医療事務職に必要な医療接遇とは?基本マナーの5原則・スキルアップ方法を解説
著者: そだねー
更新日:2024/08/27
公開日:2020/08/20
医療事務職には、診療報酬などを計算するスキルの他に、患者さんに対する医療接遇のスキルが重要です。本記事では、医療接遇の基本マナーの5原則やスキルアップの方法について解説します。初めて医療事務を行う方であれば、その他の業種の接客スキルとの違いも理解していきましょう。
目次
医療接遇とは?
医療接遇とは、医療機関における患者対応の品質を向上させるための一連の行動や態度を指します。患者さんが抱える不安やストレスを軽減し、安心感を提供することが目的で、単なるサービス提供ではなく、患者さんの心に寄り添う姿勢が重要です。医療接遇を学び、患者さんとの信頼関係を築くことで、医療の質を高めていきましょう。
医療接遇の目的
・患者さんの心理的ストレスの軽減
・医療機関への信頼の獲得
医療接遇の目的は、患者さんが安心して医療を受けられる環境を提供することです。病院には、病気や怪我による不安やストレスを抱えた患者さんが来院します。医療スタッフが心温まる対応をすることで、心理的な負担を軽減し、患者の治療効果を高め、信頼関係の構築も可能です。さらに、医療スタッフ自身も、患者さんからの感謝や信頼を得ることで、仕事に対するモチベーションが向上します。医療接遇は患者さんと医療機関、そしてスタッフ全員にとって大きなメリットがある行動です。
医療接遇の重要性
診療所2,312カ所(無床2,152、有床161)に対するアンケートでは、クレームの多かった箇所として、接遇に関するものが33.6%にのぼり、その内65.1%は窓口対応でのトラブルでした。このように、接遇にまつわるトラブルは多く、病院など医療従事者として働く場合は「医療接遇」という考えは特に重要です。
医療接遇と他分野の接客の違い
医療接遇は、患者さんが安心して医療を受けられる環境を提供する目的があります。他分野の接客との違いは何でしょうか。ここでは詳細を解説します。
不安に対して寄り添う
医療接遇の重要な要素の1つは、患者さんの不安に寄り添うことです。診断や治療に対して不安を抱える患者さんの心に寄り添う姿勢が求められます。単にサービス提供だけが目的でないことを理解しておきましょう。実際の業務の中では、患者さんの話をしっかりと聞き、共感を示すことで安心感を与えることが可能です。
お互いに対等な関係を築く
医療接遇では、患者さんと医療従事者が対等な関係を築くことが重要です。一般的な接客業務では、サービス提供者と顧客の関係は上下関係になりがちですが、医療の現場ではこの構図が逆効果になることがあります。安心して治療を受けられるよう、医療従事者との間に信頼と尊重の関係を構築していきましょう。
信頼と尊重が生まれると、患者さんが自分の状態や希望を自由に話せる環境となり、より良い治療結果が期待できます。
質の高すぎる接遇は求められていない
医療接遇は患者さんの不安に寄り添うことが主目的であるため、ホテルマンやCAのようなお客様の満足を目標にした接遇とは異なります。過剰なサービスや過度な丁寧さは、かえって患者さんに負担を感じさせてしまうことがあるため、注意が必要です。病状や会話の中から患者さんのニーズを汲み取り、適切な対応を心がけましょう。
医療接遇のスキルアップによって得られる3つの利点
医療の現場において、医療接遇は欠かすことできないものであることがわかりました。ここでは、医療接遇のスキルアップを行うことで得られるメリットについても解説します。
増患・増益・クレームの減少につながる
医療接遇を徹底することで、患者さんからの信頼を得ることができ、クレームやトラブルの防止・減少に効果的です。信頼を築くことにより、口コミや紹介を通じて新規の患者さんの獲得にも繋がります。既存の患者さんは満足度の向上により、リピートが期待可能です。リピートしていただくことで安定した収益を確保でき、経営の安定化にも寄与します。
スタッフのモチベーションの向上に役立つ
医療接遇を実践することで、スタッフ間のコミュニケーションが円滑になり、職場の雰囲気が良くなり、モチベーションや仕事に対する意欲向上が期待できます。また、患者さんからの感謝や信頼の言葉を直接受け取ることで、自身の仕事に誇りややりがいを持つことが可能です。ポジティブなフィードバックは、スタッフの自己肯定感を高め、さらなる努力を促す原動力にもつながります。
医療スタッフの労働時間の短縮につながる
適切なコミュニケーションにより、患者のニーズや状況を迅速に把握することで、無駄な作業や時間の浪費を減らし、業務の効率化が可能です。また、スタッフ同士の連携がスムーズになることで、業務の分担や調整が容易に。労働時間が短縮し、スタッフの負担を軽減することもできます。このように、医療接遇の向上は患者さまだけでなく、経営面にとっても大きなメリットです。
医療事務必見!医療接遇スキルを高める4つのポイント
医療接遇のスキルは一朝一夕で身につくものではありません。日頃から、次のポイントを意識してスキルアップを図っていきましょう。
医療接遇の5原則を徹底する
医療接遇の5原則 | |
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1.身だしなみ | ・常に清潔な服装と身だしなみを保つ。 ・病院の規定に従った正しいユニフォームを着用する。 |
