認知症とは何かを簡単に解説!症状や原因、認知症との関わり方とは
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/07/11
認知症は、高齢者が患う代表的な病気の1つ。高齢化社会が進む日本では、総人口の約3割を高齢者が占めています。高齢者数の増加に伴い、認知症患者数も比例して増加しつつあります。認知症へ対応するには、まず認知症が何かを理解することが重要です。そこで今回は、さまざまな観点から認知症についてわかりやすく解説します。
目次
認知症とは
厚生労働省では、認知症について下記のように定義しています。
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる症状をいいます。
誰もが知る認知症ですが、実はまだ病名も特定されていない未知の病気です。「認知症」は特定の病名ではなく、あくまで「症候群」の扱いとされています。医学的に診断が決められず、原因もはっきりしていない状態であることから、知名度以上に未知の病気なのです。
65歳以上の5人に1人が認知症を患っている
2020年時点で、日本における65歳以上の認知症患者数は約600万人と推計されており、2025年には約700万人が認知症になると予測されています。約700万人が認知症になった場合、その数は65歳以上の5人に1人が認知症になっている計算です。さらに軽度認知障害、通称「MCI」を含めると認知症患者の推計は約1,300万人にものぼるといわれています。
世界でも群を抜いて高齢者人口が多い日本は、それだけ認知症との関わりも深い国といえます。
認知症と加齢による物忘れの違い
認知症 | 加齢による物忘れ | |
---|---|---|
原因 | 脳の神経細胞の破壊 | 脳の老化 |
症状 | 物事や体験の全てを忘れる | 物事や体験の一部を忘れる |
症状の自覚 | ない | ある |
日常生活への支障 | ある | ない |
症状の進行 | 進行する | 徐々に進行 |
高齢になると物忘れが多くなったり、物覚えが悪くなる症状が出るため、認知症かの判別が難しいケースも少なくありません。主な違いは発症の原因であり、認知症は脳の神経細胞の急激な破壊によって起こる症状である一方、加齢による物忘れは脳の老化によるものです。
認知症は物事や体験がすっぽりと抜けてしまい、ヒントを出しても思い出すことができません。また本人に症状の自覚はなく、進行性の症状であるため気づいた時には認知症がかなり進行してしまっているケースもあります。
認知症の種類
認知症は、主に3種類に分類されます。
アルツハイマー型 | 脳血管性型 | レビー小体型 | |
---|---|---|---|
原因 | 脳の神経細胞の破壊 | 脳梗塞、脳出血などによる脳の一部壊死 | レビー小体の蓄積による神経細胞の破壊 |
症状 | ・認知機能障害 ・徘徊 ・妄想 など |
・認知機能障害 ・手足のしびれ、麻痺 ・急激な感情の起伏 ・歩行障害 ・排尿障害 など |
・認知機能障害 ・幻視、妄想 ・睡眠時の異常言動 ・手足の震え ・抑うつ など |
いずれも物忘れなどの認知機能障害を伴うほか、手足のしびれや抑うつ、幻視など種類によって特徴的な症状がみられます。なお、認知症患者の中でも最も多くの割合を占めるのはアルツハイマー型です。原因に応じて種類がある認知症は、症状に応じて適切な対応・ケアが重要となります。
認知症になるのは高齢者だけではない
認知症は高齢者に多いというだけであり、若くても発症する場合もあります。65歳未満で発症した認知症は「若年性認知症」と呼ばれ、その患者数は3.57万人と推計されています。発症する平均年齢は51歳あたり、女性より男性に発症が多くみられる点が特徴です。
認知症の症状
認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つに分けられます。ここでは、認知症の主な2つの症状について詳しくみていきます。
認知症の症状①中核症状
中核症状とは、脳の神経細胞の破壊によって直接的に起こる症状です。主な症状は、以下の通りです。
・記憶障害
・見当識障害
・理解力、判断力の低下
・失語、失認、失行
・実行機能障害 など
代表的な症状は何度も同じ話を繰り返す、場所や人を忘れてしまう、新しいことを記憶できないなどの記憶障害です。また、季節や時間の間隔が薄れてしまう、自分の年齢や家族の記憶がなくなってしまう見当識障害もよくみられる症状の1つ。発症初期は直前に起きたことを忘れる程度ですが、症状が進行すると過去の記憶まですっぽりと抜けてしまいます。また今まで普通にできていたことができなくなってしまう、些細な変化で混乱してしまうなど行動や感情にも変化が表れます。
認知症の症状②行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状(BPSD)は、中核症状に本人の性格や周囲の環境が影響して二次的に起こる下記のような症状です。
・幻視、幻覚
・せん妄
・妄想
・徘徊
・不安、抑うつ
・暴力、暴言
・介護拒否
・睡眠障害
・歩行障害
・失禁 など
