特養の配置基準と働く職員を紹介!役割や仕事内容などを詳しく解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/05/16
特別養護老人ホームは別名「介護老人福祉施設」、通称「特養」と呼ばれる公的介護保険施設です。特養は要介護度の高い高齢者が入所する施設であり、手厚い医療・介護体制を整えています。今回は特養の配置基準や働く職員、その役割や仕事内容などを詳しくご紹介します。
目次
特養(特別養護老人ホーム)とは
特養(特別養護老人ホーム)は介護保険法上「介護老人福祉施設」と呼ばれる、地方公共団体や社会福祉法人などが設置主体の公的な介護保険施設です。介護保険法が適用されるため、他介護施設よりも比較的安価に入所できる点が特徴です。近年は看取りニーズの増加に伴い、看取り対応かつ終身利用が可能な特養が増えています。なお、特養の対象者は基本を「要介護3以上かつ65歳以上の在宅生活が困難になった高齢者」とし、特例で要介護1・2の方も入所可能です。厚生労働省資料によると令和元年10月審査分において、特養の施設数は10,502施設、サービス受給者は61.96万人となります。
特養の職員配置基準
下記は厚生労働省資料における、特養の職員配置基準です。
職種 | 配置基準 | 常勤/常勤換算 | 専従/兼務 |
---|---|---|---|
施設長(管理者) | 1 | 常勤 | 原則専従 |
医師 | 必要数 | – | – |
介護職員 | 3:1以上 | 常勤換算 | 原則専従 |
看護職員 | 常勤換算必要数 常勤1名以上 |
||
生活相談員 | 100:1以上 | 常勤 | |
機能訓練指導員 | 1以上 | – | 兼務可 |
介護支援専門員 | 1以上 | 常勤 | 原則専従 |
栄養士 | 1以上 | – | – |
ユニットリーダー | ユニットごと | 常勤 | – |
特養の居室形式には1部屋を2〜4人で利用する「従来型」と、1人1部屋の個室がある「ユニット型」の2タイプがあります。ユニット型は常時1人以上の介護職員、または看護職員の配置が義務付けられています。そして夜間・深夜は、2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員の配置も必要です。
特養で働く職員の役割と仕事内容
特養の職員配置基準を踏まえて、特養で働く職員の役割と仕事内容を詳しくみていきます。
施設長
施設長は、特養の責任者・管理者の役割を持ちます。特養の施設長になるには、厚生労働省が定める下記要件を満たすことが必要です。
(1)社会福祉主事の要件を満たす者
(2)社会福祉主事に2年以上従事した者
(3)社会福祉施設長資格認定講習を受講した者
施設長の主な仕事内容は、人材マネジメントや経営管理、特養の入所者やご家族の対応です。配置基準では原則専従としていますが、管理上支障がない場合は当該特養の他職種、同一敷地内の他事業所やサテライト型居住施設の職務と兼務できます。
医師
医師の役割、そして仕事内容は入所者の健康管理や療養上の指導を行うことです。診察や検査の実施、必要な処置や処方箋の発行などかかりつけ医のような役割を持ちます。医師は常勤を義務付けられておらず、必要数の配置基準であることから月数回の訪問診療や非常勤として週に数日駐在している施設が多くみられます。
看護職員
看護職員は原則専従で、入所者が30を超えない施設では常勤換算法で1人以上、30以上50以下の施設では2人以上と、常勤換算で必要数配置されます。看護職員として働くには国家資格である看護師資格、または都道府県知事認定の資格である准看護師資格が必要です。主な仕事内容は、入所者の健康管理や基本的な医療行為です。日常的な健康管理ではバイタルチェックや体調チェック、医療行為はインスリン注射や痰吸引、胃ろうなどを行います。そのほか服薬管理や医療機関との連携など、日常生活における医療ケアを担当。また特養は終の棲家として看取りに対応している施設も多く、看護職員を中心に他職種と連携して取り組みます。
介護職員
介護職員は介護保険の施設サービス計画書に基づいた、日常生活における介護業務が主な仕事内容です。特養は要介護度3以上と介護度の高い入所者が多いため、求められる介護知識・技術も高い点が特徴です。身体介護だけでなく、レクリエーションやイベントの計画・運営も重要な仕事内容の1つです。そのほか看護職員や機能訓練指導員など他職種と連携し、健康管理やリハビリなどもサポートします。資格がなくても就業できる特養もありますが、要介護度の高い入所者が多い点で有資格者が優遇される傾向にあります。
生活相談員
生活相談員は、入所希望者や入所者、ご家族の相談や連絡・調整を図る仲介的な役割を持ちます。特養で生活相談員として働くには、以下資格が必要です。
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・社会福祉主事任用資格
・上記資格と同等以上と認められるもの
