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合理的配慮とは|法的義務化される概念を具体例と合わせて簡単に解説

著者: ゲートウェイ

更新日:2023/12/22

公開日:2021/10/07

世の中には多様な人々が存在しており、1人ひとりの得意・不得意・できないことの基準は異なります。その基準の違いが原因で、障がいのある方に差別的な扱いが発生しないよう定められたものが「合理的配慮」です。個々がその人らしさを認め合いながら共に生きる「共生社会」実現のため、合理的配慮について理解することが重要です。今記事では、合理的配慮について具体例と合わせて詳しく解説します。

合理的配慮とは

合理的配慮とは、障害者の権利に関する条約「第二条 定義」において以下のように定義されています。

障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

障害者の権利に関する条約「第二条 定義

 

つまり、個人の特徴や能力に応じて障がいや困難を取り除き、平等な人権を享受して行使できるようにするために変更や調整を行うことです。まずは合理的配慮の基本情報について、詳しく解説します。

合理的配慮の考え方

憲法の3つの基本原理の1つに「基本的人権の尊重」があります。人が生まれながらにして持つ権利を尊重することであり、侵すことのできない永久の権利として誰もが持ちうるものです。一般的な生活に障がいや困難のある人も、もちろん基本的人権を有しています。そのため個性や心身状況、個人の有する障がいかかわらず、誰もが平等に暮らしやすい社会であることが本来の姿です。

しかし障がいを持つ方たちにとって、社会にはまだまだ生きづらいと感じることも多いのが現状です。そこで、困難や障がいのある人たちが平等に生きやすい社会を実現するため、サポート体制や設備を整えたりすることで差別的な状況が発生しないようにすることが合理的配慮です。

合理的配慮が関係する法律

まず、合理的配慮の提供義務が事業者に課せられた法律が2016年4月1日に施行された「障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」です。この法律では合理的配慮に加え、不当な差別的扱いの禁止を義務化しています。合理的配慮は障がいのある人に対して、障がいや困難を取り除く変更や調整を行うことです。一方、不当な差別的扱いの禁止は、障がいのある人に対して正当な理由なくサービス提供の拒否や制限などを禁止することを指します。

そして同じく、2016年4月1日に施行した「改正障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)」でも義務付けられています。個々の障がいや困難に応じて、職場で必要なサポートや働き方の調整を行うことが義務化。ただし、雇用に関する合理的配慮は、事業主に過度な負担を及ぼすこととなる場合を除きます。

合理的配慮の対象者

法律では合理的配慮の対象者を「障害者」としていますが、障害者手帳を持っている人だけが対象というわけではありません。身体障がいや精神障がい、知的障がいなど、心や体に関する障がいやその程度は個人によってさまざまです。そのため障がいや社会のバリアによって、日常生活や社会生活に制限を受けている全ての人が合理的配慮の対象者となります。そのため教育現場や職場、役所やお店と、日常生活・社会生活を営む全ての場所で合理的配慮が適用されます。

合理的配慮に従わない場合の罰則

障害者差別解消法や障害者雇用促進法で提供義務が課されている合理的配慮ですが、提供しないことによる具体的な罰則は現時点では示されていません。なぜなら個々に対する合理的配慮の程度が異なることから、一律に罰則を設けることが難しいからです。そのため、合理的配慮が提供されなかったことを理由に障がいのある人が訴訟をした場合、個々の事案に応じて損害賠償など罰則の対象になるか否かが判断されます。

事業者に課せられる合理的配慮について

合理的配慮の提供は事業者に課される義務ですが、対象となる事業者は会社やお店をはじめ、サービスを継続して提供する意思のある全ての事業者です。そのため法人を問わず、ボランティア活動などを行う非営利団体や非法人も事業者に含まれます。

