特別養護老人ホーム(特養)とは|特徴や役割、人員基準や仕事内容など
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/05/27
特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が困難な要介護高齢者が入居する介護保険施設の1つです。介護保険が適用される公的な介護施設であることから、今後高齢者の増加に伴い需要が高まる介護施設といえます。
今回は特別養護老人ホームの特徴や役割を踏まえ、サービス内容や人員基準から仕事内容や働く職員などを詳しくご紹介します。
目次
特別養護老人ホーム(特養)とは
特別養護老人ホームは通称「特養」、介護保険法上では「介護老人福祉施設」と呼ばれる介護保険施設です。厚生労働省では、特別養護老人ホームを以下のように定義しています。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、入所者が可能な限り在宅復帰できることを念頭に、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や機能訓練、療養上の世話などを提供する施設。
まずは、特別養護老人ホームの基本情報を詳しくみていきます。
特別養護老人ホームの特徴・役割
特別養護老人ホームは、地方公共団体や社会福祉法人などが設置主体となる公的な介護保険施設です。要介護高齢者のための生活施設として、入浴・排せつ・食事などの介護をはじめ日常生活上の世話や機能訓練、療養上の世話を行います。できる限り在宅復帰できることを念頭にサービスを提供すると定義されていますが、看取り対応が可能であるため「終の棲家」としても利用できます。そして事業主体が公的機関であることから、老人ホームの中では比較的安価に入居できる点が特徴です。その分人気も高く、地域によっては待機人数が多いため入居までに時間がかかる場合もあります。
特別養護老人ホームの種類
特別養護老人ホームは、主に以下3種類に分類されます。
種類 | 特徴 |
---|---|
広域型特別養護老人ホーム | ・一般的な特養の形態 ・定員30名以上 ・居住地域にかかわらず申し込み可能 |
地域密着型特別養護老人ホーム | ・定員29名以下 ・地域密着型の小規模な特養 ・「サテライト型」「単独型」の2タイプの施設がある |
地域サポート型特別養護老人ホーム | ・在宅介護生活に送る高齢者をサポート ・24時間365日の見守り体制あり |
施設によって「多床室」「従来型個室」「ユニット型個室」などの居室形態があり、一般的なのは従来型の4人部屋です。ユニット型は完全個室であり、10人ほどのグループに分かれて介護を受けます。
特別養護老人ホームの対象者|入居条件
下記は、特別養護老人ホームの入居条件です。
・要介護3以上、65歳以上の高齢者
・要介護3以上、40〜64歳で特定疾病が認められている方
・特例で入居が認められた要介護1~2の方
基本的には、在宅生活が困難な要介護3以上かつ65歳以上の高齢者が対象です。しかし認知症や知的障害・精神障害等で日常生活に支障をきたす、家族等の深刻な虐待が認められるなどする場合、要介護1・2でも特例で入居が認められるケースがあります。
毎月地域ごとに入居判定委員会が開かれており、介護度や家族の状況などから入居の緊急度を点数化した上で、点数の高い順に入居が決まります。
なお、厚生労働省資料によると、令和元年10月審査分の特別養護老人ホーム入居者の要介護度割合は以下の通りです。
平均要介護度3.95 | ||||
---|---|---|---|---|
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
1.4% | 4.2% | 24.3% | 37.8% | 32.3% |
特別養護老人ホームのサービス内容からみる仕事内容
特別養護老人ホームは、都道府県ごとに定められた基準に則ってサービスが提供されます。
ここではサービス内容から、特別養護老人ホームで働く職員の仕事内容をご紹介します。
介護
食事・排せつ・入浴などの介助をはじめ、日常生活における介護を提供します。特別養護老人ホームは介護度の高い高齢者が多いため、日常的な介護業務の割合が多くなる点が特徴です。寝たきりの方、車椅子の方も多く、福祉用具などを用いて介護します。
そして特別養護老人ホームでは入所者の意思や人格を尊重し、常に入所者の立場に立ってサービスを提供することが求められます。そのため単に介護するだけでなく、コミュニケーションを大切にした丁寧な介護が重要です。
健康管理・緊急対応
施設に駐在する医師や看護職員、訪問診療によって健康管理を行います。入院に至らないための予防を徹底し、小さな変化も見逃さないよう入所者1人ひとりをチェックすることが求められます。夜間など看護職員がいない時間帯は、すぐに対応できるようオンコール体制も整えている点が特徴です。そのほか施設内での感染症や食中毒の予防も重要な仕事の1つです。
