フレイルを知って介護に活かす|症状や予防法、フレイルのチェックリスト
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2021/11/08
フレイルとは、加齢とともに高齢者によくみられる虚弱状態のことです。介護施設には、要介護状態でない方が入所する場合も多くあります。こうした方たちが要介護状態になるまでの前段階がフレイル状態となりますが、フレイルを予防することが要介護状態の阻止につながります。今回は介護予防としても重要なフレイルについて、原因や症状、予防法などを詳しくお伝えします。フレイルのチェックリストもありますので、ぜひご活用ください。
目次
フレイルとは
フレイルとは、簡単に言えば「高齢者の心身の虚弱状態」であり、健康状態から要介護状態に至るまでの中間段階にあたる状態です。厚生労働省研究班の「後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究」の資料内では、フレイルを以下のように定義しています。
加齢とともに、心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱化が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」
まずは、フレイルになった後の状態や原因、サルコペニアとの違いについてみていきます。
フレイルになるとどうなるのか
フレイルは「身体の虚弱」「こころ・認知の虚弱」「社会性の虚弱」の3要素からなります。そのためフレイルになると、体力や運動機能の衰え、うつや認知機能の低下、閉じこもりや孤食などの状態になり、徐々に要介護状態へと陥ります。また、健常な高齢者であれば風邪にかかっても数日で治りますが、フレイル状態にあると肺炎を併発したりするなど併存症の傾向がみられます。そのほか加齢による心臓疾患や高血圧、痛風などさまざまな病気の併発リスクも高まります。
フレイルの原因
フレイルは、加齢に伴う心身・環境の変化など、さまざまな要因が相互に影響し合って起こるものです。なかでも2大要因は疾病や老化ですが、うつや孤立、喫煙などもフレイルを引き起こす原因とされています。また、東京医師会では社会とのつながりを失うことがフレイルの最初の入り口としており、そこから心身の虚弱状態に陥ると考えられています。
フレイルとサルコペニアの違い
フレイルとは要介護状態に陥るまでの中間段階であり、サルコペニアは加齢が原因で筋肉量の減少や筋力が低下することです。フレイルの1要素である「心身の虚弱」は、サルコペニアも要因の1つです。つまりサルコペニアはフレイルに属する状態の1つであると同時に、フレイルの引き金になり得るものです。サルコペニアと診断される基準は、主に以下2つです。
・握力の低下:男性26kg未満、女性18kg未満
・歩行速度の低下:0.8m/秒以下
フレイルのチェック方法|フレイルの症状とは
フレイルは気づかないうちにその状態に陥っている可能性もあるため、定期的に状態をチェックすることが重要です。ここではフレイルの症状に当てはまるかが確認できる、評価基準をご紹介します。合わせて、フレイルのチェクリストも活用してみてください。
フレイルの基準5項目
フレイルをチェックするにあたり、国際的にも統一された評価方法や基準は存在していませんが、欧米で取り入れられているFriedのモデル基準が一般的に取り入れられています。
評価項目 | 評価基準 |
---|---|
体重減少 | 6ヶ月間で2~3kg以上、意図せず体重が減った |
倦怠感 | (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする |
活動量 | ・軽い運動・体操(農作業も含む)を1週間に何日くらいしていますか? ・定期的な運動・スポーツ(農作業含む)を1週間に何日くらいしていますか? 上記2つの質問に「していない」と回答 |
握力 | 男性26kg未満、女性18kg未満(利き手における測定) |
通常歩行速度 | 1m/秒未満の場合 (測定区間の前後に1mの助走路を設け、測定区間5mの時間を計測する) |
・3項目以上該当:フレイル
・1〜2項目該当:プレ・フレイル
・該当項目なし:健常
フレイルの兆候をチェック
下記は、東京都医師会が公表しているフレイルの兆候チェックです。
フレイルの兆候チェック | 回答 | ||
---|---|---|---|
栄養 | ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気をつけた食事を心がけていますか | はい | いいえ |
野菜料理と主菜(お肉またはお魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか | はい | いいえ | |
「さきいか」「たくあん」くらいの固さの食品を普通に噛み切れますか | はい | いいえ | |
お茶や汁物でむせることがありますか | いいえ | はい | |
運動 | 1日30分以上の汗をかく運動を週2回以上、1年以上実施していますか | はい | いいえ |
日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか | はい | いいえ | |
ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いと思いますか | はい | いいえ | |
社会参加 | 昨年と比べて外出の回数が減っていますか | いいえ | はい |
1日1回以上は、誰かと一緒に食事をしますか | はい | いいえ | |
自分が活気に溢れていると思いますか | はい | いいえ | |
何よりもまず、物忘れが気になりますか | いいえ | はい |
回答の青部分にチェックが多い場合、フレイルの兆候があるため要注意です。
フレイルの可能性を総合的にチェック
厚生労働省「介護予防のための生活機能に関するマニュアル」には、身体的・精神的・社会的側面を含む総合的な基本チェックリストがあります。特定高齢者の候補者を選出するためのチェックリストですが、同時にフレイルの可能性もチェックできます。
No. | 質問項目 | 回答 | |
---|---|---|---|
1 | バスや電車で1人で外出していますか | 0.はい | 1.いいえ |
2 | 日用品の買物をしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
