あん摩マッサージ指圧師とは?給料や国家試験、将来性などについて解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/11/25
あん摩マッサージ指圧師は、医療・介護分野におけるリハビリ職の一つ。国家資格のもとあん摩・マッサージ・指圧の施術を提供する仕事であり、活躍の場は医療・介護に限らず福祉・スポーツ・美容と多岐にわたります。
今回はあん摩マッサージ指圧師について、仕事内容や給料、国家試験や将来性などさまざまな観点からご紹介します。
目次
あん摩マッサージ指圧師とは
「あん摩指圧マッサージ師」という名前を聞いたことのある方も少なくないでしょう。ただ、「あん摩」の意味が分からず、どんな仕事をする人なのか曖昧にしか理解出来ていない人も多いはずここでは、あん摩指圧マッサージ師とはどんな職業なのか簡単に説明します。
そもそも「あん摩」とは
あん摩とは中国から伝わった手技であり、「押す・揉む・なでる・叩く」方法で身体を整える療法です。日本であん摩が一般的になったのは江戸時代であり、これ以降日本独自のあん摩が体系化されていきました。 あん摩マッサージ指圧師はあん摩に加えて、西洋起源のマッサージ、あん摩療法の中の「押す」方法が独自に発展した指圧の技術で治療します。厚生労働省「職業情報提供サイト」によると、あん摩マッサージ指圧師の仕事は以下のように定義されています。
体の痛みやこりなどの症状を訴える人たちに対して、主に手や指などを用いて押し・揉み・叩きなど力学的な刺激を身体に与える指圧・マッサージにより身体のこりをほぐし血行を良くしたり、脊椎のゆがみを矯正することにより、症状の緩和・改善、体力回復、健康増進を図る。
あん摩マッサージ指圧師と整体師や鍼灸師との違い
柔道整復師や鍼灸師もあん摩マッサージ指圧師と同じく、独自の技術を用いて身体の不調を整える仕事です。
整体師はあん摩マッサージ指圧師に近く、手や足を使って関節や骨格のゆがみなどを矯正します。しかし、あん摩マッサージ指圧師として働くには国家資格が必要な一方、整体師は必ずしも資格は必要ない点に違いがあります。
また、鍼灸師は「はり」や「きゅう」といった道具を用いて、元々人が持っている自然治癒力を活性化させて治療する点があん摩マッサージ指圧師と違います。なお、鍼灸師はあん摩マッサージ指圧師と同じく、国家資格が必要な職業です。
あん摩マッサージ指圧師の仕事内容
あん摩マッサージ指圧師の仕事内容は職場によってもさまざまですが、根本的な役割は患者の身体的な不調を緩和することです。ここでは、あん摩マッサージ指圧師の主な仕事内容についてご紹介します。
あん摩・マッサージ・指圧による症状改善・緩和
どの分野の仕事においても共通するのは、あん摩・マッサージ・指圧の技術を用いた症状改善・緩和です。独自の手技を用いて患者の身体を押したり、揉んだりすることで身体をほぐし、血行改善や不調を解消・緩和します。
なお、あん摩マッサージ指圧師が提供するのはあくまで症状の改善・緩和であり、医療職のように独自の判断で治療することはできません。
医師の指示にもとづくリハビリ
病院やクリニック、介護施設では医師の指示にもとづいてリハビリを提供します。前述したようにあん摩マッサージ指圧師が独断でリハビリ等の治療を施すことはできませんが、医師の指示があれば問題ありません。介護施設では機能訓練指導員として、整形外科ではリハビリスタッフとして活躍します。
メンテナンス・体調管理
スポーツ分野では、選手のトレーナーとして体調管理やトレーニング後のメンテナンスを行います。また近年はエステサロンのような美容系分野で活躍するあん摩マッサージ指圧師も増えており、医療・福祉分野とは違い、美容目的で施術を提供する点が特徴です。
あん摩マッサージ指圧師の活躍の場
あん摩マッサージ指圧師の活躍の場は、医療・福祉・介護業界をはじめさまざま。主な活躍の場は、以下の通りです。
・病院
・治療院
・接骨院
・鍼灸院
・介護施設
・訪問看護ステーション
・スポーツ施設
・エステサロン
・企業 など
病院では整形外科に所属することが多く、介護施設では機能訓練指導員として従事します。スポーツ施設ではトレーナーとして、リラクゼーションサロンやエステサロンではマッサージ師として働くこともあります。さらに、企業の従業員にマッサージなどを行うヘルスキーパーとして働くのも一つの道。というのも、近年福利厚生の一環としてヘルスキーパーを設置したり、オフィスマッサージを導入したりする企業が増加傾向にあるからです。資格があればさまざまな分野で働けることは、あん摩マッサージ指圧師の強みといえます。
あん摩マッサージ指圧師はきつい?やりがいとは
あん摩マッサージ指圧師は「きつい」「やめとけ」といった声も聞かれます。しかし、どんな仕事においてもきついと感じる部分はあるもの。ここでは、あん摩マッサージ指圧師がきついと言われる理由、そしてやりがいについてみていきます。
あん摩マッサージ指圧師がきついと言われる理由
あん摩マッサージ指圧師は、以下のような点できついといった声が聞かれます。
・人間関係
・給料が安い
・国家資格が活かしにくい
・体力がもたない