生活支援
清掃や洗濯など、生活支援も提供。清掃は施設職員が行うこともあれば、業者に委託している施設もあります。介護ほどではないが日常生活を送る上で必要な、ちょっとしたお手伝いを生活支援として行います。
レクリエーション・イベント
レクリエーションは単なる娯楽目的ではなく、機能訓練やリハビリも兼ねて提供されます。そのため入所者はレクリエーションを通して、生活リハビリを実施。さらに入所者が生きがいを持って生活できるようイベントや外出なども行われます。夏祭りやクリスマス、お花見のような季節イベント、誕生日会など職員がさまざなイベントを計画・実施します。
看取り
近年ニーズが増加により、看取りに対応している特別養護老人ホームが増加傾向にあります。看取りでは本人や家族と最期の意思をすり合わせながら、希望に沿った最期を迎えられるようケアします。医療的な判断が欠かせないため、看護職員は看取りにおいて重要な存在です。介護職員も看取りのための介護知識・技術が必要であり、施設全体・他職種連携で十分な体制を整えることが求められます。
特別養護老人ホームの人員基準から見る働く職員
ここでは特別養護老人ホームの人員基準を踏まえ、働く職員や資格有無、給料などをみていきます。
特別養護老人ホームの人員基準
特別養護老人ホームの人員基準は、以下の通りです。
施設長 | 1人(常勤の者) |
---|---|
医師 | 入所者に対し、健康管理及び療養上の指導を行うための必要数 |
介護職員または看護職員 | 入居者の数が3または端数を増すごとに1人以上 |
生活相談員 | 入所者の数が100またはその端数を増すごとに1人以上かつ常勤の者 |
栄養士 | 1人以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上 |
介護支援専門員 | 1人以上 入所者の数が100またはその端数を増すごとに1を標準 |
調理員、事務員、その他職員 | 実情に応じた適当数 |
特別養護老人ホームでは医師や看護職員を配置し、医療・看取り体制を整えています。そのほか多職種の職員を配置しているため、手厚いサービス提供体制であることがうかがえます。
特別養護老人ホームで働くには資格が必要?
介護職員は無資格でも働くことが可能です。しかし特別養護老人ホームは要介護度3以上と要介護度の高い高齢者が多いことから、即戦力になることが求められます。加えて直接身体に触れる身体介護は有資格者しか行えないため、応募条件を有資格にしている求人も多くみられます。無資格でも就業できる場合、主な仕事内容は生活支援など身体介護でない業務が中心です。介護資格は働きながらでも取得可能であるため、無資格から就業し実務経験を積みながら資格取得を目指すのも1つの方法です。
特別養護老人ホームで働く介護職員の給料比較
下記は厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」による、特別養護老人ホームで働く介護職員の給料です。
平成30年9月 | 平成29年9月 | 差(平成30年-平成29年) | |
---|---|---|---|
介護職員 | 300,970円 | 290,120円 | 10,850円 |
職種や施設によって個人差はあるものの、特別養護老人ホームは介護施設の中でも高い給料水準です。平成29年度と平成30年度を比較すると、勤続年数に関わらず増加傾向にあることがわかります。
特別養護老人ホームはこんな人におすすめ
・スキルアップしたい
・認知症介護や看取りなどの対応力を身につけたい
・高齢者1人ひとりとじっくり向き合いたい
・安定した収入を得たい
特別養護老人ホームは介護度の高い入所者が多いため、一定の介護技術や経験値が求められます。その分業務は大変ですが、公的施設であることから「給料が安定している」「待遇が充実している」など働く側にもメリットが多い点が特徴です。特別養護老人ホームは需要も高く、今後施設数も増加することが予想されています。そのため介護職としてスキルアップしたい、高度な介護スキルや看取り対応のスキルを身につけたいなど、上記ポイントに当てはまる方は特別養護老人ホームへの転職も検討してみてください。
特別養護老人ホームは介護保険施設の1つ!働く職員や仕事内容もさまざま
特別養護老人ホームは、介護保険適用の公的な介護施設です。要介護度の高い入所者が多く、働く職員や仕事内容もさまざまです。要介護度の高い入所者が多いため業務量が多く大変ですが、それだけ給料や待遇も安定しているといえます。終の棲家としての役割も持つため、入所者の人生に寄り添った介護・看護が提供できるやりがいのある介護施設です。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。