認知症介護基礎研修とは?研修内容や受講対象者について解説

厚生労働省によると、2025年には高齢者の5人に1人が認知症であると推計されています。今後さらに身近になる認知症ですが、その対応は難しいもの。特に高齢者と接する医療・介護従事者は認知症への専門的な知識・技術の習得が求められます。そのために役立つのが「認知症介護基礎研修」です。今回は、認知症介護基礎研修について詳しくご紹介します。

認知症介護基礎研修とは

認知症介護基礎研修とは、認知症介護に求められる基本的な理解・対応方法を習得するための最も基礎的な研修です。2021年度の介護報酬改定により、認知症介護基礎研修の義務化が決定しています。まずは、認知症介護基礎研修の目的やステップについて解説します。

認知症介護基礎研修の目的

認知症介護基礎研修は、認知症介護に携わる人がチームでサポートをする際に基礎的なサービスを提供できるよう知識や技術・考え方を身につけるために実施されるものです。
認知症介護は通常の介護に比べて難しく、適切なケアを提供するには認知症に関する知識・技術が必須です。さらに介護現場でチームケアを実践するためには、1人ひとりが基礎的な認知症ケアを提供できることが求められます。そこで、認知症介護に慣れていない・初めて対応する職員や認知症に関する知識に乏しい職員が受けるべき研修として、認知症介護基礎研修は創設されました。
特に未経験・無資格から介護業界に入った方にとっては、認知症介護はハードルが高く、接し方がわからないと不安や悩みなどを多く抱えてしまうもの。認知症介護基礎研修で、必要な知識・技術を学ぶことで、そうした不安や悩みが解消され、認知症の方に対して適切なケアを提供することができます。

認知症介護研修のステップ

現時点での認知症介護に関する研修ステップは以下の通りです。

認知症介護基礎研修ができる以前は、認知症介護実践者研修が介護研修のファーストステップでした。しかし、認知症介護実践者研修の対象者は介護実務経験2年以上から。つまり認知症介護基礎研修ができる以前は、経験の浅いスタッフが受講できる認知症介護研修がありませんでした。認知症高齢者が増加していることを背景に、より多くの人が認知症の方に対応できるように認知症介護基礎研修が始まったのです。

認知症介護基礎研修の概要

ここでは、認知症介護基礎研修の受講対象者や研修内容、受講方法などを詳しくみていきます。

認知症介護基礎研修の受講対象者・要件

認知症介護基礎研修の受講対象者は、介護保険施設・事業所等に従事する介護職員全般です。認知症介護基礎研修が、認知症介護の基礎知識を普及させることを目的にしているため、受講に際して必要な資格要件はなく、認知症介護に従事する介護職員であれば誰もが受講できる点が特徴です。

認知症介護基礎研修の内容

認知症介護基礎研修は、講義180分・演習180分の計6時間で終了するカリキュラムです。

講義では内容に関する討論や確認テストが実施されます。演習はグループワークで事例を学ぶことで、認知症介護について体験しながら学ぶことができます。

認知症介護基礎研修の受講方法

認知症介護基礎研修の実施主体は、都道府県や市町村、または都道府県知事や市町村長が指定する法人と様々で受講日程・場所・受講方法もそれぞれで異なります。
例えば受講方法には、以下のパターンがあります。

ただ、2021年4月1日からは原則eラーニングで実施することとされています。eラーニングは受講できるネット環境を整える必要がありますが、24時間いつでも受講できるという点がメリット。お住まいの都道府県や市町村、受講する法人でどの受講方法を取り入れているかをチェックしてみましょう。また、研修は定員が決まっているため、受講を希望する方は早めに開催日程を確認しておくことがポイントです。

認知症介護基礎研修の受講料

認知症介護基礎研修の受講料も実施主体によって異なり、無料の場合もあれば参加費とテキスト代で1,000〜5,000円ほどかかる場合もあります。民間に研修を委託している自治体の場合、有料になるケースが多いようです。

認知症介護基礎研修の難易度

認知症介護基礎研修は認知症介護のスタートラインに位置付けられた研修であり、難易度は高くありません。無資格の方や認知症介護に初めて携わる方を対象としているため、研修内容も易しいといえます。また修了試験や合否はなく、受講が終了すれば受講証明書が交付されます。受講自体も1日で終了するため、手軽に受講できる研修です。

認知症介護基礎研修の義務化について

2021年度の介護報酬改定により、認知症介護基礎研修の義務化が決定しています。

完全義務化は2024年度以降

2021〜2023年は経過措置期間とし、認知症介護基礎研修の完全義務化は2024年度からです。そのため、2022年6月現在は認知症介護基礎研修の受講は努力義務と位置付けられています。2024年度以降は新規・中途採用を問わず、新たに採用した無資格の職員は1年以内に認知症介護基礎研修を受講することが必須です。

認知症介護基礎研修義務化の背景

認知症介護基礎研修義務化の背景には、超高齢社会の深刻化があります。認知症は高齢者に発症しやすい病気の1つであり、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計されているほど。つまり、高齢者と接する仕事である介護従事者や医療従事者は、必然的に認知症に関わる機会が多くなります。しかし認知症介護は通常の介護よりも難しく、初めて認知症介護に関わる方は戸惑うことや不安も多いもの。そこで認知症介護への理解や対応力の向上、サービスの質の底上げを目的に認知症介護基礎研修が創設・義務化したのです。

認知症介護基礎研修が免除になるケースもある

認知症介護基礎研修の義務化の対象は、医療・福祉・介護系の資格を持たない人です。一方で、以下要件に該当する方は認知症介護基礎研修の義務化の対象外となります。

認知症介護基礎研修は、認知症介護のファーストステップ!

認知症介護基礎研修は認知症介護のファーストステップとして、医療・介護系資格を持っていない、初めて認知症介護に携わる介護従事者を対象とした研修です。2021年度の介護報酬改定では、2024年度以降の受講義務化が決定しています。これから介護職を目指す、あるいは転職を検討している方には大きく関係するため、認知症介護基礎研修について押さえておきましょう。