認知症の主な種類4つとは?症状の特徴や覚えておきたい対応方法をご紹介
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/11/18
認知症への理解や対応は、高齢化が進む現代の大きな課題です。そんな認知症は、発症の原因によって非常に多くの種類があることをご存知でしょうか。
今回は、特に発症割合が高い代表的な認知症の種類4つの、特徴や詳しい症状をご紹介します。あわせて、認知症の人への対応や介護に役立つ資格についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
認知症とは?
認知症とは、脳の病気や障害といったさまざまなダメージが原因で、記憶や判断力などの認知機能が低下した状態です。日常生活に支障をきたす状態が6ヶ月以上継続する場合、認知症であると考えられます。
認知症を招く原因となる疾患の種類は、脳の細胞が徐々に死滅する「変性疾患」や脳の血管障害などさまざまです。認知症は原因となる疾患によってたくさんの種類に分類され、その多くが根本的に完治させる治療法が確立されていません。
認知症と加齢による物忘れの違い
認知症の物忘れと加齢による物忘れは一見よく似ていますが、2つには明確な違いがあります。
認知症による物忘れ | 加齢による物忘れ | |
---|---|---|
体験したことについて | できごとを全体的に忘れる 例:夕ご飯を食べたこと自体を忘れる |
できごとを部分的に忘れる 例:夕ご飯で食べたメニューを忘れる |
日常生活への影響 | あり | なし |
ヒントをもらうと | 思い出せない | 思い出せる |
忘れたことへの自覚 | なし | あり |
判断力の低下 | あり | なし |
加齢による物忘れは、体験したできごとの一部を忘れるまでにとどまり、何かきっかけがあると思い出せる場合が多いです。「物忘れをした」という自覚があり、普段の生活に影響をきたすこともありません。
一方認知症による物忘れは、自分が過去に体験したできごとそのものを忘れてしまいます。新しいことを覚えられず、生活に支障が出たり判断力が低下したりすることも大きな違いです。
認知症の代表的な種類4つ
・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
・脳血管性認知症
認知症はさまざまな疾患が原因で発症しますが、中でも発症割合が多い代表的なものは4種類です。
ここでは、代表的な4種類の認知症について、特徴や症状を解説します。
アルツハイマー型認知症
主な認知症の種類のうち約70%近くもの割合を占めるのが、高齢期の人に多い「アルツハイマー型認知症」です。
脳にβアミロイドという異常なタンパク質が蓄積されて、脳の神経細胞が死んでしまうことで発症します。記憶を司る「海馬」を中心に脳全体が萎縮し、症状が少しずつ進行することが特徴です。
初期には軽度の記憶障害が見られ、自分の大事な持ちものを盗まれたと感じるもの盗られ妄想や暴言などの症状が出る場合もあります。
発症割合 | 67.6% |
---|---|
男女比 | 女性に多い |
主な症状 | ・記憶障害 ・もの盗られ妄想 ・暴言 ・徘徊 など |
レビー小体型認知症
「レビー小体型認知症」は、主な認知症の種類で約4.3%の発症割合を占めています。
「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質が溜まって、脳の神経細胞が破壊されることで発症する認知症です。
顕著な脳の萎縮は見られませんが、幻視や妄想、体が震えたり動きづらくなったりするパーキンソン症状が現れます。調子がよい日と悪い日を交互に繰り返しながら、進行するのが特徴的です。
発症割合 | 約4.3% |
---|---|
男女比 | 比較的男性に多い |
主な症状 | ・幻視 ・妄想 ・パーキンソン症状 ・認知機能障害 など |
前頭側頭型認知症
「前頭側頭型認知症」は、前頭葉と側頭葉などの萎縮が見られ、これらの神経細胞の機能が障害されて起こる認知症です。主な認知症の種類の中では発症割合が約1.0%と低く、詳しい原因はまだ究明されていません。
万引きをしたり身だしなみに気を遣わなくなったりといった社会性の欠如や人格の変化など、ほかの認知症にはあまり見られない症状が出現します。自分から言葉を発する機会が減少することも特徴のひとつです。
発症割合 | 1.0% |
---|---|
男女比 | あまりない |
主な症状 | ・社会性の欠如 ・協調性の低下 ・人格の変化 ・非理性的な行動を起こす ・言語障害 など |
脳血管性認知症
