小規模多機能型居宅介護とは|メリット・デメリットや人員基準などを解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2021/08/12
小規模多機能型居宅介護は、数ある介護サービスの中の1つ。今後も介護サービスは高齢者のニーズに合わせて多様化していくため、介護職へ転職・就職する場合は介護サービスについて押さえておくと良いでしょう。そこで今回は、小規模多機能型居宅介護について詳しく解説します。
目次
小規模多機能型居宅介護とは
小規模多機能型居宅介護とは、中重度の要介護者がなるべく在宅で生活が送れるよう「通い」を中心に「訪問」「泊まり」などの支援を組み合わせて利用できる地域密着型の介護サービスです。1つの事業所で小規模な居宅系介護サービスを提供しており、利用者は1つの事業所と契約するだけで複数のサービスを受けることができます。中重度の要介護高齢者や認知症高齢者ができる限り住み慣れた地域で生活できるよう、2006年4月の介護保険制度改正により創設されました。まずは小規模多機能型居宅介護のサービス内容など、基本情報をご紹介します。
小規模多機能型居宅介護が提供するサービス
小規模多機能型居宅介護は、市区町村にある事業所が運営しています。そのため、利用者は住んでいる地域の小規模多機能型居宅介護事業所と契約してサービスを受けます。
提供される主なサービスは、施設への通いを中心とした宿泊や訪問です。たとえば通いであれば、利用者は定期的に施設で出向き、日常生活の支援や機能訓練などを受けます。また介護者の体調不良や数日の外泊などが発生する場合は、数日間施設に宿泊することも可能です。必要に応じて「通い」「宿泊」「訪問」のサービスを組み合わせて利用することで、在宅かつ住み慣れた地域で生活が継続できます。さらに、1つの事業所と契約するだけで複数の異なるサービスが利用できることから、利用者はなじみのスタッフからサービスが受けられ、環境の変化もなく安心感が得られます。また小規模多機能型居宅介護を利用していても、訪問看護や訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導や福祉用具貸与などのサービスが併用可能です。
小規模多機能型居宅介護の対象者
対象となるのは、事業所と同一の市区町村にお住まいの要介護認定を受けている高齢者です。要支援認定の場合は、「介護予防小規模多機能型居宅介護」を利用します。
看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)とは
類似するサービスに看護小規模多機能型居宅介護、通称「かんたき」があります。看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護のサービスに「訪問看護」が加わったサービスです。退院直後やがん末期などの看取り期、病状が不安定な場合など、療養面での支援が必要な場合に利用できます。療養が必要であるが、できる限り在宅で生活を送りたい場合に最適なサービスです。
小規模多機能型居宅介護の定員
小規模多機能型居宅介護にでは、1日あたりの定員が定められています。
1事業所あたりの定員 | 29名以下 |
---|---|
通いの定員 | 18名以下 |
宿泊の定員 | 9名以下 |
小規模とサービス名についているように、1事業所あたりの定員が少ない点が特徴です。
小規模多機能型居宅介護のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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・利用回数の制限なく、必要な時にいつでもサービスが利用できる ・1つの事業所と契約することで、3つのサービスが受けられる ・生活や利用者の体調などに合わせて、柔軟にサービスが利用できる ・なじみのスタッフからサービスが受けられる |
・サービス利用回数が少ないと割高になる可能性がある ・事業所が定員を超えていると利用できない ・各サービスを個別に変更できない ・併用サービスに制限がある |
ここでは、小規模多機能型居宅介護のメリット・デメリットをみていきます。
小規模多機能型居宅介護のメリット
メリット |
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・利用回数の制限なく、必要な時にいつでもサービスが利用できる ・1つの事業所と契約することで、3つのサービスが受けられる ・生活や利用者の体調などに合わせて、柔軟にサービスが利用できる ・なじみのスタッフからサービスが受けられる |
小規模多機能型居宅介護の最大のメリットは、1回の契約で3つのサービスが回数制限なしで利用できる点です。24時間365日注意を払う必要がある在宅介護は、介護者の負担も大きいものです。高齢者の急な体調変化や介護者の急用や体調不良などがあっても、必要な時すぐにサービスが受けられます。また、たとえば通い中にそのまま宿泊をお願いしたいという場合でも対応できます。必要なサービスが柔軟かつすぐに受けられることで、介護者も利用者も安心して在宅で過ごせます。
さらに地域密着型のサービスであることからなじみの環境で、かつなじみのスタッフからサービスを受けられ、利用者の安心につながる点も嬉しいポイントです。
小規模多機能型居宅介護のデメリット
デメリット |
