介護職がキャリアアップするには?資格や経験年数別の例、成功のコツなど
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2020/03/26
介護職がキャリアアップを果たすための方法について、経験年数などの違いごとにまとめました。また、キャリアアップを目指すのにおすすめできる資格や研修制度、キャリアアップを成功させるポイントなども解説しています。介護職としてキャリアアップしたい方は参考にしてください。
目次
介護職のキャリアアップモデル
介護職のキャリアアップモデルには主に下記の3つのルートがあります。
・資格を取得して専門性を高める
・専門職や役職について業務の幅を広げる
・介護職の経験を活かして他分野に挑戦する
現在の立場や保有資格、経験年数によって目標にした方がいいルートは異なります。経験が浅ければ、まずは専門性の向上を図りましょう。ある程度経験がある場合は、専門職や役職について業務の幅を広げることをおすすめします。介護職での経験を活かして他分野の仕事に挑戦することも可能です。たとえば、看護師やリハビリ職、生活相談員などの仕事で介護職の経験を活かせます。
介護職のキャリアアップ方法【経験5年未満】
保有していない方は「介護福祉士」の資格取得を目指すことをおすすめします。介護福祉士を取得するまでの流れは以下の通りです。
1.介護職員初任者研修を取得する
介護職員初任者研修とは、介護業務に求められる最低限の技術や知識を学ぶための研修です。介護業務をこなすための基礎を身につけられます。研修内容は講義と演習で合計130時間です。スクールへの通学やオンラインで講義を受けて、演習は実際に施設で行います。研修後には試験を受けて合格すれば研修は修了です。
介護職員初任者研修の取得で変わること
・介護業務全般に必要な知識を現場で活かせる
・介護の基本的な実技を身につけることができる
介護職員初任者研修のカリキュラムには介護の基本からコミュニケーション技術、老化・認知症の理解など幅広い内容が含まれています。実技演習では、食事介助や排泄介助、ベッドメイキングといった現場で実際に行う業務の演習ができるのが特徴です。介護職員初任者研修を通して、介護現場に必要な知識や技術を習得でき、介護職のスタートラインに立てます。
2.介護福祉士実務者研修を取得する
介護福祉士実務者研修は介護業務について、より実践的な技術や知識を学べる研修です。介護職員初任者研修よりも専門性の高いカリキュラムとなっています。社会人が一般的に介護福祉士の資格取得やサービス提供責任者になるには、介護福祉士実務者研修を修了しなければいけません。スクールへの通学やオンライン受講との併用により取得可能です。
介護福祉士実務者研修の取得で変わること
・たん吸引や経管栄養を実践できる
・現場で役立つ実践的な知識や能力を身につけられる
介護福祉士実務者研修ではたん吸引や経管栄養の基礎的な知識を学べるのが大きな特徴です。これらは従来、医師や看護師にしか認められていませんでした。介護福祉士実務者研修によって、医療的ケアを身につけられ、介護職として活躍の幅を広げられます。
介護福祉士の資格を取得する
介護福祉士は介護分野における唯一の国家資格です。介護福祉士の資格を取得すれば、高度で専門的な知識と技術を持つことを証明できます。介護福祉士は専門知識や技術を用いて質の高い介護ケアの提供ができるだけではなく、介護職員などの指導にも携わることが可能です。介護職の仕事を探す際に有利になり、幅広い現場で活躍できます。
介護福祉士資格の取得で変わること
・介護分野の専門的で高度な知識・技術を身につけられる
・現場のさまざまな問題を正確に対処できるようになる
介護福祉士の試験では、さまざまな科目について高度な内容が問われます。また、実技試験も実施され、実際に起こるシチュエーションを想定した問題が出題されるのが特徴です。介護福祉士を取得することで、現場で難しい状況に立たされても最適な対応を取るための能力や知識を身につけられます。
介護職のキャリアアップ方法【経験5年以上】
介護福祉士の資格を取得し、実務経験のある方は、どのようなキャリアアップの道があるのか気になるのではないでしょうか?以下では実務経験5年以上の介護職のキャリアアップ方法を紹介します。
生活相談員
生活相談員は、高齢者を対象に相談・援助プランの立案・各機関との連携などを行う仕事
生活相談員はソーシャルワーカーとも呼ばれます。介護施設の利用者や家族への相談窓口となり、施設や他機関との連携をする仕事です。援助プランの立案や手続きの代行などにも対応します。社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格のいずれかの資格が必要なケースが一般的です。募集要件は自治体によって異なるため注意しましょう。
生活相談員を目指すのはこんな人におすすめ!
