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【最新版】子どもの貧困対策に関する大綱とは|ポイントや改正内容を解説

著者: ゲートウェイ

更新日:2024/10/23

公開日:2022/06/10

日本において、子どもの貧困率が上昇傾向にあることはご存知でしょうか。日本では1980年代より子どもの貧困率が上昇傾向にあり、ヨーロッパ・日・米の38カ国を含むOECD加盟国の中では高い貧困水準となっています。その状況を改善すべく、2013年に「子どもの貧困対策に関する大綱」が策定。今回は「子どもの貧困対策に関する大綱」について、ポイントや最新の改正点などを詳しく解説します。

子どもの貧困対策に関する大綱とは

子どもの貧困対策に関する大綱は、2013年(平成25年)6月に成立し、翌2014年(平成26年)1月に施行した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を踏まえて2014年に閣議決定されたものです。大綱では、子どもの貧困対策に関する基本方針から貧困指標、指標改善に向けた重点施策などが具体的に明記されています。

 

まずは、子どもの貧困対策に関する大綱の目的・理念や基本的な方針についてみていきます。

子どもの貧困対策に関する大綱の目的・理念

・子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図る
・全ての子どもたちが夢と希望を持って成長していける社会を目指し、子どもの貧困対策を総合的に推進する

 

「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行した平成26年の8月29日に閣議決定された「子どもの貧困対策に関する大綱」では、その目的・理念について上記のように明記しています。つまり、子どもの貧困対策に関する大綱は子どもの貧困対策を総合的に推進するための指標であり、必要な環境整備と教育均等を図るために策定されたものです。

基本的な方針

同じく、平成26年8月29日に閣議決定された「子どもの貧困対策に関する大綱」では下記10の基本的な方針が明記されています。

1. 貧困の世代間連鎖の解消と積極的な人材育成をめざす。
2. 第一に子どもに視点をおいて、切れ目ない施策の実施等に配慮する。
3. 子どもの貧困の実態を踏まえて対策を推進する。
4. 子どもの貧困に係る指標を設定し、その改善に向けて取り組む。
5. 教育の支援では、「学校」を子どもの貧困対策プラットフォームと位置づけて、総合的に対策を推進するとともに、教育費の負担軽減を図る。
6. 生活の支援では、貧困の状況が社会的孤立を深刻化させることのないよう配慮して対策を推進する。
7. 保護者の就労支援では、家庭で家族が接する時間を確保することや、保護者が働く姿を子どもに示すことなど教育的な意義にも配慮する。
8. 経済的支援に関する施策は、世帯の生活を下支えするものとして位置付けて確保する。
9. 官公民の連携等によって、子どもの貧困対策を国民運動として展開する。
10. 当面今後5年間の重点施策を掲げ、中長期的な課題も視野に入れて継続的に取り組む。

 

子どもの貧困解消と将来的な人材育成をベースに「教育支援」「生活支援」「就労支援」「経済的支援」の主に4つの分野で方針を提示しています。

【2019年に改正】最新版子どもの貧困対策に関する大綱

上記でご紹介した子どもの貧困対策に関する大綱は、2014年に閣議決定で策定された最初の大綱です。基本的方針の10項目にもあるように、その内容は「当面今後5年間」を対象としています。策定から5年後に当たる2019年には、6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が施行。それに伴い、子どもの貧困対策に関する大綱も2019年11月29日の閣議決定にて再策定されました。ここでは、再策定後の最新の子どもの貧困対策に関する大綱について解説します。

新たな大綱案作成の経緯

5年後の見直しを踏まえ、政府は2018年11月に「子どもの貧困対策会議」を開催。新たな大綱案作成のため、計6回にわたり貧困状況にある子どもやその保護者を含めた幅広い関係者から意見聴聞を行いました。その結果、2019年8月に「今後の子どもの貧困対策の在り方について」が提言。提言では、これまでの5年間で大綱に基づいた各支援が進捗したこと、そして子どもの貧困対策に対する社会認知が一部で進んだことについては評価されました。一方で、現場には支援を必要とする子ども・家族が多く存在し、特にひとり親家庭の貧困率が高い水準にあること、そして地域による貧困対策の取組格差が拡大したことについて指摘があがりました。最新の子どもの貧困対策に関する大綱は、提言で明るみになった課題を踏まえて作成されています。

