デイサービスにおける機能訓練とは?機能訓練指導員の役割や仕事内容を解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2021/11/23
デイサービス(通所介護)は心身の健康向上・維持を目的に、ご利用者様が日常生活を過ごす場です。健康面の向上・維持の目的として実施するサービスの1つに、機能訓練があります。今回は機能訓練とは何なのかという基本的な点から、機能訓練指導員の役割や仕事内容、就職に必要なポイントをご紹介します。
デイサービスにおける機能訓練とは?
機能訓練は、「歩く」「腕をあげる」など日常生活に必要な基本動作の改善や維持を図るために行います。機能訓練には、歩行訓練や関節可動域訓練などの身体機能の維持を目的とする訓練や、レクリエーションを通して楽しみながら行うものとさまざまです。機能訓練の方法は幅広いため、ご利用者様の要望や身体能力に合わせて柔軟に実施します。なかには「ひとりで家事ができるようになりたい」「家族旅行にいくために、スムーズに歩けるようになりたい」など明確な目標をお持ちの方もいます。目標に向かって反復して訓練をサポートすることが大切です。
リハビリとの違い
機能訓練と同様にリハビリも基本動作を改善するためのものですが、厳密には機能訓練と異なります。機能訓練はレクリエーションや体操などを通して運動習慣を身につける目的が大きいのですが、リハビリは医師の指導のもと実施する専門的な医療ケアです。そのため機能訓練よりも手厚いサポートの中、身体機能の回復や維持を目的として行います。
デイサービスでは主に機能訓練が実施されるため、リハビリが必要な場合にはデイケアやリハビリ特化型のデイサービスへの入所がおすすめです。
デイサービスでの機能訓練指導員の役割
デイサービスでは、機能訓練指導員の1名以上の配置が必要です。デイサービスではご利用者様の心身状態に合わせて機能訓練計画を作成し、必要な機能訓練を実施する役割を果たします。ご利用者様がより快適に自立した生活を送れるようにするためには、機能訓練に特化した知識を持つ機能訓練指導員の存在が欠かせません。
「機能訓練指導員」は役割を総括した名称であり、以下7つのいずれかの資格を保有している方が機能訓練指導員として働けます。
①理学療法士(PT)
②作業療法士(OT)
③言語聴覚士(ST)
④柔道整復師
⑤あん摩マッサージ指圧師
⑥看護師
⑦准看護師
平成30年の介護報酬改正では上記7つに加えて、「鍼師または灸師」が追加されました。その目的は、機能訓練指導員の確保・配置を拡大するためです。しかし鍼師や灸師が機能訓練指導員として働くには、「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師またはあん摩マッサージ指圧師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6ヶ月以上機能訓練指導に従事した経験を有する者に限る」と一定の実務経験が条件となっています。
その他の施設との違い
機能訓練指導員はデイサービスのほか、介護福祉施設や医療施設などさまざまな施設で活躍しています。いずれの施設もご利用者様が高齢である条件は同じですが、介護度や障害のレベルに違いがあります。
デイサービスは要介護1〜5認定の方が入所できる施設ですが、他の施設に比べると介護度がそこまで高くないご利用者様の割合が多い傾向にあります。なぜならデイサービスはご利用者様が心身の健康と自立的生活を向上・維持するための施設であるからです。
そのため機能訓練もみっちり行うのではなく、軽い体操やレクリエーションを通して行うことが多いといえます。とはいえ1人ひとりの身体機能や要介護度は異なるため、柔軟に訓練に寄り添うことが大切です。またデイサービスの中には、機能訓練特化型の施設もあります。その場合は機能訓練の割合も大きくなり、機能訓練指導員の業務もより専門的になります。
デイサービスでの機能訓練指導員の主な仕事内容
デイサービスで働く機能訓練指導員の主な仕事内容は、以下の通りです。
・個別機能訓練加算計画書、運動器機能向上計画書の作成