本人の性格や周囲の環境、その時の心理状態などが影響して起こることから、その症状は人によってさまざまである点が特徴です。
認知症の治療方法・予防方法
まだまだ医学的に解明されていない点も多い認知症ですが、その治療方法や予防方法はあるのでしょうか。ここでは、認知症の治療方法・予防方法についてみていきます。
認知症の治療方法
認知症は、まだ根本的な治療方法がありません。そのため、現時点では症状の軽減や進行を遅らせることが最も有効な治療法となります。なお、中核症状に対しては薬物療法を、行動・心理症状に対しては非薬物療法を行うのが一般的です。 脳血管認知症に効果的な薬剤は現時点で存在しませんが、アルツハイマー型とレビー小体型には下記薬剤に改善効果があることが認められています。
アルツハイマー型 | ・コリンエステラーゼ阻害薬(塩酸ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン) ・NMDA受容体拮抗薬(メマンチン) |
---|---|
レビー小体型 | ・塩酸ドネペジル |
行動・心理症状に対しては理学療法や作業療法によるリハビリテーション、音楽療法や環境調整といった非薬物療法が優先された理療法です。行動・心理症状は本人の性格や環境、心理状態によって二次的に発症するものであることから、その人らしさを尊重するパーソンセンタードケアを基本とします。一方で、非薬物療法だけでは症状のコントロールが難しい場合に、漢方薬や抗うつ剤、抗精神病薬などを使用することがあります。しかし、こうした薬剤を高齢者が使用すると副作用が生じやすいリスクがあるため、行動・心理症状の薬物療法は慎重な判断が必要です。
認知症の予防方法
認知症の中でも多くを占めるアルツハイマー型や脳血管性認知症は、生活習慣病と関連があることが解明されてきました。そのため、生活習慣病予防が認知症予防にもつながることがわかっています。ビタミンを意識した食事を摂る、適度に運動する、脳に刺激を与える、正しい睡眠習慣をつけるなど、まずは日々の生活を見直すことが認知症予防に有効です。
しかし、どんなに生活習慣に気をつけても発症してしまうケースもあります。そうした場合に必要なことは、症状が軽い段階で認知症の診断と適切な治療を受けることです。根本的な治療方法はないものの、治療により症状を抑制する、進行を遅らせることは可能です。場合によっては症状改善にも期待できるため、少しでも「認知症かな」と疑わしいことがあれば、早めにかかりつけ医や専門医に相談しましょう。
認知症の方との関わり方
認知症は発症した本人だけでなく、家族にとっても大きな問題です。認知症になると、以前できていたことができなくなってしまうため、本人も大きな不安とストレスを感じやすくなります。そこで大切なのは、家族や周囲の人が認知症を正しく理解し、適切に対応することです。本人に認知症の自覚はないため、「強く指摘する」「怒る」「否定する」ことは避け、相手を尊重して関わることが求められます。生活環境・習慣の変化にも適応が困難であるため、急に環境を変えることなく、本人のペースに合わせて生活を送ることが大切です。
認知症の方が利用できる介護施設
認知症介護は、ご家族の身体的・精神的負担が大きいもの。家族が介護疲れを起こさないためにも、認知症介護では専門機関も活用することが大切。下記は、認知症の方が利用できる介護施設です。
・特別養護老人ホーム
・有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・グループホーム(認知症対応型生活介護)
・ケアハウス
・介護老人保健施設
・認知症対応型デイサービス など
上記施設の中でも、認知症に特化しているのはグループホームです。グループホームは認知症ケアの専門職員がいる環境のもと、5~9人の少数ユニットで家庭に近い環境で共同生活が送れる施設です。
どんな介護施設を利用するかは認知症の程度のほか、要介護度や本人の希望によっても異なります。まずはケアマネージャーに相談すること、そして本人がどんな生活を望むかについて話し合うことが必要です。
認知症ケアパスとは
各自治体では、認知症の方やその家族が「いつ」「どこで」「どのような」医療・介護サービスを受けられるのか、認知症の容態に応じてどんなサービス提供の流れが必要かについてまとめた「認知症ケアパス」を作成しています。認知症ケアパスの作成率は都道府県によって異なりますが、概ね8割以上の自治体が作成しています。認知症に適切に対応するためには、お住まいの自治体の認知症ケアパスを確認するのも1つの方法です。
認知症とは脳の障害や病気による認知機能の低下。早期診断・治療が大切
今後さらに高齢化が進む日本において、認知症への理解は必須といっても過言ではありません。家庭や職場で介護に携わる中でも、認知症の方の対応をする機会は増えていくことでしょう。まだまだ未解明な病気であるからこそ、今わかっていること・できることを理解することが大切です。今記事を参考に認知症とは何か、どんな治療法や予防法があるかを押さえて活かしていきましょう。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。