・コミュニケーションを取るのが好きな人
・責任感が強い人
生活相談員は利用者だけではなく、さまざまな機関や施設ともコミュニケーションを取る必要があります。そのため、コミュニケーションを取るのが好きな人は生活相談員を目指すのがおすすめです。利用者に寄り添い最適な提案を行うことが求められるため、責任感が強い人にも向いています。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは、介護が必要な人のケアプラン作成や各機関との調整などを行う仕事
ケアマネージャーは要介護者や家族からの相談に対応し、介護保険法に基づいたケアプランの作成や各機関との調整などを行います。医療機関や介護サービス事業者と連携する必要があり、スケジュール調整なども重要な役割です。ケアマネージャーになるには、介護支援専門員実務研修の試験に合格しなければいけません。
ケアマネージャーを目指すのはこんな人におすすめ!
・コミュニケーションを取るのが好きな人
・情報収集が得意な人
ケアマネージャーはコミュニケーションを取るのが好きな人に向いている仕事です。施設の利用者や家族だけではなく、医療機関や介護施設などとも関わります。多くの人とコミュニケーションを取るのが苦にならない人に最適です。また、法律や各機関などの情報を集める必要があるため、情報収集が得意な人にも適しています。
サービス提供責任者
サービス提供責任者は、ヘルパーの手配・指示を行い介護が円滑に進むよう管理する仕事
サービス提供責任者はケアプランに基づき訪問介護計画書を作成し、ヘルパーの手配や指示を行う仕事です。介護がスムーズに進むように管理や調整の役割を果たします。サービス提供責任者が現場のスタッフの一人として介護の仕事に携わることも少なくありません。
サービス提供責任者になるには、介護福祉士あるいは介護福祉士実務者研修の取得が必要です。
サービス提供責任者を目指すのはこんな人におすすめ!
・コミュニケーションが得意な人
・調整業務が得意な人
サービス提供責任者には高いコミュニケーション力が必要です。利用者の相談に対応するだけではなく、ヘルパーのマネジメントも行います。多くの人と関わるため、コミュニケーションが得意な人に向いている仕事です。ヘルパーの管理や調整の仕事も担うため、調整業務が得意な人にも適しています。
管理職・施設長
施設内のトップに立つのが管理職・施設長です。管理職・施設長の主な仕事は、施設内の業務や経営、人材などのマネジメントです。緊急時には的確な状況判断と指示を出さなければいけません。施設形態によって、管理職・施設長の要件は異なるため注意しましょう。一定の資格や実務経験が求められます。
管理職を目指すのはこんな人におすすめ!
・リーダーシップのある人
・決断力のある人
管理職・施設長はスタッフのトップとしてさまざまな指示を出す必要があり、リーダーシップが求められます。スタッフを引っ張り適切な方向へ誘導できるリーダーシップに自信のある人であれば、管理職・施設長に最適です。また、さまざまな判断や決断を迫られる立場のため、決断力のある人も管理職・施設長に向いています。
独立
自分で介護施設などの事業所を立ち上げて独立するというキャリアアップの選択肢があります。独立するには確かなコンセプトと多くの資金、人脈が必要になり、ハードルはかなり高いです。人材確保や集客力など、課題への対応力も必要でしょう。介護の知識や技術、経験はもちろんのこと、経営に関する知識やビジョンなども求められます。
独立を目指すのはこんな人におすすめ!
