公認心理師とは|なるには受験資格が必要?合格率や仕事内容など
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/10/12
公認心理師は、2017年に誕生した新しい国家資格です。心理職初の国家資格であることからも、注目を集めています。しかしまだ新しい資格であるため、公認心理師になるには受験資格が必要なのか、試験の合格率や仕事内容など気になる点も多いもの。そこで今回は、公認心理師とは何かについて詳しくご紹介します。
目次
公認心理師とは
厚生労働省によると、公認心理師は以下のように定義されています。
公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。
1. 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
2. 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
つまり、公認心理師とは心の問題を抱えた人やその関係者を援助し、かつ心の健康に関する知識を普及する国家資格を有する専門職です。まずは、公認心理師が誕生した背景や臨床心理士との違いについてみていきます。
公認心理師が誕生した背景
公認心理師は、2017年に施行された公認心理師法によって誕生した日本初の心理職の国家資格です。多くの心理学者にとって、心理職の国家資格化は長年の願いでした。公認心理師の役割は、国民の心の健康の保持・増進を図ることです。近年うつ病などの心の問題を抱えている人が増加しつつあり、自閉症など心に関する発達障害も昔より知られるようになったことで心理職の需要急速に高まりました。これまで心理系の資格は民間資格にとどまっていたため、国家資格化することでより専門的に心の問題に関われるようになったのです。
臨床心理士との違い
臨床心理士は公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格である点が、公認心理師との大きな違いです。資格以外にもカリキュラムや受験資格、試験において違いがあります。また求人において、公認心理士と臨床心理士で大きな違いがありませんが、公認心理士の認知度が高まっていくにつれ、公認心理士を応募条件とする求人が増えると言われています。
公認心理師の職場・仕事内容
ここでは実際に公認心理師がどのような場所で活躍するのか、どのような仕事をするのかについてご紹介します。
公認心理師の職場
公認心理師の主な活動分野は医療・福祉・教育・司法・産業と幅広く、職場は医療施設や福祉施設、学校や裁判所、企業とさまざまです。下記は厚生労働省「令和2年度公認心理師の活動状況等に関する調査」による、公認心理師の主な活動分野での就業割合です。なお、回答者のうち、約45%は複数分野で働いており、公認心理士が様々な分野で働く専門職であることが証明されました。
公認心理士の主な活動分野 | |
---|---|
保健医療 | 約30% |
教育 | 約29% |
福祉 | 約21% |
その他 | 約20% |
下記は分野別にみた、具体的な職場とその割合です。
分野 | 職場 | 就業割合 |
---|---|---|
保健医療 | 精神科病院 | 約30% |
一般病院 | 約26% | |
精神科診療所 | 約23% | |
一般診療所 | 約6% | |
保健所・健康センター | 約12% | |
精神保健福祉センター | 約3% | |
教育 | 公立教育相談機関等 | 約25% |
幼少中高等学校スクールカウンセラー | 約56% | |
大学等の学生相談室 | 約22% | |
福祉 | 児童相談所 | 約17% |
児童発達支援センター | 約15% | |
障害児通所支援事業所 | 約11% | |
児童福祉施設 | 約10% | |
障害者支援施設等 | 約9% | |
産業・労働 | 組織内の健康管理・相談室 | 約50% |
組織外の健康管理・相談機関 | 約34% | |
障害者職業センター・障害者就業・生活支援センター | 約5% | |
それ以外の就労支援機関(ハローワーク等) | 約11% | |
司法・犯罪 | 法務省矯正局関係(少年鑑別所、少年院、刑事施設等) | 約38% |
警察関係 | 約18% | |
裁判所関係(家庭裁判所等) | 約17% | |
法務省保護局関係(保護観察所等) | 約10% |
厚生労働省調査によると回答者のうち約45%が複数分野で働いており、公認心理師が多分野で活躍していることがわかっています。
公認心理師の仕事内容
公認心理師は心理学に関する専門的知識・技術をもって、下記のような幅広い業務に携わります。
・心理的アセスメント
・心理支援
・コンサルテーション
・心の健康教育
・養成、教育
・研究
・組織内外への他支援者への助言、指導
・ケースカンファレンス等での情報共有
・地域の各種会議や連絡会への出席
・緊急支援 など
中でも主な仕事は面接や心理テストなどを通して心の問題を解明する心理的アセスメントやその問題を克服・経験するための支援、そして心の健康を保持・増進するための情報提供や啓発です。公認心理師の職場は多岐にわたるため、具体的な仕事内容や役割は職場によって異なりますが、共通するのは心の問題・健康に対して専門的な観点から対処することです。
公認心理師になるには
公認心理師になるには、国家試験に合格する必要があります。ここでは必要な受験資格や試験の概要、合格率についてみていきます。
公認心理師国家試験の受験資格
