中高年の介護離職が増加?少しでも負担を減らすためにできることとは
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/08/08
近年、介護を理由に会社を退職する「介護離職」が増加傾向にあります。しかし、介護離職によって生じるデメリットも少なくありません。少しでも介護者が負担を減らすためにできることや利用したい制度について詳しく解説していきます。
目次
40代からの介護離職が増加!
総務省が公表した「平成29年就業構造基本調査結果」によると、介護をしている人は約628万人。このうち、実際に仕事として介護職についている人が約346万人となっています。しかし一方で、過去1年間に「介護・看護」を理由として前職を離職した人は約9.9万人に及んでいることが判明しています。 厚生労働省の「国民生活調査」によると、要介護者と同居の介護人は、40代から急激に増え始めています。少子高齢化社会と呼ばれる現代において、介護離職は大きな問題として挙げられるひとつです。
中高年の介護離職は介護疲れが原因だった
介護離職が増えている背景の大きな原因となっているのが、「介護疲れ」です。介護負担はすべて介護者個人にのしかかってくることもあるため、時間的・金銭的・精神的なものが重なって、最終的に介護離職してしまう人も多いようです。
働きながら両親の介護をする労働者は少なくありません。しかし,仕事と介護を両立させることは、やはり困難である場合が多く、やむなく離職せざるを得ない状況になっているのも事実です。
介護離職によるデメリットとは?
・介護離職による収入減
・介護離職によるメンタルダメージ
介護離職による収入減
2012年に実施した「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、介護離職をした約1,000人のうち、精神面・肉体面・経済面それぞれで負担が増加したと考える人は、精神面で約64.9%、肉体面で約56.6%、経済面で約74.9%と、それぞれに負担を感じると答えています。
介護離職によって経済面で負担を感じるという人が大多数を占めています。当然、介護離職をすることで無職状態に陥り、一切の収入減が絶たれてしまうという恐れがあります。また短期的な収入の減少だけでなく、仮に転職できたとしても、一度キャリアを離れてしまったことで、今までどおりの働き方はできない可能があります。管理職や幹部へのキャリアの道が絶たれてしまうという介護者も少なくは無いでしょう。そのため一定期間の収入がなくなるだけでなく、転職できたとしても生涯収入の減少の可能性も少なくありません。
このように離職したことで、収入が減少することで、経済面での負担が増し、不安感やストレスが大きくなる方も少なくありません。また一度離職したことで、再就職までに時間がかかってしまう、管理職に復帰できないといったリスクもあります。
介護をする期間はどれくらいか、どの程度のお金が必要になっているのかなど、考えておく必要があるでしょう。
介護離職によるメンタルダメージ
先程のアンケート調査から、精神面での負担は、64.9%と回答があったように、メンタルダメージも大きな問題です。
仕事をやめたことで収入が減り、使える介護サービスが減ったことから、精神面で苦労が増えたと感じるパターンもあります。他にも、今まで仕事でのつながりがなくなり、介護に専念するようになったことで、今まで感じなかったストレスを感じるようになってしまったという場合もあります。
介護離職を防ぐために労働者ができること
前項で解説したように介護離職後、精神面・経済面で負担が増加したと考える人が多くなっています。介護を理由で離職を検討する場合、まずは下記のような制度の利用をしてから検討してみてはいかがでしょうか。
・育児・介護休業法
・有料老人ホームの利用
・介護休業給付金の申請
・介護休業給付金を申請する
・介護休業給付金の申請の仕方
・介護休暇制度を活用する
・介護のための短時間勤務制度を活用する
・介護のための残業免除の制度を活用する
どのような制度なのか1つずつご紹介します。
育児・介護休業法
職場によっては、介護支援制度などを設けているところもあります。また、国でも「育児・介護休業法」を制定し、仕事と家庭を両立できる支援策の充実を図っています。たとえば、要介護状態にある家族を介護する労働者が会社に対して申請することで、対象家族1人につき最大通算93日の介護休業の取得が可能です。その他にも、買い物や通院の付き添い、介護を行うために年間5日間まで介護休暇を取得することも定められています。
有料老人ホームの利用
要介護者の介護となると、片時も目が離せないことも出てくるでしょう。そんな時に利用したいのが、有料老人ホームです。もちろん、入所のための費用はかかりますが、介護離職後の収入減などを考えれば、仕事を継続できる選択肢も考える必要があります。また、専門施設であれば、介護スタッフによる正しいケアをしてくれるため、結果的に高齢者にとってもより良い生活を保つことができるかもしれません。
介護休業給付金の申請
介護休業給付金とは、雇用保険の被保険者で一定の条件を満たす人が、職場復帰を前提として介護休業を取得した場合に支給される給付金のことです。支給される対象として、介護休業開始日の前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上ある場合などに支給され、金額は賃金の67%相当とされています。介護給付金の申請の仕方は事項で詳しく紹介致します。
介護休業給付金の申請の仕方
介護休業給付金は、介護休業を取得すれば自動的に支給されるわけではなく、ハローワークで支給申請をしなければいけません。