・介護施設について理想のある人
・前向きな人
介護施設について、具体的な理想を抱えている人は独立に向いています。「高齢者の方が生きがいを感じられる施設を作りたい」など具体的なビジョンを抱えている人は、独立を目指すのがおすすめです。独立のハードルは高く、困難に直面する場面は多いため、常に前向きになれる人も独立に適しています。
介護職のキャリアアップ方法【他分野】
介護士として経験を積んでキャリアアップしていくことも良いですが、その経験を活かして別の現場に転職することで、これまでの経験を役立てることも可能です。
介護士の経験を活かすキャリアアップ方法には、主に次のようなルートがあります。
看護師
まず1つ目は、看護師の資格を取得して、医療の現場で働く方法です。看護師の資格を取得するためには専門の教育機関で必要な単位を取得し、国家試験を通過しなければなりません。介護士から転職する場合、これまで積み上げてきたキャリアやスキルが役に立つので、看護師になっても高い能力が発揮できるでしょう。
作業療法士・理学療法士
作業療法士 | 理学療法士 | |
---|---|---|
主な就職先 | 病院/老人保健施設/スポーツ関連施設 など | 病院/老人保健施設/児童養護施設 など |
資格を取得する方法 | 国家試験を受験し資格を取得する | 国家試験を受験し資格を取得する |
受験資格 | 指定の養成校で3年以上学び卒業する |
作業療法士
作業療法士は日常生活の動作からリハビリを考え提案する仕事です。それに加え心の障害も扱います。精神的なリハビリテーションを行うために、作業プログラムを作成して患者の不安を喜びや安心感に変える活動を行います。こうした特徴から作業療法士には精神科や認知症などにも活躍の場があり、かなり需要の高い職種と言えるでしょう。
理学療法士
患者さんの症状に合わせて基本動作からリハビリを行うのが理学療法士です。理学療法のスペシャリストとして、福祉機器を提案するなど、専門性が高い仕事と言えるでしょう。
理学療法士になるには、専門学校や短期大学など既定の養成校でカリキュラムを修め、その後に国家試験を突破する必要があります。資格取得までの道のりは平坦ではありませんが、苦労する価値のある資格です。より専門性を持って仕事をするためにも、理学療法士を目指してみてもいいでしょう。
セラピスト
2つ目は、セラピストの資格を取得して現場で働く方法です。理学療法士や作業療法士など資格を取得するためには、専門の学校に通ったうえで試験を通過しなければなりません。資格を取得するまでに、それなりの期間やコストがかかりますが、セラピストの仕事は利用者の能力を維持向上させるために重要です。
セラピストは利用者と適切にコミュニケーションをとりながら訓練を提供しなければならない職種のため、これまで培った介護士としての経験が大いに役立つでしょう。
さらなるキャリアアップを目指す方におすすめの資格
介護職として責任の大きな仕事や高待遇の仕事を目指したいならば資格取得をおすすめします。介護職としてさらなるキャリアアップを目指すためにおすすめの資格を紹介しましょう。
認定介護福祉士
認定介護福祉士は介護職のチームへの教育や指導、介護サービスマネジメントを行います。また、行政とも連携しながら地域包括ケアの推進をするのも主な仕事です。認定介護福祉士の活躍により、介護サービスの質の向上や連携などを促進できます。
認定介護福祉士の資格を取得するには介護福祉士の資格を取得し、5年以上の実務経験と100時間以上の現任研修が必要です。
【こんな人におすすめ!】
・介護スタッフへの教育やマネジメントに携わりたい人
・他職種と関わりたい人
認定介護福祉士は現場で介護業務に携わる機会は少なく、介護スタッフの教育やマネジメントなどが主な仕事です。リーダー的な立場で教育やマネジメントの仕事に携わりたい人におすすめします。また、介護分野以外との連携を図るのも重要な役割のため、他職種と関わりたい人にもおすすめです。
認定ケアマネージャー
認定ケアマネージャーはケアマネージャーの上位資格であり、ケアマネージャーの資質向上を目的とした資格です。ケアマネージャーを取得し、3年以上の実務経験を有して、資格試験に合格することで取得できます。
仕事内容そのものはケアマネージャーと変わりません。認定ケアマネージャーの取得で得られた知識や技術は、ケアマネージャーの仕事の質を高めるのに役立ちます。
【こんな人におすすめ!】
・ケアマネージャーとしてスキルアップを図りたい人
・主任ケアマネージャーを目指したい人
認定ケアマネージャーはケアマネージャーとしてのスキルや知識の向上を図るための資格です。ケアマネージャーとしてスキルアップを図りたい人におすすめします。
また、認定ケアマネージャーを取得すると主任ケアマネージャーの取得条件の1つである「実務経験5年以上」が3年に短縮されるのもメリットです。主任ケアマネージャーを目指す人にもおすすめします。
