介護ロボットの種類を紹介!導入するメリットや現状の課題なども解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2019/10/20
ITやテクノロジーの面でどんどん技術が進化しているように見える現代社会。その流れは介護の現場でも例外ではありません。中でも注目されているのが、介護ロボットの開発・導入。ここでは、介護ロボットについて、そしてその導入によって介護の現場をどう変わると予測されるか、解説していきます。
介護ロボットとは
介護ロボットとは、情報を感知して判断し、動作する知能化した介護機器のことです。代表的な介護ロボットには、移乗支援をする「装着型パワーアシスト」や、移動支援をする「歩行アシストカー」、「見守りセンサー」などがあります。ロボット技術の応用により、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立っています。それだけでなく、介護業界における人手不足の課題解決に貢献できると期待されており、厚生労働省を中心に開発・実証実験が進んでいます。
介護ロボットの開発・導入の背景
現在日本では介護ロボットの開発・普及の促進として、さまざまな支援策を実施しています。例えば、厚生労働省はこの動きを強化するため、平成30には「介護ロボット開発・普及推進室」を設置。経済産業省と国立研究開発法人日本医療研究開発機構は、高齢者の自立支援などに有用なロボット介護機器の開発に対して、補助金を出しています。
そして、そのように介護ロボットの開発が積極的に進められている背景として挙げられるのが、「高齢化社会への対応」と「自立支援」の必要性です。
高齢化社会への対応の必要性
高齢化が進む日本では、それに伴って介護をする人を増やしていくことが必要です。しかしながら、要介護者が増加していく高齢化に対応するためには、介護職員の負担を軽減し、働きやすい環境を整えること必要があります。そのために、介護ロボットによる介護作業の効率化が求められています。
自立支援の必要性
介護ロボットは、高齢者自身のしたいこと、してみたいことが「できる」をサポートする手段として有効だと考えられています。自立行動ができると、認知症の予防になり、好きなことができないストレス、人の手を借りる負い目などが軽減されます。介護ロボットによって要介護者にできる行動が増えることで、介護の負担、介護を受けるストレスを減らす効果が期待されています。
どんな種類の介護ロボットがあるのか
介護ロボットにどんなものがあるか、3種類に分けて解説します。
・介護支援型
・自立支援型
・コミュニケーション/セキュリティ
介護支援型
移乗や入浴、排泄などの介護業務を支援するロボットです。無理な姿勢で作業したり、重いものを持ったりするといった、身体的に負担のかかる仕事のサポートをおこないます。
自立支援型
歩行や食事、リハビリや読書などをひとりでできるようサポートして、要介護者の自立を目指すロボットです。例えば要介護者の膝に装着して膝付近の負担を減らし、自立歩行や立ち座りの動作を支えるロボットなどがあります。
コミュニケーション/セキュリティ
コミュニケーションを図ったり、センサーによって様子を見守ったりするロボットです。認知症の方や一人暮らしの方の様子をチェックしてくれるので、徘徊予防、事故予防につながります。またコミュニケーション面では、おしゃべりをするだけでなく、音楽をかけたり、クイズを出したりなど、レクリエーションに使用できる機能が備わったものもあり、認知症予防や癒し効果にも活用されます。
介護ロボットが重点開発されている6つの分野
経済産業省と厚生労働省は、「ロボット技術の介護利用における重点分野」として、次の6つを挙げています。
・移乗介護
・移動支援
・排泄支援
・見守り支援
・入浴支援
・介護業務支援
移乗介護
介護者をベッドから車いすへ移乗する際などに、介助をする際にかかる身体的負担を軽減する分野です。介護者が身に付ける装着型と、装着せずに使う非装着型のロボットがあります。
移動支援
要介護者の歩行や荷物運びを安全にできるようサポートする分野です。また、ベッドやいす、トイレ内での姿勢保持、立ち座りの動作支援などもおこないます。介護ロボットは屋外用と屋内用の機器に分けられ、要介護者に装着して使用するものもあります。
排泄支援
排泄を予測して適切なタイミングでトイレへ誘導をしたり、下着の着脱から排泄の一連の動作をサポートしたりする分野です。要介護者が居室内でも排泄できるよう、設置位置の調節が可能な、臭いが広がらない工夫がされたトイレとなるロボットなどもあります。
見守り支援
検知センサーや外部通信機能を備えた機器などがあり、365日24時間、要介護者を見守るロボット分野です。ロボットで見守り体制を強化することでよって、要介護者が自発的に助けを求めていない場合や、目視では様子が確認しづらい暗所でも状況の確認、救助がしやすくなります。介護施設と使用するもの、在宅介護で使用されるものに分けられます。