「脳血管性認知症」は、認知症の種類のうち約20%を占めています。脳梗塞やくも膜下出血など脳の病気が原因で血液の循環が悪くなり、神経細胞の一部が死滅することで発症するものです。高血圧や肥満といった生活習慣病が発端となるため、これらの予防が認知症の予防にもつながります。
症状の種類は原因となる脳の病気によってさまざまですが、主に記憶障害や認知機能の低下、手足のしびれなどが見られる場合が多いです。
正常な機能を保っている部分と障害が起きている部分が混在することから、「まだら認知症」とも呼ばれています。
発症割合 | 約19.5% |
---|---|
男女比 | 男性に多い |
主な症状 | ・記憶障害 ・認知機能障害 ・手足のしびれ ・歩行障害 ・突発的な感情表出 など |
認知症で見られる症状の種類
認知症の人に見られる症状は、大きく「中核症状」と「周辺症状」の2種類に分類されます。
ここでは、2種類の症状についてそれぞれ特徴や具体的な例を解説していきます。
中核症状の特徴
認知症の中核症状は、脳の神経細胞が破壊され、その部位の機能が低下することで起こる症状です。認知症に直接的に関わる基本の症状といえます。
主に見られるのは、次の6つの症状です。
症状 | 特徴 |
---|---|
記憶障害 | ・初期から多く見られる ・最近のできごとが覚えられない ・昔のことは覚えている場合が多い |
見当識障害 | ・初期は季節や時間の感覚が混乱する ・進行すると道がわからなくなったり、人間関係の認識が混乱したりする |
理解力・判断力の低下 | ・思考が遅くなって情報の処理・理解に時間がかかる ・同時に2つ以上のものごとを処理するのが難しくなる ・普段と違うできごとに混乱する |
実行機能障害 | ・計画や順序を立てて行動に移すことが難しくなる |
言語障害 | ・自分の気持ちを言葉で表すことが難しくなる |
失行・失認 | ・身体機能に異常がなくても、今まで行っていた動作ができなくなる(失行) ・自分の体の状態や目の前にあるものを認識できなくなる(失認) |
中核症状は認知症患者のほとんどに現れますが、認知症の種類や進行状態により症状の度合いは異なります。
周辺症状の特徴
認知症の周辺症状は、認知症患者のもともとある性格や心理的・環境的な要因などが関係して起こる症状のことです。「BPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)」とも呼ばれています。
認知症患者のほとんどに現れる中核症状とは異なり、本人の性格が密接に関わって起こるものなので、症状の現れ方には個人差が大きいことが特徴です。
症状 | 特徴 |
---|---|
抑うつ | 意欲が低下しものごとに無関心になる |
幻覚 | ・本来見えないはずのものが見える(幻視) ・本来聞こえないはずの音が聞こえる(幻聴) |
徘徊 | 本人にとって何らかの理由があり、歩き回る |
暴言・暴力 | 不安や焦燥などの気持ちから感情の起伏が激しくなり、暴言・暴力につながる |
妄想 | 自分の大切なものが盗まれるなどのもの盗られ妄想 |
介護拒否 | 自分の状況を理解できず、他者から食事や排泄を介助されることを拒む |
上記のほか、睡眠バランスが崩れることによる睡眠障害や失禁、帰宅願望といった症状も周辺症状として挙げられます。
認知症の人への対応で意識したいポイント
・相手を否定しない
・周囲の人と比べない
・自分でできることはしてもらう
・相談できる場所を見つける
種類に関わらず、認知症の人と気持ちのよいコミュニケーションを取るためには、対応で意識するべきポイントがあります。
ここでは、認知症の人に対応する際の接し方や心構えなどを解説します。
相手を否定しない
認知症の人の思わぬ言動を目の当たりにすると、介護者はイライラしたり冷静に対応できなかったりするケースが多いです。このような場合に相手を否定すると、認知症の人も介護者もどちらも辛い思いをしてしまいます。
認知症の人のプライドを傷つけないよう、言動の否定や指摘は控えましょう。その行動に至った理由を考え、意志を受け止める意識をすることで、相手との信頼関係を築いていけます。介護をするうえでのヒントが見つかる場合もあるでしょう。
周囲の人と比べない
認知症の人を介護する際は、その人とほかの誰かを比べないようにしましょう。 認知症の種類や症状の出方、進行速度は一人ひとり異なります。同じ年齢の人やほかの認知症の人と比較しても、介護そのものにメリットがあるわけではありません。
性格や症状の度合いをよく見極めて、その人のペースに合わせた対応を心がけることが大切です。
自分でできることはしてもらう
認知症の人の介護では、できる行動は可能な限り本人にやってもらうことも重要です。
認知症が進行すると、できないことが増えて1人で行動させることが危なくなります。介護者が身の回りの世話を、すべて行うケースも多いです。