主な仕事内容は入所契約や退所手続き、入所生活中の相談対応やサービス担当者会議の出席、家族・医療機関・行政との連携です。入所検討者や入所者の生活の質向上を援助する役割を持つため、介護保険や制度に関する幅広い知識やコミュニケーション能力が求められます。
機能訓練指導員
機能訓練指導員は、以下いずれかの資格保有が必須です。
・看護師
・准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・柔道整復師
・あん摩マッサージ指圧師
・はり師
・きゅう師
機能訓練指導員の役割は、入所者の身体機能や生活機能の向上・維持を図ることです。そのため、入所者に合わせた機能訓練やレクリエーションの計画・実施などが主な仕事内容となります。当該特養の他職種と兼務が可能であるため、看護職員や介護職員などと兼務する場合はその職種の仕事内容も行います。
介護支援専門員
介護支援専門員、通称「ケアマネージャー」として働くには介護支援専門員の資格が必要です。主な仕事内容はケアプランの作成や実状におけるケアプランの変更・更新、ケアプラン作成のための入所者の希望や課題を汲み取ることです。入所者やご家族との面談、サービス担当者会議の出席など事務業務が中心となります。入所者と家族、特養の橋渡しとして、情報共有や相談対応をしながらより良いサービスが提供できるよう調整を行うことが主な役割です。
栄養士
栄養士の主な仕事内容は、栄養バランスを考えた献立の立案、食事の提供や管理栄養、衛生管理です。生活の場である特養では、栄養だけでなく食事を楽しむことも重視されます。そのため単に栄養バランスの良い献立を考えて日々の食事を提供するだけでなく、季節に即した食事イベントの企画や食事を楽しむための工夫を施すことが大切です。また、入所者の持病に合わせた献立作り、個々の噛む力や飲み込む力を踏まえた食事の調整も行います。
なお、特養で栄養士として働くには国家資格である管理栄養士の取得が必要です。
特養で働く職員の給料や資格について
ここでは気になるポイントでもある、特徴で働く職員の給料や資格についてみていきます。
特養で働く介護職員の給料比較
下記は厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」による、特別養護老人ホームで働く職員の給料です。
平成30年9月 | 平成29年9月 | 差(平成30年-平成29年) | |
---|---|---|---|
介護職員 | 300,970円 | 290,120円 | 10,850円 |
特養は要介護度の高い入所者も多く、事業主体が公共機関であることから他介護施設と比べると平均給料は高い水準にあります。勤続年数に関わらず給料は増加傾向にあるなど待遇が充実しており、職員からすると安定した環境で働ける点が魅力的です。
特養で働く職員は資格が必要?
医師や看護職員、機能訓練指導員など、そもそも資格が必要な職種では資格が必須です。一方、介護職員は無資格でも働くことが可能ですが、要介護度の高い入所者が多い点で有資格者が優遇される傾向にあります。なぜなら、身体に直接触れる介護業務は有資格者しかできないからです。しかし、手厚い職員体制を整えている特養であれば、身体介護以外の生活支援などを任せるために無資格でも採用するケースがあります。その場合働きながら実務経験を積み、介護資格を取得することでスキル・キャリアアップが目指せます。
特養で働くメリット
特養で働くメリットは大きく分けて3点です。
・介護スキルの向上
・一人ひとりの人生に寄り添った長期的な介護に携われる
・給料や待遇が安定している
特養は要介護度の高い入所者が多いため、介護スキルの向上が見込める点が働くメリットです。特養では、一般的な身体介護スキルだけでなく、認知症ケアや看取りの知識・スキルも身につきます。ベテランの職員も多いことから、レベルの高い環境で自然とスキルや知識が習得できるでしょう。さらに転職では特養で働いていた経歴があると「介護のプロ」と認識してもらえることもあり、即戦力として重宝されやすい点もメリットの1つです。そのため、特養での経験は、将来的なキャリアアップにも役立つと言えます。
また、終の棲家としても利用される特養では、人生の最期に寄り添った長期的な介護に携われます。一人ひとりの人生に寄り添い、その最期までを見届けられる点は大きなやりがいです。そして給料や待遇が安定している点も、大きなメリットです。
特養で働く職員はさまざま!看取りにも携われるやりがいの大きい施設
特養は医師や看護職員、介護職員を始めさまざまな職種の職員が働いています。要介護度の高い入所者が多いため各職種に求められるレベルが高く、スキルアップしやすい環境といえます。さらに、介護施設の中では給料や待遇も安定している点が特徴です。特養での経験は将来的なキャリアップにもつながるため、転職先の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
この記事は役に立ちましたか?
このコラムをシェアする
著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。