介護休業給付金が受け取れるまでの大まかな流れは以下の通りです。
1.介護休業の申し出
2.ハローワークに支給申請
3.介護休業開始後に指定口座へ給付される
介護休業開始2週間前までに、介護休業を申請してください。すると、会社側が「休業開始時賃金月額証明書」をハローワークに提出します。次に、申請書類をまとめてハローワークに提出しましょう。申請後の手続きについては、基本的に会社が行います。
また、ハローワークに提出するための主な書類は以下の通りです。
・介護休業給付金支給申請書
・介護休業申出書
・介護対象家族の氏名や間柄などが確認出来る書類
介護休暇制度を活用する
労働者の家族が要介護状態にある場合、その介護や世話のために取得できる休暇です。
介護が必要な家族1人につき1年度に5日まで、対象家族が2以上の場合は1年度に10日までとされ、これは介護休業や年次有給休暇とは別に取得することができます。
取得単位は1日または時間単位です。通院の付き添い・介護サービスの手続き代行の場合・ケアマネージャー等との短時間の打ち合わせにも活用できます。
労使協定を締結している場合、「入社6ヶ月未満の労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」は対象外となるので注意しましょう。
申し出は書面の提出、口頭での申し込みも可能です。社内で書面等が規定されている場合、社内様式を使用し、規定の様式がない場合は厚生労働省の「介護休業制度特設サイト」内の様式例を活用してみてください。
介護のための短時間勤務制度を活用する
労働者の家族が要介護状態にある場合、その介護のための、所定労働時間の短縮等の措置のことです。
事業主は次のうちいずれか1つ以上の制度を設ける必要があるとされています。
① 短時間勤務の制度
・1日の所定労働時間を短縮する制度
・週又は月の所定労働時間を短縮する制度
・週又は月の所定労働日数を短縮する制度
(隔日勤務や特定の曜日のみの勤務等の制度をいう)
・労働者が個々に勤務しない日
又は時間を請求することを認める制度
② フレックスタイムの制度(3ヶ月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各自の始業・就業時間を決めて働く制度)
③ 始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
④ 労働者が利用する介護サービス費用の助成
その他これに準ずる制度
これらは対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上の利用が可能です。労使協定を締結している場合、「入社1年未満の労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」は対象外となるので注意しましょう。
介護のための残業免除の制度を活用する
労働者の家族が要介護状態にある場合、その介護のために所定外労働(いわゆる残業のこと)を免除してもらう制度です。1回につき、1ヶ月以上1年未満の期間で活用でき、回数の制限はありません。会社に申し出ることで、介護終了まで利用することができます。
労使協定を締結している場合、「入社1年未満の労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」は対象外となるので注意しましょう。
また例外として、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は労働者からの請求を拒むことができるとされています。
手続きは開始予定日の1ヶ月前までに書面等で請求してください。社内で規定されている書面等がある場合は社内様式を使用し、規定の様式がない場合は厚生労働省の「介護休業制度特設サイト」内の様式例を活用してみましょう。
企業/雇用者が介護離職を防ぐために行いたいこと
介護離職をする世代は、中間管理職や管理職候補の世代である場合も少なくありません。そのような貴重なポジションにいる人材が、介護を理由に離職してしまうのは、企業にとっても大きな損失になってしまう場合があります。そこで、企業/雇用者側が、介護離職を防ぐために下記のような制度や働き方を活用しましょう。
・勤務時間短縮などの制度を導入する
・リモートワークを活用する
それぞれ詳しく紹介します。
勤務時間短縮などの制度を導入する
介護をしながらフルタイムで働くことが難しいなどの理由で、介護離職をする人も少なくありません。そこで、家族の介護をしなければいけない労働者に対して、勤務時間短縮などの制度の導入を検討する必要があるでしょう。特に残業時間が多いという理由で勤務時間がネックになっているのであれば、短時間勤務制度導入などを検討してみましょう。
リモートワークを活用する
近年、会社に出社して仕事をするという基本的な概念が解消されつつあります。そのひとつの方法として、リモートワークを導入している企業も少なくありません。リモートワークとは、電話やチャットツールなどで連絡を取り合いながら自宅で勤務する形態のことを指しています。労働者も会社に出勤する必要がないため、自宅で家族の介護をしながら仕事をすることができます。
制度を上手く活用して、仕事も介護も続けられる方法を探そう
長期に渡って在宅介護を続けていくために必要なことは、続けられる介護を目指すことです。すべてを完璧にしようとするのではなく、制度などを上手に活用しながら、自分への負担を軽減させてみてください。介護に関する悩みを自分一人で抱え込むのではなく、周囲のさまざまな人に相談してみることも大切です。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。