介護職の賃上げはいつから?パートは含まれる?対象となる職員・事業所について
著者: ゲートウェイ
更新日:2024/06/07
公開日:2022/09/06
2022年2月、国策として介護職員に対する賃上げが開始されました。対象となる介護職にパートが含まれるのか、いくら賃上げしたのかなど気になる方も多いでしょう。ここでは、賃上げの目的や対象となる介護職、その他政策以外の賃上げ方法までも解説します。
2022年2月から介護職の賃上げが開始
2021年、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」閣議決定により、介護職員を対象に賃上げが開始となりました。「介護職員処遇改善支援補助金」として、2022年2〜9月までの間は全額が国費で賄われ、収入がおよそ3%引き上げとなります。およそ3%とは、月額9000円相当です。国は賃上げに必要となるおよそ1000億円もの予算確保を行いました。
介護職賃上げの目的
介護職が賃上げされることになったのは、これまでの処遇改善と同じく、人材不足の解消が目的です。介護職は、賃金の低さと業務内容が見合わないことにより、人員確保が困難な状況が続いています。地域包括ケアシステムの構築や高齢化により、今後も介護職の需要はさらに増加することが予測されます。今回の賃上げで給料のベースアップを図り、介護職の人材を確保する狙いがあります。
賃上げの対象となる介護職とは
賃上げ対象となるのは、介護職員処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲ取得の介護施設・事業所で働く介護職員です。また、事業所にも条件があり、2022年2・3月(2021年度中)から実際に賃上げをおこなっている事業所に限るとされています。賃上げ対象の介護職は、正社員だけでなくパートやアルバイトも含まれるため、雇用形態に限らず給料アップが見込めることがわかります。
ここでは、以下それぞれの項目についても詳しく解説します。
・ 介護職員処遇改善加算の取得状況
・ 賃上げの対象外となる介護職
・ 賃上げの対象外となる事業所
介護職員処遇改善加算の取得状況
介護職員処遇改善加算の取得状況に関しては、下記の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」を見てみましょう。
取得済 | 未取得 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ | 加算Ⅴ | |
94.1% | 79.8% | 8.9% | 5.1% | 0.1% | 0.3% | 5.9% |
加算Ⅰ~Ⅲまで取得している介護施設・事業所は93.8%で、およそ9割以上の事業所が取得しています。この結果からも、介護職の賃上げ対象となっている事業所数が、高い割合であることがわかるのではないでしょうか。
賃上げの対象外となる介護職
賃上げの対象となるのはあくまでも介護職員です。そのため、同じ職場で働いていても、以下のような職種は賃上げの対象外となります。
・ケアマネージャー
・生活相談員
・看護師
・栄養士
・機能訓練指導員
・介護助手 など
ただし、事業所判断で上記職種に振り分けて柔軟に運用することも可能です。その場合は、もともとの9000円から差し引いて分配します。そのため、全体としての賃上げが図れますが、本来の対象となっている介護職員への影響が小さくなる点を理解しておく必要があります。
賃上げの対象外となる事業所
たとえ介護職員であっても、下記の事業所で働いているケースでは賃上げの対象外となるため注意しましょう。
・居宅介護支援事業所
・訪問看護
・福祉用具貸与事業所 など
処遇改善加算や特定処遇改善加算では対象外となっていた、軽費老人ホームや養護老人ホームも、今回の賃上げ政策では対象に含まれています。一方で、介護福祉関連の事業所は「社会福祉法人」として、例えば、居宅介護事業所と介護施設などを併設して運営しているなどのケースが多くあります。そのため、賃上げ対象外の事業所で働いていたとしても、法人持ち出し分も含め、介護職全体の給料を見直してくれる可能性もあります。実際、法定福利費を差し引いた金額を勤務スタッフ全員に一律で支給した法人がありました。
また、勤務形態や保有資格によって差をつけて支給する法人があるなど、事業所によって違いがあることがわかります。賃上げ政策対象外の事業所だから給料アップが見込めない、とは言い切れない点を理解しておきましょう。
介護職の賃上げ率
現行の介護職員処遇改善加算等と同様に、介護サービスの種類ごとで交付率を下記のように設定しています。介護職員数に応じて設定された一律の交付率を、介護報酬に上乗せする形で交付します。
サービス区分 | 交付率 |
---|---|
・訪問介護 ・夜間対応型訪問介護 ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
2.1% |
・(介護予防)訪問入浴介護 | 1.0% |
・通所介護 ・地域密着型通所介護 |
1.0% |
・(介護予防)通所リハビリテーション | 0.9% |
・(介護予防)特定施設入居者生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 |
1.4% |
・(介護予防)認知症対応型通所介護 | 2.1% |
・(介護予防)小規模多機能型居宅介護 ・看護小規模多機能型居宅介護 |
1.6% |