患者さんの身体の不調を改善・緩和する仕事ですが、満足度の高い施術を提供するには、相手との密なコミュニケーションが重要です。「どこが悪いのか」「どんな症状に悩んでいるのか」など、相手とのコミュニケーションから提供する施術を考えますが、なかには自分の症状をうまく伝えられない方もいます。特に高齢者だとその傾向が強く、患者さんとのコミュニケーションに難しさを感じ、双方が納得のいく施術をできないこともあるようです。
また「国家資格であるにもかかわらず給料が安い」「無資格者が行うマッサージやエステと大差ないように扱われてしまう」と悩む方もいます。そして、自身の手が商売道具であることからも、身体を壊してしまっては仕事ができない点では、一定のリスクがあるといえます。
あん摩マッサージ指圧師のやりがい
「きつい」「やめとけ」と言われることもあるあん摩マッサージ指圧師ですが、患者さんから直接感謝されやすい点で大きなやりがいが感じられる仕事です。提供した施術により患者さんの身体の不調が改善すると、その場で患者さんの感動や喜ぶ顔を見ることができます。自分の提供した施術の結果がその場ですぐ確認でき、成果を実感しやすい点でやりがいや達成感が味わいやすいといえます。
あん摩マッサージ指圧師の給料
令和3年賃金構造基本統計調査によると、あん摩マッサージ指圧師の平均年収は423.4万円です。誤差も出ますが、月収に換算すると35.2万円程です。あん摩マッサージ指圧師は治療院や介護施設などで働く人がいる一方、開業している人やフリーランスとして働く人も多くいます。就業先や働き方によって、給料は大きく差がある点は押さえておきましょう。
あん摩マッサージ指圧師の国家試験について
あん摩マッサージ指圧師になるには、国家試験に合格し厚生労働大臣認定の国家資格を取得する必要があります。ここでは、国家試験について詳しくご紹介します。
国家試験の受験資格
あん摩マッサージ指圧師の国家試験を受けるには、あん摩マッサージ指圧師養成コースのある専門学校・短大・大学・養成所で3年以上の課程を修了する必要があります。3年以上となるため、最短で国家試験を受けたい場合は3年制の専門学校または短大へ進学します。4年制大学は専門学校・短大よりも現場に出るのが遅く、かつ学費も高くなりますが、大卒の箔が付く点がメリットです。また、4年間のうちにあん摩マッサージ指圧師以外の資格取得を目指すことも可能です。
あん摩マッサージ指圧師国家試験の概要
下記は、あん摩マッサージ指圧師国家試験の概要です。
試験日 | 2月下旬 |
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合格発表 | 3月下旬 |
試験地 | 1.晴眼者:宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、鹿児島県 2.視覚障害者:各都道府県 |
試験科目 | 医療概論(医学史除く)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、リハビリテーション医学、東洋医学概論・経路経穴概論、あん摩マッサージ指圧理論、東洋医学臨床論 |
試験方法 | 筆記試験(マークシート方式) ※視覚障害者は別方法 |
配点・総得点 | 1問1点:合計150点満点 |
合格基準 | 総得点の90点以上 |
なお、受験料は2022年7月時点で14,400円です。
あん摩マッサージ指圧師の国家試験の合格率と難易度
下記は、直近過去5年間のあん摩マッサージ指圧師国家試験の合格率です。
実施回・年 | 合格率(%) |
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第30回(2021年度) | 84.7 |
第29回(2020年度) | 84.1 |
第28回(2019年度) | 84.7 |
第27回(2018年度) | 86.8 |
全体の平均合格率は86.2%と高く、合格難易度は易しめです。合格率80%後半台は理学療法士や作業療法士の国家試験と近しい値であることから、リハビリ専門職の難易度とほぼ同等といえます。
あん摩マッサージ指圧師の将来性
医療・福祉・介護・スポーツ・美容と活躍の幅が広いあん摩マッサージ指圧師は、国家資格もある点で将来性が高い仕事です。特に今後高齢者がさらに増加することからも、医療・介護面であん摩マッサージ指圧師の需要は高まると予想されます。さらにストレスが多い現代社会では、マッサージやリラクゼーションがブームでもあるため、国家資格のもと質の良い施術が提供できるあん摩マッサージ指圧師の存在は貴重です。
現状では無資格者でもマッサージ等の施術が提供できますが、法律的にはマッサージを提供できるのは医師またはあん摩マッサージ指圧師のみとされています。無資格者の営業について改善が望まれている状況にあることからも、将来的には国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師がより重要となるでしょう。
あん摩マッサージ指圧師は手技による治療を行う仕事!
あん摩マッサージ指圧師は東洋医学を基礎とした治療方法であり、身体の不調を改善・緩和するための施術を提供します。あん摩マッサージ指圧師になるには国家試験に合格する必要があり、国家試験を受けるには受験資格を満たす必要があります。高齢社会ではさらに需要が高まる職業であり、今後の将来性にも期待できます。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。