介護報酬改定による定期巡回・随時対応型訪問介護看護の単位について
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/04/11
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、介護と医療が一体化した在宅介護サービスです。2021年度の介護報酬改定では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の単位についても変更があります。今回は定期巡回・随時対応型訪問介護看護で働く職員が押さえておくべき、介護報酬改定に伴う単位についてお伝えしますので参考にしてください。
目次
定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関する2021年度介護報酬改定の概要
定期巡回・随時対応型訪問介護看護での認知症専門ケア加算の新設
定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の地域における単位加算
定期巡回・随時対応型訪問介護看護におけるサービス提供体制強化加算
定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関する2021年度介護報酬改定の概要
2021年度の介護報酬改定による、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関する変更・調整の概要は以下の通りです。
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 基本報酬
・新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価
① 2(1)①認知症専門ケア加算等の見直し
② 2(1)②認知症に係る取組の情報公表の推進
③ 2(7)⑤特例居宅介護サービス費による地域の実情に応じたサービス提供の確保
④ 3(1)⑧生活機能向上連携加算の見直し
⑤ 4(1)①処遇改善加算の職場環境要件の見直し
⑥ 4(1)②介護職員特定処遇改善加算の見直し
⑦ 4(1)③サービス提供体制強化加算の見直し
⑧ 4(2)⑦人員配置要件の明確化
⑨ 5(1)⑩介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)の廃止
上記表の太文字部分が、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の単位における改定内容です。下記で、各改定についてその詳細をみていきます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本単位の変更について
定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、ひと月あたりの基本報酬の単位が以下のように変更されています。
一体型事務所(訪問看護なし) | ||
---|---|---|
要介護度 | 現行(単位) | 改定後(単位) |
要介護1 | 5,680 | 5,697 |
要介護2 | 10,138 | 10,168 |
要介護3 | 16,833 | 16,883 |
要介護4 | 21,293 | 21,357 |
要介護5 | 25,752 | 25,829 |
一体型事務所(訪問看護あり) | ||
---|---|---|
要介護度 | 現行(単位) | 改定後(単位) |
要介護1 | 8,287 | 8,312 |
要介護2 | 12,946 | 12,985 |
要介護3 | 19,762 | 19,821 |
要介護4 | 24,361 | 24,434 |
要介護5 | 29,512 | 29,601 |
連携型事務所(訪問看護なし) | ||
---|---|---|
要介護度 | 現行(単位) | 改定後(単位) |
要介護1 | 5,680 | 5,697 |
要介護2 | 10,138 | 10,168 |
要介護3 | 16,833 | 16,883 |
要介護4 | 21,293 | 21,357 |
要介護5 | 25,752 | 25,829 |
基本報酬の単位の変更に加えて、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、令和3年9月末までは基本報酬に0.1%上乗せされていました。(2021年10月以降は通常通り)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護での認知症専門ケア加算の新設
定期巡回・随時対応型訪問介護看護でも認知症対応力を向上させていく観点から、認知症専門ケア加算が新たに創設されました。
認知症ケア加算における単位について
現行は認知症ケアにおける単位はなく、改定後は下記要件を満たすことで単位が加算されます。
認知症ケア加算(Ⅰ)3単位/日 | ・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上 ・認知症介護実践リーダー研修修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の物が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10または端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施 ・当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催 |
---|---|
認知症ケア加算(Ⅱ)4単位/日 | ・認知症ケア(Ⅰ)の要件を満たし、かつ認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施 ・介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施または実施を予定する |
認知症ケアに専門性のある看護師の配置も加算対象
介護職員だけでなく、認知症ケアに高い専門性があると認められた看護師を配置することでも単位が加算されます。認知症ケアに関する高い専門性があると認められる看護師の要件は、以下3つです。
①日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修終了
②日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」および「精神看護」の専門看護師教育課程修了
③日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」を取得
定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の地域における単位加算
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は地域差なく提供されるべきものとして、サービス確保が困難な離島や中山間地域に対して単位を加算します。対象地域は自治体からの申請を踏まえ、下記要件を満たす場合に単位が加算されます。
