理学療法士とはどんな仕事?給料や国家試験、作業療法士との違いなどを解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/05/13
理学療法士は、国家資格をもつリハビリ専門職の1つです。医療・福祉業界にとどまらず、近年はスポーツ業界へも活躍の幅を広げています。国家資格であることから目指す方も多い理学療法士は、仕事内容や給料、国家試験や作業療法士との違いなど気になる点も多いでしょう。今回は理学療法士について、さまざまな観点から詳しくご紹介します。
目次
理学療法士とは|作業療法士との違い
理学療法とは、運動機能の維持・改善を目的に運動や温熱、電気などの物理的手段を用いる治療法です。公益社団法人 日本理学療法士協会によると、理学療法士は以下のように定義されています。
理学療法士とは、ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職です。
理学療法士は英名「Physical Therapist」であることから、通称「PT」とも呼ばれます。身体動作の専門家であり、国家資格をもって専門的な観点からリハビリテーションに携わります。
理学療法士と作業療法士の違い
理学療法士は、「立つ」「歩く」「座る」「寝る」といった日常生活における基本動作にアプローチする点が特徴です。一方作業療法士は、「食事」「字を書く」「料理をする」「手を洗う」などといった日常生活に必要なより細かい応用動作に対してアプローチします。つまり、理学療法士は日常生活に必要な大きな基本動作を、作業療法士は細かい応用動作を専門領域としている点に違いがあります。また作業療法士は身体動作だけでなく、精神分野のリハビリを行う点も理学療法士との大きな違いです。そのため作業療法士は身体障害のある方だけでなく、心に問題を抱えている方に対してもリハビリを提供します。
理学療法士の活躍の場
理学療法士は、医療・福祉・教育・行政・スポーツ分野と活躍の場が幅広い点が特徴です。公益社団法人 日本理学療法士協会の調査によると、2021年3月末時点では理学療法士の約8割が病院や診療所といった医療機関に勤務しています。次いで、介護老人保健施設のような福祉施設が主な勤務先です。近年はスポーツチームの専属トレーナーとして働く理学療法士も多く、さまざまな場所で専門性が発揮できる仕事です。
機能訓練指導員の資格要件でもある
機能訓練指導員として働くことができる資格一覧 |
---|
看護師または准看護師/理学療法士/作業療法士/言語聴覚士/柔道整復士/あん摩マッサージ指圧師/鍼灸師 |
上記の通り、理学療法士は機能訓練指導員の要件の一つです。
理学療法士の資格を取得することで機能訓練指導員になる要件を満たし就業することもできます。特別養護老人ホームや、デイサービスセンターなどの介護施設では、一人以上の配置が義務づけられているため、非常に需要の高い職種一つです。
理学療法士の給料|年収はどれくらい?
厚生労働省「令和2年度賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士含むリハビリ専門職の給料は以下の通りです。
※年収=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
平均年齢 | 33.9歳 |
---|---|
勤続年数 | 6.5年 |
所定内労働時間 | 163時間 |
超過労働時間 | 4時間 |
きまって支給する現金給与額 | 29万600円 |
年間賞与その他特別給与額 | 70万2,200円 |
年収※ | 418万9,400円 |
理学療法士の給料は、勤務先や地域、年齢や勤続年数などによって個人差があります。同じく厚生労働省「令和2年度賃金構造基本統計調査」から年齢別に算出した給料をみると、理学療法士の給料は年齢の上昇とともに上りやすい点が特徴です。
きまって支給する 現金給与額 |
年間賞与 その他特別給与額 |
年収 | |
---|---|---|---|
20~24歳 | 24万3,100円 | 39万600円 | 330万7,800円 |
25~29歳 | 26万600円 | 66万2,300円 | 378万9,500円 |
30~34歳 | 28万5,600円 | 67万200円 | 409万7,400円 |
35~39歳 | 30万9,300円 | 82万8,500円 | 454万100円 |
40~44歳 | 33万4,300円 | 84万6,700円 | 485万8,300円 |
45~49歳 | 35万600円 | 92万4,800円 | 513万2,000円 |
50~54歳 | 38万8,300円 | 107万6,100円 | 573万8,200円 |
55~59歳 | 38万4,600円 | 104万8,600円 | 566万3,800円 |
ピーク時で年収は500万円後半であるため、人によっては600〜700万円台やそれ以上になることもあるでしょう。
理学療法士の仕事内容
理学療法士の役割はケガや病気、障がいなどで身体機能が低下または低下する恐れがある方に対して、身体機能の回復・維持・向上のために理学療法を通してリハビリを提供することです。主な仕事内容はリハビリにとどまらず、以下のようにさまざまです。
・運動療法、物理療法によるリハビリテーション
・評価、プログラム作成
・補装具の適合判定、レクチャー
・記録作成
・健康教育、障害予防 など