・機能訓練メニューの考案
・機能訓練実施時の介助、指導
・個別機能訓練の実施
・他職員への機能訓練内容の指導
・バイタルチェックや体力測定
・計画書の評価、モニタリング
など
ご利用者様1人ひとりの状態に合わせた機能訓練や、全体で行う機能訓練の計画や考案、実施時の介助や指導がメイン業務になります。また機能訓練指導員だけでは全体の訓練の指導・介助は難しいため、他職員が対応できるように指導することも重要です。さらに機能訓練以外にも日常生活の介助や送迎などにも、臨機応変に対応します。
機能訓練指導員の資格別職員数
さまざまな資格条件が当てはまる機能訓練指導員ですが、実際に働いている方の資格取得状況はどのような内訳となっているでしょうか。「介護サービスにおける機能訓練の実態調査報告書」によると、平成28年度のデータでは機能訓練指導員の実人数平均値は2.5人です。常勤換算数の平均値では、0.8人となっています。
さらに資格別で見ると、以下のような割合です。
平均値(人) | 標準偏差 | 中央値(人) | |
---|---|---|---|
理学療法士 | 0.1 | 0.5 | 0.0 |
作業療法士 | 0.1 | 0.4 | 0.0 |
言語聴覚士 | 0.0 | 0.2 | 0.0 |
柔道整復師 | 0.2 | 0.6 | 0.0 |
あん摩マッサージ指圧師 | 0.2 | 0.6 | 0.0 |
看護師 | 0.9 | 1.0 | 1.0 |
准看護師 | 0.9 | 1.1 | 1.0 |
デイサービスでは看護師または准看護師1名の配置が必須であり、看護師は機能訓練指導員の役割も担えることから職員数が最も多いといえます。上記いずれかの資格を保有している方は誰もが機能訓練指導員として働ける一方、施設やご利用者様の特徴によっても求められる資格は異なります。
デイサービスに機能訓練指導員として就職する場合に知っておくべきポイント
デイサービスの需要が右肩上がりであることから、機能訓練指導員の重要性も高まっています。機能訓練指導員として働ける資格の幅は広く、介護福祉施設の種類もさまざまです。そのため「思っていた業務ができない」「必要なスキルに自信がない」など就職してからミスマッチが起こらないよう、以下のポイントを押さえておきましょう。
その職場に応じたやり方がある
デイサービスにおける機能訓練指導員の役割は、ご利用者様が日常生活を送るために必要な基本動作の向上や維持、改善です。この目的はどの職場においても変わりませんが、その目的を果たすための手段はさまざまです。
たとえばデイサービスでも機能訓練に特化している施設もあれば、娯楽や日常生活を重視した施設もあります。またご利用者様の介護度や、配置されている機能訓練指導員の数も施設によって異なります。つまり職場に応じたやり方があり、時には未経験な分野でも実践的なスキルが求められる場合もあります。
全ての職場で同一のことが求められるわけではないため、柔軟性を持って臨むことが大切です。
機能訓練以外の業務を兼任することもある
なかには保有資格のスキルを活かして、機能訓練業務に集中したいという方もいるでしょう。一方で施設によっては送迎や配膳、その他介助など機能訓練には関係ない業務を兼任することもあります。そのため一般的な介護業務を兼任する可能性もあることを念頭に置いておくと良いでしょう。
しかしこの点は施設によってさまざまであり、施設のやり方やご利用者様の特徴によって異なります。専門的に機能訓練に関わりたいという強い思いがある場合には、機能訓練特化型のデイサービスやデイケアなどへの就職を検討することがおすすめです。
デイサービスにおいて機能訓練指導員の役割は欠かせない
今回はデイサービスにおける機能訓練や、機能訓練指導員の役割などをご紹介しました。
デイサービスのご利用者様にとって機能訓練は欠かせないものであり、そのための指導役である機能訓練指導員の役割は重要です。今記事を参考に目的や役割、就職にあたり知っておくべきポイントを押さえてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。