2.あいさつ | ・相手の目を見て、適切なタイミングであいさつする。 ・誰に対しても、どのシチュエーションでも一貫してあいさつを行う。 |
3.表情 | ・常に柔らかく穏やかな表情を心掛ける。 ・患者の気持ちに寄り添った表情を示す。 ・真剣な場面では、適度な緊張感を持つ表情を作る。 |
4.態度 | ・相手に対する礼儀を忘れない。 ・相手の立場に立って行動する。 |
5.言葉遣い | ・適切な敬語を使用する。 ・わかりやすく、簡潔に話す。 ・できるだけポジティブな言葉を選ぶ。 |
患者さんとの信頼関係を築くために欠かせない要素をまとめたものが「医療接遇の5原則」です。
第1の「身だしなみ」は、相手に不快感を与えないような身なりにすることが大切。特に医療安全の観点から、爪を短く揃える、髪をまとめるなどを心がけましょう。
次に、「挨拶」は、患者さんに対する最初の印象を決定づけます。明るく、はっきりとした挨拶で患者さんに安心感を与えましょう。
第3の「表情」は、相手に親しみやすさを感じさせるために重要です。笑顔を絶やさないことで、患者さんの不安を取り除くことができます。
第4の「態度」は、患者の話を聞くときには、体と視線を向け、背筋を伸ばすことを心がけてください。忙しくても相手に誠実に対応していることを示すことが重要です。
最後に「言葉遣い」は、丁寧かつ適切な言葉を選ぶことで、相手に敬意を示します。状況に応じた言葉遣いをして、相手にわかりやすく伝えることを意識しましょう。
傾聴力を磨く
傾聴力は、医療接遇において非常に重要なスキルです。単に患者さんの話を聞くだけではなく、しっかりと理解・共感をしましょう。患者さんは、自分の気持ちや症状が理解されていると感じると、安心感を得られます。傾聴力を高めるためには、まず相手の話に集中し、途中で遮らないことが大切です。うなずきや表情で相手に対する関心を示す、非言語コミュニケーションも意識していきましょう。
患者さんの目線に立って考える
常に「患者さんは何を望んでいるか」を意識し、相手の目線に立って思考・行動することが大切です。これにより、患者さんが抱える不安や悩み、困りごとをより深く理解できます。患者さんの望みを積極的に考え、先回りして対応することで、より強固な信頼を築けるでしょう。信頼関係が強化されることで、患者さんは安心して医療を受けることができ、満足度も向上します。
丁寧なコミュニケーションを行う
医療事務スタッフの医療接遇スキルを高めるには、丁寧なコミュニケーションが必須です。医療接遇において欠かせないコミュニケーションの1つには、アイコンタクトがあります。目を合わせることで、相手に対する関心や誠意を伝えることが可能です。患者さんは、不安を抱えていることが多いため、アイコンタクトを通じて安心感を提供していきましょう。
ただし、じっと見つめすぎると逆にプレッシャーを与えることもあるため、適度な間隔で目をそらすことも重要です。
【医療事務向け】医療接遇のスキルアップを図る方法
個人でできるスキルアップ方法 | 職場全体でできるスキルアップ方法 |
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・医療接遇に関する本や動画で学ぶ ・専門講師による勉強会やセミナーに行く ・医療接遇に関連する資格を取得する |
・職場内で研修を行う ・医療事務スタッフでロールプレイングを行う |
最後に、個人や職場で今日からでも実践できる、医療接遇のスキルアップを図る方法についてご紹介します。
個人でできる医療接遇のスキルアップ方法
・医療接遇に関する本や動画で学ぶ
・専門講師による勉強会やセミナーに行く
・医療接遇に関連する資格を取得する
医療事務スタッフが個人で医療接遇スキルを高めたい場合に役立つ方法として、主に上記の方法が挙げられます。本や動画の活用は比較的簡単な方法で、基礎知識から応用までレベルに合わせた学習が可能です。Youtubeなどを利用すれば、無料で学習をすることもできます。
また、勉強会やセミナー、関連資格の取得などで、スキルアップを図る方法もおすすめです。勉強会やセミナーでは、参加者との交流を通じて新たな視点の発見や、モチベーションのアップも期待できます。
職場全体でできる医療接遇のスキルアップ方法
・職場内で研修を行う
・医療事務スタッフでロールプレイングを行う
医療事務スタッフの医療接遇スキルを高めるためには、個人の努力だけでなく、職場全体での取り組みも欠かせません。具体的には、医療接遇スキル向上のための研修や勉強会を開催するのが効果的です。研修では、スタッフ同士でロールプレイングを行い、実際のケースを想定した学習を進めましょう。
さらに、学んだ接遇スキルを業務に活かすために、日常的に医療接遇を意識して業務を行うことが重要です。このような取り組みを通じて、スタッフ全員の接遇スキルが向上し、医療機関全体でより質の高い医療サービスを提供できるでしょう。
医療接遇のスキルを向上させ、医療事務のスペシャリストを目指そう
一人前の医療事務として業務を行うためには、医療接遇スキルの向上は欠かすことができません。他のサービス業との接客の違い、求められるスキルを理解し患者さんに寄り添う力を身に着けていきましょう。また、個人の努力はもちろん職場全体を巻き込み、チームとしてスキルアップを目指すことも大切です。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。