作業療法士とはどんな仕事?理学療法士との違いや国家試験、給料などを解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/05/06
作業療法士は、リハビリテーションに関わる国家資格の1つ。作業療法を専門とし、主に医療機関や福祉施設など幅広い分野で活躍しています。今回は仕事内容や理学療法士との違い、給料や国家試験などさまざまな観点から作業療法士について詳しくご紹介します。
目次
作業療法士とは
作業療法士は理学療法士及び作業療法士法第2条4項において「厚生労働省大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行うことを業とする者」と位置付けられています。また社会福祉法人 全国社会福祉協議会のホームページには、作業療法士について下記のように記載があります。
作業療法士は、医師の指示のもと、障害のある方に手芸や工作等さまざまな活動を用いて、諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を通して治療、指導、援助をおこなっています。
作業療法士は英名「Occupational Therapist」であることから、通称「OT」とも呼ばれます。理学療法士及び作業療法士法に基づく国家資格であり、作業を通じた専門領域に特化して支援の必要な人々をサポートします。
作業療法士と理学療法士の違い
作業療法士の名称にもある「作業」とは、「食べる」「入浴する」「顔を洗う「字を書く」「地域活動に参加する」など日常生活に関わる応用動作・諸活動のことです。運動や感覚・知覚といった基本的動作能力から食事、トイレや家事などの日常生活で必要な応用的動作能力、地域活動への参加や就学・就労など社会的適応能力と主に3つの能力の維持・改善を目指し、その人らしい生活の獲得を目標に作業療法を提供します。身体的かつ精神的な面でリハビリを提供し、日常生活に不自由なく、その人らしく豊かに生きるための生活の実現を図る仕事です。そのため、障害のあるなしにかかわらず支援を必要とするあらゆる人にアプローチする点が特徴です。
一方理学療法士は、「立つ」「歩く」「起き上がる」といった身体的な基本動作能力の回復・維持を目的に理学療養を用いたリハビリを提供します。理学療法士は身体機能に特化し、身体的・知的に障害がある方に対してアプローチする点が作業療法士との大きな違いです。
作業療法士の活躍の場
作業療法士は医療や福祉・介護分野をはじめ、保健・教育・就労支援などさまざまな社会活動の場で活躍しています。支援が必要な人と社会との接点を作るため、主に下記のような職場に所属します。
・病院、クリニック
・児童発達支援センター
・就労移行支援事業所
・介護老人保健施設
・デイケア
・ハローワーク
・保健所
・地域包括支援センター
・特別支援学校
・保護観察所 など
作業療法士は機能訓練指導員の資格要件!
機能訓練指導員として働くことができる資格一覧 |
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看護師または准看護師/理学療法士/作業療法士/言語聴覚士/柔道整復士/あん摩マッサージ指圧師/鍼灸師 |
作業療法士の資格があると、機能訓練指導員として働くことができます。作業療法士の場合は、入浴や食事、掃除といった応用動作のリハビリテーションを行いますが、このスキルは機能訓練指導員としても活かすことができるものです。
介護資格だけでは機能訓練指導員になることはできないため、作業療法士の資格を活かすという意味では、介護施設で非常に需要の高い資格と言えるでしょう。
作業療法士の給料|年収はどれくらい?
厚生労働省「令和2年度賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士含むリハビリ専門職の給料は以下の通りです。
※年収=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
平均年齢 | 33.9歳 |
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勤続年数 | 6.5年 |
所定内労働時間 | 163時間 |
超過労働時間 | 4時間 |
きまって支給する現金給与額 | 29万600円 |
年間賞与その他特別給与額 | 70万2,200円 |
年収※ | 418万9,400円 |
給料は勤務先や地域、年齢や勤続年数などによって個人差がありますが、一般的には年齢や勤続年収の上昇とともに年収も上がりやすい点が特徴です。
きまって支給する 現金給与額 |
年間賞与 その他特別給与額 |
年収 | |
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20~24歳 | 24万3,100円 | 39万600円 | 330万7,800円 |
25~29歳 | 26万600円 | 66万2,300円 | 378万9,500円 |
30~34歳 | 28万5,600円 | 67万200円 | 409万7,400円 |
35~39歳 | 30万9,300円 | 82万8,500円 | 454万100円 |
40~44歳 | 33万4,300円 | 84万6,700円 | 485万8,300円 |
45~49歳 | 35万600円 | 92万4,800円 | 513万2,000円 |
50~54歳 | 38万8,300円 | 107万6,100円 | 573万8,200円 |