目的・理念の改正点

2019年の改定では、子どもの「将来」だけでなく「現在」の生活等に向けても子どもの貧困対策を総合的に推進することが明示されました。そのため、目的についても最新の「子どもの貧困対策に関する大綱のポイント」では下記のように記述されています。

・現在から将来にわたり、全ての子どもたちが夢や希望を持てる社会を目指す
・子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、子どもを第一に考えた支援を包括的・早期に実現

 

子どもの貧困に対するアプローチの時系列に「現在」が追加されたことに加え、「子育てや貧困を家庭のみの責任としない」点も新たな追加ポイントです。

基本的方針の改正点

2019年の基本的方針は、「分野横断的な基本方針」と「分野ごとの基本方針」の2つに分けられています。

分野横断的な基本方針 1. 貧困の連鎖を断ち切り、全ての子どもが夢や希望を持てる社会を目指す。
2. 親の妊娠・出産期から子どもの社会的自立までの切れ目ない支援体制を構築する。
3. 支援が届いていない、又は届きにくい子ども・家庭に配慮して対策を推進する。
4. 地方公共団体による取組の充実を図る。
分野ごとの基本方針 1. 教育の支援では、学校を地域に開かれたプラットフォームと位置付けるとともに、高校進学後の支援の強化や教育費負担の軽減を図る。
2. 生活の支援では、親の妊娠・出産期から、社会的孤立に陥ることのないよう配慮して対策を推進する。
3. 保護者の就労支援では、職業生活の安定と向上に資するよう、所得の増大や、仕事と両立して安心して子どもを育てられる環境づくりを進める。
4. 経済的支援に関する施策は、さまざまな支援を組み合わせてその効果を高めるとともに、必要な世帯へ支援の利用を促していく。
5. 子どもの貧困に対する社会の理解を促し、国民運動として官公民の連携・協働を積極的に進める。
6. 今後5年間の重点施策を掲げ、中長期的な課題も視野に入れて継続的に取り組む。

 

2019年の改正で新規追加したのは「支援が届いていない、又は届きにくい子ども・家庭に配慮して対策を推進する。」の項目です。「困っている家庭ほど声を上げにくく支援が届かない」などといったような現場の問題を受けて追加された方針です。また分野別の基本的方針は前回大綱と根本的な内容に変更はないものの、「子どものライフステージに応じた早期課題の把握」「仕事と子育ての両立」「さまざまな支援の組み合わせ」など、新たな視点が盛り込まれています。

子どもの貧困に関する指標

子どもの貧困対策に関する大綱では、子どもの貧困に関する指標を設定しています。当初の大綱では25個だった指標は、2019年の改定で39個に増加しました。指標は「教育の支援」「生活の安定に資するための支援」「保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援」「経済的支援」の4項目に分けて設定されています。

教育の支援 ・生活保護世帯に属するこどもの高等学校進学率
・生活保護世帯に属する子どもの高等学校中退率
・生活保護世帯に属する子どもの大学等進学率
・児童養護施設の子どもの進学率
・ひとり親家庭の子どもの就園率(保育所・幼稚園等)
・ひとり親家庭の子ども進学率
全世帯の子どもの高等学校中退率
全世帯の子どもの高等学校中退者数
スクールソーシャルワーカーによる対応実績のある学校の割合
・スクールカウンセラーの配置率
就学援助制度に関する周知状況
新入学児童生徒学用品等の入学前支給の実施状況
高等学校の修学支援制度の利用者数
生活の安定に資するための支援 電気、ガス、水道料金の未払い経験
食糧または衣類が買えない経験
子どもがある世帯の世帯員で頼れる人がいないと答えた人の割合
保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援 ・ひとり親家庭の親の就業率
ひとり親家庭の親の正規の職員・従業員の割合
経済的支援 ・子どもの貧困率
・ひとり親世帯の貧困率
ひとり親家庭のうち療育費についての取決めをしている割合
ひとり親家庭で療育費を受け取っていない子どもの割合

 