3 | 預貯金の出し入れをしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
4 | 友人の家を訪ねていますか | 0.はい | 1.いいえ |
5 | 家族や友人の相談にのっていますか | 0.はい | 1.いいえ |
6 | 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか | 0.はい | 1.いいえ |
7 | 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか | 0.はい | 1.いいえ |
8 | 15分くらい続けて歩いていますか | 0.はい | 1.いいえ |
9 | この1年間に転んだことがありますか | 1.はい | 0.いいえ |
10 | 転倒に対する不安は大きいですか | 1.はい | 0.いいえ |
11 | 6ヶ月で2?3kg以上の体重減少がありましたか | 1.はい | 0.いいえ |
12 | BMI(=体重(kg)÷身長(cm))が18.5未満 | 1.はい | 0.いいえ |
13 | 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか | 1.はい | 0.いいえ |
14 | お茶や汁物等でむせることがありますか | 1.はい | 0.いいえ |
15 | 口の渇きが気になりますか | 1.はい | 0.いいえ |
16 | 週に1回以上は外出していますか | 0.はい | 1.いいえ |
17 | 昨年と比べて外出の回数が減っていますか | 1.はい | 0.いいえ |
18 | 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われますか | 1.はい | 0.いいえ |
19 | 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
20 | 今日が何月何日かわからない時がありますか | 1.はい | 0.いいえ |
21 | (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない | 1.はい | 0.いいえ |
22 | (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった | 1.はい | 0.いいえ |
23 | (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる | 1.はい | 0.いいえ |
24 | (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない | 1.はい | 0.いいえ |
25 | (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする | 1.はい | 0.いいえ |
上記回答から1の点数を数え、下記表でフレイルの可能性をチェックしてみてください。
質問No. | チェック内容 | フレイルの可能性あり |
---|---|---|
1~20 | 日常生活全般 | 10点以上 |
6~10 | 運動機能 | 3点以上 |
11・12 | 栄養状態 | 11「はい」かつ12「BMI18.5未満」 |
13~15 | 口腔機能 | 2点以上 |
16・17 | 社会的交流 | 16「いいえ」(17「はい」要注意) |
18~20 | 認知機能 | 1点以上 |
21~25 | うつ状態 | 2点以上 |
フレイルの予防とは
フレイルは生活機能の低下を招き、徐々に要介護状態に陥るため見逃せない状態です。しかし「生活機能が障害され、心身の脆弱化が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」と定義されていることから、予防可能なものです。定期的にフレイルのチェックを行うと同時に、日常生活で以下ポイントを心がけることがフレイルの予防につながります。
社会とのつながりをもつ
東京医師会のホームページにも記載があるように、社会とのつながりを失うことがフレイルの引き金になると考えられています。そのため家族をはじめ、友人やご近所の方などとコミュニケーションを取る、地域活動に参加するなど社会と交流を持つことが大切。日用品の買い出しなど近所での活動だけでなく、バスや電車で少し遠くまで出かける機会も設けるなど、行動範囲を狭めないことがポイントです。
栄養バランスの良い食事を摂る
加齢では特に筋力が低下しやすいため、たんぱく質を中心に栄養バランスの良い食事を心がけることが重要です。栄養が足りていないとフレイルを引き起こす重大な要因ともなるため、なるべく1日3食、食材の偏りなく品数が減らないよう献立を考えてみてください。
また固いものが食べにくい、食べ物が飲み込みにくいことが食欲低下にもつながるため、口腔ケアも行うようにしましょう。
適度に運動する
加齢により筋力が低下しやすい状態にあるため、適度な運動で筋力や筋肉量を維持・向上させることが大切です。まずは近所でのウォーキングから始め、自宅内では椅子スクワットやかかとの上げ下げなど簡単なストレッチの継続を心がけましょう。
持病の悪化に気をつける
糖尿病や心臓病、腎臓病など、慢性疾患がある場合は悪化させないことが重要です。持病の悪化で運動ができなくなってしまったり、満足のいく食事が摂れなくなってしまうと筋力や栄養の低下につながります。持病を悪化させないように注意しつつ、身体機能も低下させないよう、かかりつけ医の協力も得て現状維持・継続を目指しましょう。
フレイルは高齢者の心身虚弱状態であり要介護状態の前段階だが、予防可能!
フレイルは健常と要介護状態の中間段階であり、心身・認知・社会性の虚弱状態です。フレイルを引き起こす要因はさまざまですが、特に社会とのつながりの消失や疾病・老化の進行が主な原因とされています。フレイルは適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態です。フレイルの兆候があるか・フレイルの可能性があるかを定期的に確認し、食事や運動など日々の生活を見直すことから始めてみましょう。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。