主任ケアマネージャー
主任ケアマネージャーはケアマネージャーへの助言・指導や他職種との連携・協議を図ることなどを主にしています。居宅介護⽀援事業所の管理者になるには、主任ケアマネージャーの資格が必須です。
主任ケアマネージャーの受験では、ケアマネージャーとして通算5年以上の実務経験、認定ケアマネージャーとして通算3年以上の専属勤務など、4つの条件のうち、いずれかひとつを満たしていれば受験資格があります。
【こんな人におすすめ!】
・居宅介護⽀援事業所の管理者になりたい人
・地域包括支援センターで働きたい
居宅介護支援事業者の管理者になるには主任ケアマネージャーが必要です。管理者の立場で働きたい人に主任ケアマネージャーの資格はおすすめできます。また、地域包括支援センターでは主任ケアマネージャーの配置が必須です。地域包括支援センターで働きたい人にも主任ケアマネージャーの資格取得はおすすめします。
社会福祉士
社会福祉士は施設利用者の相談に応じて助言や制度・サービスの紹介、サービスの利用調整などをするのが主な仕事です。福祉に関する相談助言の場において重要な役割を果たします。
社会福祉士を受験するには、福祉系大学・短大等卒業者か社会福祉士指定養成施設卒業者であることが必要です。上記いずれかの要件を満たし、社会福祉士国家試験に合格すれば、社会福祉士を名乗れます。
【こんな人におすすめ!】
・人と接することが好きな人
・社会貢献したい人
社会福祉士の仕事は、利用者の相談に応じ、福祉サービス提供者との連絡調整をする必要があります。さまざまな人とコミュニケーションを取る機会が多いため、人と接することが好きな人におすすめです。
福祉や介護サービスを利用したい人に適切なサービスを紹介して連絡調整なども行います。社会貢献度の高い仕事のため、社会貢献したい人にもおすすめです。
介護職のキャリアアップに役立つ研修制度
介護士が資格を新たに取得し、責任ある立場になるためには、長い実務経験や資金力、人脈などが必要になってきます。時間や大きなコストをかけずにキャリアアップするためには、介護士のために用意されている研修制度を利用するのがおすすめです。
介護福祉士ファーストステップ研修を受講する
介護福祉士ファーストステップ研修は、介護福祉士の資格を取得してから2年程度の実務経験を積んだ人が対象。研修の中で介護ケア、連携、運営管理基礎といった3つの領域に加えて、総合評価も履修します。合計232時間の履修時間を全15回に分けて学ぶため、介護分野の基本的な知識や技術からマネジメントの分野まで、総合的に身につけることができます。
各地域や施設で開催している研修に参加する
介護福祉士ファーストステップ研修のような、民間の団体が運営している研修以外にも、身近な場所で手軽に参加できる研修もあります。
各市町村が開催している介護士のためのフォローアップ研修制度や、病院や施設ごとにオープンに開催されている研修に参加すれば、最短半日から受講可能です。
各地域で開催されている研修会は、日程を調整しやすいだけでなく、研修にかかる費用も手頃であることが多いため、キャリアアップのためのコストが気になる人にとっては最適です。
介護業界でキャリアアップを成功させるには
介護業界でキャリアアップを実現できるのか不安を感じている人は多いのではないでしょうか?以下では、介護業界でキャリアアップを成功させるポイントを紹介します。
キャリアアップを叶えるポイント
キャリアアップを成功させたいならば、自分の現状と将来の目標を明確にすることが大切です。「管理職としてマネジメント業務に携わりたい」「専門性を高め専門職として活躍したい」などキャリアアップの方向性を具体的にイメージします。将来の目標が定まれば、そこから逆算して必要なことが見えてくるでしょう。目標達成のために必要なキャリアアッププランを立てられます。
目標によっては「転職」も視野に
自分の立てた目標が現在の職場で実現できるか検討することも重要です。管理職になりたくてもポジションがすでに埋まっていれば実現が困難になります。キャリアアップの方向性に応じて、必要であれば転職や独立を検討しましょう。自分の将来のキャリアアップの実現可能性を高められる職場を選ぶためにも、研修制度やキャリアアップ体制が充実しているかどうかの確認は重要です。
将来像を見据えたうえで適切なキャリアアップの方法を選ぼう
ここでは介護の現場におけるキャリアアップモデルや、資格を取得して他の分野に挑戦する方法、キャリアアップのためにおすすめの研修制度を紹介しました。介護士として将来どのようなキャリアを歩んでいきたいかをよく考えたうえで、あなたに合ったキャリアアップの方法を選んでいくことが大切です。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。