障害者差別解消法における事業者の合理的配慮

障害者差別解消法では「不当な差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が義務付けられています。不当な差別的取り扱いでは正当な理由なく、障がいのある人に対する入店や入社、受付対応などを拒否することを法的に禁止しています。これは行政機関・民間事業者を問わず、法的義務とされています。
一方で合理的配慮については、行政機関では法的義務としているものの、民間事業者に対しては努力義務としています。わかりやすく学校で例えると、公立校では法的義務であるのに対し、私立学校では努力義務です。

障害者雇用促進法における事業者の合理的配慮

雇用における合理的配慮では、事業者自らが雇用した労働者に対しては法的義務とされています。民間事業者はサービス利用者に対する合理的配慮は努力義務である一方、雇用では法的義務になる点に注意が必要です。

前述したように、合理的配慮の程度は個々の特性や抱える障がいに応じてさまざまであるため、本人と話し合いながら必要な配慮を決めることが求められます。どんな配慮が提供・実施できるかを確認し、本人と企業の両者が合意した上で実施。その後も定期的に配慮内容を見直し、改善し続けていくことが重要です。
事業者が雇用面で具体的に対応すべき合理的配慮は、厚生労働省が指針を公表しているため参考にしてください。

合理的配慮の具体例

ここではサービス提供と雇用の2つの観点から、合理的配慮の具体例をご紹介します。

サービス提供における合理的配慮の具体例

内閣府公表の資料では、以下のような合理的配慮の具体例が挙げられています。

【具体例1】
講演会やセミナーなどで、障がいのある人の障がい特性に応じて席を決める
例:聴覚障がいのある人に対して講演者が話した内容がパネルに表示される席を設ける
【具体例2】
意思を伝え合うために絵や写真のカード、タブレット端末などを使用する
【具体例3】
手続き関連の書類について、自分で書き込むのが難しいので代筆を頼まれた場合、代筆が問題ない書類であれば本人の意思を十分に確認しながら代わりに書く
【具体例4】
段差がある場所では、スロープなどを用いて補助する 
例:電車やバスなどの乗車時など

サービス提供の面では、合理的配慮は努力義務としています。そのため事業者の負担が重すぎない範囲で、必要な対応を提供します。事業者の負担が重い場合には、その理由を説明し、別の方法を探すなどの対応が求められます。個々の障がい特性や状況、場面はさまざまであるため、臨機応変に適切な合理的配慮を考えましょう。

雇用における合理的配慮の具体例

雇用における合理的配慮の具体例は、以下の通りです。

【具体例1】
口頭だけでの指示が困難な知的障がいのある従業員に対して、写真や図入りのマニュアルを用意する
【具体例2】
階段での移動が困難な身体障がいのある従業員に対して、スロープやエレベータを設置するなどの環境整備、移動が極力ないよう業務内容を調整
【具体例3】
精神障がいのある従業員に対して、出退勤時刻や休暇・休憩など働き方を調整
【具体例4】
物忘れや注意力が散漫しやすい従業員の特性を考慮し、業務内容のダブルチェック体制の強化や、集中しやすいよう作業スペースを確保するなど工夫する

職場における合理的配慮は、法的義務とされています。もちろん障がいや困難の程度は個人差があるものなので、全ての人が100%快適といえる職場作りは簡単ではありません。その中でも本人と話し合うことで相手の特性を理解し、その上で必要な体制を整備し改善し続けている姿勢が重要です。合理的配慮を実践することで、誰もが働きやすい職場環境が実現します。

合理的配慮は個々の障がいや特性に応じて必要かつ適切なサポートを提供する考え方

障がいのあるなしかかわらず、個人の価値・権利は平等であり、全ての人が生きやすい共生社会を実現するために合理的配慮が欠かせません。合理的配慮は法律で定められているものであり、全ての行政機関・事業者が意識して実践すべきものです。合理的配慮により障がいのある人が生きやすい社会を実現するためにも、まずは合理的配慮について理解することが第一歩となります。

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著者プロフィール

ゲートウェイ

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異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。

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