しかし、すべての行動ができなくなったわけではありません。残された能力を尊重して、声かけや見守りをしながら積極的に動いてもらいましょう。
相談できる場所を見つける
介護の期間が長くなるほど、介護者が認知症の人への対応に疲弊する場合が多く見られます。
病院の主治医や看護師、介護施設のスタッフやケアマネージャーなど、認知症の人の介護や対応について相談できる場所は豊富です。専門の機関であれば、今後の介護や対応に関するアドバイスやサポートもしてもらえます。
相談する場所に迷った際は、介護や医療の専門知識を持ったスタッフが在籍している、地域包括支援センターに相談してみましょう。
認知症の人への対応に役立つ介護系の資格
・認知症ケア専門士
・認知症介助士
・認知症ライフケアパートナー
介護や看護系の資格は、認知症や対応についての専門知識が身につきます。
ここでは、持っておくと役立つ介護・看護系の資格を3種類ご紹介します。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、認知症についての知識や技術、倫理観について学べる民間資格です。
一般社団法人日本認知症ケア学会が提供している資格で、日本における認知症ケアの技術向上を目的として確立されました。
更新制の資格であるため、認知症ケアについての新しい知識や技術を学べることが特徴です。
受験資格 | 試験実施年の3月31日から遡り過去10年間において、認知症ケアに関連する施設などで3年以上、認知症ケアの実務経験を有する者 |
---|---|
試験方法 | 第1次試験(4分野) ・認知症ケアの基礎 ・認知症ケアの実際Ⅰ:総論 ・認知症ケアの実際Ⅱ:各論 ・認知症ケアにおける社会資源 第2次試験 ・論述試験 ・面接試験 |
受験料 | 第1次試験 ・審査料:筆記試験3,000円×分野数(4分野で合計12,000円)/面接試験8,000円 ・認定料:15,000円 ・更新料:10,000円 第2次試験 8,000円 |
合格基準 | 第1次試験:各分野70%の正答率 |
認知症介助士
認知症介助士は、認知症に対する正しい理解や、認知症の人とのよりよいコミュニケーション方法などを学べる民間資格です。通信講座やセミナーへの参加後、試験に合格することで資格を取得できます。
一人ひとりに寄り添い、おもてなしの心を持った対応を習得できるため、家族に認知症の人がいる場合のほか、接客業などに従事する方にも役立つでしょう。
受験資格 | なし |
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試験方法 | ・セミナー及び検定試験(セミナーに参加後、同日に検定試験を受験) ・検定試験のみ受験(東京・大阪の機構会場にて検定試験を受験) ・CBT方式(全国のCBTセンターにてパソコン受験) ・IBT方式:(自宅のパソコンにて受験) |
受験料 | 3,300円 ※セミナー及び検定試験で受験する場合 ・テキストつき:19,800円 ・テキストなし:16,500円 |
合格基準 | 30点満点中21点以上 |
認知症ライフパートナー
認知症ライフパートナーは、認知症の人の価値観やこれまでの経験などを尊重して、その人らしい生き方ができるようサポートするための知識や対応方法を学ぶ民間資格です。
基本的な知識を習得する3級、応用的な知識や技術を学ぶ2級、認知症ケアにおける指導の役割を担う1級の3種類に分類されています。
1級以外は受験資格が必要ないため、未経験の方も気軽に挑戦できることが魅力です。
受験資格 | 2・3級:制限なし 1級:認知症ライフパートナー2級合格者 |
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試験方法 | 2・3級:マークシート式試験 1級:前半/マークシート式試験・後半/記述式試験 |
受験料 | 3級:6,000円 2級:9,800円 1級:14,000円 |
合格基準 | 2・3級:100点満点中70点以上 1級:前半・後半で各100点満点中ともに70点以上 |
認知症の主な種類を知って適切な対応を心がけましょう
認知症は非常にたくさんの種類があり、症状の現れ方や進行の程度も認知症の種類やその人によって異なります。対応が難しい場合もありますが、種類別の特徴や具体的な症状について知っておけば、認知症の人と介護者双方にとってストレスのないケアができるでしょう。認知症のケアに関する資格取得も視野に入れることで、認知症の人に寄り添う対応ができます。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。