入浴支援
浴槽に出入りする際の、一連の動作を補助するロボット機器の分野です。入浴は体を清潔に保ち、尊厳を維持する大切な行為。この分野のロボットは、要介護者が入浴する際にかかる身体的負担を減らし、水場での転倒、脱水、沈溺などのリスクを抑えます。
介護業務支援
介護業務に伴う情報を集めるためのロボット機器の分野です。集めた情報は介護に必要な支援に活用されます。また、介護サービスの内容を共有して、他のロボット機器や介護記録システム、ケアプラン作成システムなどと連結できることが求められています。
介護ロボットを導入する3つのメリット
介護ロボットを導入するメリットを3つ紹介します。
・介護現場の作業効率化
・介護者の負担軽減
・要介護者のストレス軽減
介護現場の作業効率化
それまで人手が必要だった業務をロボットにまかせて、浮いた人手分の労力をその他の業務に回すことができれば、介護現場の作業効率化ができます。また、人だと場合によって集中力に波が出てしまいますが、ロボットは故障していなければ、24時間ずっと稼働できるものもあり、一定の効果を期待することができます。
介護者の負担軽減
要介護者の姿勢を支え続けたり、車いすやベッドに移乗したりするのは、体力が必要です。介護ロボットで腕力や体力の必要な介助活動ができると、介護職員は身体的負担を軽減することができます。
要介護者のストレス軽減
要介護者の中には、人に体を触れられることに拒否反応を示す方もいるため、介護ロボットを使用することで安心して介助を受けてもらえます。また、人から介助を受ける際などに、「恥ずかしい」「申し訳ない」と感じてしまう要介護者は多いです。しかし介助を受ける相手が介護ロボットなら、人間に対して感じるような負い目を感じず、遠慮しないで介護を受けられる方もいるでしょう。
介護ロボットを普及させるための現状の課題
介護ロボットの導入数は、徐々に増加しているといわれますが、まだ完全に普及しているとはいえません。介護ロボットが普及するために解決する必要があるとされる課題を3つ紹介します。
・コストが高い
・活用のしやすさ
・複雑な作業はまだできない
コストが高い
介護ロボットを導入するためには、機器の購入費用(レンタル費用)や維持費などが必要です。ご家庭や小さな施設などでは、コスト面で利用を断念しているところも多いでしょう。
活用のしやすさ
介護ロボットを導入しても、操作が難しかったり、慣れるまで時間がかかってしまったりすることがあります。また、介護ロボットには大型のものが多いので、利用する際に必要とするスペースの確保が難しい施設もあるでしょう。
複雑な作業はまだできない
現在の介護ロボットは、同じ作業でも人間より時間がかかったり、複雑な作業はまだできなかったりすることがあります。ロボットが単純な行動を繰り返すことはできても、複数の行動を組み合わせた作業、状況によって変わる対応の判断は、人間がした方が安全で速いことも多いです。
介護ロボットの将来性・今後の動き
今後さらに進む高齢化に対応すべく、介護ロボットの早期実用化が求められています。実用化のためには介護ロボットの精度だけでなく、それを扱う人材の育成も必要です。そこで厚生労働省は、介護ロボットなどを扱う人材を育成する研修会を開催しています。研修会は人材育成だけでなく、開発側と受け入れ施設側の連携強化にも期待できます。
このように具体的な動きが増えていることから、今後介護ロボットの操縦について、資格化される可能性もあるでしょう。きたるべき高齢化社会に備え、介護ロボットが適切に実用できるよう、人材育成や資格化などの動きもより活発化すると考えられます。
介護ロボットなどを使用した業務効率化を考えた「スマート介護士」資格について
介護ロボットに関する資格化の動きの1つとして、2019年に新たな民間介護資格「スマート介護士」が創設されました。スマート介護士は介護ロボットの使用技術ではなく、効果的な運用により、介護の質向上と業務効率化を実現させるための知識が求められます。資格は初級〜上級の3段階に分かれており、介護職員に限らず、誰もが受験可能です。
スマート介護士は、介護ロボットの実用化に伴い、今後スタンダードな資格となる可能性が高いでしょう。そのため現段階から、スマート介護士の資格取得を目指すのもおすすめです。
日本は介護ロボットの開発・導入に積極的!今後、介護職の負担軽減が期待される
介護を受ける人、そして介護をする人にとってもメリットがある介護ロボット。解決すべき課題もありますが、厚生労働省をはじめ国全体が開発や導入に積極的なことから、介護ロボットにできることはこれからもどんどん増えていくと考えられます。今後、介護ロボットが「介護は身体的・精神的に大変そう」というイメージを覆してくれるかもしれません。
介護業界への就職に興味がある方は、施設を見る際にどんな介護ロボットが導入されているのか、またはする予定なのかなども見てみると面白いかもしれませんね。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。