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・サービス利用回数が少ないと割高になる可能性がある ・事業所が定員を超えていると利用できない ・各サービスを個別に変更できない ・併用サービスに制限がある |
柔軟かつきめ細やかなサービスが提供できるよう、定員数が少ない点が特徴でありデメリットにもなる点です。希望の事業所で小規模多機能型居宅介護サービスを受けたくとも、定員を超えている場合は利用できません。また定額制はメリットでもある一方で、利用回数が少ない月は割高になる可能性があります。さらに、3つのサービスのうちいずれか1つに希望や不満があった場合でも部分的な変更はできないため、どうしても変更したい場合は契約自体を解除しなければなりません。
また個別で介護サービスを利用する場合は、必要なサービスを自由に組み合わせられます。しかし小規模多機能型居宅介護を利用する場合は、併用できるサービスに制限がある点は要注意です。
併用可能サービス | 併用不可サービス |
---|---|
・訪問看護 ・訪問リハビリテーション ・居宅療養管理指導 ・福祉用具貸与 ・住宅改修 |
・居宅介護支援 ・訪問介護 ・訪問入浴介護 ・デイケア ・デイサービス ・ショートステイ |
併用不可といっても、併用不可にあたいするサービスは小規模多機能型居宅介護でカバーできます。つまりプラスで同じようなサービスは、併用できないということです。
小規模多機能型居宅介護の人員基準
以下は、小規模多機能型居宅介護の人員基準です。
本体事業所 | サテライト型事業所 | ||
---|---|---|---|
代表者 | 認知症対応型サービス事業解説者研修の修了者 | 本体の代表者 | |
管理者 | 認知症対応型サービス事業解説者研修の修了者かつ常勤・専従の者 | 本体の管理者が兼務可 | |
日中 | 通い | 3:1以上(常勤換算) | 3:1以上(常勤換算) |
訪問 | 1以上(常勤換算) | 1以上(常勤換算) | |
夜間 | 夜勤職員 | 時間帯を通じて1以上(宿泊利用者がいない場合は配置なし可) | 時間帯を通じて1以上(宿泊利用者がいない場合は配置なし可) |
宿直職員 | 時間帯を通じて1以上 | 本体事業所から適切な支援を受けられる場合、配置なし可 | |
看護職員 | 1以上 | 本体事業所から適切な支援を受けられる場合、配置なし可 | |
介護支援専門員 | 小規模多機能型サービス等計画作成担当研修の修了者1以上 | 小規模多機能型サービス等計画作成担当研修の修了者1以上 |
小規模多機能型居宅介護事業所は、以下要件を満たすことでサテライト事業所が設置できます。
・事業開始から1年以上の実績を有する
・本体事業所の登録者数が、定員の7割を超えたことがある
上記要件を満たすことで、本体事業所から自動車などによる移動所要時間20分以内の距離に、2つまでサテライト事業所を持つことができます。サテライト事業所の人員基準は本体事業所と同様の人員基準になりますが、本体事業所のスタッフが兼務できる場合は以下職員を別途配置する必要はありません。
・代表者
・管理者
・看護職員
・介護支援専門員
・夜間の宿直者
また本体事業所とサテライト事業所は同一サービスを提供しますが、定員は別扱いとなります。サテライト事業所は全体で18名以下、通い12名以下、宿泊6名以下と本体よりも小規模です。
小規模多機能型居宅介護と他介護施設・サービスとの違い
介護業界には似たようなサービスや施設も多く、小規模多機能型居宅介護も同様です。ここでは小規模多機能型居宅介護と、他介護施設やサービスとの違いをご紹介します。
小規模多機能型居宅介護とデイサービスの違い
デイサービスは日中を通して、決まったスケジュール内で利用するサービスです。決まった時間に食事や入浴、レクリエーションや機能訓練などが提供されるため、利用者1人ひとりに合わせた柔軟なスケジュールではありません。一方、小規模多機能型居宅介護では、利用者ごとに必要なサービスを必要な時間だけ受けます。1日を通して利用するもよし、入浴や食事だけを通いで済ませることも可能です。
小規模多機能型居宅介護とグループホームの違い
グループホームとは、要支援2または要介護1以上の認定を受けている認知症高齢者を対象とした居住型の小規模介護施設です。最大9名単位のユニットで、スタッフの支援を受けながら共同生活を行います。住み慣れた地域で生活を続ける地域密着型サービスである点は同じですが、グループホームは居住型の施設です。小規模多機能型居宅介護は短期間の宿泊はできますが、生活拠点として施設を利用することはできません。
小規模多機能型居宅介護とショートステイの違い
ショートステイでは、短期間の入所により介護サービスが受けられます。「短期入所生活介護」「短期入所療養介護」「介護保険適用外のショートステイ」の3種類があり、提供されるサービスや場所、対象者が異なります。在宅介護を中心とする方が対象である点は小規模多機能型居宅介護と同様ですが、ショートステイでは「泊まり」のサービスのみの提供です。
小規模多機能型居宅介護では1つの施設で3つの介護サービスが受けられる
小規模多機能型居宅介護は、定額で「通所」「訪問」「短期入所」の3つのサービスを定額でいつでも利用できる地域密着型サービスです。中重度の要介護者でも小規模多機能型居宅介護を利用することで、できる限り在宅で生活を送ることができます。 小規模多機能型居宅介護サービスに従事する可能性も踏まえて、介護業界へ就職・転職を検討している方はぜひサービスへの理解を深めてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。