ここでは、理学療法士の主な仕事内容についてそれぞれ詳しくご紹介します。
評価・プログラム作成
リハビリを実施する前に、まずは病状の進行状況やケガ・障がいの程度を評価します。あわせて既往歴や生活環境などの判断、運動機能や神経機能などの検査を踏まえて、身体機能の回復や向上に必要なリハビリのプログラムも作成。理学療法士の独断ではなく、医師などの多職種と連携しながら治療の方針を決定します。リハビリ開始後も、定期的に再評価しながら必要に応じてプログラムも作成し直します。
運動療法・物理療法の実施
リハビリは、主に運動療法や物理療法を用いて実施。代表的な運動療法には関節可動域運動や筋力持久運動などがあり、理学療法士自身の支えや器具によって筋力や持久力、柔軟性や平衡性などの身体機能改善を目指します。また物理療法では、電気や温熱、マッサージなどの物理的エネルギーを活用して、血液循環や痛みの軽減、筋機能を改善します。そのほか、平行棒を用いた歩行練習やベッドから起き上がる練習などの一般的なリハビリも行います。
補装具の適合判定・レクチャー
義肢や車椅子、杖などが必要な患者に対して、補装具が適合するかの判断も行います。あわせて、補装具の使い方や着脱方法などのレクチャーも実施します。
記録作成
リハビリ後は、診療報酬や介護報酬の請求に必要なリハビリの記録を作成します。リハビリ内容や所要時間、評価内容や今後の改善点などを記録するまでが1日の業務です。
理学療法士になるには?国家試験について
理学療法士は国家資格であるため、国家試験に合格して理学療法士免許を取得する必要があります。ここでは、理学療法士になるために必要な国家試験について詳しくみていきます。
理学療法士国家試験に必要な受験資格
国家試験の受験資格を得るには、下記いずれかの養成校に通って必要課程を修了しなければなりません。
・4年制大学
・3年制短期大学
・3年制、4年制専門学校
上記以外に視覚障害者を対象とした特別支援学校を修了、または海外で理学療法に関する養成学校を卒業し厚生労働大臣の認定を受けた場合にも受験資格が得られます。なお、理学療法士に必要な課程は下記4種類です。
・一般教養科目
・専門基礎科目
・専門科目
・臨床実習
専門学校は3年制と4年制の2つが選べますが、どちらを選んでも違いはありません。そのため最短で現場に出たい場合には3年制、じっくり学びたい場合には4年制を選んでみてください。
理学療法士国家試験の概要
理学療法士国家試験は年1回、2月に実施します。下記は、2021年度国家試験の日程と概要です。
試験日 | ・筆記試験:2022年2月20日(日) ・口述試験及び実技試験:2022年2月21日(月) |
---|---|
合格発表 | 2022年3月23日(水) |
試験地 | ▼筆記試験 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県 ▼口述試験及び実技試験 東京都 |
試験科目 | ▼筆記試験 (ア)一般問題 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法 (イ)実地問題 運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法 ▼口述試験及び実技試験 |
出題形式 | マークシート |
配点・総得点 | ・一般問題:1問1点/160問 ・実施問題:1問3点/40問 |
合格基準 | 一般問題60%以上、実地問題の35%以上 |
理学療法士国家試験の合格率
下記は、過去3年間の理学療法士国家試験の合格率です。
全体 | 新卒者 | |
---|---|---|
第56回(2021年) | 79.0% | 86.4% |
第55回(2020年) | 81.4% | 87.7% |
第54回(2019年) | 85.8% | 92.8% |
最新の第57回(2022年)の合格率は全体で79.6%、新卒者で88.1%でした。合格率は例年80%で推移していることからも、試験の難易度は高くないといえます。
理学療法士の将来性
理学療法士の数は年々増加しているため、現在のペースで増え続けると供給過多になるのではと懸念する声もあります。しかし高齢化の進展に伴い、理学療法士の需要は増加が見込まれます。リハビリが必要な高齢者が増えるだけでなく、介護予防が推進されている点からも理学療法士の役割は重要です。またケガや病気による身体機能低下の予防・回復を専門とすることからも、需要が衰えることはありません。そして近年は医療・福祉分野だけでなく、スポーツ分野でも理学療法士の存在が注目されています。
将来性が高いだけでなく、リハビリを通じて多くの人に元気と生きる喜びを与えられる理学療法士はやりがいの大きい仕事です。
理学療法士は日常生活に必要な基本の身体機能を専門とする国家資格!
理学療法士は、立つ・歩く・座るなど日常生活に必要な基本動作を専門領域とした国家資格をもつリハビリ職です。医療・福祉分野をはじめ、教育やスポーツなどと幅広い分野で活躍しています。理学療法士になるには国家試験に合格し、理学療法士免許を取得する必要があります。今記事を参考に、理学療法士について理解を深めてみてください。
また理学療法士は機能訓練指導員になることのできる資格でもあります。気になる方はぜひ一度、機能訓練指導員の求人もチェックしてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。