単位数 | 要件 | |
---|---|---|
①特別地域加算 | 15/100 | 厚生労働省が定める地域に所在する事業所がサービス提供を行った場合 【対象地域】 ①離島振興対策実施地域 ②奄美群島 ③振興山村 ④小笠原諸島 ⑤沖縄の離島 ⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等であって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域 |
②中山間地域等の小規模事業所加算 | 10/100 | 厚生労働省が定める地域に所在する事業所がサービス提供を行った場合 【対象地域】 ①豪雪地帯及び特別豪雪地域 ②辺地 ③半島振興対策実施地域 ④特定農山村 ⑤過疎地域 |
③中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5/100 | 厚生労働省が定める地域に所在する利用者に対してサービス提供を行った場合 【対象地域】 ①離島振興対策実施地域 ②奄美群島 ③豪雪地帯及び特別豪雪地帯 ④辺地 ⑤振興山村 ⑥小笠原諸島 ⑦半島振興対策実施地域 ⑧特定農山村地域 ⑨過疎地域 ⑩沖縄の離島 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護におけるサービス提供体制強化加算
サービスの質向上、職員のキャリアアップを推進するためのサービス提供強化加算は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では新たな最上位区分として加算Ⅰが変更になっています。
加算Ⅰ(新設):750単位/月 | 以下のいずれかに該当 ①介護福祉士60%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士25%以上 |
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加算Ⅱ:640単位/月 (改正前の加算Ⅰ相当) |
以下のいずれかに該当 ①介護福祉士40%以上 ②介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が60%以上 |
加算Ⅲ:350単位/月 | 以下のいずれかに該当 ①介護福祉士30%以上または介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が50%以上 ②常勤職員60%以上 ③勤続7年以上の物が30%以上 |
新設した加算Ⅰでは介護福祉士が60%以上、または勤続10年以上の介護福祉士が25%以上事業所に所属していることで月750単位が加算されます。これにより事業所の介護福祉士資格取得の推進、勤続の強化が図られます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護における単位以外での介護報酬改定
ここまでは単位に関する2021年度の介護報酬改定をみてきましたが、ここでは定期巡回・随時対応型訪問介護看護で働く職員の賃金と人員配置に関する改定をご紹介します。
介護職員等特定処遇改善加算の見直しについて
小規模な定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所が介護職員等特定処遇改善加算をより活用しやすいよう、賃金改善額の配分ルールを改定しています。
現行 | 改定後 |
---|---|
「経験・技能のある介護職員」は「その他介護職員」の「2倍以上とする」 | 「経験・技能のある介護職員」は「その他介護職員」より「より高くする」 |
「2倍以上」という制限がなくなり、「より高くする」との基準により柔軟な賃上げ配分が可能となります。
介護職員処遇改善加算(Ⅳ)と(Ⅴ)の廃止
介護職員処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)以外の区分で算定が進んでいることから、令和3年3月末時点で(Ⅳ)(Ⅴ)を算定している事業者に1年の経過措置期間を設けた上で廃止することが決定しています。これにより、今後は加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)のみ算定対象となります。
区分 | 算定要件 |
---|---|
加算(Ⅰ):月額3.7万円相当 | キャリアパス要件①②③ + 職場環境等要件 |
加算(Ⅱ):月額2.7万円相当 | キャリアパス要件①② + 職場環境等要件 |
加算(Ⅲ):月額1.5万円相当 | キャリアパス要件①または② + 職場環境等要件 |
なお、キャリアパス要件は以下の通りです。
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
②資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保すること
③経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組みまたは一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
職場環境等要件については、賃金改善を除く職場環境等の改善が対象です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員配置要件の明確化
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員配置要件が、下記のように変更されています。
・計画作成責任者は、管理者との兼務が可能
・オペレータ及び随時訪問サービスを行う訪問介護員は、夜間・早朝(18時〜8時)において、必ずしも事業所内にいる必要はない
管理者は常勤専従での配置となりますが、管理業務に支障がない限り他職種との兼務が可能です。改正前は兼務できる職種が「訪問介護員」「看護師」「オペレーター」のみでしたが、改正後は計画責任者も可能になりました。 またオペレーターはICT等の活用により利用者のコールに即時に対応できる体制が構築できる、随時訪問サービスを行う訪問介護員は利用者から連絡を受けた後に事業所から利用者宅に訪問するのと同程度の対応ができる場合に18時〜翌8時は事業所外での勤務ができるようになっています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関する単位変更について押さえよう!
2021年度の介護報酬改定では、基本報酬の単位変更、認知症専門ケア加算の新設、地域の実情に応じたサービス提供の確保、サービス提供体制強化加算における定期巡回・随時対応型訪問介護看護の単位が変更・調整されています。合わせて人員配置要件や処遇改善加算にも変更があるため、本記事を参考に最新情報を押さえましょう。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。