下記ルートのいずれかを満たしていることで、国家試験の受験資格が得られます。
ルートA | 4年制大学または専門学校で所定25科目を修了したのち、大学院で所定10科目を修了 |
---|---|
ルートB | 4年制大学で所定25科目を修了したのち、所定施設(※)で2年以上の実務経験を積む ※保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の主要5分野のいずれかの施設 |
ルートC | 海外の大学で心理に関する科目を修了したのち、海外の大学院で心理に関する科目を修了(文部科学大臣および厚生労働大臣の認定が必要) |
ルートD | 2017年9月15日より前に大学院に入学し、所定の科目を修了 |
ルートE | 2017年9月15日より前に4年制大学に入学し、所定の科目を修了後、2017年9月15日以後に大学院で所定の科目を修了 |
ルートF | 2017年9月15日より前に4年制大学に入学し、所定の科目を修了後、所定施設(※)で2年以上の実務経験を積む ※保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の主要5分野のいずれかの施設 |
ルートG | 2017年9月15日以後5年間で、所定施設(※)で5年以上かつ週1日以上の実務経験を有し、現任者講習会を修了 ※2022年度で終了 |
ルートD以降は特別措置ルートとなり、うちルートGは2022年9月14日までに実施される試験に限り有効な受験資格です。いずれのルートでも4年制度大学または大学院で、下記指定科目の履修が必須条件となります。
4年制大学:25科目 | 大学院:10科目 |
---|---|
・公認心理師の職責 ・心理学概論 ・臨床心理学概論 ・心理学研究法 ・心理学統計法 ・心理学実験 ・知覚・認知心理学 ・学習・言語心理学 ・感情・人格心理学 ・神経・生理心理学 ・社会・集団・家族心理学 ・発達心理学 ・障害者・障害児心理学 ・心理的アセスメント ・心理学的支援法 ・健康・医療心理学 ・福祉心理学 ・教育・学校心理学 ・司法・犯罪心理学 ・産業・組織心理学 ・人体の構造と機能及び疾病 ・精神疾患とその治療 ・関係行政論 ・心理演習 ・心理実習 |
・保健医療分野に関する理論と支援の展開 ・福祉分野に関する理論と支援の展開 ・教育分野に関する理論と支援の展開 ・司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開 ・産業・労働分野に関する理論と支援の展開 ・心理的アセスメントに関する理論と実践 ・心理支援に関する理論と実践 ・家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践 ・心の教育に関する理論と実践 ・心理実践実習 |
公認心理師国家試験の概要
下記は2022年度試験の日程と概要です。
試験日 | 2022年7月17日(日) |
---|---|
合格発表 | 2022年8月26日(金)投函(郵送) |
試験地 | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県、長崎県、大分県 |
試験時間 | 120分 |
試験範囲 | 公認心理師として具有すべき知識及び技能 |
出題形式 | マークシート |
配点・総得点 | ・一般問題1問1点、事例問題1問3点 ・総得点230点満点 |
合格基準 | 総得点の60%以上(問題の難易度で補正) |
試験は午前の部と午後の部に分かれ、年1回の実施となります。
公認心理師国家試験の合格率
下記は、過去4年間の合格率の推移です。
実施回・年 | 合格率(%) |
---|---|
第1回(2018年) | 64.5 |
第2回(2019年) | 46.4 |
第3回(2020年) | 53.4 |
第4回(2021年) | 58.6 |
平成30年12月16日実施の第1回試験の合格率は約65%となりましたが、それ以降は40〜50%台で推移。第3回以降は、合格率が上昇傾向にあります。国家資格であるだけに受験資格の要件も高い点も含めて、公認心理師の資格取得難易度は高いといえます。
公認心理師の将来性
近年うつ病をはじめとした心の病気や心の問題を抱える人が増加しており、厚生労働省調査によると平成29年には国内で約420万人が心の病気で通院・入院しているとわかっています。これはおよそ30人に1人の割合であり、生涯を通じて5人に1人が心の病気にかかるともいわれているのです。そうした中、心理職の国家資格である公認心理師の需要は今後も増加するため、将来性のある仕事といえます。とはいえ、現段階ではまだ新しい資格であることから、公認心理師制度の発展にはさまざまな長期的な課題があるのも事実です。しかしそのような状況下でも、さまざまな分野・場所で公認心理師が活躍しています。今後さらなる制度の整備や地位向上に伴い、公認心理師の仕事の可能性や活躍の場、需要はさらに向上するでしょう。
公認心理師は日本初の心理職の国家資格!今後さらなる需要増加に期待できる
2017年に登場した公認心理師は、まだまだ新しい国家資格です。メンタルヘルス領域での活躍が期待され、国家資格であることからさまざまな分野・職場で需要のある将来性の高い仕事です。資格取得の要件は高く、国家試験の合格率も約50%と容易ではありません。しかしそれ以上に将来性のある資格であり、今後さらなる活躍の場の拡大に期待できます。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。