算(LIFE加算)とは?算定要件や対象介護サービスなどを紹介!
著者: ゲートウェイ
更新日:2024/10/23
公開日:2022/03/17
2021年度の介護報酬改定にて、「科学的介護推進体制加算(LIFE加算)」が新設されました。これにより、対象介護サービスでは科学的介護情報システム「LIFE」の活用が求められます。今回は科学的介護やLIFEとは何かを踏まえ、科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の算定要件や対象秋後サービスなどを詳しく解説します。
目次
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)とは
2021年度の介護報酬改定により、科学的介護情報システム「LIFE」の運用開始とともに新設されたのが科学的介護推進体制加算、通称「LIFE加算」です。
新設された背景には、科学的介護の理解と浸透を図ること、そしてLIFEの現場活用を促すことが挙げられます。まずはデータベースを構築するために、大量のデータを集める必要があります。そこで科学的介護推進体制加算を設けることで、LIFEに取り組んでもらうことを科学的介護実現のための第一目的としています。
科学的介護情報システム「LIFE」とは
2021年4月から運用をスタートした「LIFE」は、「Long-term care Information system For Evidence」を略した科学的介護情報システムのことです。LIFE以前にもこうした情報システムは存在しており、2017年度に運用を開始した「VISIT」、2020年度から運用を開始した「CHASE」がありました。「VISIT」は通所・訪問リハビリの効果を科学的根拠に基づいて分析するため、「CHASE」は科学的介護の実践を目指して利用者の状態やサービス内容を集積するためのデータベースです。そして「LIFE」は、「VISIT」と「CHASE」を一体的に運用するために刷新されたものです。
介護施設・事業所は、利用者の状態やケア内容をLIFEからデータを入れると、厚生労働省がその結果を分析してフィードバックします。これによりPDCAサイクル・ケアの質向上、業務改善の効果に期待されます。
そもそも科学的介護とは
そもそも科学的介護とは、科学的裏付けに基づく介護のことです。科学的介護では客観的な根拠に基づいて再現性のある介護を実施し、利用者の自立支援や重度化防止につなげていくことを目的としています。そのためにLIFEを運用することで全国の介護施設・事業所における利用者の状態やケア内容を一定基準で分析・評価し、客観的な根拠となるデータベースの構築を目指しています。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の算定要件
ここでは、科学的介護推進体制加算の主な2つの算定要件をみていきます。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の算定要件①
1つ目の算定要件は、全ての利用者の基本的な情報をLIFEから厚生労働省に提出することです。具体的には、利用者ごとの以下のような内容を提出します。
・ADL値
・栄養状態
・口腔機能
・認知症の状況
・その他の心身の状況等に係る基本的な情報 など
情報は、下記で定められた月の翌月10日までに提出する必要があります。
・算定を開始しようとする月において、サービスを利用している者(既利用者)は、算定を開始しようとする月
・算定を開始しようとする月の翌月以降にサービスの利用を開始した利用者(新規利用者)は、サービスの利用を開始した月
・2回目以降の情報提供は、最低6ヵ月ごと
・サービスの利用を終了する利用者は、サービス利用終了月
LIFEを利用するには、専用サイトから利用申請しましょう。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の算定要件②
2つの目の算定要件は、LIFEの情報を活用してPDCAサイクルを回すことです。現状はデータベースを構築するため情報を提出することが第一目的ですが、最終的な目的はLIFEの情報を業務で活用すること。
介護施設・事業所は、サービス計画に基づいて利用者の自立支援・重度化防止を図る必要があります。そのため、サービス計画は実際にサービスを提供した上で多職種と連携し、必要に応じた見直しが必要です。その際に活用すべきものが、サービス計画の作成・実行・評価・改善のためのPDCAサイクルです。
Plan(計画) | 利用者の心身状況などの基本情報に基づき、必要かつ適切なサービスを提供するためのサービス計画を作成 |
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Do(実行) | サービス計画に基づいて、利用者の自立支援・重度化防止を目指して介護を実施 |
Check(評価) | LIFEに提出する情報や厚生労働省からのフィードバックを活用し、多職種が連携の元、サービス計画やサービス提供のあり方などを検証 |
Action(改善) | 検証結果を元にサービス計画を見直して、事業所全体のサービスの質向上を目指す |
加算は情報提供だけでは取得できないため、PDCAを回して質の高いサービスを提供する体制を構築することを根底にLIFEを運用することが重要です。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の対象介護サービス
科学的介護推進体制加算は加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)がありますが、併算定はできません。
なお、加算(Ⅱ)の算定要件は前述した算定要件①の内容に利用者ごとの疾病等の情報をLIFEで提出することが含まれます。科学的介護推進体制加算の対象介護サービスは加算(Ⅰ)のみが対象、(Ⅰ)(Ⅱ)どちらかで対象となる2つに分かれます。以下で、各科学的介護推進体制加算の対象介護サービスと単位数をみていきます。
科学的介護推進体制加算(Ⅰ)の対象介護サービス
科学的介護推進体制加算(Ⅰ)で加算される単位数は、月40単位です。下記は、加算(Ⅰ)の対象介護サービスとなります。
・通所介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護(予防含む)
・特定施設入居者生活介護(予防含む)
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・認知症対応型共同生活介護(予防含む)
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護
・通所リハビリテーション(予防含む)
科学的介護推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の対象介護サービス
下記は、加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の対象介護サービスです。
・介護老人福祉施設
・地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
・介護老人保健施設
・介護医療院
上記施設は医療依存度の高い要介護高齢者が入所する介護施設・事業所であるため、加算(Ⅱ)の算定要件に疾病等の状況報告が含まれます。なお、介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護は月50単位、介護老人保健施設と介護医療院は月60単位の加算となります。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の算定状況
全国老人福祉施設協議会の調査によると、2021年7月サービス提供分で特別養護老人ホームの49.5%、通所介護の41.1%が算定したと報告されています。(※全国老人福祉施設協議会の会員を対象としたWeb調査)なお、同調査ではLIFEの登録状況についても報告されており、特別養護老人ホームで81.2%、通所介護で68.8%が「登録した」と回答しています。
一方でLIFEの運用にあたり、有効性への疑問や職員の負担増加など、ネガティブな側面もある点は事実です。その背景には、現段階ではデータベースの構築に必要な情報量が十分でなく、しばらくは有用なフィードバックが見込めないことで、現場の負担感に比べてメリットが得られにくい点に対する不満・不安が挙げられます。しかし、LIFEの活用が事業所の収入に大きく関係することから、導入に積極的な姿勢を示している事業所が多いことが調査から判明しています。
科学的介護は一朝一夕で実現できるものではなく、現段階ではデータの集積に重点が置かれている状況です。その点を理解した上で、将来より良いケアが提供できる体制を構築するために、科学的介護推進体制加算に取り組む姿勢が求められます。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の算定要件はLIFEへの情報提供と情報を活用したPDCAサイクルの実行!
2021年度の介護報酬改定にて、新設された「科学的介護推進体制加算(LIFE加算)」は科学的介護実現のために重要な取り組みです。算定要件は主に2つ、LIFEでの情報提出と、それを元にPDCAサイクルを回すことです。今記事を参考に、科学的介護推進体制加算(LIFE加算)への理解を深めてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。