介護療養型医療施設の廃止と介護医療院について!移行時期はいつからいつまで?
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/02/25
介護医療院は介護療養型医療施設よりも日常生活機能に特化した、医療・介護を一体的に提供する介護保険施設です。介護保険施設の1つである「介護療養型医療施設」の廃止決定に伴い、今後は介護医療院が主な転換先として機能します。
今回は、介護医療院創設の経緯や介護療養型医療施設との違いなどを詳しくご紹介します。
介護療養型医療施設の廃止について|介護医療院創設の経緯
介護療養型医療施設は、2017年度末に廃止されることが決定しています。2024年3月末までは移行期間として施設自体はまだ機能していますが、移行期間終了後は全て介護医療院へと転換します。介護医療院は2018年4月に創設しており、今後新設されるのは介護医療院のみとなります。まずは介護医療院が創設した経緯を詳しく知るため、介護療養型医療施設が廃止となった理由をみていきます。
介護療養型医療施設廃止の理由①ニーズの明確化
介護療養型医療施設の役割は、長期にわたり療養を必要とする患者を受け入れることです。療養病床には長期的に医療療養が必要な患者を受け入れる「医療療養病床」、長期的に介護療養が必要な患者を受け入れる「介護療養病床」の2つがあります。2つは同じ介護療養型医療施設の病床ですが、適用される保険が異なることからも独立した役割を持つ病床と認識されていました。しかし、国の調査で「医療療養病床」と「介護療養病床」の利用者の状況に大きな差がないことが判明。つまり、介護療養型医療施設は医療と介護が明確に区別されることなく機能していたのです。
療養病床の在り方を始め、国は2025年の慢性期医療ニーズに対応する今後の医療・介護サービス提供体制について具体的な改革に向けて検討会を実施。介護療養型医療施設が医療と介護の明確な区別なく利用されていること、そして他介護施設でも医療の必要の高低にかかわらず容体急変のリスクを抱える要介護高齢者に対応できる介護保険サービスが存在しないことに問題意識がありました。そこで療養病床の利用者像の再定義、そして医療と介護を一体的に提供できる介護保険サービスが必要との見解から、新たな介護保険施設として介護医療院の創設が決定したのです。
介護療養型医療施設廃止の理由②医療施設なのに介護保険適用のねじれ
介護療養型医療施設は、療養病床を有する病院または診療所でサービスを提供していました。介護保険施設として機能する一方、あくまで医療施設であり運営も医療法人が行っていました。しかし「介護療養病床」であれば長期的に介護が必要な患者が入所でき、適用されるのも介護保険。つまり実際のところは医療施設であるにもかかわらず、介護保険が適用されている「ねじれ」が発生している状態でした。医療と介護が明確に区別されることなく療養病床が利用されていることが明るみになったことで、保険適用のねじれ問題も表面化したのです。
介護療養型医療施設の特徴・役割
廃止が決定している介護療養型医療施設ですが、2024年3月末までは移行期間として存続しています。まずは、介護療養型医療施設の特徴や役割をみていきます。
介護療養型医療施設の特徴
介護療養型医療施設は「介護療養病床」とも呼ばれ、厚生労働省で以下のように定義されている施設です。
介護療養型医療施設とは、療養病床等を有する病院又は診療所であって、当該療養病床等に入院する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他世話及び機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設。
介護療養型医療施設は、要介護1以上かつ医学的管理が必要な65歳以上の高齢者が利用できます。要介護1以上が入所基準であるものの、実際は要介護4以上の利用者が大部分を占めていました。このことが、医療と介護が明確に区別されずに介護療養型医療施設が利用されていた大きな要因です。
介護療養型医療施設の役割
介護療養型医療施設は急性疾患から回復期にある要介護患者を受け入れる施設であり、その役割は患者の療養です。あくまで医療施設という位置付けであるため、医療的ケアを中心とします。そのため心身の状態が安定し、療養が不要と判断されれば退所を求められることもあります。
介護療養型医療施設で提供されるサービス
提供されるサービスは、以下のように医療的ケアがメインです。
・医師による診療、検査
・医師、看護師による医療的ケア:経管栄養、痰吸引、注射、酸素吸引など
・リハビリ
・介護
また、介護療養型医療施設では療養を目的とした、日常生活を送る上での介護も提供されます。
介護医療院の特徴・役割
介護医療院は、厚生労働省で下記のように定義されている介護保険施設です。
介護医療院とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。
介護と医療を一体的に提供するため、そしてより利用者の生活様式に配慮した施設として介護医療院が創設されました。ここでは、今後メインとなる介護医療院の特徴や役割をみていきます。
介護医療院の特徴
介護医療院も介護療養型医療施設と同じく、要介護1以上かつ65歳以上の高齢者を受け入れます。医療や介護を一体的に提供するだけでなく、生活施設としての機能も兼ね備えている点が特徴です。
そして、介護医療院は重篤な身体疾患を有する人または身体合併症を有する認知症高齢者が入所する「Ⅰ型」と、Ⅰ型よりも容体が比較的安定している人が入所する「Ⅱ型」の2種類があります。設備基準や提供サービスは変わりませんが、Ⅰ型の方が手厚い体制を整えています。
介護医療院の役割
介護医療院は単に介護療養型医療施設の移行先ではなく、住まいと生活を医療が支える役割を持ちます。地域包括ケアシステムの一環として、長期療養が必要になった要介護高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を送るための場を提供します。そのため、療養だけを目的とせず、医療体制の整った生活の場として利用者の自立支援やプライバシーの尊重などにも力を入れているのです。さらに看取りやターミナルケアにも対応しているため、終の棲家としての役割も果たします。
介護医療院で提供されるサービス
介護医療院で提供される主なサービスは、本格的な医療ケア、そして日常生活上の介護や看取り・ターミナルケアです。療養が目的ではなく、療養が必要な要介護高齢者が自分らしい生活を送れる場として機能することからも、生活援助系のサービスやイベント・レクリエーションなども提供します。
介護医療院と介護療養型医療施設の違い
介護医療院は介護療養型医療施設の課題や慢性期の医療ニーズを見据えて定義された施設であるため、介護療養型医療施設とは以下ポイントで性格が異なる施設です。
・医療施設から独立した介護保険施設
・設置根拠は介護保険法に属する
・療養を目的とせず、医療と介護を一体的に提供する生活の場としての施設
・生活援助系のサービスやレクリエーションも提供される
・看取り可能
長期療養の場としての性格が強い介護療養型医療施設に対し、介護医療院は長期療養や看取りも対応可能な医療体制の整った生活の場です。医療・介護・生活援助など日常生活を送る上での必要なサービスが提供されるだけでなく、レクリエーションや地域交流など利用者の生活を豊かにすることも重視しています。あくまで医療施設として扱われていた介護療養型医療施設とは一転し、介護施設としての性格を強めたのが介護医療院といえます。
介護療養型医療施設は2024年3月末で完全廃止!介護医療院が中心となる
介護療養型医療施設は2024年3月末をもって完全廃止し、その後は介護医療院がメインとなります。介護療養型医療施設での課題や利用状況、慢性期の医療ニーズに対応する医療・介護サービスの提供体制を整えるべく介護医療院が創設されました。介護医療院と介護療養型医療施設とでは性格が大きく異なるため、特徴や役割の違いをしっかりと押さえましょう。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。