【2024年度】介護報酬改定とは?処遇改善の内訳や改定のポイントをわかりやすく解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2024/09/20
公開日:2024/09/20
介護報酬改定は、厚生労働省により3年ごとに実施され、介護サービスの種類ごとに報酬単価の決定が行われます。介護に従事する人にとっては、待遇に大きな影響を与える重要な制度です。本記事では、2024年度の介護報酬改定に関するポイントや職員に与える影響について解説します。
目次
「介護報酬改定」とは?
介護報酬改定とは、3年ごとに介護サービス提供者に対する報酬の金額や仕組みを見直す制度です。
介護報酬改定は、介護サービス提供者に対する報酬の金額や仕組みを見直す制度です。厚生労働省の「介護給付費分科会」により3年ごとに見直されます。介護サービスの種類ごとに報酬単価が設定され、サービス提供者の収入や業務内容が大きく影響を受けるため、関係者の中で注目を集めるイベントです。
高齢化が続く日本社会において、持続可能性を確保し、サービスの質を向上させる目的で行われます。また、国の財政状況や介護サービスの需要と供給のバランスを見直す役割も含まれています。
2024年度の介護報酬改定は1.59%引き上げ
2024年度の介護報酬改定では、介護サービス提供者への報酬が1.59%引き上げられました。内訳としては、介護職員の処遇改善分として「+0.98%」、その他の改定率が「+ 0.61%」です。
また、1.59%の引き上げとは別に、光熱費の増額による介護施設の増収効果が見込まれ、0.45%相当の引き上げが予定されています。そのため、実質的には介護報酬改定による1.59%と、上記の0.45%を合計して、合計2.04%の引き上げが実現しました。
介護報酬改定の施行日
2024年6月から施行 | 2024年4月から施行 |
---|---|
・訪問看護 ・訪問リハビリテーション ・通所リハビリテーション ・居宅療養管理指導 |
左記以外の介護サービス 例:訪問介護、通所介護 など |
<介護報酬の改定は4月1日に施行されるのが通例です。2024年度に関しては、診療報酬改定の時期が6月に後ろ倒しされたため、介護報酬改定のうち医療に関わるサービスのみ6月に施工されました。それ以外の、訪問介護や通所介護に関する改定に関しては例年通り4月1日に施工済みです。
医療に関わるサービスのみ後ろ倒しをした背景に、医療保険の診療報酬改定が6月に変更されたことに対応して、業界のデジタル変革を支援し、負荷を軽減する狙いがあります。
2024年度の介護報酬改定の4つのポイント
2024年度の介護報酬改定の概要がつかめたところで、理解を深めるうえで抑えておきたい4つのポイントを解説します。
地域包括ケアシステムの深化とDX推進
地域包括ケアシステムの深化は、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるようにするための取り組みです。支援体制などを強化することにより、地域の医療機関や介護施設との連携を一層促進する目的があります。
また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も重要なポイントです。電子カルテやオンライン診療の導入を進めることで、情報の共有が迅速かつ正確に行われ介護や医療サービスの質が向上します。
【変更点】
・居宅介護支援における特定事業所加算の見直し
・通所リハビリテーションにおける機能訓練事業所の共生型サービス、基準該当サービスの提供の拡充 など
介護職員の処遇改善
介護職員の処遇改善は、介護業界の持続可能性を確保するために欠かせない要素です。他産業の動向も踏まえ、2024年度の介護報酬改定では、介護職員の給与や福利厚生の向上が図られました。
具体的には、給与のベースアップや資格取得支援などが含まれます。また、近年一般的になりつつある、テレワークについても施策の1つに加えられ、介護業界でも働き方の改革が推進中です。
【変更点】
・介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
・テレワークの取扱い など
財務諸表の見える化
財務諸表の見える化は、介護施設や事業所の経営透明性を高めるための取り組みです。2024年度の改定では、財務情報の公開が義務付けられ、経営状況を明確に示すことが求められています。
財務情報を公開することで、利用者さんやその家族が施設等を選ぶ際の1つの判断材料となり、施設側は安心感や信頼性を提供する事ができます。これにより、施設の評判や利用者の満足度向上にも貢献可能です。
居宅介護支援事業所に介護予防支援を拡大
要支援者を対象とした介護予防支援について、居宅介護支援事業所が市町村からの指定を受けて実施できるよう改正が行われました。改正の背景としては、介護予防支援の需要が増加し、地域包括センターだけでは対応が難しいといった理由があります。
地域包括支援センターの業務の一部を居宅介護支援事業所が担うことで、業務量を減らし、地域包括支援センターの負担軽減が可能です。
2024年度の介護報酬改定で導入が見送られた2つの項目
2024年度の介護報酬改定では、実際に実施されたもの以外にも、導入が見送られた項目があります。ここでは、どんな項目が見送られたのかについて解説します。
複合型の新介護施設の導入
複合型の新介護施設とは、居住型と通所型のサービスを一体化し、利用者がより柔軟にサービスを受けられる状態を目指した施設です。介護サービスの多様化と効率化を図るための重要な提案で、介護度が変わっても同じ施設で継続してサービスを受けられると期待を集めていました。しかしながら、施設の設置基準や運営体制など、導入に際して解決すべき課題が多く指摘されたため、導入が見送られています。
ケアプランの有料化
ケアプランは、介護サービスを受ける際の重要な計画書であり、現在は無料で提供されています。このケアプランの作成を有料化する動きも、2024年度の介護報酬改定で見送られた重要な提案の1つです。
有料化によってケアマネージャーの労働負担を軽減し、質の高いプラン作成を促進することを目的としていました。一方で、利用者の金銭的な負担が増えるなど反対の意見も多く、実現には至っていません。
介護報酬改定が介護職員に与える影響
介護報酬改定は、介護職員の働き方や待遇に大きな影響を与えます。報酬の引き上げが行われると、職員の給与も比例して増加し、働きがいの向上につながるためです。また、処遇改善加算の適用範囲が拡大されることで、職場環境の整備やスキルアップのための研修の充実も期待できます。
一方で、報酬改定に伴う事務作業の増加や新しい基準への適応が求められるため、職員の負担が増えるといったマイナスの側面があることも事実です。特に中小規模の事業所では、適応に苦労する場合があるため、支援体制の強化が求められています。
訪問介護の現場では実質的なマイナス改定も
2024年度の介護報酬改定では、全体の改定率が+1.59%とされているものの、詳細を見てみると、身体介護や生活援助を含む訪問介護においては基本報酬の引き下げが行われています。介護事業全体の収支差率が平均2.4%であるのに対し、訪問介護の収支差率がこれを上回っていたため、全体のバランスを取ったことが理由です。
ただ、訪問介護の基本報酬はマイナスとなった一方で、処遇改善加算の加算率は全サービスの中では最も高いのは事実です。未取得の加算の取得を目指したり、処遇改善加算が算定できる体制を整えたりなど、マイナス分をカバーする対策も実施していけば結果的にはプラスとなるでしょう。
介護業界で働くのであれば、介護報酬改定はしっかりと把握しよう
2024年に実施された介護報酬改定では1.59%の引き上げ、DX推進など、他産業の賃上げの影響やIT技術の進化など世の中の流れを踏まえた内容でした。介護報酬改定は働き方や待遇に大きな影響を与える制度です。介護の現場で働くのであれば、しっかりとその内容を理解し、自分にあった職場を見つけてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。