55~59歳 | 38万4,600円 | 104万8,600円 | 566万3,800円 |
作業療法士は医療職に分類されるものの、他の医療職と比べると給料水準はやや低めです。その要因に夜勤がないこと、決められた予算内でしか業務ができないことなどが挙げられます。しかし国家資格を伴う仕事であるため手に職をつけることができ、着実に勤続年数をあげていくことで安定的に昇給しやすい点はメリットです。
作業療法士の仕事内容
作業療法士の最大の役目は、身体や精神に障害のある方に作業療法を通じて治療・訓練を行い、社会復帰を目指すことです。作業療法士の活躍の場は多岐にわたるため具体的な仕事内容は職場によって異なりますが、共通する考え方は「その人らしい生き方を実現する」こと。そのため対象者の身体・精神障害の程度や環境、ニーズに応じてさまざまな作業療法を提供します。ここでは、領域ごとに作業療法士の仕事内容を詳しくご紹介します。
作業療法士の仕事内容①急性期
急性期では、病気やけがから回復するためのリハビリを提供します。「自分で食事を食べる」「自分で移動する」「トイレを使う」など、自立した日常生活に必要な身体的能力の回復を図ります。単に身体的能力を回復させるだけでなく、その人の将来の生活やその時のメンタルに合わせて、その人に合ったリハビリプログラムを実施していきます。
作業療法士の仕事内容②回復期
病気やケガの状態が安定したのち、「衣類や履物を着脱する」「料理する」「買い物で外に出る」など、生活していく上で必要な応用動作の獲得・回復を目指します。より具体的な生活をイメージし、その人の今後の生活に必要な能力の開発や獲得のためのリハビリを実施。生活に必要な動作だけでなく、道具の操作や金銭等の管理練習、コミュニケーションの練習なども行います。また必要に応じて、利用すべき福祉用具の提案や住環境の調整なども行う点が特徴です。
作業療法士の仕事内容③生活期
生活期の支援は、その人らしい生活の実現、社会とのつながりをもつための支援を提供します。生活期の支援の最大の目的は、その人が生きがいを持って豊かに生きられるようにすることです。その中で就労支援や趣味を楽しむための援助、自分に合った生活しやすい環境づくりなどをサポートします。
作業療法士になるには?国家試験について
作業療法士になるには、国家試験に合格して資格を取得する必要があります。ここでは、作業療法士の国家試験について詳しくご紹介します。
作業療法士国家試験に必要な受験資格
国家試験の受験資格を得るには、下記いずれかの養成校で必要課程を修了する必要があります。
・4年制大学
・3年制短期大学
・3年制または4年制専門学校
・海外の作業療法に関する学校、または養成施設(厚生労働大臣の認定必要)
2019年時点で、作業療法士になるための必要課程を満たす養成学校は全国に約193校あります。養成学校での必要な課程は、下記3分野です。
基礎分野 | 専門基礎分野 | 専門分野 |
---|---|---|
・科学的思考の基盤 ・人間と生活 |
・人体の構造と機能及び心身の発達 ・疾病と障害の成り立ちおよび回復期過程の促進 ・保健医療福祉とリハビリテーション理念 |
・基礎作業療法学 ・作業療法評価学 ・作業治療学 ・地域作業療法学 ・臨床実習 |
作業療法に関する医学的な知識はもちろん、福祉や社会学・心理学など幅広い知識を学びます。なお、3年制と4年制で修得できる知識や技術に差はありません。
作業療法士国家試験の概要
作業療法士国家試験は年1回、毎年2月に実施されます。下記は、2021年度の試験日程と概要です。
試験日 | ・筆記試験:2022年2月20日(日) ・口述試験及び実技試験:2022年2月21日(月) |
---|---|
合格発表 | 2022年3月23日(水) |
試験地 | ▼筆記試験 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県 ▼口述試験及び実技試験 東京都 |
試験科目 | ▼筆記試験 (ア)一般問題 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び作業療法 (イ)実地問題 |
出題形式 | マークシート |
配点・総得点 | ・一般問題:1問1点/160問 ・実施問題:1問3点/40問 |
合格基準 | 一般問題60%以上、実地問題の35%以上 |
作業療法士国家試験の合格率
下記は、過去3年間の作業療法士国家試験の合格率です。
全体 | 新卒者 | |
---|---|---|
第56回(2021年) | 81.3% | 88.8% |
第55回(2020年) | 87.3% | 94.2% |
第54回(2019年) | 71.3% | 80.8% |
最新の第57回(2022年)の合格率は全体で80.5%、新卒者で88.7%でした。合格率は70~80%を推移しており、第55回以降は合格率もアップしています。理学療法士よりもやや合格率が高く、試験の難易度が高くないといえます。
作業療法士はその人らしい生活が実現できるようサポートする仕事!
作業療法士はリハビリなどの治療だけでなく、その人の生活、さらには人生に密着したあらゆるサポートを提供する仕事です。医療や介護・福祉、教育や行政などあらゆる分野で活躍しており、国家資格であることから専門性が高く、やりがいも大きい点が魅力です。今記事を参考に、作業療法士の理解を深めてみてください。
また作業療法士は機能訓練指導員になることのできる資格でもあります。気になる方はぜひ一度、機能訓練指導員の求人もチェックしてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。