上記指標で赤字になっている項目は、2019年の改正で新たに設定された指標です。なお、「生活の安定に資するための支援」については分野自体が新規追加されています。5年前の大綱から14もの項目が新規追加されたことで、今後は貧困に対する施策もより幅広く行き届くかが期待されます。

子どもの貧困対策に関する大綱|指標改善に向けた重点施策一覧

子どもの貧困対策に関する大綱では、貧困指標の改善に向けた重点施策を分野別に明示。ここでは、指標改善に向けた重点施策を分野別に一覧にまとめています。

教育の支援

1. 幼児教育・保育の無償化の推進及び質の向上
2. 地域に開かれた子どもの貧困対策のプラットフォームとしての学校指導・運営体制の構築 ・スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが機能する体制の構築等
・学校教育による学力保障
3. 高等学校等における修学継続のための支援 ・高校中退予防のための取組
・高校中退後の支援
4. 大学等進学に対する教育機会の提供 ・高等教育の修学支援
5. 特に配慮を要する子どもへの支援 ・児童養護施設等の子どもへの学習、進学支援
・特別支援教育に関する支援の充実
・外国人生徒等への支援
6. 教育費負担の軽減 ・義務教育段階の修学支援の充実
・高校生等への修学支援等による経済的負担の軽減
・生活困窮世帯等への進学費用等の負担軽減
・ひとり親家庭への進学費用等の負担軽減
7. 地域における学習支援等 ・地域学校協働活動における学習支援等
・生活困窮世帯等への学習支援
8. その他教育支援 ・学生支援ネットワークの構築
・夜間中学の設置促進、充実
・学校給食を通じた子どもの食事、栄養状態の確保
・多様な体験活動の機会の提供

生活の安定に資するための支援

1. 親の妊娠・出産期、子どもの乳幼児期における支援 ・妊娠・出産期からの相談、切れ目のない支援
・特定妊婦等困難を抱えた女性の把握と支援
2. 保護者の生活支援 ・保護者の自立支援
・保育等の確保
・保護者の育児負担の軽減
3. 子どもの生活支援 ・生活困窮世帯等の子どもへの生活支援
・社会的療養が必要な子どもへの生活支援
・食育の推進に関する支援
4. 子どもの就労支援 ・生活困窮世帯等の子どもに対する進路選択等の支援
・高校中退者等への就労支援
・児童福祉施設入所児童等への就労支援
・子どもの社会的自立の確立のための支援
5. 住宅に関する支援:公営住宅への優先入居対象扱い、賃貸住宅の入居者負担軽減等、住宅確保給付金、住宅資金や転宅資金等の貸付など
6. 児童養護施設退所者等に関する支援 ・家庭への復帰支援
・退所等後の相談支援
7. 支援体制の強化 ・児童家庭支援センターの相談機能の強化
・社会的養護の体制整備
・市町村等の体制強化
・ひとり親支援に関わる地方公共団体窓口のワンストップ化の推進
・生活困窮者自立支援制度とひとり親家庭向けの施策の連携の推進
・相談職員の資質向上

保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労支援

1. 職業生活の安定と向上のための支援 ・所得向上策の推進、職業と家庭が安心して両立できる働き方の実現
2. ひとり親に対する就労支援 ・マザーズハローワーク、職業訓練やトライアル雇用助成金等などにおけるひとり親家庭の親への就労支援
・ひとり親家庭の親の職業と家庭の両立
・ひとり親家庭の親の学び直しの支援
・企業表彰
3. ふたり親世帯を含む困窮世帯等への就労支援 ・就労機会の確保
・親の学び直しの支援
・非正規雇用から正規雇用への転換

経済支援

1. 児童手当・児童扶養手当制度の着実な実施
2. 養育費の確保の推進
3. 教育費負担の軽減

子どもの貧困対策に関する大網から子どもの貧困対策への意識を高めよう!

子ども貧困対策に関する大綱では、子どもの貧困解消に必要な施策や意義などが明記されています。2014年に策定された大綱には、2019年には5年間の実施状況などを踏まえて新たな課題解決のために必要な施策や支援を盛り込んでいます。今後も施策実施状況や貧困状況に応じて、大綱や法律も改定されるでしょう。今記事を参考に、子どもの貧困に関する大綱とは何か、どんな施策が実施されているのかを押さえてみてください。

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異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。

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