コロナ離職状況や実態を調査|医療従事者のコロナ離職状況とは
著者: そだねー
更新日:2023/12/22
公開日:2022/06/09
2019年12月に新型コロナウイルスの第1例目が報告。そして2020年には日本でも本格的な流行が始まりました。2022年に入り、コロナが流行してから2年が経過。当初より状況は落ち着いてきたものの、まだまだ経済や雇用、医療業界への影響は残ります。今回はコロナに関する離職について、状況や実態、医療従事者のコロナ離職についてお伝えします。
目次
コロナ離職状況①入職率と離職率
コロナが本格的に流行した2020年は、労働者に占める離職者の割合が入職者の割合を9年ぶりに上回った年でした。なお、前回離職率が入職率を上回ったのは東日本大震災が発生した2011年です。
もちろん離職理由はコロナだけにとどまりませんが、コロナの流行が開始した年に離職率が入職率を上回った事実は、コロナが離職の要因になっていることが裏付けられています。実際に厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」における「入職と離職の推移」をみると、コロナ流行前の2019年とは入職率と離職率が逆転しています。
入職者数(千人) | 離職者数(千人) | 入職率(%) | 離職率(%) | |
---|---|---|---|---|
2020年 | 7,103.4 | 7,272.1 | 13.9 | 14.2 |
2019年 | 8,435.1 | 7,858.1 | 16.7 | 15.6 |
2020年は離職率が入職率を上回っているだけでなく、入職率がコロナ前と比較して約3%も低下しています。前年比で入職率がここまで落ち込むのは過去14年間で初であり、リーマンショック直後よりも大きな落ち込みです。つまり離職者が増えただけでなく、入職することが難しい年でもあったことがわかります。なお、一般労働者とパートタイム労働者で分けてみた入職率と離職率は以下の通りです。
入職率(%) | 離職率(%) | ||
---|---|---|---|
2020年 | 一般労働者 | 10.7 | 10.7 |
パート労働者 | 22.2 | 23.3 | |
2019年 | 一般労働者 | 11.9 | 11.4 |
パート労働者 | 29.2 | 26.4 |
前年比で差が開いているのは、パートタイム労働者です。2020年のパートタイム労働者の離職率は2019年よりも数値が低いものの、入職率自体が7%も低下しています。一般労働者はコロナ前とは約1%の差にとどまり、かつ入職率と離職率は同率です。つまり、コロナによる離職はパートタイム労働者への影響が大きいことがわかります。
コロナ離職状況②雇用への影響
厚生労働省では「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報」として、都道府県労働局の聞き取り情報やハローワークに寄せられた相談・報告をもとに「雇用調整の可能性がある事業所数」と「解雇等見込み労働者」の動向を集計しています。
2020年のコロナの雇用への影響
コロナが流行してから最初の集計結果は、2020年5月29日時点のデータです。
雇用調整の可能性がある事業所数 | 解雇等見込み労働者数 | うち非正規雇用 |
---|---|---|
30,214事業所 | 16,723人 | 2,366人 |
そして2020年最後の集計では、下記のような累積結果が算出されています。
雇用調整の可能性がある事業所数 | 解雇等見込み労働者数 | うち非正規雇用 |
---|---|---|
120,371事業所 | 79,522人 | 38,009人 |
当初の集計結果と比較すると、わずか5ヶ月で雇用調整の可能性がある事業所数は約4倍に、解雇等見込み労働者は約5倍に増加しています。コロナが流行した2020年には約1.2万の事業所、約8万人が解雇見込みの状況にありました。さらに、下記は業種別にみた雇用調整の可能性がある事業所数と解雇等見込み労働者数です。なお、下記業種は累計数の多い上位10業種です。
雇用調整の可能性がある事業所 | 解雇等見込み労働者 | |
---|---|---|
1 | 製造業 | 製造業 |
2 | 飲食業 | 飲食業 |
3 | 小売業 | 小売業 |
4 | サービス業 | 宿泊業 |
5 | 建設業 | 労働派遣業 |
6 | 卸売業 | 卸売業 |
7 | 医療、福祉 | サービス業 |
8 | 宿泊業 | 道路旅客運送業 |
9 | 専門サービス業 | 娯楽業 |
10 | 理容業 | 運輸業 |
事業所・労働者ともにコロナの影響を最も受けたのは製造業でした。全体で見ると、小売業や飲食業、サービス業といった接客系業種がコロナの影響を受けていることがわかります。
2021年以降の最新のコロナの雇用への影響
2021年12月24日時点での集計結果では、下記のような累積値が算出されています。
雇用調整の可能性がある事業所数 | 解雇等見込み労働者数 | うち非正規雇用 |
---|---|---|
135,479事業所 | 123,308人 | 55,972人 |
1年で雇用調整の可能性がある事業所数は約10倍、解雇等見込み労働者数は約1.5倍に増加しています。2021年に増加数の多かった業種では、事業所で「建設業」「製造業」「飲食業」が、労働者で「娯楽業」「小売業」「製造業」がトップ3にランクインしています。
そして最新である2022年5月20日の集計結果は、以下の通りです。
雇用調整の可能性がある事業所数 | 解雇等見込み労働者数 | うち非正規雇用 |
---|---|---|
137,238事業所 | 132,733人 | 60,518人 |
最新で増加数の多かった業種は、事業所で「飲食業」「建設業」「医療、福祉」、労働者で「娯楽業」「サービス業」「製造業」です。全体的に見て大きな変動はないものの、依然として雇用調整の可能性がある事業所数と解雇等見込み労働者数は増加傾向にあります。
医療従事者のコロナ離職について
コロナ流行により需要減で離職が増えた業務もある一方、医療業界は需要増で人手が回らなくなるほどの影響を受けています。しかし、その点が離職につながっているのもまた事実。自治労本部・衛生医療評議会が行なった「コロナ禍における医療従事者の意識・影響調査結果」によると、約7割の医療従事者が離職を検討していることがわかりました。
医療従事者が職場を辞めたい理由
調査では約7割の医療従事者が辞めたいと回答しまいたが、その内訳は以下の通りです。
なお、離職したいと思う理由は「業務が多忙」「業務の責任が重い」「賃金への不満」が上位にのぼりました。通常の傷病者のみならず、コロナ感染者が増加し続ける中で業務量と責任の重さに比べて処遇は低いことが離職につながっているのではと指摘されています。また医療従事者であることで差別や偏見を受けたことがあるかについては、23%が「ある」と回答しました。さらに「一般の人より厳しい行動制限がある」「家族にも必要以上の行動制限をさせてしまっている」「先の見えないことに対する不安や感染リスク」など、さまざまな不満・不安を抱えている方も多いことがわかりました。なかにはうつ症状を抱える医療従事者も珍しくなく、そうした人ほどより強く離職を意識しているのが現状です。
医療・福祉を含むさまざまな業種でコロナ離職がある!
新型コロナウイルスの流行は、雇用を始めさまざまなところで影響を及ぼしています。流行開始から2年が経過した現在でも感染者数は依然として多く、経済回復も完全ではないことから雇用にも影響が出続けています。コロナ離職が多くとも、コロナで需要が増大している業界・業種があるのも事実です。そうした点にも着目しながら、今後の雇用状況についてチェックしてみましょう。
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著者プロフィール
そだねー
北国出身。前職はコールセンターの採用を担当し、ソラストに転職後、医療事務採用業務に6年従事している。営業や現場とのパイプを持ち、日々変化し続ける医療事務の情報をキャッチアップすることに強みを持つ。