・(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 2.0% |
・介護老人福祉施設 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・(介護予防)短期入所生活介護 |
1.4% |
・介護老人保健施設 ・(介護予防)短期入所療養介護(老健) |
0.8% |
・介護療養型医療施設 ・(介護予防)短期入所療養介護(病院等) |
0.5% |
・介護医療院 ・(介護予防)短期入所療養介護(医療院) |
0.5% |
平均では一人あたりでおよそ9,000円の支給ですが、0.5〜2.1%と交付率に差があるため、交付率によって7,000~1万1,000円と振り幅があるのが現状です。一方で収入を継続的に引き上げることを目的に、補助額のうち2/3以上は「基本給」もしくは「毎月の手当」に使用することが要件として定められています。そのため、金額に差があったとしても、条件をクリアした事業所で働く介護職員は、確実な給料アップが期待できます。
介護職の賃上げにプラスして給料を上げるには
介護職の賃上げが実施されますが、それでも満足のいく給料でないという声が多いのも現状です。賃上げに加え、介護職員が給料を上げるにはどうすれば良いのでしょうか。 ここでは、以下のパターン別で給料アップの方法について詳しくご説明します。
・ 上位資格を取得する
・ 夜勤を増やす
・ 転職する
上位資格を取得する
介護職員は、上位資格を取得することで給料アップが期待できます。有資格者と一般の介護職員では、下記のように給料に差がある点が特徴です。
平均勤続年数 | 令和3年9月 | ||
---|---|---|---|
保有資格あり | 介護福祉士 | 9.5 | 328,720円 |
社会福祉士 | 8.9 | 363,480円 | |
介護支援専門員 | 13.0 | 362,290円 | |
実務者研修 | 7.7 | 307,330円 | |
介護職員初任者研修 | 8.1 | 300,510円 | |
保有資格なし | 5.2 | 271,260円 |
介護福祉士などの保有資格を有しているかどうかで、給与におよそ4万円もの差が出ています。また、給与面だけでなく、長く努められる点も魅力です。平均勤続年数は、資格がないケースでは5.2年ですが、資格を有するケースではおよそ8.9年です。 職種によっては賃上げの対象にならないケースがありますが、そもそもの給与水準が高くなるため、総合的な面で給料アップが図れるでしょう。介護職として長期的にキャリアを築きたい方は「実務者研修」や「介護職員初任者研修」の取得が特におすすめです。
夜勤を増やす
夜勤業務は「夜勤手当」と呼ばれる手当がつくため、給料アップにつながります。無理がない範囲で、通所リハビリなど日勤の仕事だけの職場ではなく、夜勤業務がある特別養護老人ホームや介護老人保健施設で勤務すると良いでしょう。
また、介護施設以外にも、介護士として病院で夜勤をしながら働くのもおすすめです。夜勤手当は1回あたり、およそ3,000~6,000円の手当がつきます。常勤で勤務する場合、月に4~5回程度の夜勤を行いますが、夜勤回数が増えるほど給料がアップするため、回数を増やす方がいるのも現状です。また、夜勤専従として働いている介護職員も多くいます。夜勤専従とは、日勤で働かずに夜勤業務のみを専属で行う働き方を指します。夜勤専従であれば、一般の介護職員よりも夜勤回数が増え、効率的に稼ぎやすく単価も上がるため、少ない勤務回数で給料アップが狙えるでしょう。
転職する
介護職員の給料は、施設や事業所によってもさまざまです。先ほどご紹介したような、上位資格の取得で給料が上がる職場があれば、資格を取得しても給料が変わらない職場もあります。施設基準上、そもそも夜勤がない職場に勤めている方がいるでしょうし、子育てや介護などやむを得ない理由で夜勤ができない方もいるかもしれません。
このように、今の職場で給料アップが見込めない場合には、収入や待遇が良い職場に転職するのも1つの方法と言えます。転職を検討する場合には、検討している職場が賃上げの対象施設なのか、処遇改善加算を取得しているかに関してもチェックしてみてください。
賃上げ政策以外に介護職が給料アップするには、転職がおすすめ!
2022年2月から、介護職員を対象とした賃上げ政策が開始となり、平均で月額9,000円の給料アップが図られています。一方で、補助金対象に該当する事業所は、補助額の2/3を基本給や手当に使用するよう定めているため、全額が手取りとしてもらえるわけではありません。そのため、思っていたよりも賃上げ分の給料が少ないケースがあるかもしれません。
すでに給料アップしたことを実感している方がいる一方で、満足のいくような賃上げではないとする声があるのも事実です。賃上げ以外に給料を上げる方法としては、上位資格の取得や夜勤回数を増やすなどがあります。しかし、勤務先によってはそもそも夜勤がない、もしくは資格を取っても資格手当や基本給アップにつながらないといったケースがあります。
その場合には、思い切って転職を考えて見るのもおすすめです。賃上げの対象施設になっているかなど、事前に情報収集しておくことで、待遇の良い職場へスムーズな転職が図れます。今記事を参考に、ソラジョブ介護で自分に合った介護職求人を見つけてみるのはいかがでしょうか。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。